資産管理会社とは?設立するメリットや注意点、目的を解説

資産管理会社とは、不動産や株式といった保有資産の管理を目的として設立される法人です。この記事では、資産管理会社の設立を検討している方に向けて、設立の概要や節税効果などのメリット、設立に必要なものについて詳しく解説します。

目次
  1. 資産管理会社とは
  2. 資産管理会社を設立する6つのメリット
  3. 資産管理会社設立における注意点
  4. 資産管理会社設立の手順
  5. よくある質問
  6. 賃貸経営は三井のリハウスに相談
記事カテゴリ 賃貸 税金 マンション
2024.11.11

資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や株式、証券といった保有する資産の管理を目的として設立する法人です。個人の資産を管理する法人であるため、「プライベートカンパニー」とも呼ばれます。主に投資家や富裕層が設立する会社であり、基本的に資産管理以外にかかわる事業は行いません。

今回は、資産管理会社の設立を検討している方に向けて、設立するメリットと注意点、手順を詳しく解説します。

保有している賃貸物件

資産管理会社を設立する6つのメリット

資産管理会社を設立するメリットには、以下の6つが挙げられます。

・節税効果がある
・所得を分散できる
・必要経費の範囲が拡大する
・欠損金の繰越控除の期間が延びる
・相続がスムーズになる
・社会保険への加入が可能になる

1つずつ見ていきましょう。

資産管理会社設立にあたっての届出書

節税効果がある

資産管理会社を設立するメリットには、まず節税効果が挙げられます。不動産や株式、証券といった資産を個人で所有する場合と、法人として所有する場合とでは、不動産所得や株式の配当金などに課税される税金の種類や税率が異なります

個人に課せられる税金は、所得税や住民税などです。所得税には累進課税が適用されるため、所得が増えるほど税率は高くなり、最高税率は45%になります。住民税のうち所得に応じて課税される所得割は、課税所得に対して一律で10%です。これらの所得税と住民税を合わせると、最高税率は、55%にもなります。

一方、法人に課せられる税金には、法人税や法人住民税などがあります。法人税の税率は、最大23.2%です。法人住民税を含めても30%程度の税率になるため、課税所得によっては、法人化による節税効果が見込めるでしょう。

●法人税の税率について詳しくはこちら

●不動産投資における節税効果に関する記事はこちら

資産管理会社設立にあたっての節税効果の確認

所得を分散できる

資産管理会社を設立した場合、親族を役員に就任させて役員報酬を支払い、所得を分散させることが可能です。親族が役員報酬を受け取ることで、親族の元の所得によっては所得税率が増える場合もありますが、オーナー1人に所得が集中するときと比べ、賃貸収入に対する税負担は一家全体で見れば軽減できるでしょう。また、役員報酬は給与所得として扱われるため、給与所得控除が適用されます。さらに、役員報酬は経費としても計上できるため、法人税の負担を減らすことも可能です。

●所得税の税率について詳しくはこちら

必要経費の範囲が拡大する

資産管理会社を設立して法人化した場合、必要経費として扱える範囲が広くなるのがメリットです。個人の場合、事業に直接かかる費用のみが経費となりますが、法人の場合は、一部の間接経費も経費として認められます。たとえば、車両関連費にあたるガソリン代について、個人事業主の場合は、事業利用とプライベート利用の割合を算出して、事業利用の分だけを経費に計上します。これに対して法人の場合は、車を法人名義にすることで、原則全額を経費として計上できます。

欠損金の繰越控除の期間が延びる

欠損金の繰越控除の期間について、青色申告を行っている個人事業主は最長3年であるのに対し、法人では最長10年と長期に延ばせます。欠損金とは、その年の収入から必要経費を引いてマイナスになった場合に生じる赤字金額をいいます。欠損金の繰越控除とは、事業で損失が発生した際に、翌年以降に繰り越し、所得から控除できる制度です。赤字金額を翌年以降の黒字と相殺することで、課税所得を減らし、法人税の納税額を抑えることができます。

相続がスムーズになる

資産を資産管理会社で保有しておくと、贈与や相続をスムーズに行えるメリットもあります。財産を資産管理会社の株式に一本化できるため、株式の分割のみを考えればよいからです。また、資産を管理会社に移しておくことで、相続や贈与に伴う登記費用が発生しないというメリットもあります。

●相続時の賃貸借契約に関する記事はこちら

相続税が発生した賃貸借契約物件

社会保険への加入が可能になる

資産管理会社の役員に就任すると、給与所得者となるため、社会保険に加入できるようになります。社会保険に加入することで、将来、厚生年金の受給が可能です。厚生年金は、個人事業主が加入する国民年金よりも受け取れる額が多くなり、親族も一緒に加入できるというメリットがあります。

資産管理会社設立における注意点

資産管理会社の設立における注意点には、主に以下の2つが挙げられます。

・コストが発生する
・保有資産を自由に使えない

順番に詳しく説明していきましょう。

コストが発生する

資産管理会社の設立には、以下のようなコストが発生します。

・設立コスト
・維持コスト
・資産移転コスト

設立手続きを自分で行う場合、株式会社の設立には約25万円、合同会社の設立には約10万円の費用がかかります。上記のほかに、司法書士に手続きを依頼する場合は、報酬を支払う必要があるでしょう。

維持コストとは、主に法人税や法人住民税、社会保険料などのことをいいます。資産管理会社の会計は、個人で行う確定申告よりも複雑です。個人での手続きが困難な場合は、税理士や公認会計士への依頼費用が発生するでしょう。

また、資産管理会社を設立し、個人名義の資産を会社に移転する際にもコストがかかります。資産を保有する個人には、譲渡所得に対して税金がかかります。資産管理会社(法人)の場合は、不動産取得税や登記費用がかかります。資産管理会社設立時にはさまざまなコストが発生することを理解したうえで、資金計画を立てておくとよいでしょう。

保有資産を自由に使えない

資産管理会社で管理される土地や建物、現金、株式などの資産は会社の所有物となるため、個人で自由には使えません。たとえオーナーであっても、自由に使用できない点に注意が必要です。

資産を個人で使用するには、会社からオーナー個人に対して「役員報酬」や「配当」という形で資産を移転させる方法があります。その場合、役員報酬や配当には所得税が課税されます。また、役員報酬の金額は、取締役会または株主総会の決議によって決定する必要があります。このように、会社で保有する資産を個人のものとするには、コストや時間がかかることを覚えておきましょう。

資産管理会社設立にあたっての経費試算

資産管理会社設立の手順

資産管理会社設立時の手順は以下の通りです。

[ 1 ] 会社の基本情報を定める
[ 2 ] 必要なものを用意する
[ 3 ] 法務局へ登記申請を行う

資産管理会社を設立するにあたり、まずは会社の基本情報を定める必要があります。主な基本情報は以下の通りです。

・社名
・本店所在地
・事業目的
・資本金
・決算月

会社を設立する際は、どのような事業を行うかを明確にし、事業目的は定款に記載する必要があります。定款とは、会社の基本情報をもとに作成される「会社の厳格なルール」のようなもので、会社設立時に必ず用意しなくてはなりません。罰則の対象となるわけではありませんが、基本的には定款に定められていない事業を行ってはなりません。また、定款に定められる事業目的は「営利性」「明確性」「適法性」の3つの要件を満たす必要があります。

会社の基本情報を決めたら、設立に必要なものを用意します。

・印鑑:会社実印(代表者印)、銀行印、角印(社印)、ゴム印
・定款
・登記申請書
・就任承諾書
・開業届
・青色申告承認申請書

必要なものがそろったら、法務局へ登記申請書類を提出します。提出後、1~2週間を目安に設立登記が完了となります。

資産管理会社設立にあたっての定款

よくある質問

ここからは、資産管理会社の設立についてよくある質問をご紹介しましょう。

サラリーマン(会社員)が資産管理会社を設立するのは年収いくらから?

会社員が資産管理会社を設立する場合、一般的には給与と副業を合算した個人の課税所得が700万円を超えると、資産管理会社を設立するメリットが大きいといわれています。その理由は、個人に課せられる税金と、法人化した場合の税金の額が入れ替わるボーダーラインが700万円であるためです。

●資産管理会社を設立することによるメリットはこちら

資産管理会社はマイクロ法人として設立できる?

資産管理会社をマイクロ法人として設立することは可能です。マイクロ法人とは、代表者が1名で経営する会社をいい、多くは資産の管理や運用を目的として設立されます。資産管理会社を設立する際には、メリットだけでなく注意点も併せて押さえておくとよいでしょう。

●資産管理会社の設立における注意点はこちら

マイクロ法人のオフィス

賃貸経営は三井のリハウスに相談

ここまで、資産管理会社を設立するメリットや注意点、設立の手順について解説してきました。法人化し、土地や建物、有価証券、車、現金などの資産を会社で管理することによって大きなメリットを得られる場合もあります。一方で、設立にはさまざまなコストが発生し、申請の手間もかかるため、保有する資産や所得を踏まえて検討するとよいでしょう。

資産管理会社を設立し、賃貸経営を検討する際は、ぜひ三井のリハウスにご相談ください。賃貸経営に関する幅広い悩みに対して、親身に寄り添い丁寧にサポートします。以下よりお気軽にお問い合わせください。

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宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けの節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/