不動産投資が節税につながるのはなぜ?仕組みと失敗しないためのポイント

不動産投資を行うと、年間の所得税・住民税や、相続・贈与時の税金を軽減できることがあります。今回は、不動産投資が節税につながる仕組みや注意点についてご紹介します。

目次
  1. 不動産投資は節税になるか
  2. 不動産投資で節税効果が期待されるのはなぜ?
  3. 節税目的の不動産投資が危険な3つの理由
  4. 節税だけじゃない!不動産投資に取り組むべき本質的な価値とは
  5. 不動産投資で失敗しないための3つのポイント
  6. 節税の先にある、賢い不動産投資を実現しよう
記事カテゴリ 賃貸
2025.09.05

不動産投資は節税になるか

「不動産投資で節税できる」という言葉は、多くの投資家にとって魅力的です。確かに、不動産投資には税負担を軽減する仕組みが存在します。しかし、節税目的だけの安易な不動産投資は、思わぬ落とし穴にはまる危険性もはらんでいます。

今回の記事では、節税を目的とした不動産投資のリスクを明らかにし、その本質的な価値と、失敗しないためのポイントを解説します。不動産投資に不安がある方は、以下の記事も併せてご確認ください。

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不動産投資で節税効果が期待されるのはなぜ?

不動産投資が節税につながるといわれる理由には、大きく分けて「損益通算」と「減価償却」が関係しています。これらの計上により、主に所得税と住民税の節税効果が期待できる理由について解説します。

損益通算が適用できる場合があるから

損益通算とは、不動産投資から生じた赤字を、給与所得や事業所得などから差し引ける制度です。課税対象の所得全体が減少した場合、所得税や住民税の負担が軽減されるため、不動産投資は節税効果があるといわれています。

ここで重要なのは、赤字の性質です。不動産投資における赤字には、大きく分けて「会計上の赤字」と「キャッシュフローの赤字」の2種類が存在します。会計上の赤字は、経費計上した帳簿上だけで発生するもので、実際の現金の支出を伴いません。

一方、キャッシュフローの赤字とは、家賃収入から実際の経費(ローン返済、管理費、修繕費など)を差し引いた結果、手元に残る現金がマイナスになる状態を指します。この状態では、損失額を自分の資産で補う「持ち出し」が発生し、投資として望ましくありません。

損益通算を節税に生かすには、キャッシュフローを維持しつつ、会計上の赤字を適切に作り出すことが求められます。そのためには、会計上の赤字の作り方や、どの経費が損益通算できるのかを正確に理解している必要があります。そうでなければ、期待した節税効果が得られないばかりか、キャッシュフローの悪化を招くことにもなりかねません。

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減価償却費が適用できる場合があるから

減価償却費とは、建物や設備などの固定資産の取得費用を、その資産が使用できる期間(法定耐用年数)にわたって分割し、毎年の経費として計上する会計処理のことです。減価償却費が節税の鍵とされる最大の理由は、実際の現金の支出を伴わない経費という点です。

物件購入時に既に支払った建物費用を、一定の期間で分割し、経費として認識するため、その年のキャッシュフローから直接お金が出ていくわけではありません。これにより、前述の「会計上の赤字」を作り出し、損益通算を通じて所得税や住民税を軽減できる可能性があります。

しかし、この減価償却の仕組みには注意点もあります。特に、中古物件で償却期間が短い場合、償却期間が終了すると経費として計上できる減価償却費がなくなり、急に税負担が増加する「デッドクロス」のリスクがあります。また、減価償却費が適用されるのは時間の経過に伴って価値が減少する資産に限られるため、対象は建物部分のみで、土地部分は減価償却されない点にも注意しましょう。

従って、地価が高い都心部のように建物価格の占める割合が低い場合は、期待するほどの減価償却費が計上できない可能性があることも考慮しなければなりません。

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節税目的の不動産投資が危険な3つの理由

節税効果ばかりに目を奪われると、不動産投資の本質を見失い、結果として大きな損失を被る可能性があります。ここでは、節税目的の不動産投資が危険である具体的な理由を3つ解説します。

節税効果は限定的だから

節税効果の大きさは所得層によって大きく異なります。日本の所得税は累進課税制度を採用しており、課税所得が高いほど適用税率も高くなるからです。従って、不動産所得の赤字をほかの所得と損益通算した場合の税負担軽減効果は、高所得者層ほど大きくなります。しかし、課税所得が比較的低い層にとってはもともとの税率が低いため、会計上の赤字を作っても実際に還付される税金は少なく、節税のメリットは限られてしまうでしょう。

次に、前述した「デッドクロス」のリスクが懸念されます。不動産投資におけるデッドクロスとは、「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」のことです。法定耐用年数をすぎると減価償却費は計上されなくなるため、その後もローンの借入期間が続いていれば、デッドクロスは高確率で発生します。

また、ローンは返済が進むにつれて元金の割合が増え、その分経費として計上できる利息が減っていくため、法定耐用年数内にローンを完済できる場合でもデッドクロスに陥ることがあります。デッドクロスに陥ると、帳簿上は黒字でも税金の支払いによって手元のキャッシュフローが悪化し、最悪の場合、「黒字倒産」に至る危険性もあるため注意が必要です。

キャッシュフローの悪化を招く可能性があるから

節税目的の不動産投資が危険な2つ目の理由は、キャッシュフローの悪化を招き、投資の本来の目的である資産形成を損なう状況に陥りやすい点です。

特に注意すべきなのは、帳簿上の赤字と手元のキャッシュフローとの関係です。会計上の赤字を作り出し節税額を増やすために不必要な修繕を行ったり、相場より高い管理委託料を支払ったりすると、節税額以上に手元資金が減少する可能性があります。

不動産投資の目的は、あくまでも資産を増やして安定的なキャッシュフローを確保することです。節税はその過程で得られる可能性のある、副次的な効果にすぎないことに気を付けましょう。

物件本来の価値や収益性を見誤るリスクがあるから

節税効果を最優先する不動産投資が危険な3つ目の理由は、物件そのものが持つ本質的な価値や収益性を見誤るリスクが高まることです。

節税ばかりに目を向けると、不動産投資において最も重要な要素である立地条件、物件そのものの状態や品質、将来性、収益力といった評価がおろそかになりがちです。このような要素の評価を怠ると、短期的な節税効果が得られたとしても、長期的な視点で見ると空室リスクや維持管理コストの増大などの問題が起こることも考えられます。

なかでも最も深刻なのが、出口戦略(売却)の失敗です。節税目的で購入された物件が市場において魅力的な物件でなければ、売却時に買い手が見つかりにくかったり、購入価格を大幅に下回る価格でしか売却できなかったりするリスクもあります。

物件の売却を検討する人

節税だけじゃない!不動産投資に取り組むべき本質的な価値とは

節税という観点も重要ですが、より重要なのは不動産投資そのもので得られる利益です。ここでは、不動産投資が持つ節税効果以外の本質的な価値についてご紹介します。

安定した家賃収入による長期的な資産形成

不動産投資の最も本質的な価値の1つは、安定した家賃収入を通じて、長期的な資産形成を実現できる点です。短期的な市場変動の影響を受けにくく、一度借主が決まれば、契約期間中は比較的安定した収益を見込めます。

もちろん、空室や賃料滞納のリスクは存在しますが、適切な物件選びと堅実な管理によって、リスクを最小限に抑えることは可能です。この「安定性」は、ほかの金融商品と比較すると不動産投資の大きなメリットであるといえます。

実物資産の強み

不動産投資が持つ2つ目の重要な価値は、インフレヘッジとしての「実物資産」の強みです。インフレとはインフレーションの略で、物価が上昇して相対的に現金の価値が目減りしていく経済現象です。このような状況下において、現金や預貯金といった金融資産は、その購買力を失っていくリスクにさらされます。

一方、土地や建物といった実物資産はそれ自体に価値があるため、インフレ局面でも価値が下がりにくいといえるでしょう。物価が上昇すれば、賃料や資産価値も連動して上昇する傾向があるため、インフレ下でも家賃収入の実質的な価値を維持しやすいのもメリットです。

ただし、不動産投資が万能なインフレヘッジというわけではありません。不動産市場も経済全体の状況や金融政策、地域ごとの需給バランスなどさまざまな要因の影響を受けるため、インフレ下でも常に実物資産の価格が上昇するとは限りません。また、インフレに伴い金利が上昇した場合には、ローン返済額が増加するリスクも考慮する必要があります。

効率的な資産拡大

不動産投資が持つ可能性の1つに、レバレッジ効果による効率的な資産拡大があります。レバレッジ効果とは、少ない自己資金に金融機関からの借入金を組み合わせて、自己資金だけでは購入できないような高額な資産を運用できるようにすることです。

たとえば、自己資金2,000万円で2,000万円の物件を購入する場合と、自己資金2,000万円に4,000万円のローンを加えて6,000万円の物件を購入する場合について比較してみましょう。このケースでは、後者のほうが大きな規模の資産を運用していることになります。

もちろん、金融機関からの借入金には利息が発生しますが、家賃収入は物件全体の価値に対して発生します。そのため、運用がうまくいけば、レバレッジ効果によって投下した自己資金に対する最終的な収益率を高めることが期待できるでしょう。

しかし、このレバレッジ効果には大きなリスクも伴います。たとえば、変動金利型のローンを利用している場合、市場金利が上昇するとローンの適用金利も上昇し、毎月の返済額が増加する可能性があります。また、高いレバレッジをかける(借入金の割合が大きい)と、それだけ毎月の返済負担が大きくなることにも注意が必要です。

資産の変動

不動産投資で失敗しないための3つのポイント

不動産投資で失敗しないための重要な3つのポイントは以下の通りです。

・明確な目的設定
・無理のない資金計画
・信頼できるパートナー選び

順番に解説していきます。

明確な目的設定

不動産投資で成功を収めるための最初のステップは、「何のために投資するのか」という明確な目的を設定することです。節税以外の具体的な投資目的としては、主に以下のものがあります。

・老後資金の確保
・資産の分散
・キャッシュフローの改善
・インフレ対策

目的が明確であればあるほど、不動産会社からの提案や物件情報に対しても、自身の軸を持って評価できます。投資を始める前に、自身のライフプランや経済状況と照らし合わせながら具体的な目的を定めることが、賢明な不動産投資への第一歩です。

目標に向かってステップを踏む様子

無理のない資金計画

不動産投資における成功の基盤となるのが、無理のない資金計画と徹底したリスク管理です。まず、物件購入にあたって、どの程度の自己資金を投入するかは重要な判断ポイントといえます。

フルローンやそれに近い低資金での投資は、レバレッジ効果を最大限に活用できる反面、金利上昇や空室発生時の金銭的な余裕がなくなるというリスクがあります。明確な基準はありませんが、物件価格の2割~3割程度、あるいはそれ以上の自己資金を用意することが、安定した資産運用につながります。

信頼できるパートナー選び

不動産投資は、物件を購入して終わりではなく、長期にわたる運営と最終的な売却までを見据えた事業です。その過程において、信頼できるパートナー、特に不動産会社と管理会社の選定は、投資の成否を大きく左右する極めて重要なポイントです。

そのため、目先の節税メリットを強調するだけの業者ではなく、長期的な視点で投資家と共に歩んでくれるパートナーを選ぶことが大切です。該当エリアにおける豊富な実績があるか、顧客目線でリスクや注意点についても包み隠さず説明してくれるか、長期的な資産形成という観点からアドバイスをくれるかどうかなどを、よく確かめたうえでパートナーを選びましょう。

不動産会社担当者へ相談するオーナー

節税の先にある、賢い不動産投資を実現しよう

今回の記事では、節税目的の不動産投資における注意点と、不動産投資の本質的な価値について解説してきました。賢明な不動産投資を実現するためには、明確な目的設定や収益性と資産価値を重視した物件選びが重要です。さらに、無理のない資金計画や税金に関する正しい知識と信頼できるパートナー選びが不可欠です。

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