相続時の賃貸借契約はどうなる?貸主が亡くなったときの相続について解説

賃貸借契約中に貸主が亡くなったとき、貸主としての地位は相続人が承継します。親族が不動産賃貸を行っている方は、相続に備えて基礎知識を知っておくと安心です。この記事では、貸主が亡くなったときに賃貸借契約の権利がどうなるのか、また相続の流れなどについて解説します。

目次
  1. 相続時の賃貸借契約の権利は誰が引き継ぐ?
  2. 賃貸借契約中に貸主が亡くなったときは相続登記が必要
  3. 賃貸借契約を結んでいる賃借人に対して必要な手続き
  4. 賃貸借契約物件の経営を継続するメリット
  5. 賃貸借契約の相続で困ったら不動産会社に相談しよう
記事カテゴリ 賃貸
2024.03.08

相続時の賃貸借契約の権利は誰が引き継ぐ?

不動産賃貸を行っていた親族を亡くし、不動産を相続することになったものの、「賃貸中の物件がどのように相続されて、どのような手続きが必要になるのか分からない」という方もいるのではないでしょうか?

結論からいうと、相続は、賃貸借契約の終了事由に該当しないため、賃貸権、貸主(賃貸人)としての地位は相続人が承継します。この記事では、貸主が死亡した場合の相続の対応や手続き、また相続した不動産を賃貸に出すことのメリットなどについてご紹介します。

賃貸マンションを相続する様子

賃貸借契約中に貸主が亡くなったときは相続登記が必要

不動産の賃貸借契約期間中に貸主が亡くなった場合、まずは相続登記の手続きが必要です。その後、貸主としての地位は、相続人に継承されます。地位を承継することについて、相手方(借主)からの承認や同意は必要ありません。ここからは、賃貸借契約に関する相続手続きの一連の流れについて解説しましょう。

低層マンション

2024年4月からは相続登記での名義変更が義務化される

相続登記とは、亡くなった方から自宅や賃貸物件などの不動産を相続した際に必要となる名義変更の手続きのことです。これまでは法的なルールがなかったものの、2024年4月から義務化がされ、「相続により不動産の所有権を取得したと知った日から3年以内」に登記を完了させなければなりません。なお、改正日前に取得した不動産も登記の対象です。正当な理由もなく期間内に相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料が求められますので、必ず行うようにしましょう。

遺産分割協議を行う

相続人が複数いる場合、貸主としての地位は相続人全員で継承し、遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議書を作成する際は、相続人全員の実印および印鑑証明書が必要です。なお、「誰が相続するか」については、賃借人の承諾は不要です。

遺産分割協議を行っている間の賃料は遺産とは別個の財産であり、相続人がその相続分に応じ、分割単独債権として取得するものとされています。賃借人は、各相続人に割合に応じた賃料を支払わなければなりませんが、実際に各相続人に賃料を支払うのは面倒です。そのため、相続人の間で代表を決定し、賃借人は、その相続人代表者に支払うのが一般的です。

相続登記に必要な書類を準備する

相続が発生したら、不動産の名義変更をするための相続登記を行います。相続登記を行う際は、登記事項証明書、被相続人・相続人の戸籍謄本、相続人の住民票、遺産分割協議書などの書類が必要になるので、請求が必要なものは早めに準備しておきましょう。必要書類の詳しい内容は、法務局の案内をご覧ください。

登記申請書を作成する

登記事項証明書や相続人の戸籍謄本、住民票などの必要書類がそろったら、登記申請書の作成を行います。登記申請書の作成には細かい記載ルールが定められているため、必要事項を漏れなく記載しましょう。記載方法に不安がある場合は、法務局のホームページに記載例があるので、ぜひ参考にしてください。

登記申請書を作成したら法務局へ提出しますが、提出方法は、書類一式を直接法務局の窓口に持っていく方法、郵送する方法、オンラインでデータを送る方法から選べます。申請から1~2週間後、登記識別情報通知を受領し、正しく名義変更が行われているか確認できたら、登記完了です。

相続不動産の登記を行う法務局

賃貸借契約を結んでいる賃借人に対して必要な手続き

次に、相続登記が完了した後の、賃借人に対して必要な手続きをご紹介しましょう。

賃料の振込先を変更する

被相続人が亡くなると、故人の預金口座は凍結されて入出金ができないため、相続人は振り込まれる賃料を受け取れません。そのため、なるべく早めに賃貸借契約に記載されている賃料の振込先を相続人代表の指定する口座に変更する必要があります。振込先の変更は、貸主から賃借人への通知で変更可能な場合が一般的です。

新しい貸主になったことを賃借人に報告する

遺産分割協議後、新しい貸主が相続人の間で決まったら、名前・住所・連絡先などを賃借人に報告しましょう。相続人(新しい貸主)の連絡先が分からなかったために生じてしまうトラブルを回避するためにも、賃借人にはなるべく早く通知することが大切です。

貸主変更に関する覚書を締結する

貸主が変更されても、既に締結されている賃貸借契約の内容、賃借人の賃借権に変更はありません。そのため、契約書に再度記入したり、契約解除のうえ締結し直したりする必要はないのが一般的です。

とはいえ、契約者間でトラブルが起き、弁護士を立てる必要が生じたときのために、相続で貸主が変更されたことを記録に残しておくのが理想です。具体的にいうと、相続人が貸主の地位を承継したことを確認する覚書(おぼえがき)を締結するのがよいでしょう。覚書とは、締結済みの契約に関して追加・変更する事項を記載し、その内容に対して契約者の双方が合意したことを証明する書面のことです。

三井のリハウスの賃貸管理サービスでは、このような賃料振込先の変更、覚書の締結などの煩雑な業務を貸主さまに代わって対応し、貸主さま、相続人さまを万全にサポートさせていただきます。ご親族に相続財産を残すことをご検討されているオーナーさまはぜひご相談ください。

賃貸借契約書

賃貸借契約物件の経営を継続するメリット

賃貸物件を相続したら、賃貸物件のままで今後も継続するのか、それとも物件を売却したほうがよいのか、迷う方もいるでしょう。ここでは、売却せずに賃貸を続ける場合のメリットについて解説します。

家賃収入により不労所得が得られる

賃貸を継続する最大のメリットは、家賃収入が得られることです。物件を手放すことなく、継続的に一定の収入が得られるのは経済的な安心にもつながるでしょう。

なお、賃貸中の物件を売却すると、それはオーナーチェンジ物件となります。オーナーチェンジ物件とは、入居者と賃貸借契約を交わしたままの状態で売りに出される物件のことです。一般的には、物件周辺の利回り(売買価格に対する年間賃料の割合)に合わせて売却価格が算出され、その価格は空室の状態で売却する際よりも低くなる傾向にあります。さらに、借主(入居者)の退去が決まっていない場合などは居住用としての購入は難しく、投資用として購入することが一般的になるため、買い手が限られることも懸念点として挙げられます。

一方、賃貸管理会社に委託すれば、賃貸中の物件管理の手間や面倒もなく、家賃収入を得られます。賃貸物件として所有しながら、解約が出て空室になった時点で売却することも1つの選択肢ですが、売却せずに資産として持ち続けるのもよいでしょう。

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将来的に活用できる不動産・相続財産として残る

マンションやアパート、一戸建て住宅などの家を売却することは、自分が持っている資産を手放すことを意味します。ですが、それらを賃貸に出せば、家賃収入によって収益が得られるだけでなく、将来的に活用できる資産・相続財産として後世に残すことができます。空室になった際には自身や家族が住むこともできるので、将来的に住みたいと思っている場合や自宅とは別に住居が必要になった場合も安心でしょう。加えて、家は誰も住んでいないと急速に劣化しますが、賃貸に出し、誰かに住んでもらうことで、室内環境を維持することもできます。

さらに家を賃貸に出すことで、所得税の節税効果が期待できるのもメリットです。不動産投資を行うことで、1年の所得に対してかかる税額を減らせる場合があります

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相続で得たマンション

賃貸借契約の相続で困ったら不動産会社に相談しよう

ここまで、貸主が亡くなったときの賃貸借契約と相続について解説しました。不動産の相続は、書類の作成や手続きなど、行うことが多岐にわたるため、困ったら不動産のプロに相談するのがおすすめです。

三井のリハウスでは、不動産オーナーのために賃貸管理サービスを提供しており、相続が発生した場合の賃貸借契約に関するさまざまな変更手続きや通知など、貸主さまをトータルサポートいたします。また、全国に広がる独自のネットワークを活用した強力な集客力で、空室対策や売却活動も万全です。相続財産として賃貸物件をお持ちの貸主さまや、相続した物件の賃貸管理会社をお探しの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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