
賃貸経営と民泊経営を比較!儲かるのはどっち?
賃貸経営と民泊経営を比較し、不動産投資として行うならどちらがよいのかを解説します。また、賃貸と民泊の違いを、事業形態や管理内容、メリットと注意点などさまざまな観点からご紹介します。
目次
【比較】賃貸経営と民泊経営
所有している不動産を賃貸住宅として運用するのか、民泊として運用するのかについて、そもそもこの2つは事業形態が異なります。ここでは、賃貸経営と民泊経営の違いを以下の観点から比較します。
・事業形態
・許可
・管理内容
各項目を比較した一覧表は以下の通りです。
比較項目 | 事業形態 | 許可 | 管理内容 |
---|---|---|---|
賃貸経営 | 不動産賃貸業 | 不要 | 中長期的な管理 |
民泊経営 | 旅館業 | 必要 | 短期的な人の出入りに合わせた管理 |
事業形態
賃貸経営が不動産賃貸業であるのに対し、民泊経営は旅館業です。賃貸経営とは、中長期間(1か月以上)、住宅を居住者に貸して賃料を得ることをいいます。それに対して、民泊経営では、短期間(原則1か月未満)、住宅を宿泊者に提供して宿泊料を得ることを指します。
許可
賃貸経営を行う際、特別な許可を得る必要はありません。しかし、民泊経営を新たに始める際は、さまざまな許可が必要です。具体的には、以下の法律に定められた要件を満たさなければなりません。
・住宅宿泊事業法(民泊新法)
・旅館業法
・建築基準法
・消防法
たとえば、民泊経営を始めるためには、物件のある都道府県知事に住宅宿泊事業届出書を提出しなければなりません。また、消防法では民泊物件は旅館やホテルと同じ扱いをされるため、多くの消防用設備を設置しなければならない等の制約があります。このように、賃貸経営を始めるよりも、民泊経営を始めるほうが手間はかかるといえます。
管理内容
賃貸経営であれば「賃貸管理」、民泊経営であれば「住宅宿泊管理」に分類されます。
賃貸管理は、大きく分けて「借主への対応」と「建物の管理」の2つがあります。前者は入居者の募集や賃料の回収など、後者は退去後の原状回復や経年劣化に対する修繕工事などです。このように賃貸管理は中長期的な視点での管理が必要です。これらの業務を代行してくれる賃貸管理会社もありますので、賃貸管理をする際は検討するとよいでしょう。
一方、住宅宿泊管理には、チェックアウト後のハウスクリーニングやアメニティーの交換、宿泊者名簿の備え付けなどの作業があります。短期間で多くの宿泊者が物件を利用するため、賃貸管理より頻繁な管理が必要です。これらの業務を代行してくれるのが、国土交通省に住宅宿泊管理業者として登録されている民泊管理会社です。ここからは、民泊について詳しく解説します。
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民泊経営とは
民泊経営に明確な定義はありませんが、一般的には、住宅の全部または一部を旅行客などに貸し出すことを指します。近年、空き家を短期的に貸したい人と利用したい人とをマッチングさせるサービスが普及しており、少子高齢化による空き家の増加やインバウンド需要の増加によって、民泊に対する期待が高まっているのが現状です。
民泊の種類は、法律によって大きく以下の3つに分けられます。
・簡易宿所
・特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)
・民泊新法
以下で詳しく解説します。
簡易宿所
簡易宿所は旅館業法によって定められており、有料で多数の人を共有で宿泊させる場所のことを指します。簡易宿所として営業の許可を得るには、最低床面積など特定の構造基準を満たす必要があります。さらに、施設がある都道府県の保健所に申請をしなければなりません。2016年4月に構造基準の一部が緩和されたことにより、簡易宿所の営業許可を取得しやすくなりました。簡易宿所は営業日数に制限がなく、旅館業法上は近隣住民とのトラブル防止措置を取る必要もありません。ただし、自治体によっては宿泊者へ施設利用に関する説明をしなければならないケースもあるため注意しましょう。
特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)
特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)は、国家戦略特別区域法にもとづいた経営事業です。外国人旅行客の滞在に適した施設を一定期間以上使用させるとともに、施設の利用方法に関する外国語を用いた案内や、外国人旅行客の滞在に必要なサービスを提供する事業として、政令で定める要件に該当する事業のことを指します。たとえば、東京都大田区、千葉県千葉市、新潟県新潟市など、現在7つの特別区域が設定されています。特区民泊に年間営業日数の上限はなく、1回あたり2泊3日以上の滞在が条件です。
民泊新法
民泊新法は、2018年6月15日に新たに施行された住宅宿泊事業法にもとづく法律です。必要書類をオンラインで提出できるなど、民泊を簡単に始められるようになりました。年間180日以内の営業日数などの制限がありますが、基本的には住居専用地域でも営業できます。
民泊経営のメリットと注意点
以下の表は民泊経営のメリットと注意点をまとめたものです。
メリット | 注意点 |
---|---|
・利益率が高い ・短期的に運営できる | ・運営にかかる手間が多い ・宿泊客のトラブル対応が必要な場合がある |
メリット
民泊のメリットは、民泊の需要が高い立地であれば高い利益率を得られる可能性があることや、短期的な運営が可能なことなどが挙げられます。収益に関しては、後ほど詳しく解説します。
運営面でのメリットとして、民泊経営であれば宿泊者が長期にわたって滞在することはないため、短期的な運営が可能なことが挙げられます。たとえば、海外の長期出張等で自宅が数か月程度空き家になってしまう場合でも、専門業者に協力を仰ぎ適切な管理を行えるのであれば民泊経営は可能です。また、副業として民泊経営を行う場合は、本業が忙しい時期には民泊経営を中断するといった方法もあります。このように柔軟な運営が可能なのが民泊のメリットです。
注意点
民泊を始める際は、多くの場合、事前に許可を得たり、手続きをしたりしなければなりません。分譲マンションの場合、管理規約上「民泊禁止」とされている物件も多いため、あらかじめ管理組合への確認が必要です。
また、運営に手間がかかる点にも注意が必要です。たとえば、日々のリネン交換や鍵の受け渡し、さらに、宿泊客のトラブル対応も行うことになります。
民泊管理会社に管理代行を頼むとしても、代行費用が発生します。柔軟な運営が可能というメリットがあるとしても、多くの手間をかけなければなりません。メリットと注意点を比較してから民泊経営を始めましょう。
賃貸経営のメリットと注意点
以下の表は賃貸経営のメリットと注意点をまとめたものです。
メリット | 注意点 |
---|---|
・管理にかかる手間が少ない ・安定した収益を得られる | ・借主のトラブル対応が必要な場合がある |
メリット
賃貸のメリットは、管理にかかる手間が少なく、長期的に安定した利益を得られることです。一度借主が見つかれば、毎月安定した収益を見込めます。具体的な収益に関しては後ほど詳しく解説します。
管理面については、始めるにあたって特別な許可を取る必要がなく、賃貸管理会社へ入居中物件の管理を委託すれば借主とコミュニケーションを取らずに済むという点で、民泊よりも管理が楽です。なお、賃貸経営では、契約手続きやトラブル対応、入居者募集など自身で行うには複雑な業務が多いため、賃貸管理会社に任せるのが一般的です。
注意点
賃貸経営では、借主からのクレームやトラブルに対応しなければならない場合があります。隣人トラブルや設備不良、原状回復費用に関するトラブル対応は大きな手間です。ただし、賃貸管理会社に委託していると、このようなトラブル対応の必要もありません。
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賃貸経営と民泊経営ならどっちが儲かる?
賃貸経営と民泊経営の利益率は、立地や建物の状況などさまざまな条件で変化するため、どちらのほうが儲かるとは断言できません。
民泊経営は、高い利益を上げられる可能性もありますが、社会情勢といった外的要因によって利益率が大きく変化することがあります。一方、賃貸経営の特徴は、安定的な収益を得られる点です。以下では、2つの経営方法を比較します。
民泊経営は、利益率が高いといわれており、2022年の観光庁のデータによると、マンションを利用した民泊経営の利益率は全国平均で15.9%(※1)、東京都特別区で10.5%(※1)です。東京都の一棟マンション・一棟ビル・アパートの不動産投資の利益率の相場が3.9%~5.5%(※2)であることを踏まえると、高いといえるでしょう。
ただし、民泊新法で民泊経営を始めた場合、営業日数の制限は年間で180日以内です。いくら民泊経営の利益率が高いとはいえ、利益には上限があります。仮に営業日数の上限を超えてしまうと、6か月以内の懲役または3万円以下の罰金が科されるため、最低限得たい収益を考えておくとよいでしょう。
また、民泊経営は観光業の1つであり、社会情勢に大きく左右されるのも懸念点です。たとえばコロナ禍の2020年に観光庁が出したデータによると、民泊新法による民泊経営を廃止した理由で最も大きな割合を占めていたのが「収益を見込めないため」で、そのうち94.4%が新型コロナウイルス関連によるものでした。(※3)こうした社会情勢は制御できるものではありません。コントロールできない外的要因によって、運用が立ち行かなくなる可能性があることに注意しましょう。
一方、賃貸経営は、一度借主が決まれば長期的に安定した収益が見込めます。民泊経営に比べると利益率は低いですが、需要は多いという特徴があり、社会情勢といった外的要因に利益率が大きく影響されない点が魅力です。空室のリスクはありますが、対策を講じることで借主との長期契約が見込めます。
賃貸経営と民泊経営のどちらが儲かるかは明言できませんが、安定した収益を求めるのであれば、賃貸経営をおすすめします。
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賃貸経営と民泊経営それぞれにおすすめの人
毎月安定した収益を得たい方や、管理にかかる手間を少しでも減らしたい方には賃貸経営がおすすめです。一方、運営にかかる手間が多くても、高い利益率を求める方には民泊経営をおすすめします。ただし、利益率が高いといっても、その利益率が社会情勢によって大きく変化する可能性があることを頭に入れておかなければなりません。賃貸と民泊それぞれにメリットと注意点があるため、どちらを選択するのがよりよいのか、十分に検討してから決めるようにしましょう。
賃貸経営と民泊経営で迷ったら三井のリハウスへ
ここまで、賃貸と民泊の違いについて詳しく比較してきました。不動産投資として、賃貸にするか民泊にするか、この記事を参考に検討し、より自分に合った選択をしましょう。
三井のリハウスは都市部の分譲マンションの賃貸管理実績が豊富で、HPやポータルサイトへの掲載、グループ会社を含む独自のネットワークを生かした集客力が強みです。三井のリハウスでは、安心してマンションを貸し出すことができるように、賃貸管理の実績・ノウハウと万全のサポート体制が整っています。所有物件を賃貸に出すかお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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※出典1:「住宅宿泊事業の実態調査」、国土交通省 観光庁観光産業課 民泊業務適正化指導室
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/content/001479286.pdf
(最終確認:2025年5月28日)
※出典2:「投資用不動産マーケットレポート2024.2Q」、三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部
https://pro.mf-realty.jp/cms/sites/default/files/uploaded/market-report/2024-11/%E6%8A%95%E8%B3%87%E7%94%A8%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882024.2Q.pdf
(最終確認:2025年5月28日)
※出典3:「住宅宿泊事業の廃止理由調査について」、国土交通省 観光庁
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/content/001409256.pdf
(最終確認:2025年5月28日)
