
2016年6月1日、安倍首相は記者会見において、2017年4月1日から予定されていた消費税10%への引き上げを延期し、2019年10月まで先送りすることを発表しました。
不動産市場は、これにより大きな影響を受けることが予想されています。なかでも今後の新築マンションの価格に変動があるのではないかと言われています。果たして新築マンションの価格は上がるのでしょうか、それとも下がるのでしょうか。
2016年に入って、新築マンション市場は2017年4月からの消費税10%への増税を見込んで、活発な動きを見せていました。というのも、新築マンションは数千万円、なかには数億円という大きな買い物であるだけに、消費税が2%上がっただけで、支払う消費税額が大きく変わってくるからです。
一般的に新築マンションの価格は消費税込みの金額で表示されますが、消費税が課されるのは建物価格のみ。土地価格には消費税が課されません。
たとえば、税抜き価格6000万円の物件で、建物価格が4000万円、土地価格が2000万円だったとすると、4000万円の8%、つまり320万円が消費税額となります。これで消費税が10%に上がれば税額は400万円となり、80万円の増加となります。
6000万円の買い物で80万円の差が大きく感じるか小さく感じるかは人によって異なるかと思いますが、このお金で新しい家具、またはワンランク上の家具を買うこともできると考えると、決して小さな額ではありません。
そのため今年に入ってから、消費税が10%になる前に新築マンションを購入してしまおうという駆け込み需要を狙った不動産業界の動きが活発になっていたわけです。
消費税増税で見極めたい新築マンションを購入するタイミング
新築マンション購入の際、消費税は原則として物件引き渡し時点での税率が適用されます。つまり、2017年3月31日以前に引き渡されないと、消費税が10%になってしまうのです。
ただ、新築マンションは一般的に契約してから引き渡しまでに数カ月、物件によっては1年以上かかってしまいます。今すぐ契約しても、2017年3月末までの引き渡しには間に合わない可能性もあるのです。
そこで、新築マンションの購入には「経過措置」という特例が設けられていました。新築マンションのうち「内装やドアなど特別の注文ができる物件」であれば、2016年9月30日以前に契約すれば、引き渡しが2017年4月1日以降になっても消費税は8%が適用されるのです。
結果、8%適用のデッドラインである2016年9月30日までに、新築マンションの購入を契約するための駆け込み需要が増えていたわけです。このため、2016年前半は、新築マンションの販売が加熱気味で、人気のエリアによっては販売価格が高騰しているところもありました。
それが今回の消費税増税の延期により、慌てて新築マンション購入の契約を決める必要がなくなり、過熱気味だった需要に水がさされました。
これで価格高騰が収まる可能性もあり、また今後新規に販売される予定の物件も、消費税10%を見込んだ価格設定なので、2%上がらなかった分だけ価格が下がる可能性もあります。
しかも、新規マンション建築の工事費にかかる消費税も当然8%のままなので、予定より工事費が低くなり、それが販売価格に反映されることも考えられます。
それらの要素を踏まえると、新築マンションの価格はこれから下落、または少なくとも横ばいになるのではないかと思われますが、その一方で、地価は上昇傾向が続いており、これが新規物件の価格に影響を与える可能性も見えます。
2016年9月までに急いで物件購入を決める必要はなくなり、じっくりと物件を選ぶ余裕はできましたが、新規マンション価格が落ち着きそうな今だからこそ、手の届く範囲の価格で希望の物件が見つかるチャンスかもしれません。
