親の介護が不安…今から知っておきたい施設の選び方

親の介護で施設への入居を考えたとき、介護施設の種類の多さに驚く人もいるのではないでしょうか。今回は、たくさんある介護施設の種類や、入居する施設を選ぶ際の手順をお伝えします。

目次
  1. 親の介護施設、どうやって選んだらよい?
  2. 介護施設にはどんな種類がある?
  3. 施設の選び方3ステップ
  4. 親が元気なうちに介護の話し合いをしておこう!
記事カテゴリ 親のケア シニア
2021.03.22

親の介護施設、どうやって選んだらよい?

高齢の親を持つ子ども世代にとって、気になるのが将来の介護のこと。

介護のスタイルは大きく「在宅介護」と「施設介護」の2つに分かれますが、自宅よりも整った設備と、介護のプロのサポートを希望する人に選ばれているのが施設介護です。

「いずれはうちも施設で…」と考えていても、いざとなると「どんな施設があるの?」「何を基準に選べばいいの?」など、分からないことが次々出てくるものです。

そこで今回は、初めて介護と向き合う人のために、介護施設の種類や選ぶ際の基準についてご紹介します。

介護施設にはどんな種類がある?

介護施設には、健康状態や希望するライフスタイルに応じたさまざまな種類があります。これらを、「元気なシニア向け施設」と「介護が必要なシニア向け施設」の2つのグループに分けて、具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。

なお、健康状態は要介護認定の度合いで測られるのが一般的です。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

●要介護認定とは何か、受ける手続きなどについての記事はこちら

元気なシニア向け施設

自立した生活を送れるシニア向けの施設には、次の6つが挙げられます。

介護付有料老人ホーム(自立者向け)
自治体から「特定施設」の指定を受けた有料老人ホームのうち、入居時自立者のみを対象とした民間施設です。自立者向けの介護付有料老人ホームの数は多くありませんが、いざというときの介護サービスや設備が整った施設に入居できることがメリットといえます。ただし、介護が必要になった際の対応は施設によって異なるので、入居前に確認するとよいでしょう。

住宅型有料老人ホーム(自立者向け)
介護付有料老人ホームと似た民間施設ですが、介護サービスは必要に応じて外部の事業者と契約して受ける形になるのが主な違いです。自立している人は費用を抑えられるのがメリットですが、介護が必要な度合いが高まると、介護付有料老人ホームよりも介護費用が高額になる場合があります。

サービス付き高齢者向け住宅
通称「サ高住」と呼ばれる、民間運営によるサービス付きの賃貸住宅です。介護の専門家による安否確認と生活相談サービスが付いています。また建物は、規定に基づいた廊下の幅や個室の広さを確保することが義務付けられています。

ケアハウス(軽費老人ホーム)
高齢により生活に不安がある60歳以上の人を対象とする、生活支援サービス付きの公的施設です。介護度に応じて「自立型」「介護型」の2種類に分かれます。

シニア向け賃貸住宅
民間運営による、バリアフリー化された賃貸住宅です。建物やサービスに基準はなく、事業者によって異なります。生活支援や介護サービスは必ずしも付いているわけではありませんが、個人で外部の業者と契約すれば利用することが可能です。

シニア向け分譲マンション
民間運営による、バリアフリー化された分譲マンションです。建物やサービスに基準はなく、事業者によって異なります。マンションによって娯楽やエクササイズを楽しめる共用部、買い物や家事代行などの生活支援サービスが充実しています。

一人暮らしのシニア

介護が必要なシニア向け施設

介護度が高く、食事や入浴などの日常生活に介助が必要なシニア向けの施設には、次の7つが挙げられます。

特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)
病気や障害などで、長期にわたり介護を必要とするシニア向けの公的施設です。認知症の方も入居できます。原則終身での利用が可能ですが、長期的な医療行為が必要になった場合は、ほかの施設に移らなければならない場合があります。

介護老人保健施設(老健)
病院から退院後、自宅での生活にまだ不安があるシニアを対象とした公的施設です。介護サービスと医療ケアに加え、在宅復帰のためのリハビリも受けることができます。特養(介護老人福祉施設)とは異なりこちらは終身での利用はできません。

介護療養型医療施設(療養病床)
医療法人が運営し、医療ケアと介護サービスを提供する公的施設です。居室は多床室(大部屋)がほとんどで、プライベートな居住空間は望みにくい傾向にあります。2017年度末で廃止が決定しており、他施設への移行期間は2024年3月までとされています。そのため、これから入居を考えている人は、次にご紹介する「介護医療院」を検討してみるとよいでしょう。

介護医療院
介護療養型医療施設の廃止にともない、2018年4月より新設された公的施設です。医療ケアと介護サービスに加え、プライバシーの確保や生活支援など「生活の場」も提供するのが特徴です。

介護付有料老人ホーム(要介護者向け)
介護付有料老人ホームのうち、要介護1以上の人を対象とした施設を「介護専用型」、要介護の人と自立した人の両方を受け入れている施設を「混合型」といいます。いずれも、24時間介護サービスを受けることができます。

住宅型有料老人ホーム(要介護者向け)
住宅型有料老人ホームの場合、介護サービスは外部の事業者と契約して利用するのが一般的ですが、施設内に訪問介護事業所やデイサービスが併設され、介護付有料老人ホームとほぼ変わらないサービスを受けられる所もあります。

グループホーム
認知症のシニアが、少人数のユニット型個室で共同生活を送る施設です。認知症ケア専門スタッフのサポートのもと、入居者それぞれが自らの能力に応じて、料理や洗濯といった役割を担いながら生活します。運営は民間企業のほか、社会福祉法人や医療法人が運営している施設もあります。なお、グループホームは、その地域に居住する方(住民票のある方)しか利用できません。

施設の選び方3ステップ

次は、たくさんの種類がある介護施設のなかから、最も適した施設を選ぶ手順を3ステップでご紹介しましょう。

手順のなかで確認すべきポイントについては、下の記事もご覧ください。

●住みかえ先の確認ポイントに関する記事はこちら

[ 1 ] 入居条件を整理する

介護施設へ入るには、要介護度や年齢などの条件があります。それによって選べる施設が異なるため、まずは要介護度を始めとした心身の状態をチェックし、どの種類の施設に入居できるのかを確認しましょう。

さらに、「家族が通いやすい立地」「支払える費用」「受けたいサービスの内容」「求める医療体制」など、希望する条件をまとめます。条件をリストアップできたら、それらに優先順位を付けておきましょう。

チェックリスト

[ 2 ] 施設に関する情報を集めて比較検討する

入居できる施設の種類が分かったら、次は該当する施設の情報を集めます。ホームページを見るほか、気になる施設があればパンフレットを取り寄せてみるとよいでしょう。

施設の情報がある程度集まったら、あらかじめ整理しておいた希望条件を元に比較検討し、候補を絞り込んでいきます。

施設パンフレット

[ 3 ] 実際に見学や体験入居をする

候補がいくつか決まったら、実際にその施設を見てみましょう。見学を申し込むほか、体験入居ができる施設もあります。

ホームページやパンフレットだけでは分からない、実際の雰囲気に触れてみると、どの施設が最も合っているか判断しやすくなるでしょう。

入居したい施設が決まったら申し込みを行い、健康状態や身元保証などを確認する入居審査を経て契約となります。

親が元気なうちに介護の話し合いをしておこう!

親も子も納得できる介護施設を選ぶには、早めの情報収集に加えて「親が元気なうちに相談しておく」ということが最も大切です。

入居前には、見学や説明会といった体力を使うプロセスがあり、親の希望や意思を確認する必要もあります。これらをきちんとできないまま施設を決めると、悔いが残る結果になってしまうかもしれません。

とはいえ、突然「老後の施設はどうする?」といい出すのは避けましょう。親の気分を害してしまうことのないよう、普段から連絡やコミュニケーションを心がけ、そのなかで将来の住まいや介護の希望についての話し合いを少しずつ進めておくのがベターですよ。

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。