築30年マンションを売るか貸すか?判断のポイントを比較解説

築30年のマンションを売るか貸すかで迷っている方に向けて、この記事では築30年のマンションの所有者が検討時に押さえるべきポイント、売ることと貸すことのメリットと注意点、そしてその判断基準について詳しく解説します。

目次
  1. 築30年マンションの所有者が押さえるべきポイント3選
  2. 築30年マンションを売るか貸すか?メリットと注意点を一覧比較
  3. 築30年マンションを売るか貸すかの判断基準
  4. よくある質問
  5. 築30年マンションを売るか貸すか納得のいく決断を
記事カテゴリ 賃貸 マンション
2025.06.20

築30年マンションの所有者が押さえるべきポイント3選

築30年のマンションを売るか貸すか検討する際に、以下の3つのポイントを押さえておくことが重要です。

・一般的なマンションの寿命
・大規模修繕工事の重要性
・建て替えという選択肢

これらのポイントを押さえることで、区分所有マンションを売るか貸すか、どちらがより自分に合っているかの判断がしやすくなるでしょう。以下で詳しく解説します。

一般的なマンションの寿命

マンションの寿命と聞くと、多くの方が財務省令によって定められている法定耐用年数の47年を思い浮かべるかもしれません。しかし、法定耐用年数と物理的なマンションの寿命は異なります。RC造(鉄筋コンクリート造)の物理的寿命に関する研究には、以下のようなものがあります。

寿命出典
50年以上篠崎徹・毛見虎雄・平賀友晃・中川宗夫・三浦勇雄(1974)「約50年を経過した鉄筋コンクリート造の調査」日本建築学会学術講演梗概集
117年飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会
120年
(外装仕上げにより延命し150年)
大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」
68年小松幸夫(2013)「建物の平均寿命実態調査」

(※1)

これらの研究結果によると、マンションには100年以上の物理的寿命があるといえます。

築30年マンション

大規模修繕工事の重要性

大規模修繕とは、築年数が古くなってもマンションの資産価値を担保し、居住者が安全かつ快適に住める環境を維持するための定期的な修繕のことです。大規模修繕工事の7割が12年~15年を周期(※2)として行われており、築年数がたつほど修繕工事の周期は短くなる傾向があります。

マンションの区分所有者は、大規模修繕工事のために毎月修繕積立金を支払う義務があり、近年、マンションの月あたりの修繕積立金は増加傾向にあります。そのため、築30年のマンションを所有し続ける際は、建物のメンテナンスにかかる費用を払い続けなければならない点に注意が必要です。一方、長期にわたり計画的に修繕を行うほうが賃貸に出した際の利回りが高くなりやすいため、大規模修繕工事には前向きな姿勢を保ったほうがよいでしょう。

築30年マンションの大規模修繕工事

建て替えという選択肢

築年数が古いマンションの場合、大規模修繕工事を実施するよりも、建て替えるほうが経済的な場合もあります。しかし、マンションを建て替える際は、区分所有法により区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要であるなど、合意形成の難しさやコストの問題から、マンションの建て替えはなかなか進んでいません。実際に、2023年末時点でマンションストック総数が約704万3,000戸(※3)であるのに対して、2024年4月1日時点でマンション建て替えの実績は累計297件(約2万4,000戸)(※4)であり、単純計算で全国のマンションの約0.34%しか建て替えの実績がないということです。

築30年マンションを売るか貸すか?メリットと注意点を一覧比較

築30年のマンションを売る・貸す、それぞれのメリットと注意点を表にまとめました。

比較項目メリット注意点
売る ・売却によりまとまった資金が得られる
・これまでかかっていたランニングコストが不要になる
・高額売却は望めない
・マンションを手放すことになる
貸す ・賃貸収入が得られる
・マンションを手放さずに済む
・リフォーム費用がかかる
・借主を見つけるのが難しい

これらのメリットや注意点について詳しく見ていきましょう。

売るメリットと注意点

築30年のマンションを売る場合、まとまったお金が入ることや、これまでかかっていた管理費や修繕積立金などのランニングコストがなくなるのはメリットです。売却額が住宅ローンの残債を上回っていたり、住宅ローンを完済したりしている場合は、売却によってまとまったお金が入ります。

しかし、マンションは築年数が古くなるにつれて売却価格が下がる傾向があります。マンションを購入する際、築年数が新しい物件のほうが魅力的に感じることもあるでしょう。マンションの築年数と平均売却価格の推移を示した表を以下に提示します。なお、この数字は全国の平均価格であり、マンションの売却価格は地域や物件の状況によって異なるため、注意が必要です。

築年数平均売却価格
0年~5年7,077万円
6年~10年6,655万円
11年~15年5,932万円
16年~20年5,509万円
21年~25年4,887万円
26年~30年3,344万円
31年~35年2,303万円

(※5)

上記の表から分かる通り、マンションは築年数が古くなるにつれて、売却価格を下げないと売ることが難しくなってしまいます。また、売却することで、これまで住んできたマンションを手放さなければなりません。マンションを手放すことに抵抗のある方は、十分検討してから売却に進むことをおすすめします。

貸すメリットと注意点

築30年のマンションを貸す際は、設備の老朽化が進んでいることが多く、リフォームや設備交換をしてから貸し出すことが一般的です。その場合は、リフォームにかかる費用が高額になることもあるでしょう。

また、マンションを借りる側は、築年数が新しく、駅に近い物件を好む傾向があります。築年数が30年を超えると、賃料を適切に設定しなければ、借主を見つけるのは通常よりも困難です。しかし、1度借主が決まれば、家賃収入という不労所得を定期的に得られるメリットがあります。また、マンションを貸すことで、これまで住んできたマンションを資産として保有し続けられるということも、メリットの1つとして挙げられるでしょう。毎月安定して収入を得続けたいという方は、賃貸に出すことがおすすめです。

なお、リフォームをご検討の場合、三井のリハウスではオーナーさまのご予算やご希望に合わせたリフォームプランをご提案いたします。ぜひご相談ください。

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築30年マンションを売るか貸すかの判断基準

マンションを売ることにも貸すことにもメリットと注意点が存在します。どちらがより自身に合っているかを判断して、今後の方針を決めることが重要です。売るか貸すかの具体的な判断基準は以下の通りです。

・マンションの市場価値
・マンションの維持管理費
・今後のライフプラン

詳しく確認していきましょう。

マンションの市場価値

築30年のマンションの市場価値を把握したうえで、売るか貸すかを判断するとよいでしょう。マンションは築年数を重ねるにつれて室内設備や共用施設の老朽化や耐震性の問題などで成約価格が下落したり、賃貸ニーズが減ったりすることが一般的です。

一方で、立地がよかったり、管理が行き届いていたりすれば、市場価値が保たれることもあるでしょう。マンションの市場価格は物件検索サイトから確認できますが、専門家や不動産会社に査定を依頼することで詳しく把握することが可能です。三井のリハウスでは、無料で賃料査定を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。

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築30年マンションの市場価値

マンションの維持管理費

マンションを保有する際は、維持管理費がかかります。維持管理費は、たとえば共用部分の清掃やメンテナンス、簡単な修繕といったことに使うために、毎月各区分所有者から管理組合が徴収するものです。

2023年のデータによると、管理費の平均は月あたり17,103円(※6)となっています。この管理費とは別に修繕積立金がかかり、その平均は月あたり13,378円(※7)です。さらに、税金や保険料などの費用も発生します。築30年のマンションを貸す場合は、これらのお金がかかることを念頭に置いておきましょう。

築30年マンションのメンテナンス

今後のライフプラン

今後のライフプランを逆算して、マンションを売るか貸すか決めるのがよいでしょう。売るか貸すかの判断基準となるライフプランは、たとえば以下のようなものがあります。

・そのマンションに再度住む予定があるか
・直近でまとまった資金が必要かどうか
・長期的な賃貸経営を考えているか

そのマンションに再度住む予定があったり、長期的に賃貸経営を行おうと考えたりしている場合は、貸すほうがよいでしょう。一方で、直近でまとまった資金が必要な場合は、売るほうがメリットです。いずれにせよ、自身の今後のライフプランに適した方向でマンションを売るか貸すかを決められるとよいでしょう。

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こうしたライフプランは、自身で考えるだけでなく、信頼できる不動産会社の担当者やFPなどの専門家に相談するのもおすすめです。三井のリハウスは、2万5,500戸(※8)を超える物件を管理しており、お客さま一人ひとりに合わせて丁寧に対応いたします。今後のライフプランにお困りの方はぜひ三井のリハウスへお気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

築30年のマンションを売るか貸すかに関する、よくある質問に回答します。

築30年マンションを貸して儲かる?

築30年のマンションを貸して儲かるかどうかは、物件の状態や立地、経営方法などによって異なるため、一概には断言できません。しかし、実質利回りを確認することで、マンション経営がうまくいっているかどうかを判断できます。実質利回りの計算式は以下の通りです。

実質利回り(%)={(1年間の家賃収入-諸経費)÷物件価格}×100

各不動産会社で公表されている利回りの平均などの数字を参考にしながら、どれくらいの利回りを確保したいか考えるとよいでしょう。

●不動産投資の利回りについてはこちら

築30年マンションを貸した際の利回り計算

築30年マンションの耐震性に問題はない?

1981年6月に耐震基準が大きく改定されました。以下に旧耐震基準と新耐震基準を比較した表を提示します。

旧耐震基準中規模程度(震度5強程度)の地震で損傷が生じない
新耐震基準中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めてまれにしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標とする

1981年5月31日以前に着工されたマンションは、旧耐震基準が適用されている可能性があり、2023年の段階で、マンションを含む全国の共同住宅のうち約4%(約110万戸)が耐震性不十分(※9)とされています。1981年5月31日以前に着工されたマンションで、耐震性に不安がある場合は、耐震診断を行うことがおすすめです。耐震性に問題がある場合は、建て替えや耐震改修を実施するとよいでしょう。また、これらの耐震性の問題に関しては、公共団体による支援を受けられます。詳しくは、各公共団体のWebサイトをご確認ください。

●住宅・建築物の耐震化についてはこちら

築30年マンション、20年後はどうなる?

築30年のマンションは経済的寿命が終わりに差し掛かっているといえますが、20年後の築50年であっても適切に修繕を施していれば、物理的には住むことが可能です。ただし、修繕や管理にかかるコストを十分に把握したうえで今後の方針を決めることが重要です。

なお、2024年末時点で築30年のマンションストック数は約142万2,809戸(※10)あるともいわれており、20年後には築40年マンションが約3倍以上に増加(※11)すると予測されています。つまり、築30年以上のマンションは、建物の状態があまりよくないだけでなく、競争も激しくなるため、希望の価格で売却することが難しくなるでしょう。

築30年マンションにかかる固定資産税は?

固定資産税は、一般的に以下の式を用いて求めることができます。

固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)

●固定資産税の計算方法についてはこちら

固定資産税評価額は、築年数が古くなるにつれて下がる傾向があり、それに伴って固定資産税も減少します。

新築価格が2,150万円、専有面積が40㎡のマンションの固定資産税額をシミュレーションしてみましょう。このとき、建物と土地の割合を1:2、固定資産税評価額を実勢価格の約70%、100の位以下を切り捨てし、経年減価補正率表に則って考えます。また、以下の2つの特例が適用されるとします。

・建物部分(3階建て以上の中高層耐火住宅等)に新築から5年間半額になる軽減特例
・土地部分に200㎡以下の「小規模住宅用地」には課税標準額が6分の1に軽減される適用措置

この場合、築年数ごとの固定資産税の額は以下に示す通りです。

新築5万8,000円
築6年8万1,000円
築10年7万4,000円
築20年5万8,000円
築30年4万4,000円

この表から分かる通り、築20年を超えると、固定資産税が大きく下がります。そのため、築30年のマンションの維持費としてかかる固定資産税は、かなり少ないといえるのではないでしょうか?マンションの維持費が高いからという理由で貸すのをためらう必要はないでしょう。

築30年マンションを売るか貸すか納得のいく決断を

築30年のマンションを売るか貸すか考える際は、これまで説明してきたポイントを押さえながら、自身により適した決断をするようにしましょう。

三井のリハウスでは賃貸と売却のダブル査定がご提案可能です。三井のリハウスの賃貸管理サービスでは、書類作成や覚書の締結をはじめとした煩雑な管理業務を幅広く対応し、貸主さまを万全にサポートいたします。築30年のマンションを売るか貸すかでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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※1出典:「「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取組紹介」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001014514.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※2出典:「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※3出典:「分譲マンションストック数の推移」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001625310.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※4出典:「マンション建替え等の実施状況」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623968.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※5出典:「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」、公益財団法人東日本不動産流通機構
http://www.reins.or.jp/
(最終確認:2025年4月25日)

※6出典:「令和5年度マンション総合調査結果」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※7出典:「令和5年度マンション総合調査の結果について」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001752287.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※8 2024年3月末時点

※9出典:「住宅の耐震化率(全国)」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001864405.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※10出典:「東京カンテイ 全国の分譲マンション普及率を都道府県・市区町村別に調査」、株式会社東京カンテイ
https://www.kantei.ne.jp/wp-content/uploads/2025/02/121karitsu-zenkoku.pdf
(最終確認:2025年4月25日)

※11出典:「築40年以上のマンションストック数の推移」、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623967.pdf
(最終確認:2025年4月25日)