一戸建てや中古マンションなどの不動産購入を考えるとき、不動産価格の動向が気になる方も多いでしょう。不動産価格を大きく左右する要因の1つに「地価」があります。不動産の地価はエリアや条件によって異なります。
地価とは土地の販売価格ですが、取引価格の指標は地価公示法に基づいて毎年1回国土交通省が公示する標準地の価格。土地取引の目安とされます。

今回は全国の地価動向や地価公示情報、東京オリンピックがおよぼす影響についてまとめました。

不動産購入をご検討中の方は、この記事でご紹介する全国主要都市の地価動向をチェックして、最適な不動産探しにお役立てください。

全国の住宅地の地価推移と動向をチェック!上昇しているのは?

全国の住宅地の地価推移と動向をチェック!上昇しているのは?

2019年11月に国土交通省が「主要都市の高度利用地地価動向」を発表しました。そのなかで不動産鑑定士が、各地価の動向について評価コメントを出しています。

ここからは不動産鑑定士のコメントをもとに、全国主要都市の地価予測をご紹介します。

北海道札幌市中央区の住宅地・地価予想

札幌市営地下鉄東西線西28丁目駅から徒歩圏にある、高級住宅地域内に集積した中高層マション地区「札幌市中央区宮の森」について、将来の地価動向は「やや上昇が続く」と予想されています。

同地区は良好な居住環境に恵まれ、北海道内外から根強い人気があるなど、一般の人々やデベロッパー(土地開発業者)によるマンション需要が安定しています。上記のプラス要因から、当面堅調に推移すると見込まれています。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.20

東京都23区の住宅地・地価予想

東京23区の中でも、「東京BRT」(都心部と湾岸エリアを結ぶ専用道路を走るバス)による利便性向上が期待される「中央区佃・月島」の将来の地価動向は「やや上昇が続く」という予想です。国内有数の高級住宅地域である「千代田区番町」も「引き続きやや上昇する」と予想されています。

羽田空港へのアクセスに優れ、生活利便施設が充実した湾岸部の住宅地域である「品川区品川」や、利便性の高い「江東区豊洲」も「やや上昇」と見込まれています。

国内富裕層の需要が見込める「港区南青山」をはじめ、複数路線が乗り入れる交通利便性が特徴の「世田谷区二子玉川」や、都心部に近いエリアとの比較による割安感や地域の将来性などがある「江東区有明」も「やや上昇傾向が続く」という見通しです。
渋谷、歌舞伎町は上昇。銀座は横ばいです。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.27 P.29 P.31 P.36 P.37 P.38

東京都武蔵野市・立川市の住宅地・地価予想

住み心地のよい環境と生活利便性を兼ね備える都内有数の人気住宅エリア「武蔵野市吉祥寺」は、今後もマンション分譲価格・マンション賃料とも安定的な上昇傾向で推移する見通しです。

さらに駅徒歩圏のマンション開発供給が少ない状況が続いていることから、土地開発事業者からの強い開発需要が見込まれています。

JR中央線立川駅からの徒歩圏で、中高層共同住宅が多く見られる住宅地区の「立川市立川」も、マンション開発素地の供給があった場合は、複数の土地開発事業者の需要が競合するため、高い価格水準での取引となるようです。

以上のような理由から、吉祥寺、立川ともに「引き続きやや上昇傾向」と予想されています。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.39 P.40

神奈川県横浜市・川崎市の住宅地・地価予想

横浜市営地下鉄3号線のセンター南駅から徒歩圏にありマンションが建ち並ぶ住宅地区「横浜市都筑区都筑区センター南」は、大規模商業施設が立ち並び、生活利便性に優れており住宅地域として人気があります。

なかでも子育て世代を中心に堅調なマンション需要があり、将来の地価動向は「やや上昇傾向が続く」と予想されています。

生活利便性に優れ、幅広い世代から高い支持を得ている「川崎市麻生区新百合ヶ丘」も、堅調なマンション需要が続いていることから「引き続きやや上昇傾向」と予想されています。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.42 P.44

愛知県名古屋市の住宅地・地価予想

名古屋市内の高級住宅地である「名古屋市千種区覚王山」は、住宅地として成熟している地区です。同地区では高額な分譲マンションが売れる傾向にあるようです。

この地区は高級住宅地として安定した地位を築いており、不動産購入希望者の所得水準が高く、購買意欲に衰えが見られないことなどから、将来の地価動向は「引き続きやや上昇傾向」と予想されています。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.50

大阪府大阪市の住宅地・地価予想

近鉄大阪線大阪上本町駅から徒歩圏にあり、中高層のマンションが建ち並ぶ住宅地区の「大阪市天王寺区天王寺」。供給が続いている新築マンションの分譲価格は高額ながらも、販売状況は富裕層の堅調な需要を背景に好調を維持しています。

同地区は隣接する大阪上本町駅ターミナルとその周辺における一体再開発構想が公表され、今後はターミナルを中心とした発展が期待されています。このように複数のプラス要因が計画されているため、将来の地価動向は「上昇傾向が続く」と予想されています。

出典:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」令和元年11月
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
P.60

地価公示が示した地域による価格格差の拡大

地価公示が示した地域による価格格差の拡大

次に国土交通省が公表している2019年の地価公示(不動産価格を調査した公的な指標の1つ。1月1日時点)を見てみましょう。

資料によると、全国の住宅地における平均変動率は0.6パーセントと2年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大しています。エリア毎の地価公示結果を下記表にまとめました。

2019年地価公示結果

平均変動率上昇幅
東京圏1.3%
6年連続上昇
4年連続拡大
大阪圏0.3%
2年連続上昇
昨年より拡大
名古屋圏1.2%
6年連続の上昇
2年連続拡大
地方圏0.2%
平成4年以来27年ぶりに下落から上昇
地方四市(札幌・ 仙台・広島・福岡)4.4%
6年連続上昇
5年連続拡大
地方四市を除くそのほかの地域▲0.2%
下落幅の縮小傾向

三大都市圏や地方四市の公示地価は前年に引き続き上昇傾向にあり、地方圏でも27年ぶりに上昇に転じるなど地価には明るい変化の兆しが見られます。さらに地方四市を除くそのほかの地域の平均変動率も、マイナス0.2%と下落幅の縮小傾向が続いています。

出典:
平成31年地価公示結果の概要 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001280184.pdf

東京2020オリンピックで地価はどう変化する?

東京2020オリンピックで地価はどう変化する?

東京2020オリンピックの開催が決定した翌年2014年以降、東京都の地価上昇率は年々高くなっています。オリンピックに向けて首都圏では大規模な開発やインフラ整備が進んでおり、特定地域の地価上昇に影響を与えたことは否定できないでしょう。
今後は東京都だけではなく、周辺都市の地価上昇も予想されます。

またオリンピックが開催されることにより、訪日外国人によるインバウンド需要が伸びる傾向にあります。インバウンドによる地価上昇も続く可能性が高いでしょう。

ただし東京2020オリンピックやインバウンドによる地価の上昇は、首都圏を中心としており、地方の地価には大きな影響を与えないという見方が一般的です。

出典:
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「最近の地価の動向と今後の見通し」
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/09/report_190930.pdf

まとめ

不動産購入をご検討中の方にとって、地価は重要な情報です。

2019年現在は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏の地価は上昇傾向にあります。また地方四市の地価も上昇基調を強めています。
地方四市を除くそのほかの地方圏はわずかにマイナスで、地域によって格差もありますが、すが、下落幅が縮小しています。全国的に地価は上昇傾向といえます。

東京オリンピックや訪日観光客のインバウンド需要も、地価に影響を与えていると考えられます。不動産購入をご検討の方は、地価公示などの情報を参考に今後も地価動向をチェックされるとよいでしょう。

※この記事は2019年11月21日執筆時点での情報に基づいています。


参考URL:
【 全国の住宅地・地価推移と動向をチェック!上昇してるのは?】
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001316317.pdf
【地価公示が示した地域による価格格差の拡大】
http://www.mlit.go.jp/common/001280184.pdf
【東京オリンピックで地価はどう変化する?】
https://financial-field.com/living/2019/09/11/entry-56268
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/09/report_190930.pdf