
賃貸借契約で必要なものは?事前に準備しておきたい書類やお金を解説
賃貸借契約を結ぶ際に必要なものはいくつかあり、事前に用意しておくことで契約をスムーズに進めることができます。今回は、準備しておくとよい書類やお金について詳しく解説していきます。
賃貸借契約で必要なものとは?
賃貸借契約を結ぶ際には、定められた書類やお金が必要となります。引越し前はさまざまな手続きで慌ただしくなることが多いため、必要なものをあらかじめチェックし準備しておくと安心です。
一般的に賃貸借契約は「入居の申し込み・審査」「契約」という流れで行われます。まずはそれぞれのステップで必要となる書類について見ていきましょう。
●賃貸借契約の流れに関する記事はこちら
賃貸借契約の流れは?注意点や必要書類についても解説
[ 1 ] 入居申し込み時
賃貸借契約では、住みたい物件が決まったら、まず貸主(オーナー)に入居申し込みを行います。入居申し込みは不動産会社を通じて行い、審査のために必要となる書類を提出します。必要書類は以下の通りです。
書類名 | 内容 |
---|---|
入居申込書 | 名前、生年月日、現住所、電話番号、勤務先の情報、業種、年収、勤続年数などの情報を記入 |
身分証明書 | 運転免許証、パスポート、健康保険証などの公的な証明書 |
収入を証明する書類 | 会社員は源泉徴収、自営業・フリーランスは確定申告書または納税証明書 |
入居申込書
入居申込書は、入居申し込み時に契約者本人や連帯保証人などについての情報を確認するための書類です。契約者と連帯保証人の名前や生年月日、住所、勤務先といった個人情報を記載します。連帯保証人は早めに見つけておき、事前に連絡しておくと迷惑をかけることなくスムーズに申し込みを進められるでしょう。
ただし近年では、連帯保証人が必要のないケースもあります。家賃保証会社と契約する場合であれば、緊急連絡先となる親族がいればよく、連帯保証人が必要とならないことが一般的です。
身分証明書
身分証明書は契約時に本人確認のために用いる書類です。運転免許証やパスポートなどの公的な証明書を求められることが一般的となっています。顔写真が入っている証明書が望ましく、入っていない証明書の場合には、別途証明書が必要になることもあります。
収入を証明する書類
契約時には、不動産会社や貸主に収入を伝える必要があります。働き方や雇用形態によって必要な書類が異なります。
会社員の場合は、勤務先や職種、収入が証明できる「源泉徴収票」を会社に交付してもらいましょう。また、就職や転職をしたばかりの場合には「雇用契約書」を提出することもあります。家賃の目安としては、手取り収入の3分の1程度とされているため、転職したばかりであったり、収入に比べて家賃が高かったりする場合は、入居審査に時間がかかってしまうことがあります。
自営業やフリーランスの場合は、直近の年の「確定申告書」または「納税証明書」が必要です。税務署または事前に利用手続きを行い、e-Taxのホームページから交付請求を行いましょう。月や年によって収入が変動する働き方であるため、会社員に比べて入居審査が厳しくなることもあります。収入や納税に問題がないことを証明できるよう、遅れずに準備しましょう。
書類のほかに必要なもの
書類以外にも必要なものがあります。たとえば、入居申込書を書く際に必要となる印鑑です。本人確認の役割があるため、「実印」や「認印」といった、同じ印面を持つものが流通していない印鑑を求められることが一般的です。
市区町村の役場に登録しているものを実印、登録していないものを認印といいます。入居申し込みの際には、一般的に認印の使用が可能ですが、不動産会社や貸主によっては実印を求められるケースもあるため、用意しておくと安心でしょう。
申し込みを契約前にキャンセルした場合、申込金は返金されますが、万が一の返金トラブルに備えて「預かり証」を発行してもらうと安心です。申込金を支払った日付、申込金の目的、希望した場合は返金される旨、不動産会社・担当者の捺印などの記載があるかを確認しましょう。
以上の必要なものを提出し、入居申し込みが済むと審査が行われます。保証会社を利用する場合は、保証会社による審査も行われます。審査の結果が出るのは数日~1週間程度が目安になります。
[ 2 ] 契約時
入居申し込みを終え、審査に通った場合は賃貸借契約を結びます。不動産会社によっても異なりますが、以下のような書類が必要となる場合があります。
書類名 | 内容 | 入手先 |
---|---|---|
住民票 | 物件に住む全員分。発行後3か月以内が有効 | 市区町村役場 |
身分証明書 | 運転免許証、パスポート、健康保険証などの公的な証明書 | 賃貸借契約者 |
印鑑証明 | 印鑑登録をして、印鑑証明書を現在の居住地の自治体が発行 | 市区町村役場 |
銀行印・通帳 | 家賃の引き落としをする口座情報 | 賃貸借契約者 |
連帯保証人に関する書類 | 連帯保証人の住民票、収入証明、印鑑証明書など | 連帯保証人 |
住民票
住民票とは、その人の居住関係を公的に証明するもので、身元確認のために必要な書類となります。住民票と身分証明書を照らし合わせることで、本人であることを確認します。入居者が複数人いる場合には、全員分の住民票の写しが必要です。
住民票を契約時に準備するうえで注意しなければならないのは、発行後3か月以内のものでなければいけないということです。住民票は市区町村役場にて発行可能なので、契約時に有効なものを用意しましょう。
住民票には「一部事項証明」と「全部事項証明」があります。単身者の場合は、自分の情報のみが記載されている一部事項証明で問題ありませんが、家族全員で入居する場合は、世帯構成が記載されている全部事項証明を選ぶ必要があります。また、マイナンバーが記載されている住民票は個人情報保護の観点から不動産会社で保管できないため、マイナンバーが記載されていない住民票の写しを発行しましょう。
身分証明書
入居申し込み時と同様に、免許証やパスポートなどの身分証明書が必要となります。コピーではなく原本を持参し、不動産会社にてコピーを取ってもらいます。
印鑑証明書
賃貸借契約書には、自治体で印鑑登録を済ませた実印で捺印することがあります。その際は、実印であることを証明する印鑑証明書が必要です。連帯保証人が必要な物件の場合、多くは連帯保証人の実印と印鑑証明書も必要になるので覚えておきましょう。
印鑑登録をしていない場合は、市区町村の役場に行き、印鑑登録をした後に印鑑証明書を発行してもらいます。なお、不動産会社から指定がなければ認印で可能な場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
銀行印・通帳
家賃を口座引き落としで支払う場合には、銀行印と通帳が必要です。引き落とし口座は、不動産会社が用意する「預金口座振替依頼書」に銀行口座番号を記入することで登録できますが、その際に銀行に登録してある銀行印も必要となります。
連帯保証人に関する書類
連帯保証人を必要とする物件では、連帯保証人の住民票や印鑑証明書、収入証明書が必要となります。連帯保証人が準備を進めるのにかかる時間を見越して、前もって伝えておくとよいでしょう。
賃貸借契約で必要なお金
賃貸借契約時には書類のほか、契約に必要なお金の支払いもあります。合わせると大きな金額になるため、事前に内訳を知って準備しておくと、引越し後の暮らしに負担がかかるのを防ぐことが可能です。賃貸借契約時に必要なお金は以下の通りです。
必要なお金 | 概要 |
---|---|
敷金 | 家賃や、入居者が部屋を損傷させた場合の修繕費用の担保となるお金 |
礼金 | 貸主に対し部屋を貸してもらったお礼として支払うお金 |
仲介手数料 | 不動産会社に報酬として支払うお金 |
前家賃 | 入居月とその翌月の家賃 |
保険料 | 損害保険などの加入時に保険会社に支払うお金 |
保証料 | 保証会社を利用するためのお金 |
敷金
敷金とは家賃や、入居者が部屋を損傷させた場合の修繕費用の担保となるお金のことです。相場は家賃の1~2か月分で、家賃の未払いや部屋に傷や汚れを付けた場合に使われます。退去時には、修繕費用を差し引いた額が返金されます。
礼金
礼金とは、貸主に対し部屋を貸してもらったお礼として支払うお金のことです。相場は家賃の1~2か月分で、敷金とは違い退去時に返金されません。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に報酬として支払うお金のことです。宅地建物取引業法によって上限は借主・貸主合わせて家賃の1か月分 + 消費税と定められています。
前家賃
前家賃とは、入居月とその翌月の家賃のことで、翌月の家賃を入居月の家賃と一緒に前もって支払います。月の途中で入居する場合は、賃料が発生する日から日割り計算し、翌月の家賃と一緒に支払うことになります。計算方法は以下のようになります。
家賃30万円の物件に4月16日から入居した場合
30万円 ÷ 30日 × 15日(賃料が発生する日から月末までの日数) + 30万円(翌月の家賃) = 45万円
保険料
火災保険は建物と家財が補償の対象となりますが、賃貸の場合、借主が補償するのは家財のみとされるのが一般的です。補償の対象が家財のみとなる保険を「家財保険」といい、借主が所有する建物内の家財が火災や水漏れなどにより損害が発生した際に適用されます。家財保険の場合、不動産会社や貸主が選んだ家財保険ではなく、自分で選んだ保険に加入することもできます。
一方で、借主が必ず加入しなければならない保険があり、その保険を「借家人賠償特約付損害保険」といいます。これは、借りている部屋で火災や水濡れがあった際に、貸主に対し補償するものです。
保証料
保証料とは、保証会社に加入するために支払うお金のことです。保証会社とは、借主が家賃を滞納してしまった場合に、建て替えて支払ってくれる会社です。保証料を支払って、保証会社を利用している場合は、連帯保証人を立てずに賃貸借契約を結ぶことができます。
これらの契約に必要なお金を振り込んだ際、振込票の控えが必要になる場合もあるので大切に保管しておきましょう。
書類やお金以外に必要なことは?
賃貸借契約前には、書類やお金のほかにも必要な準備やチェックしておきたいポイントがあります。よりスムーズな手続きを行うために「賃貸借契約書の事前確認」「現住居の解約手続き」「賃料発生日と引越し日の調整」について、それぞれ詳しく紹介していきます。
賃貸借契約書・重要事項説明書の事前確認
賃貸借契約書・重要事項説明書には、契約を結ぶうえでの条件が全て記載されているため、見落としがないよう、注意深く読む必要があります。署名・捺印後の変更は貸主との合意を得ること、覚書を取り交わすことなどの手間が増えてしまいます。あらかじめ内容を不動産会社に送ってもらい、確認することでトラブルを防ぐことができるでしょう。
居住中の賃貸物件の解約手続き
新しい物件が決まったら、なるべく早く、現在住んでいる賃貸物件の解約手続きを行いましょう。解約時の予告期限が定められているため、早めに貸主に伝えないと退去までに時間がかかってしまったり、契約が更新されてしまったりすることがあります。予告期間は、一般的に退去日の1か月前までとされていますが、2か月前までという場合もありますので確認が必要です。
また、電気や水道、ガスなどの事業者にも退去日を連絡しましょう。申告期限はありませんが、後回しにして忘れてしまうと、料金の支払いが余分に発生する恐れがあります。
賃料発生日と引越し日の調整
引越しの日取りを立てるうえでは、念入りに計画を立てておくよう心がけましょう。賃貸の契約期間が始まる日付を一般に「賃料発生日」といいますが、引越し・入居する日が賃料発生日より数日後になったとしても、その数日分も家賃が発生するので注意が必要です。
賃料発生日以降でなければ入居することができないため、なるべく同日に引越し作業をすることで家賃を無駄に払ってしまう状況を防げます。
事前準備でスムーズな賃貸借契約を!
ここまで賃貸借契約で必要な書類やお金についてお伝えしてきました。取得するのに時間がかかるものもあるため、前もって準備しておくことが大切です。特にお金に関しては、事前に把握しておくとで資金計画を立てられるため、急な出費で負担がかかるのを防ぐことができます。事前準備をしっかりと行って、賃貸借契約をスムーズに進めましょう。
三井のリハウスでは、賃貸物件についても豊富な情報を用意しており、お部屋探しのご相談を受け付けています。ぜひ一度ご相談ください。
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アユカワタカヲ
株式会社タカプランニングジャパン代表取締役。
宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を保有。
会社員時代に不動産投資をスタートさせ、今では幅広く不動産賃貸業を営む。
メディア出演や著作の出版、セミナーなどでも活躍。
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