土地の名義変更とは?手順や必要書類、不動産売却までスムーズに進めるコツを解説!

土地の名義変更とは所有者が変わったときに行う手続きのことです。名義変更をしないと、所有者であることを主張したり、売却したりすることができません。この記事では土地の名義変更の手順や必要書類、不動産売却までスムーズに進めるポイントなどを解説します。

目次
  1. 土地の名義変更とは?
  2. 売買で土地の名義変更を行う場合
  3. 相続で土地の名義変更を行う場合
  4. 贈与で土地の名義変更を行う場合
  5. 財産分与で土地の名義変更を行う場合
  6. 土地の名義変更を行う際の注意点
  7. 土地の名義変更は専門家に依頼するべき?
  8. 手順や必要書類を知って土地の名義変更をしよう
記事カテゴリ 売却 購入 土地
2023.09.04

土地の名義変更とは?

土地の売買、あるいは土地の相続などが行われたときには、土地の所有者が変わったことを法的に証明するために、「所有権移転登記」と呼ばれる名義変更を行います。名義変更を行うと、不動産の状況や権利関係を法的に示した「登記簿」という書類が更新されます。現在、登記情報は法務局で電子管理されているので、手元に情報を置いておきたい場合は登記事項証明書を交付してもらいましょう。

所有権移転登記は法律によって義務化されていません。ただし登記していない場合は、その土地を利用・管理していたとしても、ほかの人に対して土地の所有者であることを主張したり、売却したりすることができなくなってしまいます。

名義変更の手続きは、国の機関である法務局で行います。所有権移転登記の手続き完了後に、法務局から発行される「登記識別情報」は大切に保存しましょう。登記識別情報は土地の所有者を明確にする「権利証」と呼ばれるもので、土地を売買する際に必要になります。

ハンコ

この記事では、土地の名義変更を行う際の手順や必要書類、注意点と併せて不動産売却までスムーズに進めるポイントについて解説します。土地の名義変更が必要な場面は主に「売買」「相続」「贈与」「財産分与」の4つです。それぞれ見ていきましょう。

売買で土地の名義変更を行う場合

土地を所有している人が所有地を売る場合や、土地を購入して所有者になる際には、土地の名義変更を行います。手続きをする際は、売主と買主が共同で申請するのが一般的です。売買の仲介をする不動産会社が登記のプロである司法書士を紹介してくれることが多く、司法書士に名義変更を依頼するとスムーズに手続きが進みます。

なお、買主が購入した土地と住宅を担保にして住宅ローンを組む場合は、登記簿上でその土地の所有者が買主であることが必須条件となります。そのため、不動産の引渡しと名義変更は同日に行うのが一般的です。

契約成立

売買の場合の手順

売買で土地の名義変更を行う際の手順は以下のようになります。

[ 1 ] 売買契約を結ぶ
[ 2 ] 必要書類を集める
[ 3 ] 土地の引渡しと購入代金を支払う
[ 4 ] 法務局へ登記申請する

売買で必要な書類

売買の名義変更の際に必要な書類は以下の通りです。

買主の必要書類売主の必要書類
・住民票
・印鑑証明書(住宅ローンを組む際に必要)
・顔写真付きの本人確認書類
・印鑑と印鑑証明書(発行3か月以内のもの)
・登記済権利証または登記識別情報通知
・固定資産評価証明書
・住民票または戸籍の附票
(登記時の住所から住民票を変更した場合のみ)
・顔写真付きの本人確認書類

●土地の売却の流れや費用に関する記事はこちら

●不動産の売却についてはこちら

登記識別情報書と印鑑と家の模型

相続で土地の名義変更を行う場合

相続によって親や親族の土地を引き継ぐときに、名義変更の手続きが必要になります。通常の名義変更は土地の所有者が行いますが、相続の場合は土地の所有者が亡くなっているため、土地を相続する人が名義変更の申請を行います。

相続による土地の名義変更は手続きが複雑で時間がかかります。また、遺言書や被相続人(土地を所有していた故人)との関係性を証明する戸籍、ほかの相続人からの許可など、ほかのケースに比べて必要な書類が多いため、司法書士への依頼を検討してみることがおすすめです。

遺言を書く老人

相続の場合の手順

相続で土地の名義変更を行う際の手順は以下のようになります。

[ 1 ] 不動産関連の情報や関係者の戸籍関連の書類を収集する
[ 2 ] 固定資産評価証明書を発行してもらう
[ 3 ] 遺産分割協議を相続人の間で実施する
[ 4 ] 登記申請書の作成を行う
[ 5 ] 法務局へ登記申請する

相続で必要な書類

相続登記には主に3種類のケースがあり、それぞれ必要書類が異なります。1つ目は「遺言による相続」、2つ目は相続人全員で遺産の分け方を話し合いで決める「遺産分割協議による相続」、3つ目は法律で定められた相続分の割合に従って相続する「法定相続分による相続」です。それぞれに必要な書類は下の表をご確認ください。

相続の種類必要な書類
遺言による相続・固定資産評価証明書
・遺言(家庭裁判所で検認を受けた場合は検認済証明書を用意)
・被相続人が亡くなったときの戸籍謄本と住民票の除票
・相続する人の戸籍謄本と住民票
遺産分割協議による相続・固定資産評価証明書
・遺産分割協議書
・被相続人の出生から亡くなったときまでの全ての戸籍謄本と住民票の除票
・不動産を相続する全ての人の戸籍謄本と印鑑証明書
・不動産を相続する全ての人の住民票
法定相続分による相続・固定資産評価証明書
・被相続人の出生から亡くなったときまでの全ての戸籍謄本と住民票の除票
・全ての相続人の戸籍謄本、住民票

法改正に伴って、2024年より相続登記に期限が設けられ、相続人は相続を知った日から3年以内に相続登記を行わなければならないようになります。相続をする、相続人になる場合には注意しましょう。

●不動産相続の手続きや流れに関する記事はこちら
不動産を相続することになったら?手続きの流れとよくある疑問を解説

●相続税の基礎控除額に関する記事はこちら
相続税の基礎控除とは?計算方法と課税の目安をご紹介!

家系図

贈与で土地の名義変更を行う場合

土地を贈与された場合にも、名義変更手続きが必要になります。この場合、土地を贈った側と土地を受け取った側、両者の本人確認書類等を提出することになります。なお、原則として年間110万円を超える贈与を行うと贈与税の課税対象になります。生前贈与を考えている場合は、申告や納税の準備もしておくとよいでしょう。

家の贈与

贈与の場合の手順

贈与で土地の名義変更を行う際の手順は以下のようになります。

[ 1 ] 贈与の手続きを行う
[ 2 ] 必要書類を集める
[ 3 ] 登記申請書を作成する
[ 4 ] 付属している書類を作成する
[ 5 ] 法務局へ登記申請する

贈与で必要な書類

贈与での名義変更の際に必要な書類は以下の通りです。

贈与する人の必要書類贈与される人の必要書類
・登記申請書(登記時の住所から住民票を変更した場合のみ)
・固定資産評価証明書
・不動産の権利書または登記識別情報
・印鑑証明書(3か月以内のもの)
・住民票または戸籍の附票
・不動産贈与契約書(登記原因証明情報)
・住民票
・不動産贈与契約書(登記原因証明情報)

印鑑証明と印鑑

財産分与で土地の名義変更を行う場合

財産分与の際にも、名義変更手続きが必要になります。財産分与とは、夫婦が離婚する際に2人が婚姻中に築き上げた財産を、それぞれの貢献度に応じて分け合うことです。共有名義だった土地や建物をどちらかの名義に変更する場合、原則として夫婦で共同申請します。

この場合、離婚前後に連絡を取り合って名義変更を行う必要があるため、夫婦間の話し合いが難しい場合は、弁護士を通して協議を進めるほうがスムーズに行えるでしょう。

お金と家

財産分与の場合の手順

財産分与で土地の名義変更を行う際の手順は以下のようになります。

[ 1 ] 財産分与について話し合い、合意する
[ 2 ] 必要書類を集める
[ 3 ] 登記申請書を作成する
[ 4 ] 法務局へ登記申請する

財産分与で必要な書類

財産分与の名義変更の際に必要な書類は以下の通りです。

譲渡する側の必要書類取得する側の必要書類
・登記申請書
・固定資産評価証明書
・不動産の権利書または登記識別情報
・印鑑証明書(3か月以内のもの)
・住民票または戸籍謄本(登記上の住所から変わっている場合のみ)
・離婚の記載がある戸籍謄本(離婚裁判の場合は不要)
・自分の住民票
・固定資産評価証明書(裁判離婚の場合のみ必要)
・調停書・和解調停書等(裁判離婚の場合のみ必要)
・譲渡する人の住民票(裁判離婚の場合、登記時の住所から住民票を変更した場合のみ必要)

●離婚に伴う財産分与に関する記事はこちら
離婚に伴う財産分与について詳しく解説!

なお上記の書類のほか、4つのケース全てで「登記申請書」が必要になります。不動産登記に関する申請書は、法務局のホームページでダウンロードしてください。同サイトでは、申請書への記載例も掲載されています。

●「登録申請書」についてはこちらから

法務局

土地の名義変更を行う際の注意点

ここまでは土地の名義変更がどのような場合に行われるかとその方法についてご紹介してきました。併せて土地の名義変更を行う際の注意点もお伝えします。

家の模型とお金

税金が発生する

所有権移転登記を行う際には、「登録免許税」という税金が課税されます。土地の価値に応じて数万~数十万円単位での税金になり、登記の手続きをする際に納付する必要があります。登録免許税の課税額は「固定資産税評価額 × 税率 = 登録免許税の課税額」の計算式で算出可能です。なお、税率は名義変更の目的によって異なります。

・売買の税率…2.0%(令和8年3月31日までは1.5%)
・相続の税率…0.4%
・贈与の税率…2.0%
・財産分与の税率…2.0%

登録免許税のほかにも、追加で発生する税金は、以下の表でご確認ください。

場面税金
売買譲渡所得にかかる所得税や住民税(売主)
不動産取得税(買主)
相続相続税
贈与贈与税
不動産取得税
財産分与なし

表に記載されている通り、財産分与の場合は、原則税金はかかりませんが、取得した財産が過剰な場合や、贈与税や相続税の支払いを避けることを目的とした離婚であると判断された場合は贈与税がかかることがあります。また、税金は要件を満たすことで、軽減措置が受けられるケースがあるため、支払いの前に一度調べてみることがおすすめです。

●譲渡所得にかかる税金や特別控除に関して詳しくはこちら
不動産譲渡税とは?税金額の計算方法も併せて詳しく解説

●不動産取得税に関して詳しくはこちら

離婚する夫婦の人形とお金

登記権利者と義務者の立ち会いが必要

土地の名義変更の手続きを行う際、「売買」「贈与」「財産分与」の場合には共同申請が必要になります。この場合、登記権利者と登記義務者の双方が立ち会い、名義変更を行わなければなりません。

ただし、離婚による財産分与で立ち会いたくない場合には、司法書士に依頼することで代理人として名義変更の手続きをしてもらうことが可能です。

各種手続きを代理人に依頼する際には委任状が必要となることがあります。必要の有無を事前に確認し、必要な場合は用意しておきましょう。

土地の名義変更は専門家に依頼するべき?

土地の名義変更は自分で行うことが可能ですが、司法書士や行政書士、税理士などに手続きの代理を依頼するのが一般的です。これは、複雑な手続きが多いため時間がかかったり、書類に不備があった場合は、訂正し再度提出しなければならなかったりするためです。

専門家への依頼費用は書類の取得費用にも左右されますが、5万~8万円程度が一般的な額になります。決して安い額ではないので、手続きを依頼した場合には疑問点や懸念点をまとめて相談してみるのもおすすめです。

なお、先ほどお伝えした通り、土地を売却する場合は自分がその土地の名義人でなければなりません。土地の売却を検討している方は、売却活動をスムーズに進めるためにも、専門家に依頼して事前に名義変更を行ってもらいましょう。

権利書と印鑑

手順や必要書類を知って土地の名義変更をしよう

ここまで土地の名義変更を行う際の手順や必要書類、注意点などについて解説してきました。土地の名義変更は用途や目的に応じて、手順や必要書類が異なります。土地の名義変更に関する知識を得て、目的に合った手順と必要書類をリサーチしておくことで、スムーズに手続きを進めることができますよ。

土地の名義変更をして売却する場合、次のステップは不動産査定を受けて土地にどのくらいの価値があるか知ることです。土地の価値を知るための不動産査定は不動産会社に依頼することで受けられます。三井のリハウスでも不動産査定を無料で行っているので、ぜひご活用ください。

●不動産売却をご検討の場合はこちらから

●不動産売却に関する記事はこちら
不動産売却に失敗しないためには?不動産売却に関する質問から対策方法を解説!

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/