
新築や中古に限らず不動産取得の際に気がかりなのはお金の調達です。自己資金や住宅ローンなど、やりくりに頭を抱えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方を支援する、公的な補助金があることをご存知ですか。場合によっては最大で300万円もらえる制度もあり、検討してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。
本記事は、不動産向けの補助金の種類や最適な選び方など、これから不動産を取得しようとしている人に役立つ情報を集めました。
不動産の補助金・会計処理などにも注目し、補助金の制度についてわかりやすく解説します。
不動産の補助金とは?助成金との違い
不動産取得で得ることが可能な「補助金」とは、国や自治体などが政策目的を達成させるために税金を使って個人や中小企業などを支援する制度のことを指します。
また、助成金も一定の条件を満たしたうえで国や地方自治体から受け取ることが可能です。
名称も役割も似ている補助金と助成金ですが、受給の難易度が大きく異なります。補助金は設定されている条件を満たし審査に通過しなければ受給することができません。
補助金は予算に限りがあり、受け取ることのできる人数に制限があります。しかし、助成金は受給条件を満たしてさえいれば原則だれでも受け取ることが可能です。
また、補助金と助成金は申請期間も違います。補助金の場合は申請期間が短期間で設定されているケースが多いため、自分のタイミングに合わずに補助金自体に気がつかないこともあります。補助金を受け取るためには情報収集が重要です。
助成金はいつでも申請可能なので、自分の都合に合わせて申請することができます。
【2019年】不動産の取得時に適用される7つの補助金
補助金の意味がわかったところで、不動産に関連する補助金をみてみましょう。
最大300万円が支給される「長期優良住宅化リフォーム補助金」や、PC・テレビや食料品などと交換できる「次世代住宅ポイント制度」などさまざまな種類があるので、下記で詳しく解説していきます。
次世代住宅ポイント制度(新築住宅・住宅リフォーム)
消費税率10%で一定の性能をもつ住宅の新築やリフォームを実施し、2020年3月末までに契約の締結をした人に対してさまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。
新築住宅の場合は、「エコ住宅」「長持ち住宅」「耐震住宅」「バリアフリー住宅」のいずれかに適合すれば1戸あたり最大35万ポイントを取得することができます。
付与されたポイントは、1ポイントあたり1円相当の商品(PC・テレビ・食料品・アウトドア用品・防災用品・キッチン家電など)と交換できます。商品券や即時交換(追加的に実施する工事費への充当)は対象外です。
また、住宅リフォームの場合は、1戸あたり最大60万ポイントが取得できます。「窓・ドアの断熱改修」「外壁、屋根・天井又は床の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」「耐震改修」「バリアフリー改修」が対象です。
エネファーム設置補助金
家庭用燃料電池システム「エネファーム」を新築時や住宅購入時に導入すると、機器や工事の費用の一部に補助金が交付されます。
取得には「燃料電池システムを購入し実際に使用する」「設置予定の燃料電池システムがFCA(一般社団法人 燃料電池普及促進協会)指定の燃料電池システムである」「補助対象システムを6年間以上継続して使用する」など、8つの要件をすべて満たすことが必要です。
市町村補助金
国とは別に、都道府県や市町村でおこなっている不動産に関する補助金制度が利用可能です。直接ホームページや電話で確認することができますが、「一般社団法人住宅リフォーム推進協議会」などのサイトからも検索できます。
地方自治体で実施されているのは、耐震改修やリフォームの際に工事費などの一部を補助するものが多いです。また、人口減少を食いとめたい地方では、新築時に適用される補助金も積極的に交付しています。
地元の建設業者による工事であることや、市町村に居住または居住の予定であること、国の補助金との併用をしていないことが一般的な利用条件です。
ZEH支援事業(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
ZEH(ゼッチ) とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略です。
住宅の断熱性や省エネ性能を上げて太陽光発電などでエネルギーをつくることにより、年間の消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を意味しています。
補助金の対象条件は、「戸建てZEHを新築・購入、またはZEHに改修する」「所有者自ら居住する」「SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に登録されたZEHビルダー/プランナーが設計・建築・改修または販売している」ことです。
補助額は定額で1戸につき70万円。蓄電システム(定置型)を設置すると、上限30万円か、補助対象経費の1/3のいずれか低い額がプラスされます。
ZEHは先着方式となっており、3回の公募期間を設けています。必ず補助を受けられるわけではなく、公募規模を超えた申請があった場合は抽選で申請受付者が決定されます。
すまい給付金
消費税率10%が適用される新築・中古住宅の取得で、2021年12月末までに引渡しを受けて入居した人で、住宅ローン利用者・現金取得のいずれの場合も対象となっています。収入額の目安が775万円以下の人であれば最大50万円が給付されます。
すまい給付金は質の良い住宅ストック(既存住宅)の普及をうながす目的もあるため、「第三者機関の検査を受けた住宅であること」など一定の要件を満たした住宅が対象となります。
中古住宅については、消費税が非課税とされている個人間売買の物件は対象外です。
地域型住宅グリーン化事業
地域の中小工務店施工の省エネルギー性能に優れた木造住宅を新築する場合に補助金が交付されます。申請手続きは工務店など事業者がおこなうため、不動産取得者の手続きは特にありません。
また、補助金に関しても不動産取得者が受け取るのではなく、申請を行った工務店などに支払われる仕組みです。制度の利用を念頭において工務店と相談し、適用条件を満たす家を設計すれば費用を抑えることができます。
さらに、低炭素住宅やゼロ・エネルギー住宅は一般的な住宅に比べて電気代やガス代が安くなるという点もメリットです。
長期優良住宅化リフォーム
リフォームや中古住宅市場の活性化を図るため、住宅の寿命をのばして価値を上げる目的を持った制度です。住宅の性能向上を図るリフォームをすることで国から最大300万円の補助金が支援されます。
補助金を得ることのできる対象は、インスペクション(住宅診断)実施のもと「劣化対策」「耐震性」「省エネルギー性」「維持管理・更新の容易性(同時に三世代同居対応リフォームも)」の4つの性能向上をさせるリフォームが対象です。
2019年版不動産補助金制度一覧
以下は、新築・リフォーム・住宅取得時に一定の要件を満たしたうえで補助金が受けられる2019年版の制度の一覧です。
補助金の制度名 | 助成金額 | 申請期限 | |
---|---|---|---|
1 | 次世代住宅ポイント (新築・リフォーム) | 新築・最大35万円相当/戸、 リフォーム・最大 30万円相当/戸 | 2019年6月3日から |
2 | エネファーム設置補助金 | 最大8万円+α | 2020年2月21日まで |
3 | 市町村補助金 | 各補助制度による | 各補助制度による |
4 | ZEH支援事業(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) | 70万円~/戸+α | 2019年8月9日まで |
5 | すまい給付金 | 最大50万円 | 2021年12月まで |
6 | 地域型住宅グリーン化事業 | 最大 50~140万円/戸 | 2019年5月31日まで |
7 | 長期優良住宅化リフォーム | 最大 100万円~300万円/戸 | 2019年11月29日まで ※通年申請タイプ |
ZEH支援事業(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の制度は2020年度も実施される予定ですが、申請スケジュールは未定です。
また、地域型住宅グリーン化事業については今後の予定は現状不明となっています。
各種補助金の申請方法
不動産取得の補助金に関する申請方法についてみてみましょう。申請は、郵送やインターネットでおこなうことができるものから不動産会社や建築会社に代行してもらえるものまであります。
次世代住宅ポイント制度(新築住宅・リフォーム)
商品を交換するためには、次世代住宅ポイント制度事務局に対して「ポイントの申請」と「商品交換の申請」を行う必要があります。
商品交換の申請は、残りのポイントがなくなるまで複数回に分けて申請可能です。申請書類は自分で直接事務局へ郵送するか、受付窓口へ持参することができます。
エネファーム設置補助金
以前は申請申込書と受理通知書のやりとりを郵送でおこなっていましたが、現在はインターネット経由によるWeb申請が可能です。
申請者が直接おこなうことが可能で、平日・土日・祝日の8時から20時までの間に利用登録と申請入力ができます。
市町村補助金
地方自治体が設けている補助金は、地方自治体の担当窓口に申請を行います。補助金は募集期間が短いことがほとんどなので、補助金を受けたい自治体の区役所や市役所に早めに問い合わせることをおすすめします。
ZEH支援事業
申請ができるのは、「新築戸建住宅の建築主」「新築戸建建売住宅の購入予定者」「既存戸建住宅の所有者」ですが、第三者に代行を依頼することができます。
手続きはスケジュール管理などの専門知識を必要とする場合もありますので、ZEHビルダー・プランナーに依頼するのがおすすめです。
ZEHビルダー・プランナーとは、自社受注の住宅のなかでZEH(Nearly ZEHを含む)が占める割合を2020年度までに50%以上を目標とするハウスメーカーや工務店・建築設計事務所・リフォーム業者・建売住宅販売者などを指します。
すまい給付金
すまい給付金の申請者は、「住宅を取得し不動産登記上の持分を保有し」「その住宅に自分で居住する」人のことです。
申請は、取得した住宅に入居した後に可能です。申請期限は住宅の引渡しを受けてから1年以内ですが、当面の間1年3か月に延長しています。
すまい給付金事務局に郵送にて申請する「郵送申請」と、全国のすまい給付金申請窓口に持参して申請する「窓口申請」があります。
住宅事業者等が申請手続きを代行する手続代行も可能です。
地域型住宅グリーン化事業
不動産取得者が直接補助金を受けるのではなく、採択を受けた中小住宅生産者が補助金の交付を受けるため、不動産取得者である施主は間接的に補助金を受けることになります。
不動産取得者に還元される補助金額の明記が補助金交付申請時の条件となっていますので、見積もりで金額をしっかりと確認しましょう。
長期優良住宅化リフォーム
補助金の申請は工事施工業者がおこない、補助金を受けるのも業者となります。しかし、最終的にはリフォームの工事発注者やリフォーム済み住宅の購入者が補助金の還元を受ける仕組みとなっています。
補助金申請の手続きは複雑なため、業者にまかせることがほとんどです。発注者や不動産取得者は制度をしっかりと理解し、補助金制度に対応できる業者であるかを確認しなければなりません。
不動産業の起業で受けられる不動産の補助金はある?
これから不動産業を起業する場合などは、「創業補助金」という補助金制度があります。認定市区町村の支援を受けながら事業計画書を作成して申請すると補助金を受け取ることが可能です。
しかし、事業用であっても土地や建物などの不動産購入費は補助対象になっていません。
補助金で不動産を取得した場合の圧縮記帳について
「圧縮記帳」とは、不動産を購入・売却した金額から補助金の額を引いて購入価格にすることです。
利用することで、一時的な所得増加による税金の支払いを遅らせることができます。
利用できるのは個人間の土地売買であれば「特定の資産買い換え」の場合です。土地を売ったお金で他の不動産を買い換える場合に圧縮記帳を利用することができます。
しかし、土地にかかる税金の支払いを後回しにしても得になるということはありません。圧縮記帳は土地売却をおこなう法人が特に利用する手法で、仕組みが複雑なこともあり、専門の司法書士への相談が必要です。
まとめ
不動産向けの補助金について、制度の内容や申請方法、圧縮記帳など会計処理についてもまとめてきました。
国や自治体が運営する補助金は、原則的に返済しなくてもいいので、不動産取得時などにうまく活用すれば資金繰りで助けとなる制度です。
今回とりあげたものは2019年9月時点の情報なので、各制度は見直しで申請期限が過ぎたものでも次年度に再開されるものがあるかもしれません。
また、募集時期や条件が変更になることもあるので、常に情報収集することが大切です。
また、申請手続については不動産会社やリフォーム業者にまかせておけばよい制度もあるので、手がかかることはなさそうです。
まずは「どんな家に住みたいのか」ということを家族と話し合ってみてはいかがでしょうか。イメージに近い補助金を見つけて効果的に活用しましょう。
参考URL:
【不動産の補助金とは?助成金との違い】
https://www.smtlf.jp/realestateloan/lineup/individual_corporate/column/10.html
【【2019年】不動産の取得時に適用される7つの補助金】
https://www.sumai-fun.com/money/sintiku/
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000170.html
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http://chiiki-grn.jp/H31/summary/tabid/192/index.php
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000854.html【各種補助金の申請方法】
https://www.sumai-fun.com/money/sintiku/
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000170.html
http://sumai-kyufu.jp/
http://fca-enefarm.org/subsidy31/index.html
https://sii.or.jp/moe_zeh30/support/public.html#
https://xn--ickm4b1dyhj3iu63z37wa.jp/2019/08/28/2020-zeh-mlit/
http://chiiki-grn.jp/H31/summary/tabid/192/index.php
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000854.html【起業で受けられる不動産の補助金はある?】
https://www.nishidaystk.com/article/14875360.html【補助金で不動産を取得した場合の圧縮記帳について】
http://www.fudousan-plaza.com/article/322/
