不動産投資は節税につながる?その仕組みと注意点を解説

不動産投資を行うと、年間の所得税・住民税の軽減や、相続・贈与時の税金の軽減ができることがあります。今回は、不動産投資が節税につながる仕組みやシミュレーション方法、注意点についてご紹介します。

目次
  1. 不動産投資が節税になる?
  2. 不動産投資で軽減できる税金は?
  3. 不動産投資で節税できる仕組み
  4. 節税効果のシミュレーション手順
  5. 節税効果が高いのは中古物件
  6. 節税目的の不動産投資の注意点は?
  7. 節税だけに気を取られないことが大切
記事カテゴリ 賃貸
2022.12.01

不動産投資が節税になる?

「将来への備えとして資産を形成したいけれど、税金の支出が多く思ったように貯蓄ができない」という悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?日本の税金には累進課税のシステムが採用されているものがあり、所得が増えるほど所得税や住民税の支出も増えてしまうため、収入が増えても手取りや貯蓄が比例して増えないと感じてしまうこともあるでしょう。

所得が高く、所得税や住民税による支出が多くなってしまう人に注目されている節税方法の1つに、「不動産投資」が挙げられます。不動産投資とは、マンションのオーナーとして部屋を貸し出すことに加え、一定期間所有していた不動産を売却することで利益を得る投資方法を指します。節税効果が期待できるだけでなく、入居者がいる限り安定した収入をコンスタントに得られ、中古物件として売却することで、場合によってはまとまった売却益が手に入るというメリットが存在します。

また、不動産投資は、専業投資家だけでなく、サラリーマンをはじめとする、メインの収入源をほかに持っている人が、副業として取り組みやすい投資方法でもあります。なぜなら、株式や為替の価値と比べると不動産価値は変動が緩やかであることに加え、部屋の管理業務を不動産会社に依頼できるため、比較的手間がかからないといえるからです。

さらに、不動産投資を行うことで、1年の所得に対してかかる税額を減らす効果も期待できます。本記事では、不動産投資の節税効果に焦点を置き、納税額を減らせる税金の項目や、納税額のシミュレーション方法、不動産投資を始めるにあたって意識すべきポイントなどについて詳しく解説していきます。

虫眼鏡と不動産の模型とグラフ

不動産投資で軽減できる税金は?

不動産投資を行うことで、納税額を軽減できる可能性がある項目は以下の通りです。

所得税

所得税は、1年間の全ての収入金額から、必要経費や所得控除額を差し引いた金額(=所得金額)に対してかかる税金です。

住民税

道府県民税(東京都の場合は都民税)と区市町村民税を総称して「住民税」と呼び、所得税と同様に所得に応じた金額を毎年納めます。

紙幣と硬貨と確定申告の記入欄

贈与税

贈与税は、財産を無料で譲り受けたときに課される税金で、贈与される財産の金額が大きいほど、税率が高くなります。

相続税

故人から財産を引き継いだときに発生する税金です。残された遺産に加え、相続開始(被相続人の死亡)前3年以内に贈与された財産についても、相続税がかかります。

法人税

企業活動によって得られた法人の所得に対して課される税金です。不動産投資を行う際に、個人ではなく法人として投資した場合は、通年の所得に対して、所得税ではなく法人税が発生します。

電卓と積み木と住宅の模型

不動産投資を行うことで、上に挙げた税金をなぜ軽減できるのかについては、次項で詳しく解説していきます。

不動産投資で節税できる仕組み

不動産投資が税金対策につながる理由はいくつか存在します。なかでも、所得税・住民税については、「減価償却」「損益通算」を行うことで課税対象の所得額を少なく申告できるため、毎年の納税額を抑える効果を期待できます。

また、将来的に財産の贈与や相続が発生した際に、現金よりも不動産のほうが納税額を抑えられるというメリットも存在します。不動産投資によって節税できる仕組みについて、詳しくチェックしていきましょう。

減価償却が使える

先ほど説明したように、所得税や住民税の納税額については、収入金額から必要経費を差し引いた金額をもとに算出されます。不動産投資のための物件購入費用は必要経費として扱われますが、経年劣化を伴う建物や設備などに対する取得費用は、耐用年数(利用に耐えうる年数)分に分割して経費に算入できます。このような仕組みを「減価償却」といいます。

減価償却により、実際には購入時にまとまった金額で支払った購入費用を、次年度以降に少しずつ経費に計上していくことが可能となります。これにより、不動産購入時から耐用年数が経過するまでの間、所得を少なく申告できるため、所得税と住民税を長年にわたって軽減できるのがポイントです。

不動産投資の必要経費には、購入費用の減価償却に加え、主に以下のような項目が挙げられます。

・固定資産税
・損害保険料
・修繕費

損益通算できる

不動産投資によって赤字が生じた場合、給与所得をはじめとしたそのほかの収入から損失分を差し引いた金額をもとに所得税額や住民税額が算出されます。これを「損益通算」といい、課税対象から控除される金額は、以下の式で求められます。

・不動産投資以外の収入から差し引く赤字額 = 家賃収入 – 必要経費

上述の減価償却と併せて損益通算を行えば、不動産投資の納税額をさらに抑えることが可能です。たとえば、1年間の家賃収入が500万円、購入費用の減価償却費が700万円、そのほかの必要経費が100万円であれば、500万円-700万円-100万円=-300万円となり、赤字額300万円分が損益通算されることになります。

年収が1500万円の人であれば、損益通算を行うことで、1500万円-300万円=1200万円として所得額を申告できるため、所得税と住民税の軽減に役立つのです。

白い電卓とマンションの模型

不動産評価額を下げられる

不動産投資により節税できるのは、毎年の所得税や住民税だけにとどまりません。財産を不動産の形で所有していることで、贈与や相続を行う際の税金の負担を抑えられる可能性があります。なぜなら、贈与税や相続税の算出に用いる不動産の評価額は、同じ価値の現金よりも低いことがほとんどだからです。

不動産の贈与税や相続税を算出する際は、「相続税評価額」に所定の税率をかけ合わせます。相続税評価額は、時価(実際に売買される価格)の80%程度となっていることが一般的です。

たとえば5000万円分の財産に関して、全て現金で所有の場合の課税対象額は5000万円であるのに対して、売買価格5000万円の不動産を所有の場合、課税対象額は4000万円となるため、相続税が抑えられることが分かります。

クリップボードを持つ女性

さらに、贈与や相続の対象となる不動産が賃貸用物件である場合、土地と建物の評価額が軽減されます。賃貸用物件の相続税評価額は、賃貸に出している分だけもとの不動産の価格から差し引かれて計算されるためです。

賃貸マンションやアパートが建っている「土地」は貸家建付地として評価額が決められ、次の式で計算されます。

貸家建付地の相続税評価額
= 路線価 × 土地面積 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

「路線価」とは、道路に面する宅地の1㎡あたりの価格を意味しており、国税庁が毎年公表しています。「借地権割合」は地域ごとに決められており、30%から90%までの値を取る一方で、「借家権割合」については、全国一律で30%となっています。「賃貸割合」とは、建物全体の床面積のうち賃貸部分の割合を指します。

たとえば路線価が50万円で80㎡の土地の場合、通常の土地の評価額は以下のような算出方法になります。

50×80=400万円

しかし、路線価、土地面積が同条件で借地権割合80%、賃貸割合100%の貸家建付地の場合、以下のような計算になります。

50×80×(1-80%×30%×100%)=304万円

このように、貸家建付地のほうが、相続時の評価額が小さくなるのです。また、賃貸用物件の「建物」の相続税評価額については、以下の式で計算されます。

貸家の建物の相続税評価額
= 固定資産税評価額(新築建築費用の50~60%) × (1 – 借家権割合)

以上のことから、贈与・相続に際しては、現金よりも賃貸用物件として資産を持っていたほうが節税につながるケースが多いことが分かります。

計算機を片手に持ち悩む女性

法人化で節税も

通年の家賃収入にかかる税金は、所得税として支払うよりも法人税として支払うほうが安くなることがあります。先ほど触れたように、所得税は累進課税であることから、課税所得が増えると税率も大きくなってしまいますが、法人税は上限が23.2%と決められているためです。

具体的には、所得税の税率は課税所得が900万円を超えると33%となってしまうため、通年の所得が900万円を超える場合、法人として不動産投資を行うのがおすすめです。

節税効果のシミュレーション手順

ここからは、サラリーマンをはじめとしたメインの収入をほかに得ている人が不動産投資を行い、減価償却と損益通算を適用した場合の納税額をシミュレーションし、節税効果を確認してみましょう。

[ 1 ] 経費を計算する

まずは、マンション投資の必要経費を算出しましょう。必要経費の項目としては、以下の費用が挙げられます。

・減価償却費
・火災保険料、地震保険料
・固定資産税
・管理委託手数料
・修繕費
・修繕積立金 など

上記の項目のうち、減価償却費は、不動産の購入費用(建物設備部分)を耐用年数で割ることで求められます。たとえば、マンションの購入費用(建物設備部分)が1200万円、耐用年数が15年の場合は、以下のように計算できます。

・減価償却費 = 1200万円 ÷ 15年 = 80万円/年

[ 2 ] 不動産収入を計算する

次に、不動産投資による収入の金額を求めます。不動産収入には、毎月の家賃収入に加え、以下のような項目も含まれます。

・礼金
・更新料
・共益費・管理費
・駐車場代 など

[ 3 ] 不動産所得を計算する

家賃や共益費などの不動産収入から、必要経費の支出分を差し引いた金額を「不動産所得」といいます。不動産所得がプラスであれば、課税所得に算入され、所得税や住民税の課税対象となります。

一方で、もし必要経費が不動産収入を上回り、不動産所得がマイナスとなってしまった場合は、赤字分をほかの収入金額から差し引く損益通算が適用されます。

てんびんにかけられた家賃のブロックと住宅模型

不動産所得が計算できたら、そのほかの1年間の所得に合算し、確定申告を行いましょう。減価償却や損益通算を適用して節税を行うには、所得金額と税額を正確に申告する必要があります。

また、不動産所得と納税額を正しく申告したと認められれば、納税額が最大で65万円控除される「青色申告」の制度が存在します。一般的な確定申告である「白色申告」と異なり、青色申告を行うには、所得にかかわる取引の記帳方法や、必要書類の項目、帳簿の保存期間などのルールを満たしている必要があります。青色申告についての詳細は、国税庁のホームページより確認してくださいね。

●青色申告についてはこちら(国税庁)

節税効果が高いのは中古物件

不動産投資の節税効果を十分に引き出すには、投資を始める際の物件選びが大切です。一般的には、新築物件よりも中古物件のほうが節税効果が高いといわれています。その理由を見ていきましょう。

耐用年数が短い

減価償却期間内においては、新築物件よりも中古物件のほうが、減価償却による節税効果は高い傾向にあります。不動産収入から控除される減価償却額は、物件の購入価格(建物設備部分)を耐用年数で割ることで求められます。同じ構造の住宅用建物であれば、新築物件よりも中古物件のほうが、購入時からの耐用年数が短くなるため、1年あたりの減価償却額を高く計上することができるのです。

耐用年数が短い中古住宅で投資を始めることで、開始後数年間の所得税額を大きく軽減する効果が期待できます。ただしその分、減価償却による節税効果が切れるまでの期間も短くなってしまうため、注意が必要です。「耐用年数が短ければ短いほどよい」と考えず、長期的に見てどれだけの金額が節税できるかを考えるようにしましょう。

耐用年数の数直線と両手の上の不動産

また、新築住宅の耐用年数は法律によって決められ、建物の構造の種類ごとに異なる年数が定められています。これを一般に「法定耐用年数」といい、以下の表のように決められています。

構造

法定耐用年数

木造または合成樹脂造

22年

木骨モルタル造

20年

鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造

47年

組積造
(れんが造または石造またはブロック造)

38年

鉄骨造

34年(4mmを超えるもの)
27年(3mmを超え4mm以下のもの)
19年(3mm以下のもの)

中古物件の耐用年数を算出する際は、以下のように計算されることが一般的です。

新築時から経過した年月が法定耐用年数を超える場合
法定耐用年数の20%の年月が耐用年数となります。計算結果は小数点以下を切り捨て、2年に満たない場合は耐用年数は2年として扱われます。

新築時から経過した年月が法定耐用年数以下である場合
経過した年数を法定耐用年数から差し引いた数値に、経過年数の20%の年数を加えます。上記と同様に、計算結果は小数点以下を切り捨て、2年に満たない場合は耐用年数は2年とします。

購入費用が手頃

中古物件は新築よりも安い傾向にあるため、初期投資の金額を抑えられるというメリットがあります。そのため、「不動産投資をしてみたいけれど、初期投資額回収のリスクが怖い」と感じている初心者の方には、中古物件でマンション投資を始めてみることをおすすめします。

ただし、中古物件は新築物件よりも集客しにくい傾向にあるため、その分賃料を安く設定したり、リフォームして新しい内装や設備を導入したりといった、スムーズに借り手を見つけられるような工夫が求められます。また、物件の購入後、建物や設備の修繕が必要になるまでの期間は、中古物件のほうが短い傾向にあることに注意が必要です。

右手の上の中古と新築と住宅模型

節税目的の不動産投資の注意点は?

不動産投資には、長期的な収入源が得られるだけでなく、節税効果を期待できるというメリットがあることを解説してきました。しかし、多くの投資方法と同様に、不動産投資にもリスクは存在します。

不動産投資で所得税や住民税が軽減されるのは、購入費用の減価償却や、不動産所得の赤字分の損益通算を行った場合であり、不動産投資による節税は、支出というマイナス分を前提としています。また、不動産投資の収益性は、毎年の不動産所得だけでなく、最終的な売却金額までも加味して考えられることが一般的となります。

こうした理由のため、不動産投資を始める前に、長期的な視点から収支の見通しを正確に立てていないと、トータルで赤字になってしまうことも考えられます。このほかに、マンション投資での失敗を避けるために注意を要するポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

長く持ち過ぎるリスク

先述のように、減価償却を行える期間は、住宅の耐用年数以内と決められています。長期間にわたって住宅を所有していると、いずれ収入から減価償却費を差し引けない時期がやってきます。耐用年数を大幅にすぎた物件は、投資用としても居住用としても需要が低下し、買い手が見つかりにくくなる恐れもあるため、耐用年数の範囲内で売却してしまうこともおすすめです。

また、減価償却の対象となるのは建物のみで、土地には適用されない点も押さえておきましょう。

一戸建ての模型と積み上げられた小銭

売却を急ぎ過ぎるリスク

逆に、投資用物件の早過ぎる売却も、支出を大きく増やしてしまう恐れがあり、注意が必要です。個人による不動産の売却益には「譲渡所得税」がかかり、その税率は物件の所有期間に応じて異なります。取得から5年以内に売却する場合は「短期譲渡所得」、5年を超えてから売却する場合は「長期譲渡所得」の税率が適用されます。

短期譲渡所得の税率は、長期譲渡所得の約2倍に設定されているため、売却を急ぎ過ぎてしまうと、譲渡所得税を多く支払うことになる点に注意が必要です。

収支が変動するリスク

不動産所得が変動し、理想通りの収入や節税効果が得られない恐れがある点も留意しておきましょう。借り手が見つからずに空室が続いたり、経年劣化によって修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、投資用ローンの金利が変動するなど、予想できない変化が起きる可能性があります。

不動産投資を行ううえでは、中長期的な視点を持ち、予期せぬトラブルが生じても問題がないように、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

住宅模型と折れ線グラフ

節税だけに気を取られないことが大切

不動産投資を行うことによる節税効果について、詳しく解説してきました。何度か触れてきたように、不動産投資により、耐用年数以内であれば所得税や住民税の金額を大きく抑えられるほか、財産の贈与や相続を行う際の納税額を軽減できます。逆にいえば、減価償却を計上できる期間を超えると、節税効果が薄くなってしまうため、不動産投資を始める際は、いつ売却するかまでをも考えて計画を立てることが大切です。

また、減価償却を行うことにより、物件の購入費用を経費として一定期間申告できますが、投資用ローンや修繕費といったそのほかの必要経費は自己負担となります。そのため、安易に不動産投資を始めてしまうと、経費の支出が多過ぎてしまい、事実上赤字となってしまう恐れもあるため、注意が必要です。

このように、不動産投資には、そのほかの投資と同様、メリットだけではなくリスクも存在します。リスクも十分に考慮したうえで、手持ちの資金に余裕がある状態で不動産投資を始めるように心がけましょう。

物件選びや運営のポイントなど、不動産投資を始めるにあたっての疑問点や不安については、不動産会社に相談して解決しておきましょう。三井不動産リアルティでは、豊富な実績をもとに幅広い物件の紹介や、賃貸運営のサポートを行っています。不動産投資を検討している人は、ぜひ利用してみてくださいね。

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アユカワタカヲ

株式会社タカプランニングジャパン代表取締役。
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有。
会社員時代に不動産投資をスタートさせ、今では幅広く不動産賃貸業を営む。
メディア出演や著作の出版、セミナーなどでも活躍。
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