家賃の値上げ交渉は可能?正当な理由や交渉を成功させるポイントを解説

家賃の値上げは、借地借家法が定める「正当な理由」を満たせば可能です。しかし、借主への事前の通知や入念な説明が必要になります。今回は、値上げの合意を得るために必要な手順や手続きについて解説するとともに、交渉がスムーズにいかない場合の対処法をご紹介します。

目次
  1. 家賃の値上げ交渉は可能か
  2. 家賃の値上げ交渉をするための正当な理由
  3. 家賃の値上げ交渉に関する判例
  4. 家賃の値上げ交渉の手順
  5. 家賃の値上げ交渉を成功させるためのポイント
  6. 家賃の値上げを断られたらどうすればいい?
  7. 家賃の値上げ交渉のノウハウが豊富な不動産会社を選ぼう
記事カテゴリ 賃貸 費用
2025.11.08

家賃の値上げ交渉は可能か

家賃の値上げ交渉は、正当な理由があれば可能です。正当な理由かどうかは、物件の需要や周辺の賃料相場、かかる税金や管理費などによって判断されます。以下は、借地借家法第32条1項の引用です。

(借地借家法第32条1項)
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。(※1)

家賃の値上げは、借地借家法第32条に定められる「借賃増減請求権」にもとづいて、貸主(オーナー)が借主に対して請求できる権利です。借主が貸主に対して家賃の値下げを請求することも可能ですが、今回は貸主から借主への家賃の値上げ請求について解説していきます。

家賃の値上げ交渉

家賃の値上げ交渉をするための正当な理由

家賃の値上げ交渉が正当であると認められるケースとして、大きく以下の2つが挙げられます。

・土地や建物の価値上昇
・税金・管理費用負担額の増加

借賃増減請求権とは、「客観的に相当である賃料」の増減額を認めてもらうものであり、「請求する側が相当であると考える賃料」の増減額を認めてもらうものではありません。以下でそれぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

●家賃相場の推移についてはこちら

●家賃収入にかかる税金についてはこちら

不動産の価格推移

土地や建物の価値上昇

家賃の値上げ交渉が可能になる理由として、土地や建物の価格の高騰が挙げられます。具体的には地域の再開発、建物のリフォーム・リノベーションによる魅力度向上などの理由から、賃貸物件の住宅需要が高まることがあります。

土地や建物の価値が上昇し、周辺の類似物件の家賃相場が値上がりしているにもかかわらず、以前と同じ家賃のままでは、貸主は本来得られるはずの利益を損失していることになるでしょう。

土地や建物の価値上昇は、周辺の費用相場から確認でき、費用相場は賃料査定により算出できます。三井のリハウスでは、住所と物件情報を入力するだけで簡単に賃料査定ができるので、ぜひ一度、三井のリハウスで賃料査定を受けてみてはいかがでしょうか。

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税金・管理費用負担額の増加

土地や建物の価値が上がれば、比例して固定資産税の課税金額も増えます。固定資産税額は3年に1回のタイミングで見直されるため、将来的に課税金額が増える可能性もあるでしょう。

特に、分譲マンションの場合は、修繕積立金や管理費が経年に伴って値上がりする可能性があります。このように、収入に対して支出が増えてしまった場合も、正当な理由として過去に認められた事例が確認されています。

家賃の値上げ交渉に関する判例

ここでは、家賃の値上げ交渉を行う際の正当な理由にもとづいて、実際に家賃が値上げされた判例を紹介します。

その事例は、2008年4月30日に大阪高等裁判所で行われた裁判の判例です。この裁判では、商業ビルのオーナーが原告となり、あるテナントを被告として、家賃を増額するように要求しました。原告側は、当初の家賃から大幅に値上げすることを要求しましたが、それを被告が拒否したことで裁判に発展しました。

周辺家賃相場、商業ビルの他テナントの家賃上昇や、土地・建物の価格上昇もみられなかった一方で、当初の家賃が話し合いの末に減額して設定したものだったことを考慮すると、借地借家法第32条1項にあたると判断しました。その後、家賃の相当値上げ額を調査したうえで、その分の家賃を値上げすることになりました。

この判例では、32条内の「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当になったとき」という文言が適用され、要求額のうち正当と判断された分が値上げされた事例です。(※2)

家賃の値上げ交渉をする貸主

家賃の値上げ交渉の手順

家賃の値上げ交渉をする際の手順は以下の通りです。

1.家賃値上げの理由を書面化する
2.家賃値上げの請求を通知する

以下でそれぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

1.家賃値上げの理由を書面化する

家賃の値上げを交渉したい場合は、まず値上げの正当な理由を明確にし、それが分かる文書を作成しましょう。税金や管理費が上がっていることを理由にするには、証明するための書類が必要です。また、周辺相場の上昇が理由の場合は、周辺相場のデータを示すなど、客観的な根拠を提示します。借主にとって納得感のある交渉を行うには、値上げが妥当であると理解できる文書を作成し、説明しなければなりません。

周辺相場を調べる際は、無料で受けられる不動産会社の賃料査定の結果から確認することをおすすめします。ぜひ三井のリハウスで賃料査定を受けてみてはいかがでしょうか。

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2.家賃値上げの請求を通知する

家賃の値上げを請求する場合、契約の種類にかかわらず法律上では通知時期の規定はありません。ただし、借主は値上げに応じるか退去するかを検討しなくてはならないため、急な通告によるトラブルを避けるためにも、値上げが決定した時点で早めに通知するのがよいでしょう。

上記のような手順を踏み、入居者から合意を得られたら、覚書を作成します。将来的な契約に備え、合意内容を書面にしておくことで、その後のトラブルを防げるでしょう。

家賃の値上げ交渉を成功させるためのポイント

家賃の値上げ交渉を成功させるためのポイントは以下の通りです。

・借主が納得できる説明と見合った金額を提示する
・交渉を行う旨を早いうちに通知する
・やりとりの記録を残しておく
・専門家に相談する

以下でそれぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

家賃の値上げ交渉成立

借主が納得できる説明と見合った金額を提示する

値上げ交渉を行う際には、背景を具体的に説明することで、借主に納得してもらいやすくなります。相手の立場を理解して、家賃の値上げについて納得してもらえる理由を説明しましょう。

また、提示する値上げの理由に対して相応な金額を提示し、過剰な値上げを行わないことも、家賃の値上げ交渉を成功させるうえで重要なポイントです。家賃を値上げすることで、貸主の収入は増加する一方、値上げ後の家賃に納得のいかない借主が退去してしまうと、収入がなくなってしまいます。家賃の値上げをする際には、妥当な金額かを慎重に検討し、借主に納得してもらいやすい増額幅にするよう注意しましょう。

交渉を行う旨を早いうちに通知する

貸主と借主の双方が納得のいく結果にするためには、家賃の値上げを早めに通知することが大切です。通知が契約更新の直前になってしまうと、お互いの準備期間がとれないため、貸主と借主の双方に悪影響を及ぼしてしまいます。家賃の値上げを決定した時点で、早いうちにお知らせするとよいでしょう。

やりとりの記録を残しておく

貸主と借主間でやりとりした記録を残しておくことも重要です。書面やメールとして記録に残すことで、「言った」「言わない」の争いが生じることを防ぐためです。記録に残すことで、やりとりが記憶にも残りやすくなり、交渉がスムーズに進む可能性が高いでしょう。

専門家に相談する

専門家に相談することは、家賃の値上げ交渉を成功させる最も効果的な方法です。知識と経験が豊富な専門家に相談すれば、それらのノウハウを生かした助言が得られます。弁護士や不動産会社など、状況に合わせて依頼するとよいでしょう。

このとき、不動産会社が家賃変更の交渉に直接かかわってしまうと非弁行為にあたるため、不動産会社のサポートは交渉前後に限るという点に注意しましょう。三井のリハウスは、豊富な実績と経験をもとに、担当者が状況に合わせて柔軟に対応します。無料相談も受け付けていますので、ぜひ一度ご検討ください。

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家賃の値上げを断られたらどうすればいい?

借主へ家賃の値上げを交渉し、断られてしまった場合、基本的には値上げすることができません。これは、借地借家法には、借主の権利を保護する面があるためです。また、特約で一定期間、家賃の増減が禁止されている場合もあります。契約に関する書類は、交渉前にしっかり目を通しておきましょう。

しかし、家賃の値上げを断られた場合でも、弁護士や不動産会社といった専門家に相談することで状況が変わることもあります。三井のリハウスでは、賃貸に関するご相談を受け付けております。どうすればいいか迷っているという状況でも問題ございませんので、ぜひ一度、無料相談をご検討ください。

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家賃値上げの相談に応じる不動産会社の担当者

家賃の値上げ交渉のノウハウが豊富な不動産会社を選ぼう

これまで、値上げ交渉に必要とされる正当な理由や、値上げ交渉の難しさ、実際の判例などについて解説してきました。借主の権利を保護しながら、自身にとっても納得のいく家賃を設定するために、交渉前の入念な準備は欠かせません。

値上げ交渉を成功させるためには、値上げの根拠となる客観的なデータを提供したり、信頼できる不動産会社に過去の交渉事例を尋ねたりすることが大切です。三井のリハウスの賃貸管理サービスでは、貸主と借主の間を取り持ち、双方が納得のいく契約の実現をサポートします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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※1出典:「借地借家法」、e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
(最終確認:2025年10月29日)

※2出典:「建物賃貸借契約における賃貸人の借地借家法32条1項に基づく賃料増額請求権を認容し、相当賃料額を認定した事例」、一般財団法人不動産適正取引推進機構
https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2024/11/74-138-1.pdf
(最終確認:2025年10月29日)