中古マンションに新たな空間出現!「伝統建具」の力とは?

目次
  1. 住宅空間を伝統的な日本の建具でリノベーションするメリット
2016.09.26

「うだつが上がらない」という慣用句があります。生活などが向上しないという意味で、あまりありがたくない言葉ですが、そもそも「うだつ」とは、伝統的な日本家屋に多く見られた小柱、防火壁、装飾のことであり、また立派なうだつを「上げる」ことが見栄えのする家の特徴でもあったのです。

いまでは、装飾的な役割というイメージが強いうだつですが、本来、家屋が隣接している日本では、家屋と家屋の間において防火の役割を果たすものでした。

この一見、見栄の象徴のようなうだつにも、住宅空間のなかではしっかりと意味があるということに、伝統の力強さを感じます。

現在、中古マンションの需要はますます増えていますが、その際、リフォームではなくて、思い切って自分好みの間取りに変えてしまうリノベーションを選択するユーザーも少なくはありません。

もちろん、予算の問題もあり、すべて思い通りにとはいかないようですが、それでもこだわりの住環境を求めて、さまざまな趣向を凝らしたリノベーションが行われています。

そんななか、いま注目を浴びているのが、伝統的な日本の建具を取り入れた住宅空間です。

住宅空間を伝統的な日本の建具でリノベーションするメリット

伝統的な建具を取り入れることのメリットは、季節ごとの「建具替え」が行えることです。

元々、日本は四季が美しく、それぞれの季節を体全体で感じて愛でるのが日本人の美学でした。それが住環境の“進化”とともに、伝統的な日本家屋や生活に必要な建具は徐々に隅に追いやられ、西洋化した生活スタイルが普通となっていったのです。

もちろん、地球温暖化などによる気候変動に対応するために、エアコンなどの普及は必須になっていますし、それは熱中症などの疾病を防ぐ役割も果たしています。

しかし、その反面、温暖化が引き起こす環境問題と、人々のエコ意識の高まりもあって、地球に優しい生活環境を求められているのもまた事実なのです。その地球に”優しい”という意味ではまさに日本の伝統的な建具はもってこいかもしれません。

日本家屋の室内には障子、あるいはふすまがありますが、それをすだれやよしど(よしずを張った障子)にするだけで、部屋の空気の流れは変わり、また見た目もあきらかに涼やかになってきます。

日本の先人たちは季節ごとに建具替えをすることで、暑さ、寒さを乗り切り、またその季節を楽しむ知恵を持っていたのです。

また建具とは違いますが、日本家屋独特の三和土(たたき)という存在も、日本の気候を考えた伝統的なエントランスといえるかもしれません。

観光都市である金沢市では、地元の大学と提携して日本建具の継承を目指しているそうです。年々、その数が少なくなっているという、伝統建具の職人さんたちも、若い人たちの意識が変わることで引き継がれていくのです。

東京都内でも足立区などを中心に官民一体となった伝統的住宅の保存、修復などが行われています。

また、建築家やデザイナーなども日本の伝統的建物、建具のすばらしさに改めて着目し始めています。中古マンションをリノベーションする際には、このような実用的でもある“伝統”を見直してみるのもいいのではないでしょうか。