老人ホームの種類・特徴・費用と選び方のポイントを解説

老人ホームへ入居をするためには、施設選びや費用、契約についてなど、多くのことを考えなければいけません。今回は、老人ホームへ入居を考え始めたら知っておきたい、種類ごとの特徴や費用、選ぶポイントなどについてご紹介します。

目次
  1. 老人ホームとは?
  2. 自立したシニア向け老人ホーム
  3. 要介護のシニア向け老人ホーム
  4. 老人ホームを選択するポイントと契約までの流れ
  5. 家を売却した場合の減税制度
  6. 迷ったらプロに相談を!
2021.09.03

老人ホームとは?

退職や子どもの独立を機に、これからの暮らしについて考え、老人ホームを視野に入れ始めた人もいるのではないでしょうか?なかには、「体力の衰えを感じ始めたことがきっかけで、老人ホームについて調べてみたけれど、種類が多すぎて選び方が分からない」という人もいるかもしれませんね。

介護施設の車椅子とテーブル

一般的に老人ホームとは、食事の提供や家事の支援、健康管理や介護を行ってくれる施設を意味しますが、施設の種類によってサービス内容や費用は異なります。

老人ホームは、「自立したシニア向け施設」と「要介護のシニア向け施設」の大きく2つに分けられます。介護型のなかには、看取りまで行ってくれる終の住処になる施設もあります。

また、老人ホームには「民営」と「公営」があります。民営は住宅設備のバリエーションや提供サービスが豊富なことが一般的です。一方、公営は民営に比べて費用を安く抑えられるという特徴があります。

今回は各老人ホームの種類と特徴、費用や選び方のポイントについてお伝えします。それぞれの特徴を把握して、老後の住まいを選ぶ際の参考にしてくださいね。

自立したシニア向け老人ホーム

「まだまだ元気、介護の必要はないけれど、安心できる環境で暮らしたい」というシニアのための施設が自立型の老人ホームです。民間の施設、公的な施設それぞれの特徴を見ていきましょう。

自立したシニアたちと介護士

民間による施設
自立したシニア向けの施設のなかでも民間経営の施設は、自分で料理ができたり、いつでも外出できたり、自由度が高い点が特徴です。自立型の民間施設ではアクティブなシニアライフを楽しめます。

<自立型>有料老人ホーム(健康型・介護付・住宅型)
入居時、自立のシニアを対象にした施設です。居室の間取りは1LDKや2DKと広いところが多く、居室に浴室・キッチンが付いており、洗濯や掃除などの家事を依頼できます。居室のキッチンで料理を作ることもできますし、ホーム内のレストランで食事を楽しむこともできます。また、医療機関と連携しているため、健康管理サービスを受けられます。

施設内にスポーツジムやプール、温泉、カラオケルームやシアタールームなどの娯楽設備、理美容室などを備えていることが多く、イベントやアクティビティも充実しています。

介護が必要になった場合、「健康型」は、退去の必要がありますが、介護付の場合は、内部の介護スタッフから24時間介護を受けることができます。住宅型の場合は、外部の介護事業者と契約をすることで必要な介護サービスを受けることができます。介護付と住宅型の中には、看取りまで対応している施設もあります。

(編み物をするシニアの女性

公的な施設
自立したシニア向けの公的施設は、自立した生活を送れるものの、身寄りのない高齢者や経済的に余裕がない高齢者を受け入れています。公的資金で運営されているため、民営に比べて利用料金が安い点が特徴です。

軽費老人ホーム(一般型ケアハウス)
60歳以上で自立した方や軽度の介護が必要な高齢者が対象です。ケアハウスでは食事の提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。

ケアハウス以外に、軽費老人ホームA型・B型と呼ばれる施設もあります。こちらは、月収34万円以下の人が入居できる施設です。食事を提供するA型と食事を提供しないB型に分かれています。

いずれも介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用することになります。重度の介護が必要になると退去の可能性があります。なお、ケアハウスを含めた軽費老人ホームは自治体の助成金で運営されているため、安い費用での入居が可能です。

養護老人ホーム
経済的に余裕がない人を支援するための施設で、食事や健康管理のサービスを受けることができます。介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用するか、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている場合は、内部の介護スタッフから介護を受けることができます。

入居の可否を市区町村が審査するため、気軽に利用するのは難しい施設です。

ここまでご紹介した自立者向け老人ホームの入居金と月額費の目安、介護度、入居条件などを以下の表にまとめました。

自立者向け老人ホーム入居金月額費
(目安)
介護度入居条件認知症受け入れ看取り
<民営>健康型有料老人ホーム0~数億円10~15万円自立~軽度概ね60歳以上××
<民営>(自立型)介護付有料老人ホーム0〜数千万円15~35万円自立~重度概ね65歳以上
<民営>(自立型)住宅型有料老人ホーム0〜数千万円8〜30万円自立~重度概ね60歳以上
<公営>軽費老人ホーム(一般型ケアハウス)0~数千万円6~15万円自立~軽度60歳以上の高齢者×
<公営>養護老人ホーム×0~14万円自立生活環境や経済的に困窮した高齢者××

※月額費用はあくまで目安の金額であり、金額を保証するものではありません。

要介護のシニア向け老人ホーム

介護が必要になった場合に選択できる施設にはどのようなものがあるのでしょうか?介護型の老人ホームにも、民間の施設と公的な施設があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

車椅子のシニアと介護士

民間による施設
民間施設は、運営事業者によって入居要件やサービス内容、介護や医療・リハビリ体制もさまざまです。

<介護型>介護付有料老人ホーム
要介護認定を受けた概ね65歳以上の人が入居できる施設です。介護が必要になった場合は、24時間、ホームが提供する介護サービスを受けながらホームでの生活を継続できます。

また、食事の提供・掃除・洗濯などの生活支援サービス、入浴・排泄の介護サービス、リハビリや機能訓練、イベントやレクリエーションなどのアクティビティの提供を受けることができます。

レクリエーションをするシニア

<介護型>住宅型有料老人ホーム
生活支援サービスを受けられる施設です。要介護認定を受けた人が入居でき、食事サービスに始まり、洗濯や掃除、買い物などの生活サポートを受けられます。

高級感あふれる内装を施した施設もあり、レクリエーションやイベントも充実しています。

また、提携先の医療機関から健康管理サービスが提供されます。介護サービスを受ける際は、外部の介護サービス事業者と個別に契約することになりますが、ケアマネジャーがいる居宅介護支援事業所や訪問介護事業所を併設している施設も多いです。その場合は介護サービスの契約や相談、利用がスムーズに行えます。

介護士に介護されるシニアの女性

公的な施設
介護を必要とする高齢者向けの公的なホームは2種類あります。

特別養護老人ホーム
基本的に65歳以上で、要介護3以上の人、または重度の認知症の人を対象にした施設です。原則として、終身にわたって食事や入浴の介助、掃除や洗濯の生活支援のほか、リハビリ、レクリエーション、看取りなどを受けられます。ただし、看護師が24時間常駐している施設は少ないため、常時医療ケアを必要とする人の受け入れができない施設もあります。

「従来型」と「ユニット型」の2つのタイプがあり、従来型の多くは4人部屋です。2002年からユニット型が制度化され、すべて個室となっています。また、民間のホームに比べると費用が安いのも大きな特徴です。

軽費老人ホーム(介護型ケアハウス)
基本的に65歳以上で、要介護1以上の人を対象とした施設です。食事の提供や掃除などの生活支援、介護サービスを受けることができます。

要介護の老人ホーム入居金月額費
(目安)
介護度入居条件認知症受け入れ看取り
<民営>(介護型)介護付有料老人ホーム0~数億円15~40万円軽度~重度概ね65歳以上
<民営>(介護型)住宅型有料老人ホーム0~数千万円10〜30万円軽度~重度概ね60歳以上
<公営>特別養護老人ホーム×5~15万円要介護3~5(特例要介護1・2を含む)65歳以上
<公営>軽費老人ホーム(介護型ケアハウス)0~数千万円8~20万円軽度~重度65歳以上

※月額費用はあくまで目安の金額であり、金額を保証するものではありません。

老人ホームを選択するポイントと契約までの流れ

ここまでご紹介したように、老人ホームは種類も受けられるサービスも豊富です。そのなかから、自分にあった施設を見つけ、契約することになります。ここからは、施設の選択のポイントと契約までの流れについてお伝えします。

契約書にサインするシニア女性

選択のポイント
選択する際の大切なポイントは、自分の希望条件に合っているかどうかです。まず、自分の健康状態はどうか、自分がどんな生活をしたいかを考え、入居条件と希望に合っているかどうかを判断しましょう。

具体的にはまず、終の住処にするか、一時的な住居にするか、入居の目的を決めます。そして、どのエリアに住みたいか、どんな設備が必要か、サービス内容、介護や医療・リハビリ体制は自分に合っているか、趣味に合ったレクリエーションがあるかどうかを確かめましょう。さらに、自分の予算に合う施設かどうかを確認します。

契約をする人

契約までの流れ
住居の探し方から契約までのおおまかな流れをお伝えします。

[ 1 ] いくつか資料を取り寄せる
1か所だけでなく、いくつかの施設に問い合わせて、資料を取り寄せましょう。インターネットで情報を集めることもできます。大切なことは、最初から1か所に絞らず、いくつかの施設の資料を集め、比較検討することです。

[ 2 ] 何か所か見学に行く
数か所の気になる施設へ見学に行きましょう。実際に施設の様子を見て、スタッフの対応に触れることで、自分にとって暮らしやすいかどうかを判断しやすくなります。

見学の際には、立地、サービス内容の確認、スタッフの対応、入居者の様子や入居者同士のコミュニケーションが図れているかどうか、差し入れは可能かどうかなどを細かくチェックしましょう。また、面会や外出などについても確認することをおすすめします。

[ 3 ] 納得したところと契約する
施設を見学して話を聞き、納得した施設と契約します。契約の際は必ず家族や信頼できる人に同席を依頼して、契約前に入居時の支払金額や月額費、退去要件などを再確認しましょう。

身元保証人や引受人が必要になる場合が多いため、気に入った施設が見つかったら早めに家族に契約の希望を伝えるとよいでしょう。また、健康診断書など契約に必要な書類の準備に時間がかかることがありますので、スケジュールを調整して早めに準備することをおすすめします。

一般的に、申し込みから入居まで1~2か月かかります。特に公的な施設の場合は、希望してもすぐに入居が難しい場合や入居要件が細かく定められている場合があるため注意が必要です。

家を売却した場合の減税制度

希望に合う施設が見つかり、老人ホームへ住み替えるとき、今の住まいをどうしたらよいのでしょうか?子どもがいる場合は譲渡する方法があるほか、売却してその費用を入居金や今後の生活費に充てる方法があります。また、入居してから住まいを売却する方法もあります。

白い家の模型

家を売却して、介護サービスを受けられる施設へ入った場合、または施設へ入居してから3年経過後の12月31日までに売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円が特別控除されます。たとえ、3年間空き家であっても、賃貸で貸し出していたとしても、最高3,000万円が控除されます。特定期間後に売却すると控除を利用できなくなるため、注意が必要です。

ちなみに、土地、建物が夫の単独名義の場合は夫のみが最高3,000万円の控除を、夫婦2人の名義の場合は夫婦それぞれが最高3,000万円の控除を受けられます。

また、今の住まいを賃貸に出す方法もありますが、その場合は、毎年確定申告する必要があることを覚えておきましょう。

迷ったらプロに相談を!

種類が豊富な高齢者向けの施設のなかから、自分らしく安心して暮らせる施設を見つけることが何より大切です。多くの施設から自分にふさわしい施設を見つけることが難しいと感じる人や、施設が多すぎて迷うという人は、プロに相談するとよいでしょう。

要支援の人、そして介護認定を受けていない人は、地域包括支援センターに相談します。すでに介護サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

自分がどこに相談すればいいか分からない人は、老人ホーム紹介センターや、不動産会社に設置されているシニア専用相談窓口(たとえば、三井のリハウスシニアデザイン室)などに相談するのもおすすめです。

プロに相談して、たくさんある施設から自分に合う場所を選び、充実したシニアライフを送ってくださいね。

プロに相談するシニアの夫婦

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。