賃貸借契約とは?契約の種類や流れ、必要書類までわかりやすく解説

賃貸借契約は、物件の貸し借りをする際に貸主・借主間で締結する契約です。契約書を用いて、貸主と借主双方で契約内容や期間、解約方法などの定めを確認します。今回は、賃貸借契約について、特に2種類の契約方法の違いやメリット、流れ、チェックポイントについて詳しく解説します。

目次
  1. 賃貸借契約とは?
  2. 普通賃貸借契約の特徴
  3. 定期賃貸借契約の特徴
  4. 賃貸借契約の流れとチェックポイント
  5. 賃貸借契約のポイント
  6. 賃貸借契約におけるインボイス制度の影響
  7. 賃貸借契約で大切なのは疑問点を残さないこと
記事カテゴリ 賃貸
2024.03.08

賃貸借契約とは?

賃貸物件を探していたり、持ち家を賃貸に出すために情報収集したりしていると、「賃貸借契約(建物賃貸借契約)」という言葉に出会うことがあります。「家の貸し借りのために結ぶ契約のことだろうな」と何となくイメージできていても、どのようなことを決める契約なのか、詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか?

不動産における賃貸借契約とは、「一方が物件の使用および収益を相手方にさせるという約束を行い、これに対して相手方が賃料を支払うことで効力が生じる契約」を意味します。賃貸借契約を交わすとき、物件を貸す人を「貸主」「賃貸人」と呼び、借りる人を「借主」「賃借人」のように呼称することが一般的です。

賃貸借契約は、住まいやオフィスの貸し借りを行ううえで必要不可欠な契約です。契約内容に不備があったり、貸主と借主の間で認識のずれがあったりすると、後々トラブルに発展する恐れがあるのです。

不動産の賃貸借契約については、民法や借地借家法消費者契約法に詳しく規定されています。民法(債権法)の改正では、2020年4月1日前後で、不動産の賃貸借中の修繕に関する要件や、賃貸借契約終了時における原状回復・収去義務、敷金、契約書にかかわる部分など不動産賃貸のルールに変更が加えられています。

賃貸借契約中のマンション

なお、建物の賃貸借契約には、「普通賃貸借契約(普通借家契約)」と「定期賃貸借契約(定期借家契約)」の2種類があり、契約期間や更新方法などが異なります

賃貸物件を貸す側も借りる側も不動産の賃貸にかかわるうえでは、賃貸借契約の基本的な知識を頭に入れつつ、都度情報をアップデートしていくことが重要といえるでしょう。

そこで今回は基本的な情報として、不動産の賃貸借契約について、貸主・借主両方の視点から解説していきます。これから不動産賃貸にかかわる方はぜひチェックしてくださいね。

普通賃貸借契約の特徴

普通賃貸借契約(普通借家契約)とは、賃貸借の期間が1年以上(一般的には2年)あり、貸主・借主ともに解約意思の通知がない限りは、賃料をはじめとした諸条件に双方が合意のうえで更新され続ける契約方法をいいます。

契約を解消するには、貸主または借主のどちらかが、事前に申し入れる必要があります。解約の申し入れは、借主からは希望日の1か月前または2か月前までに行うのが一般的な規約であるのに対し、貸主からは6か月前までに行わなければなりません。また、貸主からの自己都合での解約は困難であり、借主の同意を得られなければ契約解消ができないため、注意が必要です。

次に、普通賃貸借契約のメリットと注意点について、貸主と借主それぞれの視点で見ていきましょう。

賃貸借契約の物件と賃貸借契約の書類

メリット

貸主側のメリットとしては、借りたい人が集まりやすいという点が挙げられます。その理由は、借主が希望すれば原則として更新ができることから、借主にとって有利な契約形態であるためです。

一方、借主にとっては、通常2年間で設定する契約期間満了後も、更新すれば継続して入居し続けられるというメリットがあります。正当な理由がない限り、貸主の都合で退去を迫られることはありません。ただし、契約更新の際に更新料を支払う必要があったり、更新時に賃料が改定されたりするケースがあることを把握しておきましょう。賃料改定の理由としては、貸主の収支計画の意向、または賃料相場の推移や再開発・マンション建設など周辺環境の変化などが挙げられます。

注意点

貸主は、契約解除や期間満了時の更新の拒絶、また賃料の値上げなど、いずれも借主の同意を得なければ行えないという点に注意が必要です。

借主にとっての注意点は、次にお伝えする定期賃貸借契約の物件に比べて賃料が高い傾向にあるということです。普通賃貸借契約は、前述の通り貸主としては負担の多い契約形態であるため、相場に合った賃料設定ではありますが、定期賃貸借契約と比較すると割高に感じてしまうかもしれません。

上記のメリットや注意点を踏まえると、普通賃貸借契約は、長い期間同じ借主に貸したい貸主や、同じ物件に長く住み続けたい借主におすすめです。また、一般的に普及している契約形態のため、「できるだけ早く借主を見つけたい」「相場に合った賃料や条件で借主を見つけたい」という貸主や、幅広い条件で賃貸物件を探している借主にも向いているといえます。

普通賃貸借契約を結ぶ様子

定期賃貸借契約の特徴

定期賃貸借契約(定期借家契約)は、設定されている契約期間の満了時点で契約終了となり、退去が必要になる契約です。同じ物件で賃貸借を続けたい場合には、貸主と借主双方の合意のうえで、再度契約を結ぶ必要があります。また、借主は転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情が生じた場合には、契約期間中であっても中途解約をすることができます。

貸主・借主それぞれから見た定期賃貸借契約のメリットと注意点は以下の通りです。

メリット

まず、貸主にとってのメリットは、定期賃貸借契約は契約期間が事前に定められているため、物件の利用計画や、売却の計画が立てやすいことが挙げられます。たとえば、転勤で一定期間自宅を利用しない状況でも、その期間だけ定期賃貸借契約で貸し出すことで自宅を有効活用できます。また、借主(入居者)が退去してからは空室物件として売却することも可能なため、「〇年後には売買相場が上昇していると見越して売却する」という資産運用の計画も立てられます。

借主側のメリットは、定期賃貸借契約だと、相場よりも安い賃料で借りられる可能性があることです。また、普通賃貸借契約と異なり、2年ごとの更新がないため、更新料が発生しない点もメリットだといえるでしょう。そのため、転勤・通学などで入居期間が決まっている借主や、転々としてもよいので割安な賃料の物件に住みたい借主におすすめです。

注意点

貸主側の注意点としては、定期賃貸借契約は、貸し出す年数によっては普通賃貸借契約の相場よりも賃料を下げなくてはならない可能性があることです。これは、定期賃貸借契約は期間に定めがある契約であることから、普通賃貸借契約の物件と同等相場の賃料では検討してもらえない恐れがあるためです。また、重要事項説明書とは別に、定期賃貸借契約に関する説明を貸主から借主に対して行う必要がある点にも注意しましょう。この説明は、不動産会社へ委託することも可能です。

借主側は、定期賃貸借契約を結ぶ際に契約期間満了後に住み続けるため再契約をしたくても、貸主に再契約の意思がなければ契約終了となる点に注意が必要です。

上記のメリットや注意点を踏まえると、定期賃貸借契約は期間を限定して物件を貸したい貸主や、短い期間だけ安く借りたい借主におすすめといえます。自身の状況とメリット、注意点をそれぞれ踏まえたうえで、普通賃貸借契約または定期賃貸借契約のどちらを選ぶか検討してくださいね。

定期賃貸借契約の物件

賃貸借契約の流れとチェックポイント

実際に賃貸借契約が結ばれる際には、借主に対して契約内容の重要事項説明が行われた後に、賃貸借契約の内容を確認し、契約書に署名捺印を行います。ここでは、賃貸借契約において大事なポイントとなる「重要事項説明」と「賃貸借契約書の確認」の2つの手順について、詳しく見ていきましょう。

重要事項説明

重要事項説明とは、不動産の賃貸借や売買を行うにあたり、宅地建物取引業者が借主(買主)に対して、契約上重要な条項を説明することです。重要事項説明は、不動産取引を専門としない通常の消費者であっても、契約成立後に予期せぬ形で不利益を被ることがないように、権利関係や取引条件の認識をすり合わせる目的で行われます。

賃貸物件の重要事項説明は、賃貸借契約締結前に必ず行われます。借主に説明されるポイントの一部は以下の通りです。

・賃料等契約条件の概要
・各種設備の整備の状況
・建物の管理・連絡先に関する事項

これらの項目について、貸主と借主の間で認識の食い違いがあると、契約成立後や入居後、退去時のトラブルに発展する恐れがあります。そのため、重要事項説明を受けて疑問が残る場合は必ず質問し、解決したうえで契約に進みましょう。疑問点が解決しない場合は、借主から賃貸借契約を断ることができます。

また、貸主は、物件の不具合や劣化などの瑕疵(かし)がある場合、あらかじめ入居者募集をする前に不動産会社に伝え、可能であれば修繕・交換したうえで貸し出すようにしましょう。賃貸借契約を結んだ後に瑕疵が発覚してしまうと、借主から「契約不適合責任」を問われ、損害賠償や賃料の減額、契約の解除などを求められる恐れがあるため、注意が必要です。

重要事項説明が終わったら、借主が重要事項説明書に署名を行います。重要事項説明書は、宅地建物取引業者から説明を受けた旨を証明する書類で、不動産会社から交付されます。

賃貸借契約の重要事項説明をする男性

賃貸借契約書の確認

重要事項説明の後に、賃貸借契約書を確認して署名をすると、契約成立です。賃貸借契約書は貸主と借主双方が署名・捺印のうえ当事者同士が原本を保管します

契約の最終段階となるので、確認漏れがないように注意しましょう。賃貸借契約書で借主がチェックすべきポイントは以下の通りです。

・賃貸借の対象となるもの(物件の名称・所在地・構造)
・契約期間
・賃料・敷金・共益費の金額や支払い先
・貸主および管理業者
・借主および同居人
・家賃債務保証業者または連帯保証人
・解約の申し入れ期間や違約金の有無
・明け渡し時の原状回復の取り決め
・入居中の修繕負担区分
・禁止行為
・特約事項 など

貸主側は、契約期間や更新のルール、徴収する金額とその受け取り方、滞納時のルール、原状回復の範囲と内容などを特にチェックしておきましょう。

賃貸借契約の家の模型とチェックリストと赤鉛筆

●賃貸借契約の流れや注意点について詳しくはこちら
賃貸借契約の流れは?手続きに必要な書類や注意点について徹底解説

賃貸借契約のポイント

ここからは、賃貸借契約のポイントについて、貸主側と借主側に分けて解説します。

【貸主側】中途解約や契約内容を変更したいとき

原則として、中途解約や契約内容の変更を、貸主が一方的に行うことはできません。これらを行いたい場合は、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約のどちらであっても、正当事由があるうえで借主に合意を得る必要があります。しかし、中途解約や契約内容の変更について、借主から合意を得るのは、実際には困難であることが一般的です。

また、正当事由で中途解約する場合であっても、本来借主が負担する引越し費用や原状回復費用などを、貸主側が立ち退き料として支払わなければならない可能性があります 。このように、中途解約には手続きや費用の面で負担がかかる点に注意が必要です。

賃貸借契約に必要な書類

【借主側】契約時に必要な書類

賃貸借契約を交わすにあたり、必要な書類は、仲介している不動産会社や、貸主によって異なりますが、借主側が準備しなくてはならない書類がいくつかあります。契約を円滑にするためにも、契約を結ぶ前に、必要書類についてしっかりと確認するようにしておくと安心です。一般的に必要な書類は以下の通りです。

・収入証明書類
・本人確認書類(健康保険証、住民票、印鑑証明書など)
・保証人関連書類

1つずつ詳しく見ていきましょう。

収入証明書類
賃料における支払い能力を確認するために、「源泉徴収票」「納税証明書」「確定申告書」などの提出が必要です。これらの書類は申し込み時から求められることが一般的ですが、賃貸借契約時に必要になることもあるため、どのタイミングで必要かあらかじめチェックしておきましょう。

本人確認書類
運転免許証や健康保険証のような、本人確認ができる書類が必要です。また、続柄確認のために、住民票を提出することもあります。

保証人関連書類
連帯保証人は、借主に賃料が支払えなくなった際、代わりに支払いを求められます。保証人関連書類の多くは、保証人が用意しなくてはならず、郵送する手間が発生することもあるため、早めに依頼しましょう。

最近では、連帯保証人を立てる代わりに、入居者の家賃を貸主に保証する「家賃保証会社」を利用することを必須条件としている物件が非常に多くあります。保証料の相場は、初年度の契約時に支払うものとして賃料の0.5~1か月分程度、2年目以降は年1万~2万円程度となっています。ただし、保証料(保証委託料)や支払うタイミングは、家賃保証会社によって異なりますので、利用する会社に確認するようにしましょう。

賃貸借契約を交わす様子

賃貸借契約におけるインボイス制度の影響

不動産経営を検討している人のなかには、2023年(令和5年)10月1日より導入されたインボイス制度の影響を受けるのではないかと不安を抱える方もいるでしょう。インボイス制度とは、一定の事項が記載されている適格請求書(インボイス)の発行や保存をすることによって、仕入れ税額控除が適用される制度です。

結論からお伝えしますと、住宅の家賃は消費税の課税対象にならないため、住居用の物件を貸し出している場合はインボイスによる影響を受けません。ただしインボイス制度は、消費税が発生しない売り上げには影響しませんが、マンション付帯設備(駐車場等)は課税対象となる場合があるため注意が必要です。

●賃貸経営におけるインボイス制度と注意点についてはこちら
インボイス制度とは?不動産の賃貸経営に役立つ情報や注意点を詳しく解説

賃貸借契約で大切なのは疑問点を残さないこと

ここまで、賃貸借契約の種類や必要書類などについてご紹介してきました。貸主と借主のどちらにとっても、賃貸借契約の重要なポイントを押さえ、内容を正しく把握しておく意識を持つことが大切です。

貸主であれば、物件を貸し出す前に、普通賃貸借契約にするか、定期賃貸借契約にするかをまず選ぶことからスタートするとよいでしょう。また、それぞれの契約のメリットと注意点を押さえ、賃料の相場や契約期間、契約更新の有無といった条件を十分に把握し、自身の状況をもとに検討しましょう。

さらに賃貸借契約に併せて、マイホームを貸す方法や手続きの流れ、メリットと注意点を知っておくことで、賃貸運営を安心して始められます。信頼できる不動産会社へ賃貸管理を依頼することも、契約後の大きな安心材料となり、トラブルの回避に役立ちます。

●マンションを貸すメリットと注意点や方法についてはこちら
マンションを貸す際のコツとは?流れや節税方法を紹介

●賃貸管理を依頼する不動産会社の選び方についてはこちら
賃貸管理とは?分譲マンションを貸す際の基礎知識&管理会社の選び方

賃貸借契約のポイント

借主側は、収入証明書類や本人確認書類といった、賃貸借契約を交わすための必要書類を早めに準備するようにしましょう。また、不明点を残したままにすることなく、分からないことは都度不動産会社へ相談してくださいね。

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