一軒家を購入したいと思ったとき、まず気になるのはご自身の財布(預貯金や金融資産など)の状態や、「今、一軒家を購入すると得をするのか、損をするのか」ということなどではないでしょうか。一軒家購入は数千万円単位の高い買い物であり、ほとんどの場合、数十年のローンを組んで返済していかなければなりません。ここでは不動産マーケットや住宅ローンの視点から、一軒家購入について考えていきます。

住宅ローンの金利が1%違うだけで返済総額はこれだけ違う

一軒家購入の資金は「自己資金と住宅ローンを併せて用意する」という人がほとんどでしょう。そこでまずは住宅ローンの返済総額をシミュレーションしてみましょう。

借り入れ条件:借入額2000万円、35年ローン、元利均等返済
借り入れ全期間金利1%の場合……返済総額 23,711,746円
借り入れ全期間金利2%の場合……返済総額 27,825,861円

※参考サイト 住宅保証機構株式会社「返済額の試算」
https://www.hownes.com/loan/sim/repayment.asp

返済総額の違いは4,114,115円に及ぶことが分かります。同じ金額を借り入れるなら、少しでも低金利のタイミングで借入れができるといいというのが、お分かりいただけると思います。

マーケット情報と住宅ローン金利の関係

ところで「景気が良くなれば、住宅ローン金利は上昇する」「景気が悪くなれば、住宅ローン金利は下がる」ということは、なんとなく理解している方も多いでしょう。今日の日本では長いあいだ、住宅ローンの金利が低い状態が続いており「これ以上、金利が下がる余地はない」と予測する専門家もいたほどです。

一般に、景気が下落しきってから上昇に転じる頃には、「低金利のうちに住宅ローンを組んでマイホームを購入しよう」と考える人が増えます。また景気が良くなると、資金に余裕ができた会社が工場や店舗などの新規建設や増築などを検討し始めます。建設に必要な資材が高騰し、職人さんの人件費も上昇するため、住宅建設費がかさみます。そのため「低金利のうち、一軒家を購入しよう」と考える人も多いでしょう。

賃貸でなく一軒家を選ぶときは「そこで10年、20年と長く住む」ための物件を探す人が多いでしょう。好景気のときには、建築部材も良質なものが選ばれる傾向が強くなりますが、不景気になるとコストを抑えるために安価な部材が使われることもあります。長く住み続ける物件だからこそ、価格や品質面で妥協するのか、それとも隅々まで満足のいく選択をするのか、というのも大きなポイントです。
また、一軒家を購入すれば、新しくしたくなるのが家具・インテリアなどです。日本は家具・インテリアなどを輸入に頼っている部分が大きく、日本の景気が悪化し、円安に陥っている場合には輸入品の価格が高騰します。「こんなインテリアを買いたい」という希望を叶えるために、多くの費用がかかる可能性も出てきます。

そのため「金利が下がるときが一軒家購入のベストタイミング」というわけではないのです。

マーケット情報に左右され過ぎず決断する必要も

好景気で金利が上昇している局面で住宅を購入する場合、住宅ローンの金利は高くなるため、返済総額が大きくなってしまうことが大きなデメリットとなり得ます。
しかし、ここで視点を変えてみましょう。「一軒家が欲しい」という望みを叶えるために自己資金を貯め、さらに無理のない住宅ローンを組むべく様々なローン商品を検討するのに時間をかけたとします。そして「こんな家に住みたい」という希望を叶えるために、3000万円を確保できる見通しが立ったとします。
しかし、好景気によりインフレが進んでいるときには、様子をみているうちにさらに金利が上がり「希望のレベルの一軒家を手に入れるには3300万円が必要になる」という状況に変わってしまっている場合もあるのです。無理な買い物をしないことが大前提ですが、インフレ時は資金やライフプランニングなどの準備に時間を掛け過ぎることのリスクを考慮しなければなりません。

一軒家を購入してしまえば、マーケット情報に一喜一憂する必要はなくなり、ご自身の組んだ住宅ローンと向き合っていけばいいことになります。

マイナス金利政策と住宅ローンの関係は?

2016年1月下旬、日本初のマイナス金利導入が発表されました。ただちに預金者に影響がある政策ではなく、「各金融機関が日本銀行に預けてあるお金」に関する政策です。各金融機関は「ただ、日銀に預金をしておくだけでは結果として資産が減るのだから、企業や個人への融資を積極的に行う」という方向に舵を切ることになります。実際に、住宅ローン金利を下げ、住宅ローン利用者を増やそうとする金融機関が現れ始めています。

一軒家購入の目的は「その家で幸せに暮らすこと」であり、住宅ローン返済額を安く抑えるのはそのための手段です。マーケットの情勢に振り回されて決断するのではなく、ご自身の支払い能力に見合った買い物かどうか、住宅ローンを無理なく返せるかどうかをもとに、「買い時」を決めることが大切です。