マンションの寿命は何で決まる?決め手となる耐用年数について解説

マンションの寿命は、主に物理的耐用年数と法定耐用年数によって決まります。この記事ではこれらの耐用年数の違いに加え、マンション購入の際に、長持ちするかどうかを見極めるポイントも併せて解説します。

目次
  1. マンションにも寿命はあるの?
  2. 物理的耐用年数を決める要素とは?
  3. マンションを購入する際に見るべきポイント
  4. 法定耐用年数とは?
  5. 物理的・法的耐用年数が近づいたマンションの売却をするには?
記事カテゴリ 購入 マンション
2023.08.23

マンションにも寿命はあるの?

マンションには物理的な寿命と資産的な寿命があります。物理的寿命は「物理的耐用年数」によって決まり、この年数は建物の構造や改修工事の有無によって大きく左右されます。2013年に国土交通省が発表した資料によれば、鉄筋コンクリート造のマンションは平均して約68年で取り壊されることが多いとされていますが、同年の調査で鉄筋コンクリート造の建物であれば120年、改修工事などの延命措置を行えば最長で150年住むことが可能であることが明らかになりました。※1

また、マンションには物理的な寿命だけでなく、「法的耐用年数」によって決められる資産的な寿命もあります。この記事では、これらの耐用年数についての解説に加えて、マンションを購入する際に見極めるべきポイントについてもご紹介します。まずは、物理的耐用年数から見ていきましょう。

マンション

物理的耐用年数を決める要素とは?

先述の通り、マンションの物理的な寿命は「物理的耐用年数」によって左右されます。物理的耐用年数とは、住宅としての機能を物理的に果たすことが可能な期間を指し、その年数は建物の構造的な状態によって変動します。物理的耐用年数を決める要素は以下の通りです。

耐震基準

日本では地震による建物の倒壊が多く、建築基準法により耐震基準が定められています。耐震基準とは、地震が起きても倒壊または損壊しない住宅を建築するため、1981年6月に建築基準法施行令を改正して定められた基準のことです。1981年5月までの旧耐震基準では「震度5強の揺れでほとんど損傷しない水準」とされていましたが、新耐震基準では、「震度6強〜7程度の揺れでも倒壊しない水準」に変更されました。

なかには、旧耐震基準で建てられている中古マンションもありますが、そのような物件は現在の耐震基準で建築されたマンションに強度の面で劣るため、震災リスクに脆弱だといえます。マンションを購入する際は必ず、耐震基準について不動産会社に確認するようにしましょう。

耐震診断報告書の書類と家の模型とペン

メンテナンスが適切に行われているか

適切なメンテナンスが行われていればマンションの耐久性が維持できるため、物理的寿命も長くなります。外壁のコンクリートやタイル、共用部分、配管などがメンテナンス箇所の例です。

ただしメンテナンスが行えない場合もあります。たとえば、コンクリートに埋め込まれている配管の取り替え工事は行えません。特に1960年代から70年代の高度経済成長期に建設されたマンションの一部では、配管をコンクリートに埋め込んだ物件があるため、注意が必要です。素材にもよりますが、多くの場合、配管の耐用年数は15年と定められています。配管がコンクリートの中に埋め込まれている場合、交換ができないので、不具合が生じた際にマンションそのものが取り壊しになるケースも考えられます。

自分の住んでいる中古マンションの配管のメンテナンスが心配な方は、管理組合へ確認してみるとよいでしょう。マンション購入前の方は、配管設備について不動産会社に確認してみることをおすすめします。

マンションではこうした定期的な大規模修繕に備えて「修繕積立金」を徴収しています。現在マンションに住んでいる方は、外壁、コンクリート部分、水道管やポンプなどのコンディションをチェックすることで修繕積立金が適切に活用されているか、修繕計画がきちんと行われているかどうかを確かめるのも大切です。また、これから中古マンションを購入する方は、大規模修繕がいつ行われたか、それ以外にどのような修繕履歴があるかを不動産会社に確認しておくと安心でしょう。

また、物理的耐用年数が近づいたマンションは、入居者負担で建て替えが行われる場合もあります。この際、所有者の5分の4以上の賛成が必要になり、建て替えの費用は1戸あたり数千万円以上になることが考えられるため、実行するにはハードルが高いといえるでしょう。

●マンションの建て替えについて詳しく知りたい方はこちら
マンションは建て替えするの?実施の流れや負担額を解説

壁の工事をする男性

マンションを購入する際に見るべきポイント

せっかく購入したマンションが、すぐに建て替え工事の対象になってしまったら困りますよね。では、マンションを購入するには、どのようなことに着目して物件を選べばよいのでしょうか?

住宅性能評価書を確認する

「住宅性能評価書」とは、住宅性能表示制度により、マンションや一戸建ての建物の性能について第三者機関が評価した内容を表示した書面のことです。評価を行う第三者機関は国土交通大臣によって登録された機関で、全国共通のルールにのっとって公平に評価しています。

評価基準には、耐震性や、配管の点検・交換の維持管理・更新などが含まれます。なお、住宅性能評価書には、建物の設計を評価する「設計住宅性能評価書」と、施行中の現場検査と工事完了後の建物検査で評価する「建設住宅性能評価書」の2種類があります。

また、上記の住宅性能表示制度による、建物の評価項目の1つに「劣化対策等級」というものがあります。これは、建物を長持ちさせるための対策がどの程度行われているかを、3段階の等級で評価するものです。

・劣化対策等級3:「75〜90年以上にわたって大規模修繕が不要」
・劣化対策等級2:「50〜60年以上にわたって大規模修繕が不要」
・劣化対策等級1:「建築基準法が定める対策がなされている」

ただし、上記は通常の自然条件下で日常的なメンテナンスが行われていることを前提とした基準であり、マンションの寿命を保障するものではないことに注意が必要です。

建設住宅性能評価の書類

安心R住宅を選ぶ

安心R住宅とは、安心に関する一定の基準を満たす中古住宅に与えられる所定のロゴマークです。このマークの運用は、従来の中古住宅に対する、「不安」「汚い」「分からない」といったマイナスイメージを払拭し、購入希望者が安心して「住みたい」「買いたい」と思える住宅を選択できるように、国土交通省の告示によって施行されました。

具体的には、以下の要件を満たすものが安心R住宅のマークを付与される物件です。

・耐震性等の基礎的な品質を備えていること
・リフォームを実施済みまたはリフォーム提案が付いていること
・点検記録等の保管状況について情報提供が行われること※2

中古マンションを購入する際は、安心R住宅に適合している物件を選ぶと適切な状態が維持されているため、安心でしょう。安心R住宅制度についてより詳しく知りたい方は、国土交通省による「安心R住宅調査報告書」を確認してみるのがおすすめです。

法定耐用年数とは?

マンションには物理的な寿命だけでなく、資産的な寿命があります。この資産的寿命を決める指標となるのが「法定耐用年数」です。法定耐用年数とは、資産としての価値を維持できる期間を、国税庁が税金の計算のために定めたもので、減価償却費の計算を行う際に使用します。

減価償却とは、法定耐用年数に応じて不動産の取得費(購入費)を分割し、費用として毎年計上する会計処理のことを指します。減価償却費の計算方法には定額法と定率法の2種類がありますが、建物の場合に使用するのは定額法です。

定額法は減価償却費=建物の取得費(購入費)×償却率で計算します。償却率は「法定耐用年数」によって決まり、1年間に資産の価値が減少する割合のことを指します。なお、国税庁の「減価償却資産の償却率表」から耐用年数ごとの償却率が確認できますよ。

定額法の計算に使用する建物の取得費(購入費)には、以下のものが含まれます。

・建物の購入代金
・購入手数料
・建築代金
・設備費 
・改良費(資産を取得した後に加えた改良をするための費用で修繕費以外のもの)

また、物理的耐用年数と異なって法定耐用年数は、改修工事を行っても延ばすことができません。法定耐用年数は以下のように建物の構造や用途によって異なります。

構造用途法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造・
鉄筋コンクリート造
住宅用47
木造・合成樹脂造住宅用22
木造モルタル造住宅用20
れんが造・石造・ブロック造住宅用38

●建物の耐用年数と減価償却に関する記事はこちら
減価償却資産の耐用年数とは?不動産売却に役立つ知識を解説!

マンションの模型とお金

物理的・法的耐用年数が近づいたマンションの売却をするには?

住んでいるマンションの物理的・法的耐用年数が近づいてきたことで、住み替えを考える方もいらっしゃると思います。そのような場合は、法定耐用年数を超える前に売却することがおすすめです。

というのも、築年数が法定耐用年数を超えたマンションは資産価値が落ちてしまい、売りに出しても買い手が付きにくい場合があるためです。そのため、売却を検討するのであれば、できるだけ法定耐用年数を超える前に売却するのが得策といえます。

また、物理的耐用年数が近づいてきた物件だと、リフォームしたほうが売却しやすいのではないかと思うかもしれませんが、場合によっては買い手の趣味に合わず売却しにくくなることもあります。そのため、リフォームをするかどうかは、不動産会社に相談して検討するのがよいでしょう。

●マンション売却の流れについて詳しく知りたい方はこちら

上記のように住んでいるマンションの寿命が近づいてきたことで、売却を検討している方はまず、不動産会社に査定を依頼することから始めるとよいでしょう。査定には、主にAI査定・簡易査定・訪問査定の3つの方法があります。

AI査定と簡易査定は、インターネット上で簡単な不動産情報を入力するだけで、過去に取引されたデータをもとに査定価格が算出される方法です。訪問査定は不動産会社の営業担当者が実際に自宅を訪れて物件を調査することで、より精度の高い査定価格を算出できます。そのため、大まかな査定相場を知りたい方はAI査定や簡易査定、本格的に売却を検討している方は訪問査定を利用するのがおすすめです。

●マンション査定について詳しく知りたい方はこちら
中古マンションの査定で見られるポイントは?流れや不動産売却をスムーズに進めるコツも解説

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※1出典:期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新 による価値向上について,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001011879.pdf
(最終確認:2023年8月1日)

※2出典:安心R住宅,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000038.html
(最終確認:2023年8月1日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。
https://www.izumi-ohishi.co.jp/profile.html