
リロケーションとは?契約の方法や必要な費用、注意点などを詳しく解説!
リロケーションとは持ち主が長期不在で空き家になっている自宅を、一定期間のみ賃貸に出すことです。転勤や長期出張などの際に行うことで、家賃収入が得られるほか、家の劣化防止や防犯にもつながります。この記事ではリロケーションについて詳しく解説します。
目次
リロケーションの疑問を解消しよう!
期限付きの転勤や長期の出張などで、今住んでいる家を一定期間空けることになると「住宅ローンの支払いがもったいない」「家の清掃や手入れができなくなっても大丈夫?」「防犯が心配…」といったことを思う方もいるのではないでしょうか?
家を長期不在にする場合に有効活用できる方法の1つが「リロケーション(relocation)」です。リロケーションは家賃収入が得られるほか、カビや腐食といった家のダメージ軽減や防犯にもつながります。
そこでこの記事ではリロケーションに興味がある方や、これから家を長期不在にする予定のある方に向けて、リロケーションの概要や契約の方法、必要な費用や注意点などさまざまな疑問を解消していきます。まずはリロケーションがどのようなものなのかを見てみましょう。
リロケーションとは?
不動産用語としてのリロケーションは、海外赴任や転勤、長期出張などで家が留守になる場合に、不在になる一定期間だけ自宅を貸し出して有効活用することです。
賃貸借を行う場合、多くは貸主(オーナー)と借主との間で「普通賃貸借契約(普通借家契約)」が結ばれますが、リロケーションの場合には、「定期賃貸借契約(定期借家契約)」という契約が採用されます。
普通賃貸借契約とは更新を前提とした契約のことで、貸主からの解約は正当事由が必要であるため、難しいとされています。一方で、定期賃貸借契約は契約期間の満了後、再契約をしない限り借主は退去する必要があるため、貸主側の都合に合わせて貸し出す期間を限定することが可能です。ただし、貸主と借主が合意して再契約を行えば、契約期間が満了した後であっても借主は住み続けることができます。
冒頭でもお伝えしましたが、リロケーションを行うことは、不在時の家を利用して賃料収入が得られるだけでなく、留守宅に比べて家の劣化の軽減や防犯効果が期待できます。そのため、一定期間自宅を離れなければならなくなった家の上手な活用の仕方といえるでしょう。
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リロケーションはどのように行う?
リロケーションは、物件を賃貸に出す際に行うべき管理業務が多く、自力で対応することが難しいため、不動産会社やリロケーション会社、サブリース会社などの管理会社に管理業務を委託して運用するのが一般的です。
会社やプランによって委託できる業務の範囲は異なりますが、貸主が遠方にいる場合や、ほかに仕事をしている場合には、なるべく多くの業務を委託できると管理が手軽になるでしょう。不動産会社に委託できる主な業務内容としては、以下のような項目があります。
・入居者の募集・内覧対応
・借主との契約・解約手続きのサポート
・家賃の集金や管理
・入居者からのトラブルやクレームなどの相談対応
・設備不具合に関する対応
ここからはリロケーションを行う方法について見ていきましょう。
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運用方法:「転貸借」
リロケーションを行う場合、多くは転勤や海外赴任などで貸主が賃貸物件の近くに住んでいないことから、「転貸借(てんたいしゃく)」という形態の運用方法を取ることがあります。
転貸借とは、貸主が不動産会社をはじめとした賃借人に物件を貸し出し、賃借人がさらに転貸人としてその物件を第三者である転借人(入居者)へ貸し出す方法です。間に入る賃借人(転貸人)は、必ずしも不動産会社である必要はありませんが、ここでは不動産会社を賃借人(転貸人)として説明します。
下図のように転貸借では、貸主と転借人(入居者)はそれぞれ不動産会社と賃貸借契約を結ぶことになります。
転貸借の場合、転借人と契約を結んでいるのは不動産会社になるので、転借人にトラブルが起こっても不動産会社が対応します。海外や遠方にいるため、急なトラブルや手続きが起こった場合に管理会社と連絡が取りにくい方は、転貸借方式がおすすめです。
運用方法:「管理委託」
転貸借以外で、賃貸運営を不動産会社にサポートしてもらう方法として「管理委託」があります。管理委託とは、貸主と借主が直接賃貸借契約を結び、貸主が不動産会社に賃貸管理業務を委託する方法です。
管理委託は転貸借に比べると、不動産会社へ支払う手数料が少し安い傾向にあります。ただし、設備の不具合が起きた場合に修繕工事の内容を確認・実施判断するなど、入居者の生活のために貸主のタイムリーな対応が必要になります。そのため、連絡が取りにくい貸主の場合にはあまりおすすめできません。
リロケーションにかかる費用や税金
実際にリロケーションを行った場合、どのような費用が想定されるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
不動産会社に支払う費用
リロケーションサービスやサポートを不動産会社に依頼する場合には、不動産会社に費用を支払う必要があります。ここでは例として、三井不動産リアルティ株式会社での管理サービス利用料金※1をご紹介します。
項目 | 管理受託プラン | 転貸プラン |
---|---|---|
管理登録料 (賃貸借契約締結時) | 月額賃料の1か月相当額 (税込:1.1か月相当額) | 月額賃料の1.5か月相当額 (税込:1.65か月相当額) |
毎月の管理手数料 (マンション) | 月額賃料等の5~7%相当額 (税込:5.5~7.7%相当額) | 月額賃料等の9%相当額 (税込:9.9%相当額) |
毎月の管理手数料 (一戸建て) | 月額賃料等の6%相当額 (税込:6.6%相当額) | 月額賃料等の9%相当額 (税込:9.9%相当額) |
更新事務手数料 (普通賃貸借契約の場合) | 更新後新賃料の0.5か月相当額 (税込:0.55か月相当額) | 更新後新賃料の0.5か月相当額 (税込:0.55か月相当額) |
再契約管理登録料 (定期賃貸借契約の場合) | 再契約後新賃料の0.5か月相当額 (税込:0.55か月相当額) | 再契約後新賃料の0.5か月相当額 (税込:0.55か月相当額) |
料金の項目や設定されている金額は、会社や利用プランによって異なるため、契約前に確認しておきましょう。
家賃収入にかかる税金
リロケーションによって得た収入は不動産所得として扱われ、それに対して所得税と住民税がかかります。不動産所得は、物件を貸し出すことによって得られた総収入から必要経費を差し引いたものとなります。必要経費の主な項目は以下の通りです。
・固定資産税
・都市計画税
・住宅ローンの利子
・不動産会社への手数料 など
実際の所得税や住民税の金額は、不動産所得を含めた総所得から、各種控除を引いたうえで、以下の式により算出されます。
・所得税の金額 = 課税所得 × 所得金額に応じた税率 – 基礎控除
・住民税の金額 = 均等割 + 所得割 = 5,000円 + 課税所得 × 10%
所得税は、所得額が多いほど税率が高くなる「累進課税」の仕組みが採用されています。一方で住民税は、納税額が一律で決まっている「均等割」と、税率が10%で固定されている「所得割」の2種類により構成されています。
不動産所得が年間20万円以下の場合は、不動産所得に対する確定申告は不要です。しかし不動産所得が赤字の場合には、確定申告をすることで「損益通算」を行い、所得額を少なく申告できるため、納税額が抑えられる可能性があります。そのため、リロケーションを行うにあたっては、確定申告を行うことがおすすめです。
●不動産所得の確定申告の種類や手続きに関する記事はこちら
不動産所得の確定申告はマスト?申告の種類や方法を解説
●確定申告書の作成はこちら
国税庁 確定申告書等作成コーナー
リロケーションを行う際の注意点
実際にリロケーションを行う際に、どのような注意点やトラブルが想定されるのかを事前に知っておくと対策も取りやすくなるでしょう。主な注意点・トラブルについては以下の通りです。
借主が決まりにくい
リロケーションで家を貸すとき、定期賃貸借契約を採用したことにより、借主(入居者)が見つかりにくいことがあります。なぜなら、定期賃貸借契約ではあらかじめ借りられる期間が決まっているため、長く同じ物件に住み続けたいと考えている方の需要を満たせないためです。
相場より家賃は安くなる
定期賃貸借契約で物件を貸し出す際は、契約期間が限られていることで普通賃貸借契約と比べると需要も限定的になるため、契約期間が2~3年程度の短い場合には、賃料が相場より1~2割安くなる傾向にあります。
なお、借主を募集している間も住宅ローンやマンション管理にかかる費用、修繕積立金の支払いは発生します。そのため、相場通りの賃料に設定して空室が続くよりも、少し安めの賃料で早く入居してもらうほうが、総合的に金銭面での負担が減る場合があります。「どうしたら収入が得られるか」をよく考えて、賃料を設定することが重要です。
ただし、契約期間を長く設けられたり、立地がよかったりする場合には、通常の賃料相場で借り手が見つかることがあります。好条件の物件を貸し出す場合には、相場に合わせた賃料設定とするかどうか、不動産会社と相談してみるとよいでしょう。
三井のリハウスでは、賃貸経営を行う物件がどのくらいの賃料で貸し出せるかを把握できる「賃料査定」を実施しています。リロケーションを検討している方は、気軽に受けてみてくださいね。
●賃料査定のお問い合わせはこちら
●賃料査定の方法や不動産会社の選び方に関する記事はこちら
賃料査定の方法とは?不動産会社の選び方まで詳しく解説!
室内や設備が傷つく可能性がある
家を貸し出せば、入居者の利用によって室内や設備に傷が付いてしまったり、退去時に修繕費用を貸主と借主のどちらが支払うかをめぐって、トラブルに発展したりすることがあります。通常の生活の範囲で損耗するような不具合は貸主負担となることが一般的ですが、借主の故意・過失がある場合は借主負担となるケースもあるので注意が必要です。
このようなトラブルを防ぐためには、あらかじめ入居条件を設定し、汚損の原因となるペットの飼育や室内での喫煙などを禁じるといった内容を重要事項説明に記入しておくことが大切です。ほかにも、不動産会社による入居者審査の基準がどのように設定されているのかも確認しておきましょう。
また、不動産会社によっては修繕費用のサポートを行ってくれる場合があり、利用することで支出を抑えることにつながります。事前に契約内容を確認し、サポートの内容を確かめておくとよいでしょう。
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家を貸すことのメリットは?知っておきたい注意点や賃貸経営を成功させるためのポイントなどを解説
信頼できる不動産会社を選ぶ
リロケーションにはさまざまな管理業務が必要であり、知識がないとトラブルが発生する恐れがあるため、信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。
たとえば先ほどお伝えしたように、リロケーションは借主が見つかりにくい傾向があります。このような場合でもリロケーションに関する提案やノウハウが豊富で、評判のよい不動産会社に賃貸管理・仲介を依頼することで、よい借主が早く見つかる可能性があります。また不動産会社によって得意としている地域や物件タイプが異なることもあるため、自分が貸し出したい物件とマッチする、集客力が高い不動産会社を選ぶようにしましょう。
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不動産会社のよい選び方は?ポイントや注意点を解説
リロケーションの主な流れ
ここからはリロケーションの流れについて解説します。主な流れは以下の通りです。
・リロケーションを委託する会社を選ぶ
・クリーニングやリフォームなど家を貸し出す準備を行う
・入居者募集や審査を行う
・入居者と契約を結ぶ
上記のようにリロケーションを行うにはさまざまな工程があるため、引越しの予定が確定したタイミングで、早めに動き出すことが大切です。転勤の内示のタイミングにもよりますが、可能であれば引越しの2か月前ぐらいまでに委託する不動産会社を絞り込み、1か月前ぐらいに正式に不動産会社と管理委託の契約をするとよいでしょう。
入居者が物件探しを行うにあたっては、約2か月前を目安に探し始め、1か月前には本腰を入れるのが一般的です。入居者募集から契約までには平均1~2か月かかることから、引越しの直前に慌てることのないよう、余裕を持ったスケジュールで行動することを心がけましょう。
リロケーションを検討するなら不動産会社に相談しよう
ここまで、リロケーションとはどのような賃貸の方法であるかを解説してきました。今住んでいる家を空き家にすることで発生するリスクを回避するなら、一定期間貸し出して有効活用できるリロケーションのメリットは大きいといえるでしょう。
家を貸し出すほかに売却するという選択肢もありますが、一度売却するとその物件には住めなくなってしまいます。リロケーションを行えば、再度その家に住むことができるため、転勤者や長期出張の可能性がある方なら、リロケーションを検討してみることがおすすめです。
急に決まる転勤や出張で、何から始めたらよいか分からず不安や疑問があるという方もいるのではないでしょうか?三井のリハウスでは、長年の実績と経験、幅広いネットワークによる充実したプランをご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。またお伝えした通り、無料でできる賃料査定サービスもご提供中なのでぜひ一度お試しくださいね。
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※1出典:充実の賃貸管理サービス,三井不動産リアルティ株式会社
https://www.rehouse.co.jp/lend/plan/
(最終確認:2023年9月19日)
