空き家対策はどうしたらよい?空き家問題の現状やリスクなど徹底解説

空き家を放置しておくと、不動産価値の低下や街の安全性損失などのリスクにつながります。空き家をなくす対策として、国や自治体でさまざまな取り組みをしているので、それぞれの取り組みを知ったうえで、どのように対策していくかを考えましょう。

目次
  1. 空き家の現状
  2. 空き家を持つリスクとは?
  3. 空き家の対処法
  4. 空き家対策を正しく理解して、満足のいく空き家活用を!
記事カテゴリ 相続 シニア
2022.10.24

空き家の現状

近年空き家が増加傾向にあることはご存知でしょうか?2018年の国土交通省が発表した「空き家の現状と課題」によると、全国で約848万戸(全体の13.6%)が空き家状態になっています。この数字は、20年前の1998年と比較すると、約1.5倍になっています。※1現在、日本では、10件に1件以上が空き家となっている状態です。

皆さんのなかにも、空き家を所有している人、これから相続で所有する予定の人がいるのではないでしょうか?今回は、そのような人たちに向けて、空き家をテーマに、どのようなリスクがあるのか、どのような解決策があるのかについてご紹介します。また、そのほかにも、現在国や地方自治体が行っている取り組みについてもお伝えします。

まずは、空き家の定義と種類を明確にしたうえで、何が原因で空き家になってしまうのかを見ていきましょう。

空き家

空き家とは?

空き家とは、文字通り「空いた状態になっている家」、すなわち「人が住んでいない家」のことをいいます。
ひと言で空き家といっても、人が住んでいない状態になっている理由はいろいろと考えられることから、国土交通省によって次の4つに分類されています。

二次的住宅
週末や休暇時に避暑や避寒、保養のために利用される住宅や、残業で遅くなった際に一時的に寝泊まりをするような、別荘をはじめとした住宅です。

賃貸用の住宅
新築や中古にかかわらず、賃貸用の住宅のうち、借り手が見つからず無人となっているものを指します。

売却用の住宅
新築や中古にかかわらず、売りに出されている住宅のうち、人が入居していないものを指します。

そのほかの住宅
上記の3つ以外の理由で人が住んでいない住宅です。たとえば、転勤や入院などのため、居住世帯が長期にわたって不在となっている住宅や建て替えで取り壊すことになっている住宅などです。

これらの種類のなかでも現在問題になっている空き家とは「そのほかの住宅」のことです。前述の国土交通省の調べによると、そのほかの住宅は、全国に約348万戸あり、これは空き家全体の約41%を占めています。これは、2008年と比較すると約1.29倍に増加しています。

では、どのようなことが原因で空き家が増えていってしまうのでしょうか。空き家増加の原因についても解説していきます。

空き家問題の原因

空き家問題の原因は多岐にわたりますが、代表的なものとしては、次の5つの原因が挙げられます。

[ 1 ] 少子高齢化
現在少子高齢化によって人口が減少し、総住宅数が総世帯数を上回っているため、無人となった空き家の数が増えています。そのほかにも、高齢化により、自宅から高齢者施設に移り住むことも原因となっています。

[ 2 ] 相続
相続の対象となった住宅のなかには、相続人が暮らすことなく放置されているものが存在します。修繕や管理が行き届かない状態が長く続くと、徐々に経年劣化が進んでしまいます。

[ 3 ] 解体費用が確保できない
空き家の解体費用が用意できないことも要因の1つです。建物の構造や広さにもよって異なりますが、1坪あたり以下のような相場になっています。

木造構造鉄骨構造RC構造
2.5~5万円/坪3.5~7万円/坪4.5~8万円/坪

たとえば、鉄骨構造で30坪の住宅を解体するだけで105~210万円の解体費用がかかってしまいます。

[ 4 ] 更地にすると固定資産税や都市計画税が高くなる
建物を解体して更地にすると固定資産税や都市計画税が高くなってしまいます。なぜなら、「小規模住宅用地の特例」や「一般住宅用地の特例」といった税金の軽減措置は、建物のある土地のみが対象となるためです。住宅用地の特例の軽減率は、以下のようになります。

固定資産税の軽減率都市計画税の軽減率
小規模住宅用地の特例
(※200m2までの部分)
6分の13分の1
一般住宅用地の特例
(※200m2を超える部分)
3分の13分の2

[ 5 ] 新築需要が高いこと
日本において、新築の需要が中古(既存住宅)よりも高いことも原因の1つです。国土交通省が2019年に発表した「既存住宅流通市場の活性化」※2によると、新築住宅の着工戸数が約98万戸にもかかわらず、既存住宅の取引戸数は約17万戸です。「中古である」という理由で既存住宅の購入が敬遠されることで、空き家が増えてしまうのです。

建物の解体

空き家を持つリスクとは?

空き家を放置することには、さまざまなリスクが伴います。具体的にはどのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。

[ 1 ] 不動産価値の低下

前述した通り、相続によって取得した不動産の手入れを行わないで放置してしまうと、外壁や内壁、そのほかの設備などの劣化や消耗が激しくなり、不動産としての価値が低下してしまいます。

[ 2 ] 未活用による機会損失

空き家を有効活用せずに、放置し続けると、本来活用できるはずだった機会が失われることになりかねません。たとえ空き家であっても、不動産を所有している限り、毎年の固定資産税は支払い続けなければならず出費が増えていきます。しかし、空き家を売却したり、賃貸物件として貸し出すことができれば、プラスの収入を得られるチャンスがあるのです。そのため、手持ちの不動産を空き家として放置することは、所有者によってはもったいないことになります。

お札と電卓に挟まれた家の模型

[ 3 ] 街の安全性損失

「割れ窓理論」という言葉をご存知でしょうか。これは、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した理論で、1つの無秩序を放置しておくと、徐々にその地域全体の秩序が損なわれていき、犯罪が増加してしまうため、小さい芽のうちに摘んでおくことが大切だと説いています。

割れ窓理論から考えると、放置され破損や老朽化が進んだ空き家があることで、街や地域の安全性の損失につながるリスクがあるといえます。たとえば、空き家にゴミが投棄されたり、犯罪者が侵入したり、放火されるリスクなどが考えられます。

[ 4 ] 特定空き家への指定

「特定空き家」に指定されてしまうと、罰則が適用されることがあるので注意しましょう。特定空き家とは、国土交通省が定めた「空家等特別対策措置法」に基づき、地方自治体から指定される空き家で、次の4つのような状態のいずれかに当てはまるものを指します。※3

・倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある状態
・アスベストや飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となる恐れがある状態
・適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
・立木の枝や越境、すみついた動物の排せつ物などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態

また、上記以外にも、著しく保安上危険または衛生上有害な状態にあるものだけでなく、そのような状態になることが予見されるものも特定空き家に含まれます。

特定空き家に指定されてしまうと、「住宅用地の特例」の対象外になってしまうため、固定資産税や都市計画税が軽減されません。また、最悪の場合、行政代執行が実施され、強制的に取り壊されることもあるので注意しましょう。

建物の倒壊

空き家の対処法

これまで、空き家になってしまう原因や空き家を放置してしまうことによるリスクについてご紹介してきました。では、どのように空き家を対処すればよいのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか?

ここでは、空き家の対処法として、国や地方自治体、民間団体が実施している取り組みについてご紹介していきます。

国の取り組み

国は、空き家対策として、移住や住みかえ支援機構をはじめとする地域のまちづくり・住まいづくりの取り組みを支援しています。そのほかにも、さまざまな補助金や助成金などを積極的に実施しています。それぞれを具体的にご紹介していきます。

移住・住みかえ支援機構の利用
「移住・住みかえ支援機構」とは、国の支援を受け、空き家の流通促進を行う一般社団法人です。シニア世代から終身借り上げを実施し、子育て世代をはじめとする次世代に転貸する取り組みを行っています。ただし、原則として貸主の対象年齢は50歳以上となっており、空き家についても一定の条件を満たしている必要があります。詳しく知りたい人は移住・住みかえ支援機構のHPをご覧ください。

補助金・助成金による援助
国の働きかけにより、地方自治体のなかには、空き家の除去や改修、リフォームなどを行う際の補助金や助成金を支給してくれるものも存在します。ただし、地方自治体ごとに補助金や助成金の要件や金額が異なるので、事前に対象の不動産がある地域の補助金や助成金制度についてよく調べておきましょう。

地方自治体の取り組み

国だけでなく、地方自治体が独自に、空き家対策を行っている地域もあります。今回はそのなかでも、「空き家バンク」と「クラウドファンディングの活用」についてご紹介していきます。

空き家バンク
空き家バンクとは、地方自治体が主体となって運営している空き家売却サービスを指します。これは、売却したい空き家をサイト内に登録して、その空き家の所有者とその空き家に興味を持った人をマッチングさせるサービスです。

クラウドファンディングの活用
そもそも、クラウドファンディングとは、「起案者」がインターネットを介して不特定多数の「支援者」から少しずつ資金を調達する仕組みのことです。起案者とは、「モノやサービスを作って、世の中の問題を解決したい」といった思いやアイデアを持つ人をいい、その起案者に共感して資金を融資してくれる人を「支援者」といいます。

このクラウドファンディングには、「投資型」と「寄付型」の2種類があり、2017年に法改正が実施されたため、クラウドファンディングの許可要件が緩和され、より多くの事業者が参入しやすくなりました。

このような背景から近点では、地方自治体も空き家対策として、積極的に起案者を募集し、クラウドファンディングを活用するケースが増えてきました。たとえば、佐賀県では、空き家をゲストハウスや古民家に改装するために、クラウドファンディングを活用するケースもあります。

建物と書類

民間団体の取り組み

最後に、民間団体の取り組みについても見ていきましょう。民間企業・団体の取り組みとしては、たとえば、「空き家管理サービス」が挙げられます。このサービスは、所有者の代わりに、空き家の管理を民間の不動産会社が代行するというものであり、忙しく空き家の管理に時間を割けない人にとって、便利なサービスといえるでしょう。

空き家対策を正しく理解して、満足のいく空き家活用を!

今回は、年々増加傾向にある空き家問題について、空き家になってしまう原因や空き家を所有するリスク、対処法などについてご紹介してきました。相続により空き家を取得した場合や、引越しにより持ち家が空き家になってしまうような場合には、早めにどのように活用していくのかを検討することをおすすめします。

補助金や助成金を申請する際はもちろんのこと、国や地方自治体、民間団体の取り組みを利用する場合は、事前によくリサーチしたり、分からないことがあれば相談したりするようにしましょう。

また、三井不動産会社リアルティでは、「空家空地巡回サービス」を実施しております。月に1回、所有されている不動産についての劣化防止のための管理や不動産の状況についてなどを報告するサービスです。空き家の管理が難しいとお困りの人は、ぜひご気軽にご相談ください!

三井のリハウス「空家空地巡回サービス」

積み木と硬貨

※1出典:国土交通省「空き家の現状と課題」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001426966.pdf
(最終確認日:2022年8月15日)

※2出典:国土交通省「既存住宅流通市場の活性化」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/content/001313273.pdf
(最終確認日:2022年8月15日)

※3出典:内閣府大臣官房政府広報室「年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html
(最終確認日:2022年8月15日)

伊藤諭

弁護士法人ASK市役所通り法律事務所代表。弁護士。
地元に根ざした幅広い業務を行い、企業法務や交通事故、相続などを注力分野としている。
多数の講演実績のほか、ネットニュースの監修やメディア出演も行う。
https://www.s-dori-law.com/