不動産共有名義とは?メリットや注意点、名義の変更方法まで詳しく解説

不動産共有名義とは、1つの不動産を複数の人で所有することです。不動産を共有名義で所有することにはメリットもありますが、注意しなければならない点もいくつかあります。今回はそのメリットや注意点と併せて、名義変更の方法や売却方法までを解説します。

目次
  1. 不動産共有名義とは?
  2. 不動産共有名義のメリット
  3. 不動産共有名義の注意点
  4. 共有名義の変更や解消方法
  5. 共有名義の不動産を売却する方法
  6. 売却するなら不動産査定を検討しよう
記事カテゴリ 売却 購入 税金 ローン
2023.10.11

不動産共有名義とは?

不動産共有名義とは、一戸建てやマンション、土地などの不動産を取得するために共同で出資し、出資額の割合に応じた所有持分で登記(権利関係を社会に公示するため登記簿に記載)することです。たとえば、4,000万円の一戸建てを夫婦でそれぞれ2,000万円ずつ出資して購入した場合、それぞれ「2分の1」の所有持分での共有名義となります。

この共有名義で不動産を所有する事例には、単独で購入する資金がなく、共有名義でなければ購入ができないといったケースや、不動産を複数の相続人で相続したといったケースが考えられます。今回の記事では、共有名義の不動産について、そのメリットや注意点、ケース別の売却方法などをご紹介します。

住宅の契約書にサインする人

不動産共有名義のメリット

共有名義で不動産を所有すると、税金の特例措置への優遇や節税の面でメリットがあります。具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

住宅ローン控除がそれぞれに適用される

夫婦でマイホームを購入し共有名義にすると、それぞれの収入に対して「住宅ローン控除」を受けることができます。2023年の住宅ローン控除制度の概要は、住宅ローンの年末残高の0.7%(または最大控除額)が最大13年間(中古住宅は10年間)にわたって所得税、または住民税から減税されるというものです。共有名義のケースでは、住宅ローン控除がそれぞれで受けられるため控除額が多くなる場合があります。

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売却時に特別控除がそれぞれに適用される

マイホームを売却するときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除を受けられる特例があります。夫婦共有名義である不動産を売却するケースでは、夫婦それぞれが3,000万円の控除を受けられる可能性があります。

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居住用財産の3,000万円控除とは?適用要件や必要書類も併せて解説!

相続税が節税できる

共有名義にした場合、単独名義のときよりも相続税を抑えられる可能性があります。たとえば、夫婦のマイホームが共有名義ではなく夫の単独名義だった場合、不動産の名義人である夫が死亡すると、不動産の評価額がそのまま課税の対象となります。しかし夫婦で共有名義にしておけば、夫の持分のみが相続税の課税対象となるため、税額を減らすことができます。

机で資料を見る夫婦

不動産共有名義の注意点

不動産共有名義にはメリットもありますが、一方で次のような注意点もあります。不動産取得の際は、いくつかの注意事項を踏まえたうえで、慎重に名義人を決定しましょう。

共有者全員の同意がなければ売却できない

共有名義では、ほかの所有者の同意なしに売却することはできません。たとえ自分に9割の持分があったとしても例外ではなく、共有名義になっている名義人全員の署名・捺印が必要です。

共有者が死亡すると相続の対象になる

不動産の共有名義人が亡くなると、その人の持分は相続の対象となります。このとき複数名で相続してしまうと、もともと2人の共有名義であったのが、3人、4人と共有名義人が増えていく可能性があります。そうすると、不動産売却時などに共有者全員の意見がまとまらない、トラブルが発生するといったことも考えられるでしょう。

贈与税の課税対象となるケースもある

たとえば、不動産の共有名義人である妻が仕事をやめて収入がなくなれば、夫が妻の分も住宅ローンを払うこともあるでしょう。このケースでは、「妻から夫への贈与」と見なされ、夫に贈与税がかかる場合があります。

また、夫の出資のみで購入した不動産を妻と半分ずつの共有名義で登記してしまうと、夫から妻へ「不動産購入価格の2分の1相当額の贈与」があったと判断され、妻に贈与税が課せられる恐れもあります。当初想定になかった税金が発生しないよう、こういったケースでは特に名義人決定の際に気を付けるようにしましょう。

税金の模型とお金

住宅ローン諸費用が余分にかかる

不動産購入や住宅ローン契約に伴う諸費用として、事務手数料や登記手数料などがあります。共有名義の場合、名義人の数だけこれらの諸費用がかかることがあるため、名義人が1人の場合に比べて費用がかかりやすいといえます。

離婚の際の財産分与が複雑になる

万が一、夫婦が離婚することになった場合、不動産が共有状態になっているとさまざまなトラブルを引き起こす原因になります。ここでは、トラブルの例についてご説明します。

売却や賃貸借がしにくい
まず、前述した通り1人の意思で売却や賃貸借はできません。共有している不動産は、売却や賃貸借の際に名義人全員の同意が必要なため、どちらかが売却したいと思っても離婚相手の同意を得る必要があります。

離婚後も連帯保証の関係が続く
ペアローンを組んでいる場合、離婚後、片方が住宅ローンを返済しないときは、連帯保証人であるもう片方が支払いの義務を負わなければいけません。ペアローンとは、住宅ローンの借入方法の1つで、夫婦それぞれが契約するローンのことを指します。2人でローンを組むため、個々の負担を減らし大きな額の不動産を購入しやすいといった特長がありますが、お互いが連帯保証人になるため、離婚後、相手が返済を滞らないように注視する必要があります。

ローンの共有名義解消がしにくい
また、夫婦共有名義で住宅ローンを借り入れている場合、金融機関から離婚による名義変更を認めてもらえないケースがあることにも注意しましょう。住宅ローンを単独名義に変更するには、契約内容を変更することになるため、金融機関の許可が必要になります。よって、どうしても共有名義を解消したい場合は、ローンの借り換えを検討するとよいでしょう。借り換えによって単独の債権にすることが可能です。また、今より安い金利でローンを組むことができれば、返済の負担を減らすことができます。

上記の注意点を考慮したうえで、不動産を共有名義にするかどうかは慎重に検討するようにしましょう。

●離婚時の財産分与に関する記事はこちら
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共有名義の変更や解消方法

共有名義には、夫婦でマイホームを購入したり、共有名義の不動産を相続したり、何らかの理由で1つの不動産をほかの人と共有したりなど、さまざまなケースがあります。共有名義の不動産について名義変更の方法をケース別に見ていきましょう。

離婚時に名義変更するケース

離婚の際に財産分与で不動産の名義変更をするケースでは、離婚届の提出と夫婦間の協議が合意に達していることが求められます。

名義変更をするためには、夫婦ともに申請が必要です。この際、夫婦の合意があれば必要書類に署名押印し、法務局への申請を経て名義変更をすることができますが、どちらか一方が合意していない場合は、裁判所で解決することになります。ただし、離婚届の提出から2年以上が経過していると、財産分与請求ができなくなるため注意しましょう。

離婚をする男女のイメージ

共有者が死亡した際の相続のケース

不動産共有者の1人が亡くなった場合、その人に相続人がいれば遺産相続の対象となります。しかし、亡くなった人に相続人がいないケースでは、不動産を2人で共有していた場合、持分はもう一方の共有者に帰属されるのが一般的です。よって、このケースでは共有の状態が解消され、その不動産を単独で所有することになります。

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共有名義の不動産を売却する方法

共有名義の不動産を売却する方法はさまざまです。今回は、売却方法に悩んでいる方に向けて、3つの方法をご紹介します。ほかの共有者ともよく話し合って売却方法を決定しましょう。

共有者全員の同意を得て売却

共有者全員の同意を得て不動産を売却する方法です。不動産全体を売却するため、相場価格で売却できる可能性が高く、また売却後の代金は持分割合に応じて分割するため、トラブルにつながりにくいでしょう。しかし、トラブルが少ない傾向にある一方で、共有者のなかに1人でも反対する人がいると、売却ができないため注意が必要です。売却意思の相違がないか、事前に共有者同士で話し合いをするようにしましょう。

不動産を売却する手

自分の持ち分のみ売却

自分の持分のみを売却することもできます。この場合、自分以外の共有者の同意は必要なく、またほかの共有者に自分の持分を買い取ってもらうことも可能です。その場合、共有者のなかに買い取ってくれる人がいないか相談してみるとよいでしょう。

なお、自分の持分のみ売却する場合は、買取業者に依頼するのが一般的です。自分の持分のみ売却する場合、単独名義の不動産と比較すると、売却価格が低くなります。なぜなら、第三者が自分の持ち分を購入しても、権利のみの所有となるため、不動産を自由に利用することはできないからです。また、売却後にほかの共有者とのトラブルに発展する恐れがあるため、持分を売却する前に、あらかじめ伝えておくようにしましょう。

なお、売却の対象が土地の場合は、「分筆」という方法もあります。土地の分筆とは、1つの土地を複数に分割して登記する手続きのことです。分割すれば単独名義となるため、売却したり、貸したりなど自由に土地を活用することができます。ただし、分筆することによってそれぞれが所有する土地の形状や位置に差が生まれてしまうケースがあります。この場合、土地の資産価値が下がりやすく、分筆後に共有者間で揉め事が起きる可能性があるため注意が必要です。

●共有持分の売却に関する記事はこちら
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単独名義にしてから売却

共有者のうち1人が、ほかの共有者から全ての持分割合を購入し、単独名義にしてから売却する方法です。単独名義にすれば、不動産を自由に扱うことができるため、自分の意思だけで売却できます。売却前に共有の状態を清算し単独名義とすることで、ほかの共有者とのトラブルも発生しにくいといえるでしょう。

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住宅のミニチュアと契約書

売却するなら不動産査定を検討しよう

ここまで不動産共有名義についてメリットや注意点、ケース別の売却方法などをお伝えしてきました。先述の通り、共有名義にすると税金の特別控除のさらなる優遇が受けられたり、相続時の税金を抑えられたりする可能性があります。

しかしその一方で、通常の不動産と比べて売却しにくい、ほかの共有者とのトラブルに発展しやすい、などの注意点もあります。トラブルを防ぐためには、不動産購入時に名義を共有するかどうか慎重に検討してくださいね。

共有名義の不動産を売却して代金を分割する場合や、分筆した土地を売却するなどの場合には、まず不動産査定を受けるとよいでしょう。なお、三井のリハウスでは無料で不動産査定を行っています。累積取扱件数100万件以上の実績を生かし、経験豊富な担当者がご相談を承りますので、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
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