ケアハウスとは?サービス内容・費用・メリットを解説

ケアハウスとは、高齢者の住まいの選択肢の1つで、自宅での生活が困難な60歳以上の人が生活支援を受けながら暮らせる施設です。今回は、ケアハウスでの生活がどんな暮らしになるのか、どれくらいの費用がかかるのかなどをご紹介します。

目次
  1. ケアハウスとは?
  2. ケアハウスは「自立型」と「介護型」の2種類
  3. ケアハウスではどんな生活になる?
  4. ケアハウスの人員体制
  5. ケアハウスにかかる費用は?
  6. ケアハウスとほかの施設との違いは?
  7. ケアハウスのメリットと注意点
  8. 長期的なライフプランで、安心のシニアライフを!
2022.09.12

ケアハウスとは?

高齢者の老後の住まいの選択肢の1つとして、ケアハウスが挙げられます。ケアハウスは、費用を抑えつつも、日常生活の支援や入居者同士の交流も楽しむことができる施設です。まだまだ元気だけれどこれからの生活が何かと不安で、サポートを受けながら自立的な生活をしたいという人や、高齢の親の今後の暮らしについて不安だと感じる人に向けて、ここではケアハウスの特徴やサービス内容、ほかの施設との比較など幅広く解説していきます。

ケアハウスとは、自宅での生活が困難な60歳以上の高齢者が、食事や洗濯などの生活支援サービスを受けながら暮らすことのできる施設です。社会福祉法人や地方自治体などによって運営される公的な福祉施設で、民営の施設と比較するとリーズナブルな費用で利用できるため人気があります。

また、費用の助成制度があるため、低所得の高齢者でも入居できる可能性が高く、身寄りがなく1人暮らしの人、加齢により身体機能が低下している人に適した施設となっています。

介護ケア

ケアハウスは軽費老人ホームの一種であり、「軽費老人ホームC型」とも呼ばれます。軽費老人ホームは、自立して生活するのが困難な高齢者に対して、無料または低額な料金で生活支援を行う施設です。提供サービスや所得制限などに応じて、ほかにも「軽費老人ホームA型」と「軽費老人ホームB型」があります。

ちなみに軽費老人ホームA型は家庭の事情や経済状況などにより一人で生活することに不安を感じている60歳以上の人が対象です。食事や軽度の生活支援サービスが受けられ、月額6~17万円ほどで利用することができます。

軽費老人ホームB型に関しては、食事の提供がない施設で、原則入居者は自炊が必要になります。月額費用は3~4万円ほどです。

自治体により差異はありますが、どちらも所得制限があり月額所得が概ね34万円以上の人は入居できません。

対して、ケアハウス(軽費老人ホームC型)は所得制限がなく、軽費老人ホームのなかで主流のタイプとなっています。ケアハウスの詳細については、次項から詳しく解説していきます。

なお、以下の表では、A型からケアハウスまで、それぞれの簡単な特徴を記載していますので参考にしてください。

軽費老人ホームA型軽費老人ホームB型ケアハウス(軽費老人ホームC型)
自立型(一般型)介護型
入居対象者生活に不安を
感じる60歳以上の人
要介護1以上の認定を受けた65歳以上の人
食事の有無×
生活サービスの有無
料金月額6~17万円月額3~
4万円
月額8~
18万円
月額10~19万円

ケアハウスは「自立型」と「介護型」の2種類

ケアハウスには自立型(一般型)と介護型があります。以下で各タイプの入居の条件や特徴などについて詳しく説明していきます。

自立型(一般型)

自立型は、生活に不安がある60歳以上の高齢者が対象で、食事や生活支援サービスなどを受けることができます。

介護サービスには対応していないため、1人の生活に多少の不安を抱えながらも、まだ介護が必要でない人におすすめです。具体的に受けられるサービスとして、食事の提供・掃除・洗濯などの生活支援サービス、緊急時の対応などがあります。そのほかにも、自立した高齢者が充実した生活を送れるよう、体操や脳を鍛えるゲームなど、さまざまなレクリエーションが実施されています。

自立型に入居した人が介護を受けたい場合は、外部の介護事業者と契約して利用することになります。ただし、要介護2程度となると、自立型のケアハウスは退去しなくてはならない可能性があります。

●要介護度に関する記事はこちら
要介護認定の基礎知識!要支援・要介護の違いと申請方法の解説

食事サポートをする介護職員

介護型

介護型は、介護保険法で定められた、「特定施設入居者生活介護」を受けることができるケアハウスを指します。入居の対象となるのは、要介護度1以上の認定を受けた65歳以上の人で、要介護度の高い、寝たきりの人でも入居可能です。ただしケアハウスによっては、高度な医療処置を必要とする人は入居できない場合があるので、ご自身や家族の健康状態と施設の入居条件をよく把握したうえで、入居を検討しましょう。

介護型の場合は、食事・掃除・洗濯などの生活支援サービスに加え、入浴、排せつなどの介護サービス・機能訓練(リハビリ)などのサービスを受けることができます。なお、これらのサービスには介護保険が適用されます。

●介護保険に関する記事はこちら
親の介護時に利用したい介護保険制度とは?サービス内容や支給限度額を解説

また、介護型ケアハウスでは、要介護度が上がっても住み続けられる場合が多く、認知症や看取りの対応まで行ってくれる施設もあります。

ケアハウスではどんな生活になる?

ここではケアハウスの設備の特徴とサービス内容について、より具体的に説明していきます。

設備

ケアハウスでは、原則入居者全員に個室が与えられることになっており、プライベートが確保された生活を送れます。居室基準は自立型・介護型ともに変わりなく、1人用の居室面積は21.6m2以上、2人用は31.9m2以上です。

ほかに共用設備として食堂や浴室、トイレなどがあり、さらに介護型の場合は「一時介護室」「機能訓練室」といった介護サービス用の設備が基準に従い設けられます。

サービス

ケアハウスで提供されるサービスのうち自立型と介護型で大きく異なるのは、介護サービスの有無です。入浴、排せつ、機能訓練などの介護サービスは、介護型にのみ常設されています。
そのため、自立型のケアハウスで介護サービスを受ける場合は、外部の介護サービスを依頼することになる点に注意が必要です。

そのほか、両者に共通するサービスには次のようなものがあります。

・1日3回の食事提供
・季節ごとの行事、旅行やスポーツイベントなどのアクティビティ
・24時間常駐のスタッフによる緊急時対応
・掃除、洗濯などの生活支援サービス

1日3食決まった時間に食事が提供され、かつ栄養バランスやエネルギー摂取量などもよく計算されているため、毎日を健康に過ごせます。また、急な体調不良や夜間のトラブルが発生した場合も、スタッフに常に連絡が取れるので安心です。

ケアハウスの人員体制

ケアハウスには、人員配置にも基準があります。

役職自立型介護型
施設⻑
(管理者)
1人以上(兼務可)1人以上(兼務可)
生活相談員入居者120人ごとに1人入居者100⼈ごとに1人
介護職員・看護職員・30人までは1人、30人以上80人以下の場合は2人、80人を超えた場合は2人以上
・看護職員の配置義務はないが、施設によって配置されている場合がある
・要支援者10人につき1人、要介護者3人につき1人
・看護職員は要介護者等30人までは1人、30人以上の場合は要介護者50人ごとに1人
・夜間は1人以上
機能訓練
指導員
1人以上(兼務可)
計画作成担当者
(ケアマネジャー)
要⽀援者と要介護者の合計100人ごとに1人(兼務可)

各人員の役割や資格は、次の通りです。

施設長

施設の管理者です。社会福祉士をはじめとする介護系の資格を持つ、あるいは社会福祉事業に2年以上携わった経験を有する人が1人以上配置されます。資格も経験もない場合は、社会福祉施設長資格認定講習会を受講する必要があります。

生活相談員

入居中の生活相談に対応する人員です。社会福祉主事任用資格や社会福祉士、精神保健福祉士など国が定めた資格が必要になります。

市区町村によっては、生活相談員になるために、ケアマネジャー、介護福祉士などの資格を持っていることや、施設長経験者であることが定められている地域もあります。

介護職員・看護職員

介護・看護サービスを行う人員です。介護職員は、入居者の食事や掃除、洗濯などの生活支援サービス、食事の配膳やレクリエーションの実施など、ケアハウスでの生活支援を中心に業務を行います。

看護職員は、検温や痰の吸引、健康管理など、介護職では行えない医療行為を主に行います。

介護職員

機能訓練指導員

リハビリを行う人員です。以下のいずれかの資格が必要とされます。

・看護師
・准看護師
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ指圧師
・柔道整復師
・鍼灸師(6ヶ月以上の実務経験が必要)

計画作成担当者

入居者のケアプラン(介護サービスの利用計画)を作成する人員です。計画作成担当者には、ケアマネジャーの資格が必要です。

●ケアマネジャーに関する記事はこちら
ケアマネジャーはどう選ぶ?業務内容から付き合い方のポイントまで解説!

ケアハウスにかかる費用は?

ケアハウスに入居する際は、初期費用と月額利用料がかかるのが一般的です。それぞれの費用について詳しくご紹介していきます。

初期費用

ケアハウスの入居には、一般的に初期費用として「保証金」や「入居一時金」が必要になります。保証金とは、敷金のことで、退去時に修繕や清掃に必要な経費が引かれて返却されます。入居一時金は、施設の家賃や管理費の前払い金として入居時に一括で支払う費用のことです。入居一時金には、施設ごとに償却期間と償却率が決められていて、償却期間内に退去した場合は、規定にもとづいて費用が返還されます。

初期費用の相場は自立型で0〜30万円程度、介護型は数百万円ほどかかる施設もあって平均的に高めになります。

月額利用料

月額利用料は、以下の4つの要素で構成されています。

・居住費(賃料や管理費、居室の水道代・光熱費)
・生活費(食事代や共用部分の水道代・光熱費)
・サービス提供費(事務費など)
・介護保険サービス費

介護保険サービス費は自立型では利用した分が、介護型では定額が請求されます。

月額利用料の金額は自立型が7~17万円程度、介護型が10~22万円程度が一般的です。

自立型(一般型)介護型
初期費用30万円数十万~数百万円
月額費用7~17万円10~22万円

収入で変わるサービス提供費

サービス提供費は、施設の人件費や共用部分の維持管理費などケアハウスで提供されるサービスに対してかかる費用のことで、入居者の前年の収入に応じて決まります。本来の金額に対する不足分は、自治体の補助金から支払われますが、補助金額は各自治体によって異なるため、入居を希望するケアハウスがある自治体の金額区分をよく確認しておくようにしましょう。

ケアハウスとほかの施設との違いは?

ケアハウスのほかにも、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホームなど、シニアライフを過ごすための施設がたくさんあります。ここでは、各施設の特徴をケアハウスとの違いに焦点を合わせて紹介していきます。

有料老人ホームとの違い

有料老人ホームは、大きく「介護付」「住宅型」の2つに分けられます。実際には「健康型」と呼ばれる有料老人ホームも存在しますが、数は多くありません。運営は主に民間の企業や医療法人が行っています。そのため、施設によって個性や特色が異なり、医療・ケアレベルも差があります。料金面ではケアハウスより高くなるのが一般的です。

介護付有料老人ホーム住宅型有料老人ホーム
受けられるサービス洗濯や食事の提供、掃除、買い物代行などの生活支援サービス、介護サービス全般(入浴、排せつ、食事介助、健康管理など)洗濯や食事の提供、掃除、買い物代行などの生活支援サービスのみ
介護サービスはオプション
(外部委託など)
初期費用0~数億円0~数億円
月額費用10~40万円10~40万円+介護費

グループホームとの違い

グループホームとは、認知症の診断を受けた65歳以上で、かつ、要支援2以上の認定を受けている人を入居対象とする施設のことです。認知症の人が少人数(5~9名)で自宅に近い環境で支援を受けながら生活します。

グループホームでの費用は、初期費用は0~数百万円程度、月額費用は12~18万円程度になります。

グループホームの様子

サービス付き高齢者向け住宅との違い

サービス付き高齢者向け住宅は民間事業者によって運営され、見守りや生活相談といったサービスを受けながら、自由度の高い生活を送ることができるシニア専用の賃貸住宅です。サービス付き高齢者向け住宅も一般型と介護型の2種類を展開していて、ケアハウスと比較して待機者が少なく入居しやすいという特徴もあります。

サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用は、一般型は初期費用が0~数十万円程度、月額費用は周辺の家賃相場に応じて8~40万円程度です。その一方で、介護型は初期費用が数十万~数千万円と施設によって差が大きく、月額費用は15~50万円程度となっています。

●サービス付き高齢者向け住宅に関する記事はこちら
サービス付き高齢者向け住宅とは?設備・サービス・費用を解説

●高齢者住宅に関する記事はこちら
高齢者住宅とは?自由で快適なシニアライフを送りたい人へ

特別養護老人ホームとの違い

特別養護老人ホームでは、要介護3以上の人が対象となります。寝たきりなど介護度が重い人の入居も可能です。しかし、介護型のケアハウスは要介護1以上でも入居できるので、その点が異なります。

特別養護老人ホームでは、初期費用は発生せず、月額費用のみで5万円~15万円程度かかります。

●高齢者の介護施設に関する記事はこちら
高齢者の介護施設にはどんな種類がある?それぞれの特徴をご紹介

ケアハウスのメリットと注意点

ケアハウスには、入居するメリットが4つと注意しなければならない点が2つあります。以下で詳しく紹介していきます。

ケアハウスのメリット

ケアハウスへ入居する大きな4つのメリットは以下の通りです。

プライバシーが確保される
ケアハウスでは、入居者全員に個室が提供されるため、プライバシーを確保することができます。これは、一般的に相部屋が多い特別養護老人ホームや介護老人保健施設にはないメリットです。

また、暮らしの自由度が高いのもメリットの1つです。施設職員から食事や洗濯などの生活支援を受けながら、原則自立して生活できるため、自宅と同じような暮らしを送ることができます。

施設の個室

レクリエーションが盛ん
ケアハウスでは、カラオケ、クイズ大会、将棋をはじめ、入居者同士が交流できるレクリエーションが盛んに行われています。レクリエーションは、入居者同士の親睦を深めるだけでなく、心身機能の低下を防止する効果もあるため、ケアハウスに入居することで身体機能の維持・向上にもつながります。

レクリエーション

低価格でサービスを受けられる
ケアハウスでは、ほかの施設に比べて、必要な費用を比較的低く抑えることができます。所得によってサービス提供費(事務費)が軽減され、支払う月額利用料が安くなります。まだまだ元気だけど経済的な余裕がない人にはおすすめの施設といえるでしょう。

長期間入居できる
介護型のケアハウスは介護サービスが施設で受けられるために、介護度が上がったとしても、そのまま入居し続けられることもメリットの1つです。老後の生活が不安な人でも安心して長く暮らすことができます。

ケアハウスの注意点

ケアハウスにはうれしいメリットがある一方で以下のような注意点もあります。

入居待ちが長い
ケアハウスはこれまでご紹介してきた通り、価格の安さやサービスの内容から人気が高いため、入居までの時間が長くなってしまう傾向にあります。目安として短くて1か月、長い場合は1年以上かかる場合もあります。ケアハウスの入居を検討している場合は、入居待ちがあることを念頭に検討するようにしましょう。

認知症ケアの受け入れについては決まりがない
基本的にケアハウスでは、認知症ケアに関してルールがありません。施設によって受け入れ可能な施設もあれば、受け入れ不可の施設もあるので、入居を考える場合は事前に施設によく確認しておくようにしましょう。

長期的なライフプランで、安心のシニアライフを!

これまでケアハウスのサービス内容や費用の特徴、入居するメリットや注意点などについてご紹介してきました。

ケアハウスは、有料老人ホームやグループホームと違い、低額で利用できるため、人気が高く入居待ちになることもしばしばあります。そのためほかの高齢者施設と比較検討し、ケアハウスに申し込む際は、複数の施設への申し込みを行うとともに、入居可能になるまで待機が必要になることも想定しておきましょう。

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