不動産投資における「利回り」とは?基礎知識や相場、判断方法を知ろう

賃貸経営の利回りとは、物件価格に対して1年間でどれだけの金額を回収できるのかを表した割合です。「表面利回り」と「実質利回り」があり、実質利回りのほうがより現実的な数字となります。今回は、利回りについて、計算方法や相場をお伝えします。

目次
  1. 不動産投資の利回りを理解しよう
  2. 利回りとは?
  3. 利回りの相場はいくら?
  4. 利回りのシミュレーション方法
  5. 利回りの高さが全てではない
  6. 不動産投資に悩んだらプロに相談しよう
記事カテゴリ 賃貸
2022.12.01

不動産投資の利回りを理解しよう

不動産投資に関心がある人は、「利回り」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?不動産投資向けの賃貸経営用の物件サイトには、「利回り◯%」と記載されることが多くあります。

この利回りは、投資物件を検討する際の重要な指標の1つです。不動産投資をする際は、利回りについて詳しく知り、何を基準にして、どのように判断したらよいかを理解することが、よい物件選びにつながります。今回は不動産投資初心者の人に向けて、利回りの意味や相場、判断のポイントについてご紹介していきます。

マンション外観

利回りとは?

まず、不動産投資物件の選択基準の1つである利回りの意味や種類など、利回りの基本を理解していきましょう。

投資金額に対する収益割合

利回りとは、賃貸経営をする際に、物件購入価格に対して1年間の家賃収入がどれくらいの割合かを示したものです。その物件の収益力を判断する材料の1つとされます。実際に利回りの数字を見ることで、その物件でどのくらい収益を得られるのか、また何年で投資した資金を回収できるのか、などが分かります。

不動産の模型と計算機と拡大鏡

主な2つの利回り

利回りには主に、「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。

表面利回り
表面利回りは、税金や管理費などの経費を含めず、物件購入価格と1年間の家賃収入をもとにして計算する収益割合のことです。「グロス利回り」と呼ばれることもあります。表面利回りは以下の方法で計算します。

表面利回り(%)=(年間家賃収入÷物件購入価格)×100

実質利回り
実質利回りは、表面利回りに、購入時の諸費用、年間運営費、固定資産税、火災保険料、修繕費などを加味した収益割合のことです。実質利回りは以下の方法で計算します。

実質利回り(%)=(年間収入-年間諸費用)÷(物件購入価格+購入時諸費用)×100

投資では実質利回りを重視

不動産投資は物件を購入する際、運営する際にも諸経費がかかるため、表面利回りだけを見て物件を購入すると、実際とのギャップが出てきます。そのため、実質利回りを判断の目安にすることが大切です。

なお、広告に表示されている利回りは、表面利回りです。なぜなら、諸経費はケースバイケースで、あらかじめ算定することができないためです。表面利回りは数値が高く見えますが、必要経費が計算に入っていないことを覚えておきましょう。購入時の諸費用や運営経費が高い物件を取得してしまうと、コストパフォーマンスが悪くなる可能性があるので注意が必要です。

そのため、いくつかの不動産を比較して検討する際は、自分が運用する場合の実質利回りを自分で算出して、比較することをおすすめします。

なお、実質利回りの経費に含まれる諸費用は以下の通りです。細かく計算に入れ込んでいくほど実質利回りがリアルな数値になります。

・登記費用
・司法書士への報酬
・仲介手数料
・不動産取得税
・火災保険料、地震保険料
・固定資産税
・管理委託手数料
・ローン返済
・修繕費
・修繕積立金など

なお、不動産会社によっては、広告に実質利回りを表示していることもあります。その場合は、どこまでの経費が含まれているかをチェックする必要があります。

また、一般的に区分マンション(1戸の物件)の実質利回りを計算する際は、ローン返済を含まずに計算し、一棟の実質利回りを計算する際は、ローン返済を含むケースが多くなります。

オーナーのアルファベットとお金

利回りの相場はいくら?

ここからは最近の、不動産の利回りの相場についてご紹介します。利回りは常に推移しています。不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家(けんびや)」による収益物件市場動向四半期レポート<2022年1月~3月期>※1のデータをもとに、首都圏の平均利回り、各地方の平均利回りを見てみましょう。

不動産の模型とパソコンに向かう投資家

首都圏の平均利回り

土地価格が高いといわれる首都圏の利回りの平均値はどのくらいなのでしょうか?2021年1月〜2022年3月までの首都圏の平均表面利回りは以下の通りです。

物件種類

平均表面利回り

区分マンション

6.85%

一棟アパート

8.25%

一棟マンション

7.42%

※不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家のデータをもとに算出
※調査対象は健美家に登録された投資用不動産で、築年数の制限はないものとする

各地方の平均利回り

首都圏以外の日本各地方の表面利回りの平均を下の表にまとめました。2021年1月〜2022年3月までの日本各地の表面利回りの平均値は以下の通りです。

北海道

平均表面利回り

区分マンション

12.07%

一棟アパート

11.55%

一棟マンション

9.00%

東北

平均表面利回り

区分マンション

13.13%

一棟アパート

11.35%

一棟マンション

9.65%

信州・北陸

平均表面利回り

区分マンション

16.26%

一棟アパート

13.04%

一棟マンション

11.48%

東海

平均表面利回り

区分マンション

9.25%

一棟アパート

9.06%

一棟マンション

9.38%

関西

平均表面利回り

区分マンション

7.71%

一棟アパート

9.67%

一棟マンション

8.38%

中国・四国

平均表面利回り

区分マンション

13.51%

一棟アパート

11.99%

一棟マンション

11.38%

九州・沖縄

平均表面利回り

区分マンション

10.15%

一棟アパート

9.27%

一棟マンション

8.68%

※不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家のデータをもとに算出
※調査対象は健美家に登録された投資用不動産で、築年数の制限はないものとする

首都圏より地方のほうが高め

上記の表を見ると、首都圏よりも、地方のほうが表面利回りが高いことが分かります。利回りだけに着目すれば、利回りが高い地方の物件を投資対象にすればよい、ということになりますが、それが正しい選択だとは一概にいえません。なぜなら、賃貸経営の物件選びには、利回り以外にも物件の状態、築年数、環境などさまざまな考慮すべき要素があるからです。詳しくは後ほど説明します。

利回りのシミュレーション方法

投資物件を探している最中に気になる物件に出会った場合は、利回りを計算して、収益のシミュレーションをすることをおすすめします。そうすることで、具体的な計画を立てやすくなりますよ。

計算機と計算する人の手

新築区分マンションの場合

新築の区分マンションを想定して、利回りを計算してみましょう。

〈 例 〉
物件:      新築マンション(2LDK)
物件購入価格:  5000万円
想定家賃収入:  240万円(20万円×12か月)
購入時諸費用:  500万円
年間管理費:   24万円(管理費2万円×12か月)

・表面利回り
(20万円×12か月÷5000万円)×100=4.8%

・実質利回り
(20万円×12か月-2万円×12か月)÷(5000万円+500万円)×100=3.9%

以上のような新築物件を想定した場合、表面利回りは4.8%、実質利回りは3.9%になります。ただし、ここでは、管理費だけを諸経費として計算しています。実際は、さらに諸経費が計上されるため、実質利回りは上記の数値よりも小さくなることが想定されます。

中古区分マンションの場合

次に、中古の区分マンションのケースをシミュレーションしてみましょう。

〈 例 〉
物件:      中古マンション(2LDK)
物件購入価格:  3500万円
想定家賃収入:  204万円(17万円×12か月)
購入時諸費用:  270万円
年間管理費:   24万円(管理費2万円×12か月)

・表面利回り
(17万円×12か月÷3500万円)×100=5.8%

・実質利回り
(17万円×12か月-2万円×12か月)÷(3500万円+270万円)×100=4.7%

以上のような中古物件を想定した場合、表面利回りは5.8%、実質利回りは4.7%になります。ただし、中古物件の場合、今後リフォームやメンテナンスが必要になることも考えられます。その場合は、諸経費がかさむため、実質利回りはこの計算した数値よりも下がると予想されます。

計算しシミュレーションした時点で、利益が見込めないようであれば、物件の購入は見送るようにしましょう。また、中古物件の場合、リフォーム費用がかかるケースがあるため、注意が必要です。利回りを計算する際におよそのリフォーム費用を把握できれば、諸経費に計上して、実質利回りを計算してみるのもよい方法です。

利回りの高さが全てではない

投資用賃貸物件を探すとき、利回りの高さだけを注目しがちですが、利回りの高さだけが全てではありません。大切なのは、需要が見込める、条件のよい物件かどうかです。なかには、たとえ利回りが理想より低くても、長い目で見た場合、よい投資先になる物件もあります。

なお、利回りに理想や最低ライン、といった一般的な基準はありません。物件があるエリアの環境に始まり、新築か中古か、構造は木造かRC造かなどの物件の状態、また投資する人の投資プランによって、利回りの理想と最低ラインは異なるからです。
では、ここからは、投資物件を探す際に注意すべき項目について見ていきましょう。

不動産の模型と仲介業者

立地条件

検討する物件の立地条件をチェックし、利便性について調べる必要があります。駅や買い物施設が近くにない物件は、利便性が欠けていると見なされ、空室率が高くなりがちです。そのような物件の場合は、定期的な収益を見込めないこともあるため、注意が必要です。

また、災害に見舞われやすい土地かどうかをハザードマップで調べることも必要です。災害に見舞われやすい立地の場合、敬遠されることがありますから、注意しましょう。

なお、立地条件が悪い物件は、物件の価格自体が安いため、一般的に利回りが高くなります。逆に、駅や商業施設に近い利便性のよい物件の場合、利回りは低くなるかもしれませんが、空室になりにくいというメリットがあります。

築年数の表示と家の模型を持つ手

築年数

築年数が古い物件の場合は、購入費用を抑えられるため利回りが高くなる傾向ですが、建物や設備に不調がないかは事前によく調べておく必要があります。たとえ利回りが高くても、少しでも建物や設備に不備があると、物件購入後に、建物の修繕や設備の交換のために多額の費用を支払うことになるためです。

告知事項

物件に告知事項があるかどうかをしっかり確認しましょう。告知事項とは、物件の重大な欠陥を指します。人の死がかかわる事故物件や、火災や地震などにより物件自体に欠陥がある場合に、「告知事項あり」と広告欄に記載されます。

こうした物件は、入居者に心理的な負担がかかるため、「心理的瑕疵(かし)物件」と呼ばれます。物件を検討する際は、瑕疵物件ではないかどうか、仲介業者に確かめることをおすすめします。

耐震基準

耐震基準について調べることも必要です。耐震基準とは、一定の強い地震が起きても倒壊しないように建築基準法が定める基準のことです。1981年に改正された新耐震基準を満たしていれば、震度6以上の地震に耐えられるといわれます。

最新の基準を満たしていない物件の場合、売却する際に売却がスムーズにできない、また建て替えの必要に迫られるなどのリスクが発生するケースもあるため、注意が必要です。

ここまで説明したように、立地条件がよく、築浅で、耐震基準を満たした賃貸需要の高い物件であれば、たとえ利回りの低い物件であっても、空室になりにくいため、中長期的に安定した利益が見込めるといえるでしょう。

不動産投資に悩んだらプロに相談しよう

投資物件選びは、利回りも含め、立地条件や建物の構造、築年数、耐震性などさまざまな要素を考慮する必要があります。個人では調べきれないことや、疑問が出てくることもあるでしょう。その場合は、実際に不動産投資を経験している人や不動産投資を行っているファイナンシャルプランナー、あるいは不動産会社へ相談することをおすすめします。

なかでも、物件の特性や賃貸のニーズなどは、個人では調べにくいため、不動産会社に尋ねるとよいでしょう。

三井不動産リアルティでは不動産の購入や賃貸募集、賃貸管理、最終的には売却まで、トータルでサポートしていますので、一度、相談してみることをおすすめします。

●投資用物件サイトはこちら

●賃貸経営に関するお問い合わせはこちら

不動産会社の営業マン

※1出典:収益物件 市場動向 四半期レポート 2022年1月~3月期,健美家株式会社
https://www.kenbiya.com/img/press/pre2022-04-12.pdf
(最終確認:2022年10月11日)

アユカワタカヲ

株式会社タカプランニングジャパン代表取締役。
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有。
会社員時代に不動産投資をスタートさせ、今では幅広く不動産賃貸業を営む。
メディア出演や著作の出版、セミナーなどでも活躍。
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