賃貸の退去費用の相場は?原状回復義務や解約日までの家賃についても解説

賃貸物件にかかる退去費用の相場は部屋の広さや状態によって変わります。本記事では、賃貸物件からの退去を検討しており、発生する費用を知りたい人に向けて、原状回復義務や解約日までの家賃の支払いなどについて詳しく解説します。

目次
  1. 賃貸物件の退去費用とは?
  2. 退去費用の相場はいくら?
  3. 敷金と退去費用
  4. 退去費用を抑えるポイント
  5. 高額請求の可能性がある条件とは
  6. 解約日までの家賃は日割りで支払える?
  7. 退去費用をあらかじめ準備しておこう!
記事カテゴリ 賃貸
2023.04.13

賃貸物件の退去費用とは?

引越しの際は、住み替え先の物件にかかる費用が気になってしまうかもしれませんが、賃貸物件に関しては退去費用が発生することを忘れてはいけません。どれくらいかかるのか知っておきたいという方もいるのではないでしょうか?

退去費用とは原状回復のためにかかる設備の修繕費用やハウスクリーニング費用などのことを指すのが一般的です。借主が入居期間中に付けてしまった、汚れや傷の全てを自費負担する必要はなく、一部貸主側が負担するよう決められているケースも存在します。

本記事では、賃貸物件の退去費用の相場を、間取りや補修箇所ごとに紹介するとともに、退去費用の抑え方、高額請求への対処法についても詳しくお伝えします。これらの知識をあらかじめ身に付けておくと、退去・引越しにおける一連の資金計画を立てる際に役立つうえ、思わぬ出費を防ぐことにもつながるので、ぜひ参考にしてみてください。

スマホで調べる女性

退去費用の相場についてお伝えする前に、まずは退去費用とは何のために支払うのか、どういった費用項目があるのかについて見ていきましょう。「退去費用の相場を今すぐ知りたい」という人は、以下のリンクからアクセスいただけます。

●退去費用の相場についてはこちらから

借主の原状回復義務を果たす費用

「原状回復義務」とは、賃貸物件から退去する際に、借主が原因となって発生した損耗や損害は、借主の責任で修繕・補償しなければならないというものです。故意・過失にかかわらず、借主が付けてしまった傷や汚れは、たとえ不注意によるものであったとしても、原則として借主が費用を負担して復旧しなければならないということを意味します。

費用負担の範囲については、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて決められています。以下の項目が、借主負担となる修繕箇所の一例となります。

・食べ物や飲み物をこぼしたときにできたシミ
・ものを落したときにできたフローリングの傷
・液体をこぼしたときにできた畳のシミ
・子どもの落書き
・ペットが付けた汚れ
・タバコによる臭いや壁の黄ばみ
・鍵紛失の際の交換費用

ただし、原状回復のためにかかる費用の全てを借主が負担するというわけではなく、借主が負担する退去費用は、貸主の負担となる費用を差し引いたものになります。主に、経年劣化や通常損耗による損害分の原状回復費用が貸主負担となり、これらの修繕やクリーニングにかかる費用であれば、原則として借主は負担する必要ありません。

また、原状回復費用負担割合については、耐用年数と経過年数が考慮されます。たとえば、壁紙耐用年数は6年ですが、壁紙を貼り替えたばかりの状態で入居を開始し、3年間物件に住んでいた場合、退去時の修繕費用の借主負担分は、経過年数を考慮して50%となるという考え方になります。

特約によって決められた費用も含まれる

賃貸借契約時に、その契約のみに適用される特約が決められている場合があります。現状として、上記のガイドライン中では貸主負担とされる費用項目についても、特約により借主が負担するよう決められているケースもあります。

また、入居した時点で既に耐用年数を超えていたものでも、破損・損傷してしまった場合、費用を請求されることがあります。つまり、耐用年数を超えても使用できる設備を借主が故意または不注意によって破損・損傷した場合は、その修繕費用の一部が借主負担となる可能性があるということです。耐用年数に関係なく、借りているものは大切に使うようにしましょう。

家の模型と電卓

原状回復費用の負担区分は4つに分けられる

上記でもお伝えしたように、貸主は経年劣化と通常損耗による損傷分の原状回復費用を、借主は自身の故意または過失による損傷分の原状回復費用を支払うことになります。貸主・借主どちらが支払うのかは「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて原則4つに区分されており、以下のような考え方によって判断されます。

区分内容負担
A賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの貸主
B通常の使用による汚損とはいい難いと考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とはいえないもの)借主
A(+B)基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの貸主(借主)
A(+G)基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素(グレードアップ・改良など)が含まれているもの貸主

※「国土交通省 損耗・毀損事例の区分」より引用

以下のグラフは、先ほどの表の内容を表したものです。

「国土交通省 損耗・毀損事例の区分」を元に作成した図

※「国土交通省 損耗・毀損事例の区分」を元に作成

経年劣化と通常損耗は含まれない

借主は、経年劣化と通常損耗による損傷の原状回復費用を負担する必要はなく、貸主側が負担します。経年劣化とは、時間の経過によって品質が下がってしまうことです。たとえば直射日光によって壁や床が劣化したり、湿気によって窓枠のゴムが傷んでしまったりすることは、経年劣化にあたります。

一方、通常損耗とは、日常生活において発生した汚れや傷などの損傷や消耗のことを指します。例として、画鋲の穴や、家具を置くことでできる設置跡、テレビや冷蔵庫裏の電気跡などが挙げられます。

ここまでをまとめると、借主が負担する退去費用は、原状回復費用の合計から経年劣化・通常損耗による回復費用を引いたものと、特約によって決められた費用ということになります。

部屋の内装

退去費用の相場はいくら?

退去費用の相場は、部屋の広さや居住年数、補修箇所によって異なります。部屋の広さ別の相場は以下の通りです。間取りは参考となっています。

部屋の広さ退去費用の相場
20㎡~30㎡(ワンルーム・1K)2万~3万5,000
30㎡~50㎡(1DK・1LDK・2DK)3万~6万円
50㎡~70㎡(2DK・
2LDK)
5万~8万5,000円
70㎡~90㎡(2LDK・3DK・3LDK)7万~11万円
90㎡~(3LDK・4DK・4LDK)9万円~

また、補修箇所別の修繕費用の相場は以下の通りです。

補修箇所補修費用の相場
水あか・カビ5,000~2万円
キッチンの汚れ1万5,000~2万5,000円
床(補修)2万~5万円
壁・天井ボード2万~6万円

敷金と退去費用

原状回復費用は、入居時に貸主へ支払った敷金から差し引かれます。つまり、原状回復費用が敷金よりも高額である場合は退去時に追加の支払いが必要となり、敷金の範囲内であれば差額分は返還されるということです。

2020年4月1日に施行された民法でも、経年劣化と通常損耗による損傷は原状回復義務に含まれないことが明文化されました。つまり、家賃の未払いや借主の故意または過失による損傷がなく、加えて特約などがない場合には、敷金は全て返還されるということになります。

ただし、入居時に敷金を支払っていない物件では、原状回復費用の借主負担分は、そのままの額が退去時に請求される場合があるため、注意が必要です。

マンションの模型と虫眼鏡

退去費用を抑えるポイント

先述の通り、原状回復費用と敷金の差額分が、退去時に支払う費用となります。敷金の範囲内に収めることができれば、敷金の一部が手元に戻る可能性もあるため、できる限り原状回復費用を抑えたいと考えている人は多いのではないでしょうか?

入居前の工夫や普段生活しているときの行動次第で、退去時の出費を抑えられる場合があります。ここからは退去費用を抑えるうえでのポイントをお伝えします。

契約内容をきちんと確認する

入居時には、契約書をしっかりと読んでおくことが大切です。生活するうえでの注意点や原状回復費用の特約など重要な項目が記載されているため、不明点や疑問が残ることがないか確認しましょう。

入居前からあった汚れ・傷は記録する

入居時に既にあった汚れや傷は、自分の使い方が原因ではないことを証拠として残すため、入居時に撮影しておくとよいでしょう。あらかじめ管理会社に報告・提出をしておくことで、退去時に補修費用の負担を求められるリスクを回避でき、トラブル回避につながります。

日頃から掃除・設備の整備を行う

原状回復費用を抑えるには、不注意によって傷や汚れが付かないように心がけるほか、日頃から掃除を行うことが大切です。

たとえば、シミやカビなどの汚れ、浴室鏡のうろこ汚れなどは定期的な掃除を怠っていると落としにくくなり、通常のハウスクリーニング費用に追加で清掃費用が発生する場合があります。

加えて、エアコンや食洗器などの設備本体やフィルターの掃除を行わずに放置していると故障を招き、退去時に修理代金を請求される恐れもあるため、注意が必要です。

マンション

高額請求の可能性がある条件とは

退去費用は、自分が思っていた以上に高額になってしまう場合があります。たとえば、ペットによる傷や汚れ、タバコのヤニによる汚れや臭いなどがあると、高額請求に遭うリスクが高くなります。

ペットを飼っている場合には、傷や汚れが付きやすく、請求費用が高くなってしまうことがあります。ペット可能な物件ではあらかじめ賃料1~2か月分の敷金を支払い、退去時の修繕費用に充てられるケースがあります。

また、タバコのヤニによってクロスの張り替えが必要な場合、請求費用が高額になる恐れがあるため、室内での喫煙には注意しましょう。

DIYにも注意

最近人気のDIYですが、内容によっては高額請求されることもあるので気を付けましょう。釘やネジを刺して、壁に穴が空いてしまうと、修繕にかかる費用が大きくなってしまう場合があります。DIYには賃貸用のグッズもあるため、それらを利用することで退去費用を増やすことなく、理想の部屋を実現させることができるでしょう。

高額請求を提示された場合

高額請求を受けても踏み倒してはいけません。連帯保証人や緊急連絡先に登録されている人へ請求が届いたり、訴えられてしまったりする恐れがあります。

どうしても支払いが難しい場合は、自分が負担する費用の内訳を管理会社の担当者に確認しましょう。借主・貸主のどちらが負担するか基準が異なる場合があります。また、交渉によっては金額の変更や分割払いにしてもらえる可能性もあります。

引越しの準備をする女性

解約日までの家賃は日割りで支払える?

退去前後に発生する費用という点では、解約日までの家賃の支払いについても気になるポイントです。月の途中で退去する場合、1か月分の家賃ではなく、解約日までの家賃の支払いで済ませることができれば理想的です。

家賃の計算方法には2種類ある

日割り・月割りそれぞれの場合で、出費を最小限に抑えられ解約日は異なります。物件を退去する前には、家主または不動産会社への解約予告をする必要があり、1~2か月前までに行うのが一般的です。解約予告期間を契約書から確認し、解約日から逆算して解約予告を行いましょう。

日割りの場合
「日割り」の家賃とは、最終月の家賃を1日単位で算定し支払うことです。賃貸借契約の解約日までの支払いで済むため、月の途中で解約しても余分な家賃を支払うことはありません。

月割りの場合
家賃を1か月単位で支払う方法を、日割りに対して「月割り」といいます。月の途中で解約する場合でも、1か月分の家賃を支払わなければならないため、無駄な出費が発生してしまいます。家賃の精算方法が月割りの場合には、解約日を月の最終日に決めておくとよいでしょう。

また、家賃を半月単位で支払う半月割りの物件もあります。この場合には、解約日を15日もしくは月の最終日にするとよいでしょう。

二重家賃に気を付ける

退去する物件と新居の両方の家賃を支払っている状態を「二重家賃」と呼ぶことがあり、解約日よりも新居の賃料発生日(契約の開始日)が先になってしまった際に発生します。家賃を重複して支払うことを避けるため、解約日と賃料発生日、引越し日などをうまく設定し、早めのスケジューリングを心がけるとよいでしょう。

退去費用をあらかじめ準備しておこう!

ここまで退去費用の相場や、原状回復費用、解約日までの家賃などについて解説してきました。退去費用が思いがけない額になってしまうこともあるため、入居時の契約書をしっかり確認するようにしましょう。

日頃から丁寧に掃除をしておくことで退去費用を抑えることにつながります。また、賃貸物件から引越す予定があるなら、メンテナンスやスケジュール管理など、早め早めの行動を意識して、予想外の出費が出ないように準備しておきましょう。

退去費用の高額請求や、貸主と借主の負担基準などで困ったことがあれば、専門家に相談するのもよい方法です。三井のリハウスでは、全国に広がるネットワークを生かして、物件を借りている人に向けてさまざまなサポートを行っています。

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※:「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
(最終確認:2023年3月14日)

アユカワタカヲ

株式会社タカプランニングジャパン代表取締役。
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有。
会社員時代に不動産投資をスタートさせ、今では幅広く不動産賃貸業を営む。
メディア出演や著作の出版、セミナーなどでも活躍。
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