高齢者の一人暮らしのリスクとは?対策も併せて紹介

高齢者が一人暮らしする割合は増加傾向にあります。実際に一人暮らしをするには、生活費や起こりうる問題を事前に把握し、対策を取っておくことが重要です。今回は、高齢者が一人暮らしをするうえで知っておきたいこれらの情報についてご紹介します。

目次
  1. 高齢者の一人暮らしは可能?
  2. 高齢者が一人暮らしをするうえで起こる問題
  3. 取れる対策は?
  4. 周囲の人(家族)ができることは?
  5. 将来の準備を元気なうちに始めよう!
2022.09.12

高齢者の一人暮らしは可能?

「将来的に自分が認知症になった場合、どうやって生活していけばよいのだろう」と老後に不安を感じていたり、「親が一人暮らしをしているけど、なかなか様子が分からなくて不安…」と親の健康状態について心配している人は多いのではないでしょうか?

高齢者の一人暮らしが他人事とはいえなくなってきているなかで今回は、高齢者の一人暮らしで起こり得る問題や、本人や家族ができる対策をご紹介します。

高齢者の一人暮らしの割合は増加

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」※1によると、日本の総人口に対して65歳以上の人口が占める割合は、2021年10月1日の時点で28.9%となっています。これは、日本の人口の4人に1人が、65歳以上ということです。

一人暮らし世帯も増加しており、現在高齢者の5人に1人が一人暮らしをしているといわれています。さらに2040年には、高齢者の約4割が一人暮らしになると推計されており、高齢者の一人暮らしは今後ますます増加してきます。

一人暮らしの高齢者が増えている理由は、少子高齢化や核家族化に加えて、未婚の高齢者が増えていえることが挙げられます。

一人で食事するシニア男性

支出は毎月13.6万円程度

総務省が発表している2022年1月~3月の家計調査によると、65歳以上の単身者世帯の消費支出は、男性が13万8,407円、女性が13万5,298円とされています。

収入については、2020年度の月額を例にすると、老齢基礎年金と老齢厚生年金を併せた平均受給額は、14万6,145円となっており、老齢基礎年金のみの場合は、5万6,358円となっています。よって、老齢基礎年金のみの受給で生活する場合は、約8万円足りないことになり、25年間では約2,400万円が不足する計算です。

そのため、老後の一人暮らしを行うには、生活費を確保するために早めに貯蓄を始めたり、資産を見直したりすることが大切といえるでしょう。

●老後の生活費に関する記事はこちら
老後の生活にはいくらあればよい?お金の不安を整理して解決しよう

高齢者が一人暮らしをするうえで起こる問題

高齢者が一人暮らしをする場合、高齢であるために危惧される問題がいくつかあります。ここでは、考えられるリスクをいくつかご紹介します。

病気やけがなどの発見が遅れる

高齢者になると、年齢とともに病気になりやすくなったり、病状が悪化しやすくなったりします。家族や身近な人が本人の変化に気付きやすい環境の場合は、悪化する前に対処できるケースもあるでしょう。しかし、一人暮らしの高齢者の場合は、周囲が本人の変化に気付きにくいといえます。

また、突発的な症状やけがなど緊急事態が起きた際に、自分1人で対応できるかといった不安もあるでしょう。転倒した場合や、急に気分が悪くなった場合も、迅速に自分1人で対応できる能力が求められます。高齢者の一人暮らしによって起こり得る問題としては特に以下の2つが挙げられます。

認知症の進行
高齢者の一人暮らしには、先にご紹介した病気やけがなどに加えて認知症の進行という点でもリスクがあるといえるでしょう。一人暮らしになり、周囲とのかかわり合いが少なくなることで、認知症の進行を発見できない可能性が高まります。
認知症の進行によって、服薬管理ができなくなったり、家事ができなくなったりすることもあるでしょう。また、認知症の進行度によっては、大声を出したり、攻撃的な態度になったりする場合もあります。そして、それが原因となって、近隣住民とトラブルを起こす恐れも出てくるのです。

孤独死のリスク
孤独死とは、本人が誰にも看取られることなく、亡くなった後に発見されることをいいます。高齢者の一人暮らしの場合は、転倒や転落、誤飲による窒息や、入浴中の溺死などの不慮の事故が孤独死につながることがあります。助かる可能性が比較的高い事故でも、一人暮らしの場合は通報や発見が遅れてしまうため、孤独死につながってしまう可能性が高いのです。

シニア女性と話す女性

犯罪に巻き込まれやすくなる

一人暮らしをすることで、周囲とのかかわりが減ってしまうと、犯罪に対する注意喚起や防犯に関する情報に触れる機会が少なくなってしまいます。結果的に、オレオレ詐欺や還付金等詐欺などの特殊詐欺の被害に遭うリスクも増えるでしょう。

内閣府が発表している「令和4年版高齢社会白書」では、特殊詐欺の被害者の9割弱が65歳以上とされています。家族と同居していれば、相談しやすい環境や周囲の目があることで犯罪の抑止につながります。

災害時に自分で対応できない

高齢者の一人暮らしの場合、災害が発生した際に、自分1人での対応が難しい場合もあるでしょう。たとえば、大きな地震が起こり瓦礫が散乱しているなかや、洪水が発生し水かさが増しているなか、自分1人だけで避難できるのかといった不安があります。なかでも、周りに民家が少ないエリアの一戸建てに住んでいる場合、周辺住民の助けを期待できないことで、災害時のリスクはさらに高くなるでしょう。

取れる対策は?

一人暮らしをしている高齢者が取れる対策としてはどういったものがあるのでしょうか?高齢者が利用できるサービスには、高齢者の心身の状態や居住環境によっていくつか種類があります。

また、介護が必要になった場合は、介護認定を受けることで1~3割の自己負担で利用できる介護保険サービスを利用することが可能です。一人暮らしの高齢者が安心して暮らすためにできる対策をいくつかご紹介します。

携帯を持つシニア女性

見守り・緊急通報サービス

見守り、緊急通報サービスは、遠方に住む家族に代わり高齢者の生活を見守るサービスです。一人暮らしの不安やもしものときに備えることができます。サービス内容としては、高齢者の自宅にカメラを設置し、映像や音で家族が確認できたり、24時間緊急通報や生活・健康に関する相談ができたりといったものがあります。

詳しいサービス内容や費用は、提供している会社によって異なりますので、複数の会社を比較して選ぶのがおすすめです。

●見守りサポートについての詳細は、こちらをご覧ください
見守りサポート

民間事業者による支援サービス

民間事業者による支援サービスは、食事の宅配やヘルパーによる家事支援サービスなどがあります。次にご紹介する自治体による支援サービスは、介護度や本人の経済状況などから対象者が限定されますが、民間事業者による支援サービスは、対象が限定されず利用できることが一般的です。ただし、自治体による支援サービスに比べると費用が高額になる点には注意が必要といえるでしょう。

各自治体による支援サービス

自治体によるサービスは、該当の地域に住んでいる高齢者に向けた独自のサービスを指します。サービス内容としては、配食サービスやゴミ出し支援などがあります。各自治体によって対象者やサービス内容、料金が異なるため、事前に自治体の窓口に問い合わせてしてみましょう。

介護保険サービス

訪問介護やリハビリなど週に何度か自宅でのサポートを受けることで、一人暮らしの不安や負担を軽減することにつながります。
また、デイサービスを利用することで他人との交流が生まれ、高齢者本人にとってよい刺激や生活の楽しみを得られる機会となるでしょう。他人とかかわる機会が増えることで、本人や遠方で暮らしている家族では気が付きにくい身体的な変化に気付いてもらえる可能性も高くなります。

介護サービスの費用は、心身の状態によって判断される「介護度」により異なり、介護度によって利用できるサービスも異なります。自己負担額は利用者の所得に応じて利用料の1~3割とされています。一人暮らしに不安を感じたら、高齢者のサポートサービスの導入を検討してみましょう。

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介護サービスにはどんな種類がある?介護保険サービスの基本情報を解説

周囲の人(家族)ができることは?

ここまでは、高齢者本人が行う対策についてお伝えしました。ここからは本人に対して、家族ができる対策を見ていきましょう。家族ができる対策はいくつかあるため、それぞれを順に紹介していきます。

本人の意見を聞く

本人はどうしたいのかという本音を聞いてみましょう。「どういった環境で暮らしていきたいのか」「老後の暮らしで優先するものは何か」について具体的に答えてもらいましょう。本人の意思を尊重する姿勢を示すことで、サポートを受け入れてもらいやすくなる可能性が高くなります。

本人の状況を把握する

既に高齢者が一人暮らしをしている場合は、一人で生活できているかを定期的に確認しましょう。たとえば、冷蔵庫の中をチェックすると、生活状況を把握したり異変に気付いたりすることができる場合があります。冷蔵庫の中に同じ食材がたくさんある場合や、消費期限切れのものが多く保管されている場合は、調理が億劫になりきちんとした食事ができていなかったり、認知症が進行していたりする可能性があるのです。

併せて、1人で薬の管理ができているかも確認しましょう。薬の飲み忘れはしていないか、間違った飲み方をしていないかなどをチェックすることをおすすめします。服用する薬によっては、飲み忘れにより病状を悪化させてしまったり、用法や容量を誤ってしまうことでトラブルが起きたりする可能性があります。複数の薬が処方されていて、服用が複雑な場合は、曜日や時間帯によって服用すべきタイミングの分かる「お薬カレンダー」や、仕切りのついた薬管理ツールの活用を検討してみてもよいかもしれません。

リビングに立つシニア女性

人とかかわる機会をつくる

ご近所付き合いや自治体のイベントなどに積極的に参加するように、家族から促してみましょう。一人暮らしの場合は、人とかかわる機会が少なくなりがちです。そのため、人によっては、寂しさを感じてしまったり、生きがいを感じられなくなったりしてしまうでしょう。そういったことを防ぐために、ご近所付き合いで他人と会話する機会を設けたり、自治体のイベントへの参加を促すことで、新しい楽しみを見つけることにつながります。

同居する

本人が同居を望み、子どもやその家族と意見が一致する場合は、同居を選ぶことも1つの選択肢です。同居することで、本人の精神的な安心感につながり、何かあった場合も家族がすぐに対応できるといったメリットがあります。しかし、本人と家族の意見が合わないまま同居を選んでしまうと、かえってお互いのストレスになる場合もあるので注意しましょう。

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成年後見制度を利用する

成年後見制度は、判断能力が不十分になった際に、家庭裁判所によって選任された成年後見人(支援者)が、本人に代わって財産管理を支援する制度です。成年後見人は親族以外の法律や福祉の専門家が選ばれる場合もあるため、事前に支援者や支援内容を決めておける任意後見制度の利用も検討するとよいでしょう。

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財産管理について相談する

本人と話し合いを行い、資産の把握や整理を行いましょう。たとえば、本人が認知症になってしまった場合、所有している財産を周囲の人が売却や処分をすることが難しくなります。将来的に認知症になってしまったときのことを想定し、財産管理はどのように行っていくかを決めることは、大切なことです。

資産管理の問題を解決するには、先ほどご紹介した成年後見制度や「家族信託」を活用しましょう。家族信託とは、本人が資産管理を行えない場合に備えて、家族が財産の管理や処分をすることを指します。成年後見制度では事業継承ができませんが、家庭信託の場合は、事業継承が可能です。

将来の準備を元気なうちに始めよう!

今回、ご紹介したように高齢者が1人で暮らすことはさまざまなリスクがあります。一人暮らしになったときのことを想定して、元気なうちに準備を始めることをおすすめします。自分が利用できるサービスを調べたり、実際に老人ホームを見学したりするのもよいでしょう。できるだけ早めに、サポートが必要になった際の選択肢を把握しておくことが重要です。

そのため、高齢者の一人暮らしで安全な生活をするためには、見守りサービスや介護サービスを積極的に利用することをおすすめします。また、家族としては本人が安全で快適に暮らすために、本人の意見を尊重しながら、慎重に選択していくことも重要です。

たとえば、1人でいることの心細さや費用面での心配など、高齢者の一人暮らしでは不安に感じることが数多くあるでしょう。そのようなときは、 三井不動産リアルティのシニアデザイングループに一度ご相談ください。シニア向け住宅の紹介や老後資金のシミュレーションなど、ご要望に応じた幅広い提案をご用意しています。

※1出典:令和4年版高齢社会白書,内閣府
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf
(最終確認:2022年7月21日)

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

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