不動産投資の利回りの理想と最低ラインはどのくらい?計算方法も解説

不動産投資の利回りとは、物件価格に対して1年間でどれくらいの金額を回収できるかを表した割合のことです。表面利回り、実質利回り、想定利回りの3種類があり、その違いを理解することが大切です。不動産投資の利回りの計算方法や相場、利回りを確認する際の注意点について詳しく解説します。

目次
  1. 不動産投資における3つの利回りと計算方法
  2. 不動産投資の利回りの相場
  3. 不動産投資の理想の利回りと最低ライン
  4. 不動産投資の利回りのシミュレーション方法
  5. 不動産投資で利回りを確認する際の注意点
  6. 不動産投資の利回りに悩んだらプロに相談しよう
  7. よくある質問
記事カテゴリ 賃貸 マンション
2025.03.12

不動産投資における3つの利回りと計算方法

利回りとは、賃貸経営をする際に、物件購入価格に対して1年間の家賃収入がどれくらいの割合かを示したものです。利回りは物件の収益力を判断する材料の1つとされます。利回りの数字からは、その物件でどの程度の収益を得られるのか、また投資した資金を何年で回収できるのか、などが分かります。不動産投資の利回りは、主に以下の3種類です。

・表面利回り
・実質利回り
・想定利回り

それぞれ詳しく解説していきます。

不動産投資用マンションの外観

表面利回り

表面利回りは、税金や管理費などの経費を含めず、物件購入価格と1年間の家賃収入をもとにして計算する収益割合のことです。「グロス利回り」と呼ばれることもあります。表面利回りは以下の方法で計算します。

表面利回り(%)=(年間家賃収入÷物件購入価格)×100

たとえば、物件購入価格が5,000万円で年間家賃収入が300万円の場合、表面利回りは以下のように求められます。

(300万円÷5,000万円)×100=6%

実質利回り

実質利回りは、表面利回りに、購入時の諸費用、年間運営費、固定資産税、火災保険料、修繕費などを加味した収益割合のことです。実質利回りは以下の方法で計算します。

実質利回り(%)=(年間収入-年間諸費用)÷(物件購入価格+購入時諸費用)×100

具体的な例で考えてみましょう。年間収入300万円、年間諸費用50万円、物件購入価格が5,000万円で購入時諸費用が500万円の場合の実質利回りは、以下の式で求められます。

(300万円-50万円)÷(5,000万円+500万円)×100=4.55%

不動産投資では、実質利回りを重視し、判断の目安にすることが重要です。不動産投資では、物件購入の費用だけでなく、さまざまな諸費用が発生するため、表面利回りだけを見て判断すると、実際の収益とのずれが生じてしまいます。

なお、実質利回りの経費に含まれる具体的な諸費用は以下の通りです。計算に細かく入れ込むほど、現実的な実質利回りになるでしょう。

・登記費用
・司法書士への報酬
・仲介手数料
・不動産取得税
・火災保険料、地震保険料
・固定資産税
・管理委託手数料
・ローン返済額
・修繕費
・修繕積立金など

想定利回り

想定利回りは、一棟マンションや一棟アパート投資において、住戸が満室であることを想定しています。計算方法は以下の通りです。

想定利回り(%)=満室を想定した年間家賃収入÷物件購入価格×100

想定利回りは満室を想定しており、実際には思うように入居者が入らない、諸費用が高くなるといった理由で当初の想定を下回ることがあります。そのため、あくまでも目安として考えましょう。

また、物件広告に掲載されている利回りは、表面利回りか想定利回りが一般的です。諸費用はケースバイケースで、あらかじめ正確には算出できません。記載の利回りには、どこまでの費用が含まれているのかを不動産会社に確認できると安心です。

不動産投資用のお金

不動産投資の利回りの相場

利回り相場について地域別に見ていきましょう。以下の表は、三井不動産リアルティが表面利回りの平均値を記載したものです。(※1)

地域(※2)利回り(※3)
都心エリア3.9%
城南エリア4.2%
城西・城北エリア5.1%
城東エリア5.5%
横浜・川崎エリア6.0%

※2 都心エリア:港区・千代田区・中央区・渋谷区・文京区
   城南エリア:品川区・目黒区・世田谷区・大田区
   城西・城北エリア:杉並区・中野区・練馬区・豊島区・台東区
   城東エリア:江東区・墨田区・江戸川区・葛飾区・足立区
   横浜・川崎エリア:横浜市・川崎市

※3 一棟マンション・一棟ビル・アパートの利回りを指します。

上記の表を見ると、都心・城南エリアは利回りが低く、都心から離れるほど利回りが高いと分かります。ただし、投資物件を選ぶとき、利回りだけに着目するのは一概に正しい選択とはいえません。なぜなら賃貸経営の物件選びには、利回り以外にも物件の状態、築年数、環境など考慮すべき要素が多くあるからです。詳しくは後ほど説明します。

不動産投資の調査

不動産投資の理想の利回りと最低ライン

不動産投資における物件種別の理想の利回りは、以下の表の通りです。

物件種別新築中古
一棟マンション6%~8%8%~10%
区分マンション4%~5%5%~8%

中古物件の場合、物件の購入価格が比較的安いため、適切な家賃設定をすれば新築よりも高い利回りが期待できます。ただし、あまりにも物件が古く、リフォームや修繕が必要なときはそれらの経費を差し引かなければなりません。

不動産投資において理想の利回りや最低ラインを設定することは複雑です。その理由は、投資の目的によって許容する範囲が変わるからです。副業として不動産投資を行う場合、利回りの最低ラインは低くなるでしょう。一方、本業であればある程度生計が立てられる収入を得る必要があります。そのため、自身の不動産投資の目的に合わせて資金計画を立て、投資価値の高い物件を慎重に選ぶことが大切です。

不動産投資の利回りのシミュレーション方法

気になる投資物件に出会った場合は、利回りを計算して、収益のシミュレーションをすることがおすすめです。これによって、具体的な計画を立てやすくなります。

不動産投資の収益シミュレーションをする貸主

新築の区分マンションの場合

新築の区分マンションを想定して、利回りを計算してみましょう。

〈例〉

物件新築マンション(2LDK)
物件購入価格5,000万円
想定家賃収入240万円(20万円×12か月)
購入時諸費用500万円
年間管理費24万円(管理費2万円×12か月)

・表面利回り
(20万円×12か月÷5,000万円)×100=4.8%

・実質利回り
(20万円×12か月-2万円×12か月)÷(5,000万円+500万円)×100=3.9%

以上のような新築物件を想定した場合、表面利回りは4.8%、実質利回りは3.9%です。ただしここでは、管理費のみを諸経費として計算しています。実際はさらに諸経費が計上されるため、実質利回りは上記の数値よりも小さくなることが想定されます。

中古の区分マンションの場合

次に、中古の区分マンションのケースをシミュレーションしてみましょう。

〈例〉

物件中古マンション(2LDK)
物件購入価格3,500万円
想定家賃収入204万円(17万円×12か月)
購入時諸費用270万円
年間管理費24万円(管理費2万円×12か月)

・表面利回り
(17万円×12か月÷3,500万円)×100=5.8%

・実質利回り
(17万円×12か月-2万円×12か月)÷(3,500万円+270万円)×100=4.7%

以上のような中古物件を想定した場合、表面利回りは5.8%、実質利回りは4.7%です。ただし、中古物件の場合、今後リフォームやメンテナンスが必要になることも考えられます。その場合は、諸経費がかさむため、実質利回りはこの数値よりも下がると予想されます。

シミュレーションした時点で、利益が見込めない場合は、物件の購入は見送りましょう。また、中古物件では、リフォーム費用がかかるケースもあるため、注意が必要です。利回りを計算する際におおよそのリフォーム費用を把握できれば、諸経費に計上して、実質利回りを計算してみるとよいでしょう。

不動産投資で利回りを確認する際の注意点

利回りを確認する際に注意したいことは以下の4つです。

・表面利回りのみで判断しない
・経費を含めてシミュレーションする
・高利回りの物件に注意する
・物件の条件を確認する

先ほども説明したように、表面利回りは経費が考慮されていません。表面利回りだけを見て判断するのではなく、何にどの程度の費用が発生するのかを事前に調べてシミュレーションすることが重要です。

また、高利回りの物件が必ずしもよい物件であるとは限りません。いざ不動産投資を始めると、入居者がなかなか集まらない、建物の修繕に高額な費用がかかるなど、何らかの理由で思うように収入が得られないこともあるからです。そのため、高利回りという理由だけで物件を選ぶのではなく、以下のような条件を確認しておきましょう。

・築年数
・立地
・耐震基準
・瑕疵
・周辺環境

投資用賃貸物件を探す際、利回りの高さだけが全てではありません。大切なのは、需要が見込める、条件のよい物件かどうかです。なかには、理想より利回りが低くても、長期的にはよい投資先になる物件もあります。

物件条件を調べる人

不動産投資の利回りに悩んだらプロに相談しよう

不動産投資物件選びは、利回りも含め、立地や建物の構造、築年数、耐震性などさまざまな要素を考慮しなければなりません。個人やインターネットでは調べきれない情報や、疑問が出てくることもあるでしょう。その場合は、不動産投資に関する知識が豊富な不動産会社へ相談することをおすすめします。

なかでも、物件の特性や地域ごとの賃貸のニーズなどは、不動産会社に尋ねるとよいでしょう。

三井不動産リアルティでは、不動産の購入や賃貸募集、賃貸管理、売却まで、三井不動産グループの総合力を生かしてトータルでサポートしています。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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不動産会社の営業担当者

よくある質問

ここからは、不動産投資の利回りに関してよくある質問にお答えします。

不動産投資の利回り10%とはどのような意味?

不動産投資の利回り10%とは、仮に5,000万円で取得した物件を賃貸経営したときに、毎年500万円の家賃収入が得られることを指します。ただし、上記は表面利回りの場合であり、実質利回りは低くなるため注意が必要です。なぜなら、表面利回りには物件の購入以外にかかる諸経費が考慮されていないためです。

不動産投資の利回りの目安や最低ラインは?

不動産投資の利回りの目安は、新築の場合、一棟マンションで6%~8%、区分マンションで6%~8%です。中古の場合は、一棟マンションで4%~5%、区分マンションで5%~8%が目安です。

また、不動産投資の利回りの最低ラインを明確に出すことは難しいといわれています。なぜなら、物件の条件や不動産投資の目的によって異なるためです。

投資資金を回収するまでに何年かかる?

不動産投資における資金の回収期間は、一般的に5年~10年といわれています。短期間で回収しようとすると、家賃を上げる必要があるため、結果として空室が増えるリスクがあります。そのため、余裕のある投資計画を立て、焦らず行うことがポイントです。

※1 出典:「投資用不動産マーケットレポート2024.2Q」,三井不動産リアルティ株式会社
https://pro.mf-realty.jp/cms/sites/default/files/uploaded/market-report/2024-11/%E6%8A%95%E8%B3%87%E7%94%A8%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882024.2Q.pdf
(最終確認日:2025年2月27日)