原状回復とは?賃貸物件での負担範囲や費用相場、負担を抑えるポイントについて解説

原状回復とは賃貸物件に生じた汚れや傷を契約終了時に借りたときの状態に戻すことで、「現状回復(現状復帰)」とは意味が異なります。借主は一般的に原状回復の義務がありますが、内容によっては貸主負担になる場合もあります。この記事では、原状回復の負担範囲や費用相場、負担を抑える方法について解説します。

目次
  1. 原状回復とは?
  2. 原状回復の負担範囲
  3. 借主の原状回復にかかる費用
  4. 原状回復の負担を抑えるポイント
  5. 賃貸物件の原状回復費用を最小限に抑えよう
記事カテゴリ 賃貸
2023.07.31

原状回復とは?

国土交通省は原状回復について、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(きそん)を復旧すること」と定義しています。
※原状回復は「原状復帰」といわれることもあり、退去時に修繕や原状回復工事を行うことが一般的です。

似ている言葉に「現状回復(現状復帰)」があります。ただし、現状回復は入居時の状態に戻すことではなく、現在の状態に戻すことであるため、原状回復とは意味が異なることを覚えておきましょう。

原状回復にかかる費用は、入居時に支払った敷金を充てるのが一般的です。ただし、入居時に敷金を支払っていない場合や、敷金で足りない場合には追加で支払うことになります。また、賃貸物件の借主には原状回復の義務がありますが、場合によっては貸主負担になるケースもあります。

賃貸のマンションや一戸建てに住んでいる方のなかには、「原状回復はどこまで負担する?」「原状回復にはどのくらいの費用がかかる?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?この記事では、原状回復の負担範囲や費用の相場、負担を抑えるポイントなどについてお伝えします。

考える女性

原状回復の負担範囲

まずは原状回復の負担範囲について解説します。借主と貸主に分けて見てみましょう。

借主

借主の過失や故意によって発生した汚れや傷は、基本的には借主に原状回復の義務があります。主な例は以下の通りです。

・手入れを怠ったことで発生したカビ・水あか
・飲み物をこぼしたり、食べ物を落としたりしてできたシミ
・ものの落下で付いた傷・破損
・たばこの煙によるヤニの汚れ
・ペットによるひっかき傷
・鍵の紛失・破損

コップとこぼれた飲み物

貸主

貸主が負担する原状回復は、経年劣化や通常損耗と判断される範囲となります。主な例は以下の通りです。

・重い家具や家電によるへこみ
・畳やクロスなどの変色
・自然災害による破損
・画鋲の穴

家の雑貨と電卓

借主の原状回復にかかる費用

ここでは借主が負担する原状回復の費用についてお伝えします。原状回復にかかる費用の一例は以下の通りです。

箇所費用の目安
カビや水あか5,000~2万円程度
キッチン1万5,000~2万5,000円程度
フローリング8,000~1万円程度
壁紙3万~4万円程度

ただし、費用は不動産会社や業者、汚れによって異なります。あくまで一例として参考にしてください。

負担割合について

ここからは例を挙げて借主が負担する原状回復費用の割合について説明します。たとえば、借主が壁紙を破損した場合、借主は、原則として補修箇所を㎡単位で負担します。ただし、経年劣化によりほかの部分と色が異なる場合、壁紙一面の張り替え費用から経年変化分を差し引いた部分が借主の負担とされます。

壁紙の場合の負担割合について

経過年数による減価割合の計算方法

壁・天井(壁紙)、および床(カーペット・CFシート・畳床)の修繕を行う際の原状回復負担割合は、下記グラフに基づいて求めます。

経過年数による減価割合について

※入居時の設備等の状態により、左方にシフトさせます。(②、③)新築や交換・張り替えの直後であれば、始点は(入居年数、割合)=(0年、100%)となります
※具体例にある壁紙のほかに床(カーペット・CFシート・畳床)も耐用年数は6年となります
※国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より引用

新築または交換・張り替えの直後に借主が入居し、3年経過後に退去した場合の原状回復の負担費用(Aパターン)
まず、①を始点として入居年数に応じて負担費用を求めます。

壁紙一面 : 3.0m
張り替え工事費 : 1,320円/㎡(税込)
張り替え費用 : 3,960円(税込)
経過年数 : 3年
残存価値 : 50%

借主の原状回復負担費用 : 3,960円 × 50% = 1,980円(税込)
※上記の張り替え部分、張り替え工事費用などは参考値であり、実際とは異なります
※色合わせのため張り替えた部分は貸主負担となります

ここまで、借主が負担する原状回復の負担費用についてご紹介しましたが、費用は賃貸物件の入居期間によって異なります。原状回復にかかる費用の目安を知りたい方は、上記の方法で計算してみるとよいでしょう。

リビング

原状回復の負担を抑えるポイント

賃貸物件の退去時には、原状回復費用をできるだけ安く済ませたいと考えている方が多いのではないでしょうか?ここからは借主が原状回復の負担を抑えるコツをご紹介します。

賃貸物件での暮らし方に注意する

先ほどもお伝えしましたが、入居者の不注意によってできた汚れや傷は、入居者の負担となることが多くなります。そのため、賃貸物件に住んでいる間は、汚れや傷を付けないように注意して生活することが大切です。

汚れや傷が付いてしまった場合には、放置せず早めに対処しましょう。特に水回りのカビや水あかは落ちにくくなる前に、こまめに掃除することがおすすめです。またエアコンは故障してしまうと修理費用を負担しなければならないケースもあるため、定期的に手入れしておくとよいでしょう。

なお、賃貸物件では喫煙は契約上で禁止されていることがほとんどです。こっそりと吸ったとしても臭いやヤニによる黄ばみ汚れが壁に残る可能性があり、退去時に室内のクロス全面張り替え、エアコンや換気扇の清掃等を行う必要があります。この場合一般的には、借主が契約違反したということで費用全額を借主が負担することとなります。

さらに、ベランダでの喫煙は近隣に迷惑をかけてトラブルに発展する可能性もあります。そのため、賃貸物件での喫煙はできないものと考えたほうがよいでしょう。

入居時の状態を写真に撮っておく

入居時にあった汚れや傷は、自分が付けたものではないことを証明するためにも、入居数日以内に写真を撮っておくことがおすすめです。写真に撮った場合は、早めに貸主に提出しましょう。貸主にも状態を把握しておいてもらうことで、トラブル回避につながります。また、賃貸物件を借りた際には「入居時チェックリスト」という、入居時点での家の状態を記録する書類を渡されることがあります。どこにどのような汚れや傷があったかは、入居時に記録として残しておきましょう。

家の雑貨

契約内容を確認する

2020年4月に借主の原状回復義務に関する民法改正が行われ、原状回復についての記載が追加されました。なお、民法は国土交通省によって決められた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をもとに改正されています。

民法第621条には、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と明記されています。

つまり、通常の使用によって生じた物件の損耗、経年劣化は借主が回復する義務を負わないということになります。

ただし、借主と貸主の合意によって特約を定めることができるという点に注意が必要です。たとえば賃貸借契約書には、「ハウスクリーニング費用を借主が負担する」といった特約が記載されていることもあります。特約を後から知って、想定よりも原状回復費用が高くなってしまうことがないように、入居時には契約内容をよく確認しておきましょう。

賃貸物件の内装

賃貸物件の原状回復費用を最小限に抑えよう

ここまで原状回復の負担範囲や費用の相場、負担を抑えるポイントについて解説してきました。賃貸物件に住んでいる方は、家の掃除をこまめに行い、できるだけ入居時の状態を保つことが大切
です。原状回復にかかる費用を減らして、負担を最小限に抑えましょう。

賃貸物件の原状回復は、借主と貸主の負担割合や負担費用をめぐってトラブルが発生するケースもあるため、契約書に記載されていることをしっかり確認しておくことがおすすめです。三井のリハウスでは、物件を借りたい方、貸したい方に向けたサポートを実施しています。原状回復についての疑問をお持ちの方や、相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。

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※出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン, 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
(最終確認:2023年7月4日)