家賃収入にかかる税金はいくら?計算方法と節税ポイント、申告方法を分かりやすく解説

家賃収入で収益を得ると、その不動産所得に対しては税金がかかります。かかる税金は主に所得税と住民税ですが、それらの税額は所得の金額によって変化します。今回は、家賃収入を得たときにかかる税金の算出方法や控除できるもの、申告の流れについてご紹介します。

目次
  1. 家賃収入を得ると税金がかかる?
  2. 家賃収入にかかる税金とは?
  3. 家賃収入にかかる税金の計算方法
  4. 家賃収入の税金計算で用いる必要経費の項目
  5. 家賃収入の税金で利用できる各種控除
  6. 家賃収入で税金を納める際の確定申告の手続き方法
  7. 家賃収入の税金に関する相談は信頼できるプロへ
記事カテゴリ 賃貸
2024.01.18

家賃収入を得ると税金がかかる?

家賃収入に魅力を感じ、不動産投資に興味を持つ方は多いのではないでしょうか?老後を見越してもマンション経営やアパート経営などにより定期的な収入があると、生活に余裕が持てそうですよね。

ただ、不動産投資で家賃収入を得ると、原則、確定申告を行い税金を納める必要があります。税金はいくらかかるのか、節税は可能か、不動産の投資を検討するうえでは気になりますよね。そこで今回は、家賃収入に関する税金や節税対策のほか、確定申告の方法についても解説します。

両手の上に不動産模型を乗せた男性

家賃収入にかかる税金とは?

税金は家賃収入全体にかかるわけではなく、家賃の収入から経費の支出を差し引いた「不動産所得」に対してかかります。なお、敷金や保証金は預かり金の区分となるため、返済をする限りは不動産所得には含まれません。

不動産所得にかかる税金の種類は次の通りです。

・所得税
・住民税
・消費税

なお、上記で挙げたもの以外にも、不動産を所有しているだけで毎年かかる「固定資産税」「都市計画税」に加え、不動産取得時に一度だけかかる税金として「不動産取得税」もあります。

所得税

所得税は、不動産所得以外にも給与や個人事業の利益など、1年間に得た利益に対して課税されます。所得税額は所得が多額になるほど税率が高くなる「累進課税」と呼ばれる方法が採用されています。

住民税

住民税も所得税同様に、所得に応じて課税される税金です。住民税は、1月1日時点で住民票がある地域に納付する税金です。納付した住民税は、地元の市区町村の自治体と、その市町村がある道府県によって使用されます。

消費税

通常、不動産所得は消費税の課税対象となりますが、不動産所得を得た物件が居住用であれば消費税はかかりません。一方、オフィスや店舗など事業用賃貸物件のケースは、不動産所得が1,000万円を超えると課税されます。

仮に、居住用と事業用がつながっている物件で不動産所得を得た場合は、居住用と事業用の面積比で、不動産所得を割ることで課税額が算出され事業用物件の面積比分の不動産所得が1,000万円を超えた場合に消費税が課税されます。

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不動産と税金の模型と紙幣

家賃収入にかかる税金の計算方法

ここまでは家賃収入によって得た不動産所得にかかる税金の概要をお伝えしました。ここでは、不動産所得にかかる所得税と住民税の算出手順をお伝えします。

[ 1 ] 不動産所得を計算する

所得税と住民税は不動産所得に応じてかかるので、まずは不動産所得を計算しましょう。不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いて算出します。

不動産所得 = 家賃収入 – 必要経費

家賃収入には家賃のほか、礼金や更新料、管理費・共益費、駐車場代なども含まれます。家賃収入から差し引ける経費の支出については後ほどお伝えします。

[ 2 ] 所得税を計算する

次に所得税を計算しましょう。所得税は以下の計算式で算出できます。

所得税 = 課税所得金額 × 税率 – 税率控除額

「課税所得金額」とは、不動産所得以外にも給与や個人事業の利益を含めた全ての所得を合算したものです。課税所得金額にかける税率は、所得が増えるにつれ課税額も高くなる累進課税の方法が採用されています。所得税の税率と控除の金額は、以下の表の通りです。※1

課税所得金額税率税率控除金額
1,000円以上195万円未満5%0円
195万円以上330万円未満10%9万7,500円
330万円以上695万円未満20%42万7,500円
695万円以上900万円未満23%63万6,000円
900万円以上1,800万円未満33%153万6,000円
1,800万円以上4,000万円未満40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

所得税を算出した後は、各種控除が用意されており、税負担を軽くできます。各種控除については後ほどお伝えします。

●所得税税率に関する国税庁のページはこちら

[ 3 ] 住民税を計算する

次に住民税を計算しましょう。住民税は、定額で課税される「均等割」と、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」によって成り立っています。

住民税 = 均等割 + 所得割

均等割の税額は、2023年度分の確定申告に関しては5,000円となり、以降は4,000円となります。このうち、3,500(3,000)円は市町村民税、1,500(1,000)円は道府県民税として支払われるものです。一方、所得割の税率は一律10%で、このうち6%は市町村民税、4%は道府県民税として納めます。

なお、政令指定都市に関しては市町村民税が8%、道府県民税は2%です。均等割と所得割は、自治体によって条件が異なる場合があるので、各自治体に確認しましょう。

所得税と同様、住民税にも各種控除が用意されているので、併せて次の項でご説明します。

所得税と消費税の記入欄と現金

家賃収入の税金計算で用いる必要経費の項目

家賃収入にかかる税金のおおまかな算出方法は前述の通りです。ここでは、実際の納税額を計算するときに、家賃収入から差し引ける必要経費について詳しくお伝えします。

必要経費と認められるもの

必要経費として認められるものは、不動産所得という利益を得るために発生した支出です。たとえば以下のようなものがあり、それぞれ解説します。

・修繕費
・管理組合への管理費
・不動産会社への管理手数料
・借入金の金利
・減価償却費
・広告宣伝費
・交際費、交通費、通信費
・不動産取得税
・固定資産税

●修繕費
修繕費には、建物の外装や内装の修繕にかかった費用のほかに、設備の交換のための費用も含まれます。

●管理組合への管理費
マンションの管理組合が共用部分を管理するための費用です。

●不動産会社への管理手数料
不動産会社に管理を委託した際にかかる費用を指します。

●借入金の金利
不動産購入時に借り入れたローンの金利は、必要経費として加算されます。

●減価償却費
マンションの購入費用は減価償却費となります。減価償却費とは、高額な固定資産を法務上で決められた「耐用年数」にわたって、必要経費に算入する方法です。建物の耐用年数は、木造や鉄筋コンクリートなど建物の構造によって異なります。
ただし、建物と同じ不動産でも、土地は減価償却費の対象にはなりません。土地は建物と違って経年劣化しないため、高額な固定資産であっても耐用年数を設定できないのです。土地代は減価償却費に計上できない分、税金の軽減措置が用意されています。

減価償却費の記入欄と現金

●広告宣伝費
不動産の管理会社から請求されることがある入居者を募集するための広告宣伝費は、この場合必要経費に含めることが可能です。

●交際費、交通費、通信費
交際費と交通費、通信費は不動産所得を得るために動いたときに発生します。交際費であれば、不動産会社や税理士などとの打ち合わせの飲食代、交通費であれば、購入する投資物件を見学するためのガソリン代や公共の交通料金といった費用が想定されます。そして通信費であれば、情報収集のためのインターネット使用や不動産会社との連絡に使った電話料金などが該当します。なお、これらを必要経費に加算するには、領収書の提示が必要です。

●不動産取得税
不動産購入時には不動産取得税を納税しなければなりません。不動産を取得したら自治体に届け出を申請します。届け出の申請期日は各自治体によって異なり、たとえば東京都の場合は取得日から30日以内、大阪府の場合は20日以内となっているため、確認しましょう。また、自治体によっては、不動産の取得が自動的に申告される場合もあります。

申請後、各自治体から不動産取得税の金額が通知されます。自治体によって通知の時期は異なりますが、購入してから数か月後に請求書が届くことが一般的です。不動産取得税は下の計算で算出できます。

不動産取得税 = 課税標準額 × 4%

課税標準額は市町村の役場にある固定資産課税台帳で確認できます。税率は通常4%ですが、2024年3月31日までの土地と居住用の建物の取得では3%となっています。

ビルの模型と現金

●固定資産税
固定資産税の納税額は、1月1日の時点で固定資産を所有している人に対する、自治体からの通知で分かります。通知が手元にない場合、固定資産税は下の計算で算出できます。

固定資産税 = 固定資産税課税標準額 × 1.4%

固定資産税課税標準額は、自治体からの通知のほかに、市町村役場にある固定資産課税台帳もしくは固定資産縦覧帳簿で確認できます。

そのほか事業税や消費税、損害保険料、立ち退き料なども必要経費に含まれます。

必要経費として認められないもの

必要経費に加算できないものは、不動産所得という利益を得るためではない支出です。具体的には、以下の支出が挙げられます。

・借入金の元本返済分
・事業に関連しない支出
・所得税や住民税

借入金の元本返済分は、利益を出すためではなく事業の根本を支える費用と見なされ、必要経費になりません。所得税や住民税もまた、利益を出すためではなく事業地や事業主個人にかかるため、やはり必要経費とは見なされないのです。

家賃収入の税金で利用できる各種控除

所得税と住民税はある一定の条件を満たせば控除されます。控除項目は数多くあるため、節税できないか、1つ1つ確認しておきましょう。

所得税から控除されるもの

所得税には、状況に応じて税負担を軽減できる各種控除が用意されています。なぜなら所得税には、「その人の基本的な人権を守るために、税を負担する状況に応じた課税をする」という考えが根本にあるためです。税負担を軽減する所得控除は、以下のように用意されています。

・基礎控除
・社会保険料控除
・医療費控除
・配偶者控除
・扶養控除
・障害者控除
・青色申告特別控除

なお、各種控除は所得税を支払う当人だけではなく、当人と生計をともにする家族の分も適用の対象になります。

●基礎控除
所得税の基礎控除額は、以下のように所得の合計所得金額に応じて変わります。

納税者本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

●所得税の基礎控除に関する国税庁のページはこちら

●社会保険料控除
健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料の支払い分が控除されます。

●医療費控除
一定額を超える医療費が対象です。対象になる医療費は、実際に支払った年間の医療費から、保険金で補った金額と10万円を差し引いた金額で、最高で200万円が控除されます。

なお、医療費控除との選択制で、「セルフメディケーション税制による医療費控除」があります。これは、セルフメディケーション税制対象品の購入費が1万2,000円を超えた場合に、控除が受けられるものです。医療費控除か、セルフメディケーション税制による医療費控除か、どちらかを選んだうえで、控除が適用されます。

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●配偶者控除
配偶者控除とは、合計所得が1,000万円以下で、所得税を納税する当人に配偶者がいる場合、当人の総所得金額によって所得税が控除される制度です。また、その場合に配偶者が70歳以上の場合、老人控除対象配偶者というものが適用され控除額が増えます。
なお、配偶者控除と似た控除として、「配偶者特別控除」の制度もあります。これは、当人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円を超え、133万円以下の場合に適用されるものです。

●扶養控除
当人に一定要件の扶養親族がいた場合、その親族の年齢や当人との同居の有無に応じた控除がなされます。

●障害者控除
家族や親族に障害者がいる場合、障害の度合いや所得税を納税する当人との同居の有無などによって控除を受けられることがあります。

●青色申告特別控除
複式簿記を採用した青色申告で確定申告をした場合に、55万円の控除を受けられます。また、インターネットで確定申告をした場合は控除額が65万円になります。

●雑損控除
災害または盗難、横領によって、資産の損害を受けた場合には、一定の所得控除を受けることができます。次の(1)と(2)のうちいずれか多いほうの金額が控除の対象となります。

(1)(損害金額 + 災害等関連支出の金額 – 保険金等の額)-(総所得金額等)× 10%
(2)(災害関連支出の金額 – 保険金等の額)- 5万円

また、以上で述べた所得税の控除としてはほかに、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、小規模共済等掛金控除、寄付金控除、寡婦・寡夫控除、給与勤労学生控除などがあります。

いろいろな保険

住民税から控除されるもの

住民税に適用される控除の多くは、所得税の控除と共通しています。具体的には、以下の項目が挙げられます。

・基礎控除
・社会保険料控除
・医療費控除
・配偶者控除
・扶養控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除

●生命保険料控除
一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料はそれぞれ2万8,000円を限度として控除されます。また、複数の生命保険に加入している場合は、合計金額から最大7万円が控除されます。

●地震保険料控除
地震保険料の支払い分が5万円を超えると2万5,000円、5万円以下は保険料の2分の1の額が最高限度額として控除されます。

住民税の控除にはほかに、小規模企業共済掛金控除、ひとり親控除、勤労学生控除、雑損控除などがあります。

●不動産投資における節税の仕組みと注意点について詳しくはこちら

家賃収入で税金を納める際の確定申告の手続き方法

家賃収入で生計を立てている人も、副業として家賃収入を得ている人も等しく、家賃収入がある場合は、基本的に確定申告が必要です。ここでは、確定申告が必要な人と確定申告の方法についてお伝えします。

確定申告が必要な人

確定申告が必要な人は、公的年金や生命保険の満期返戻金などの「雑所得」以外の所得が年間20万円以上の人です。つまり、家賃収入で生計を立てている多くの人は、確定申告が必要といえるでしょう。

ただし、所得が20万円以下の場合や、赤字となった場合でも確定申告を行うことをおすすめします。なぜなら損益通算の制度により、家賃収入が必要経費を下回って赤字になった場合、マイナス分の不動産所得はほかの所得から差し引けるため、所得全体の課税対象額の軽減につながるからです。

たとえば、給与所得が1,500万円で、不動産収入が200万円の損失だったとしましょう。この場合、課税対象となる所得は1,500万円ですが、確定申告を行うと、損失額の200万円を引いた1,300万円が課税対象となり、納税額を減らすことができます。

確定申告書類を読む女性

確定申告の方法

では具体的に、確定申告はどうやって申請すればよいのでしょうか?家賃収入を得た場合は、計算が複雑になるため、税理士への依頼をおすすめしますが、自力で申告することも可能です。

ここでは、自分で行う場合の流れをお伝えします。税理士に依頼する場合も、以下の流れを知識として押さえておきましょう。

[ 1 ] 必要書類を準備する
確定申告には白色申告と青色申告があります。白色申告は青色申告に比べて帳簿の作成が簡単です。一方、青色申告は白色申告に比べて納税額を軽減できるメリットがありますが、帳簿の作成が複雑で、手間がかかる点に注意が必要です。

また、家賃収入を得て初めて青色申告をする場合は、家賃を得た日から1か月以内に「開業届」を、申告したい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。青色申告承認申請書に関して、事業開始日が1月16日以降で、事業開始の1年目から申請したい場合は2か月以内に提出しましょう。申告し忘れると初年度は白色申告として扱われます。

青色申告または白色申告にて、必要となる基本的な書類としては、以下の5点が挙げられます。

必要書類入手先備考
確定申告書税務署青色・白色申告の両方で使用
所得税青色申告決算書税務署不動産所得用・青色申告の場合のみ
不動産収支内訳書当人が作成家賃収入にかかる収入や支出の詳細が分かる書類を作成する
控除関係の書類控除に応じた証明の発行元所得税や住民税の各種控除のために必要な書類(医療控除ならば、医療機関の領収書)
源泉徴収票勤務先の会社給与所得がある場合

また、青色申告によって税法上の諸制度を利用する場合、上記のほかに別途用意しなければならない書類もあります。用意する書類について、詳しくは国税庁のホームページをご参照ください。

●青色申告に必要な書類について詳しくはこちら

[ 2 ] 確定申告書と決算書を作成する
必要書類を準備したら、確定申告書と決算書を作成します。作成には、国税庁ホームページの作成コーナーや市販の会計ソフト、クラウドサービスを利用しましょう。クラウドサービスとはインターネット上で利用できるサービスです。

また、確定申告書や決算書は税務署でも作成できます。税務署で作成すると、税務署の署員からのサポートを受けられます。

[ 3 ] 提出する
確定申告書と決算書の提出には、e-Tax、郵送、持参という3つの方法があります。e-Taxで青色申告の確定申告を行うと、控除額を55万円から65万円まで増やすことが可能です。

●不動産所得における確定申告について詳しくはこちら

計算する手元

家賃収入の税金に関する相談は信頼できるプロへ

ここまでお伝えしたように、家賃収入がある場合は原則として税金が発生し、確定申告を行う必要があります。なかでも不動産所得が20万円以上ある人は必ず確定申告をしなければなりません。税金の未納や滞納があると、加算税や延滞税を課される場合があるので、注意しましょう。

また、不動産所得があり、税金対策をしたい場合は税務が複雑になります。税金で分からないことや不安なことがある場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談して解消しましょう。三井のリハウスでは、不動産投資物件に加えて、提携の税理士事務所もご紹介しております。

さらに、三井のリハウスでは賃料の入金管理や設備故障の緊急対応など、三井不動産グループの総合力から、それぞれのニーズに合わせた賃貸経営をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご利用くださいね。

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※1出典:No.2260 所得税率の税率, 国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
(最終確認:2023年11月15日)