リバースモーゲージとは?シニアのための資金調達方法を解説

自宅に住み続けながら、自宅を担保にして老後の資金を借りられる、リバースモーゲージ。このシニア向け貸付制度について、特徴やメリット、注意点のほか、どんな人にリバースモーゲージが向いているかまで解説します。

目次
  1. リバースモーゲージとは?
  2. リバースモーゲージの5つのメリット
  3. リバースモーゲージの6つの注意点
  4. 取扱機関によって異なる融資内容
  5. リバースモーゲージの利用が向いている人とは?
  6. 自分に合った方法をよく検討しよう!
記事カテゴリ 老後のすまい シニア
2021.09.03

リバースモーゲージとは?

退職を機にこれからの生活を考えたとき、長い老後の暮らしに必要な資金について不安を覚える人もいるのではないでしょうか?

なかには、「年金だけでは資金が不足するけれど、退職後に資金を調達するのは難しいのでは?」と思っている人や、「リバースモーゲージという資金の調達法があるらしいが、どんなものかよくわからない」という人もいることでしょう。

今回は、自宅に住み続けながら、自宅を担保にして老後の資金を借りられるリバースモーゲージについてご紹介します。

家の模型とお金

リバースモーゲージとは、シニア向けの貸付制度です。マンションや戸建などの持ち家を担保にして資金を借り入れし、借入人が死亡した際に、担保にした不動産を処分して一括返済に充てる方法です。

リバースとは「逆」、モーゲージとは「抵当・抵当権」を意味します。通常の住宅ローンは月々返済していきますが、こちらは最後に一括返済するため、「逆」という言葉が使われているのです。

資金の受け取り方法は、融資額を分割して月々受け取るのが一般的です。しかし、契約によっては一括で融資を受け取ることもできます。

また、返済方法には、月々利息のみを返済していく方法と、借入人の死後に元金と利息を合わせて返済する方法の2種類があります。

月々利息を返済する方法
利息のみを月々返済し、借入人の死亡後に相続人が家を売却して、元金を一括で返済します。

元金と利息を合わせて返済する方法
借入人の死亡後に相続人が家を売却して、元金と利息を一括して返済することになります。

なお、どちらの返済方法になるかは、利用する取扱機関によって異なります。

リバースモーゲージの5つのメリット

リバースモーゲージは今、高齢者の資金調達方法としてシニアの間で注目されています。その理由をリバースモーゲージのメリットから見ていきましょう。

戸外のシニアカップル

[ 1 ] 毎月の費用負担が少ない

元金と利息を合わせて死後に一括返済する場合はもちろん、毎月利息のみを支払う返済方法の場合でも、元金と利息を払う通常の住宅ローンよりも毎月の費用負担が少なくなります。そのため、老後の生活費の支出を抑えることが可能になります。

[ 2 ] 資金を得ながら同じ家に住み続けられる

リバースモーゲージはその仕組みから、自宅を担保に資金を調達しながら、これまでと同じ自宅にずっと住めるというメリットがあります。自宅を売却して資金を調達するよりも、住み替え先を探したり、引越しをしたりする手間が省けるので負担が減りますね。

[ 3 ] 配偶者への引継ぎが可能

万が一契約者が死亡しても、配偶者にローンを引き継ぐことができる取扱機関が多いため、配偶者も同じ家に住み続けられるというメリットがあります。配偶者が住み続ける場合、ローンの一括返済は、契約を引き継いだ配偶者が死亡した際に行うことになります。

芝生の上の家の模型

[ 4 ] 所有資金を使用する必要がなくなる

自宅を担保に借り入れができるので、もともと自分が持っている退職金や貯金などの資金の減少を防ぐことができます。旅行や余暇を楽しむ資金、また、病気や介護が必要になったときの資金として確保しておくことができるため、安心感が高まります。

[ 5 ] 住宅ローンから借り換え可能

住宅ローンからリバースモーゲージへの借り換えができるため、月々の返済額の負担を減らすことができます。退職後にも住宅ローンが残っている場合、月々の返済が難しくなるケースがあります。リバースモーゲージに変更することで月々の負担を減らし、生活に余裕を持たせることが期待できるでしょう。

リバースモーゲージの6つの注意点

メリットの多いリバースモーゲージですが、利用の際には注意点もあります。6つの注意点を見ていきましょう。

ローン契約をする夫婦

[ 1 ] 長生きした場合は返済にリスクが生じることもある

リバースモーゲージは、担保にする不動産の価値によって融資の限度額は決まっています。長生きしたことで借入期間が長期化すると融資の限度額まで資金を借り入れてしまうリスクがあります。融資が限度額に達すると、その後の融資は受けられなくなることを覚えておきましょう。

また金融機関によっては、契約期間が設けられていることもあります。この契約で期間が満了になった場合は、元金と利息を一括返済するよう求められるため、注意が必要です。

[ 2 ]利用エリアに制限がある

リバースモーゲージを取り扱う機関によって、利用できるエリアが制限されていることがあるので注意が必要です。制限エリアは契約する金融機関によって異なります。多くの金融機関は、主に首都圏と近畿の一部の住宅を対象としています。自分の住まいが対象エリアに入っているか、事前に確認する必要があるでしょう。

なお、リバースモーゲージは、一般の金融機関と社会福祉協議会が扱っており、社会福祉協議会が扱うリバースモーゲージにはエリアの制限はありません。取り扱う機関については次の章で説明します。

[ 3 ]子どもが同居していると利用できないことが多い

リバースモーゲージを扱う機関の多くは、「夫婦二人暮らし、あるいは一人暮らしのシニア層」を対象としています。 なお、リバースモーゲージの契約時には、相続トラブルを防止するために、推定相続人全員の承諾が必要になります。

老夫婦と子ども

[ 4 ] 融資額が見直される場合もある

契約後でも、土地や建物の価値が下落した場合、融資額の見直しが行われ、融資の限度額が変更される場合があります。

[ 5 ] 金利が変動の可能性がある

リバースモーゲージは、一般的に変動金利を採用しています。金利は時勢によって変動するため、金利が大幅に上昇した場合、毎月の支払額が高くなることもあります。

[ 6 ] 団体信用生命保険に加入できない

通常の住宅ローンを組む場合は、団体信用生命保険に加入することができますが、リバースモーゲージの場合は、この保険に加入できません。団体信用生命保険とは、契約者が死亡、または重度障害を負ったとき、ローンの残債が一括返済されるという保険です。

リバースモーゲージの場合、契約者の死後の返済となりますが、重度障害については保証がないので注意が必要です。

取扱機関によって異なる融資内容

リバースモーゲージの取扱機関には2種類あり、それぞれ資金用途や融資の限度額などが異なります。2つの融資内容を見ていきましょう。

社会福祉協議会のリバースモーゲージ

社会福祉協議会のリバースモーゲージは、生活に困窮している高齢者のセーフティネットとして誕生しました。社会福祉協議会は、社会福祉活動を推進することを目的とした機関です。

そのため毎月利息を払う必要はなく、死亡後、相続人が借入金と利息を合わせて一括返済します。

また、資金の用途は生活資金のみとされ、1か月あたり30万円以内が融資されます。対象は原則65歳以上で、非課税世帯等の低所得者のみが利用可能です。

金融機関が扱うリバースモーゲージ

金融機関が扱うリバースモーゲージは、「リバースモーゲージ型住宅ローン」と「各金融機関が独自に提供するリバースモーゲージ」の2種類に分けられます。また、契約方法も大きく2つあります。

借入限度額は担保にする不動産の評価額によって決まり、評価額の50〜60%程度になるのが一般的です。

リバースモーゲージ型住宅ローン
リバースモーゲージ型住宅ローンとは、住宅金融支援機構の「リ・バース60」をベースとして、さまざまな金融機関が出している商品を指します。「リ・バース60」は、満60歳以上を対象とした住宅ローンのことです。金融機関によっては50歳から利用できるものもあります。

このタイプは、毎月利息を支払い、元金は借入人の死後に返済します。借入金の使用用途は以下の5つに定められていることが特徴です。

[ 1 ] 本人が居住する住宅の建設・購入
[ 2 ] リフォーム
[ 3 ] 高齢者向け住宅への入居一時金
[ 4 ] 住宅ローンの借り換え
[ 5 ] 子世帯などの住宅資金

独自に提供するリバースモーゲージ
各金融機関が独自に提供しているリバースモーゲージは、「リ・バース60」をベースとしたものとは違い、資金の用途が原則自由なものが多くあります。事業用資金および投資目的以外であれば、老朽化した家の建て替え、中古住宅を購入後のリフォーム資金などの融資も可能です。なお、金融機関によって対象年齢が異なります。

契約方法2種類
金融機関が行うリバースモーゲージには2つの契約方法があり、債務が残った場合の処理がそれぞれ異なります。

[ 1 ] リコース型
契約者の死後、担保物件(住宅および土地)の売却代金で返済した後に債務が残った場合は、相続人が負担することになります。

[ 2 ] ノンリコース型
契約者の死後、売却代金で返済した後に債務が残っていても、相続人が負担する必要はありません。その代わり、金利がリコース型より高めに設定されています。

リバースモーゲージの利用が向いている人とは?

シニアの資金調達方法の1つであるリバースモーゲージですが、どのような人が利用するとよいのでしょうか?リバースモーゲージの利用に向いている人の特徴を見ていきましょう。

老後の資金に不安がある人
資産価値のある住まいがあるけれど、老後の生活資金に不安があり、資金を増やしたいという人に向いています。

老後の資金はあるが、資金を残しておきたい人
老後の資金に不安はないものの、病気や介護が必要になったときのために、今ある資金は残しておきたいという人に向いています。

相続人がいない人
自宅を相続財産として遺す必要のない人に向いています。

老人ホームで暮らす資金を必要としている人
老人ホームへ入る予定で、入居中は自宅を売却したくない人や、時々自宅に帰りたい人に向いています。リバースモーゲージを利用すると、まとまった資金を一括で受けることができるため、その資金を入居費用として活用できます。

家の模型とお金

自分に合った方法をよく検討しよう!

リバースモーゲージは自宅を活用してまとまった資金調達ができるため、多くのシニアから注目を浴びています。50~60代以上で家の住み替えやリフォーム資金、そして老後の資金調達を考えている人は、リバースモーゲージのメリットと注意点をよく知ったうえで、検討するようにしましょう。詳しく知りたいときは、金融機関や不動産会社などに相談することをおすすめします。

シニア向けの資金調達方法は、今回ご紹介したリバースモーゲージだけではなく、「リースバック」という方法も注目されています。リースバックとは、自宅を売却した後、買主から賃借して、同じ家にずっと住み続けるという方法です。リースバックは、周辺の人に自宅を売却したことを知られることなく、まとまった資金を手に入れながら住み慣れた家で生活できる点がメリットです。

リバースモーゲージとリースバックにはそれぞれメリットと注意点があります。それらをよく知ったうえで、自分に合う資金調達方法を選び、充実した老後の生活に役立ててくださいね。

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三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。