老後を住みかえ先で暮らすとき、今住んでいる家の対処法とは?

老後の生活を考えて住みかえをするとき、今住んでいる住まいはどうすればよいのでしょうか?今回は、「売却する」「賃貸物件として貸し出す」「空家のまま維持する」の3つの方法をご紹介します。

目次
  1. 住みかえ後の自宅の対処方法は3つ
  2. [ 1 ] 売却する
  3. [ 2 ] 賃貸物件として貸し出す
  4. [ 3 ] 空家として残す
  5. 住みかえを考えるなら、今の住まいの対処法も検討しよう!
記事カテゴリ 老後のすまい シニア
2021.01.28

住みかえ後の自宅の対処方法は3つ

今後の生活を見通して住みかえを検討しながらも、「さて今の住まいはどうしようかな」と戸惑ってはいませんか?

ライフステージに応じた住みかえをするときは、今の住まいへの対応を決めなければなりません。住みかえ後の今の住まいの扱いには、主に「売却する」「賃貸物件として貸し出す」「空家のまま維持する」の3つの方法が考えられます。

住みかえにはお金が必要です。貯蓄や年金のほかに、現在の家を売ったり、賃貸にしたりすることで、今後の生活費を確保しながら新しい生活の資金に充てることができます。「売却か賃貸かで迷っている」「家族と意見がまとまらない」といった場合は、空家として残しておいてもよいでしょう。

今回は、住みかえがスムーズにいくよう、売却、賃貸、空家それぞれの特徴やメリット、注意点をご紹介します。

[ 1 ] 売却する

新しい住まいを決めると、今の住まいをどうするか、決めなければなりませんね。その方法の1つとして、「売却する」という方法があります。家を売却して現金にすることのメリットと注意点を見ていきましょう。

メリット

売却して利益を得ると、住みかえ費用やその後の生活費に充てることができます。または万が一に備えた貯蓄に回せるでしょう。

不動産を所有しなくなるので、住まいの維持や管理の必要がなくなりますよ。また、家を売って現金にすることで、財産分与がしやすくなります。

注意点

住まいを売って「現金にする」ということは、住まいが自分の所有物ではなくなるということです。それは、実物の資産を子世代に遺せないということでもあります。慣れ親しんだ住まいには、お金には代えられない価値があるかもしれません。売却して家の所有権を手放す前に、子世代の考えも確認しておきましょう。

また、住宅ローンが完済していれば問題ありませんが、残債があると、売却を諦めなければならないかもしれません。

なぜなら、残債がある住宅には、抵当権が付いています。抵当権が抹消されていないと、買い手から警戒されるため、売却はできないのです。抵当権は、住宅ローンを完済しない限り、外せません。

さらに、売却した資金を住みかえの資金と考えている場合、売却しても資金が残らないと、住みかえ自体が難しくなり、売却したことで住まいを失うことになってしまいます。住宅ローンの残債が多い場合は、よく資金計画を考える必要がありますね。

そして相続税に関しても注意が必要です。相続税は、同等の価値の財産でも、現金として相続する場合と不動産として相続する場合では、税額が違ってきます。不動産のほうが現金よりも土地は2割、建物は3割程度節税されることになります。

さらに、住まいを売って利益を得た場合は、健康保険料や介護保険料の負担額が増えることがあります。利益があると、所得が増えたとみなされるためです。住まいを売って利益を得た翌年は、気をつけなければなりませんね。

家の模型と電卓

[ 2 ] 賃貸物件として貸し出す

住みかえにあたり、今の住まいへの対応として考えられる2つ目は、「賃貸物件として貸し出す」方法です。この場合、賃貸経営を始めることになり、新たな視点で住まいを管理・運用することになります。

メリット

住まいを賃貸物件にするメリットは、月々の家賃収入が見込めることです。老後に、年金以外の収入があると、経済的なメリットばかりではなく、精神的にも大きなゆとりが生まれるでしょう。家族に資産を遺すことにも繋がります。

また、賃貸物件を経営すると、住み慣れた地域と縁が続いていくことになります。不動産を管理・運用することにもなるので、生活にハリが出るかもしれません。

さらに、相続の際には、その不動産の相続税評価額から借地権評価額・借家権評価額を引いたものが評価額となるため、相続税対策としても有効です。

注意点

今の住まいを賃貸物件にしたときの注意点としては、経費がかかることです。初期費用としては、クリーニングやリフォームなど、固定費としては管理費や賃貸募集の経費などがかかります。

せっかく賃貸物件にしても、入居者が入らないことがあります。そうすると、収入が入らず支出ばかりで収支が合わず、赤字経営になってしまうことも考えられます。賃貸経営を始める前に、今の住まいが賃貸物件として向いているか、検討するのがおすすめです。

さらに、相続の際には、不動産や家賃収入を相続人の間でどう振り分けるか、といったことで揉めてしまうケースがあります。不動産は資産として分けづらいため、誰に、何を、どう継ぐのか、生前に遺言書を記しておくとよいでしょう。

[ 3 ] 空家として残す

住みかえにあたり、今の住まいの対応として考えられる3つ目は、「空家のまま維持する」という方法です。この場合、空家になった家をどう管理していくかが鍵となりそうです。

メリット

空家として所有する場合、住まいを資産として残すことができます。住まなくなっても自己所有しているのですから、いつでも使うことが可能です。また、施設に住みかえる場合、自宅と施設を行き来することで、徐々に新しい環境に慣れていくことができるでしょう。

さらに、住まいを空家として残しておくことで、「何かあったときに帰る場所がある」という安心感を得られやすいです。

注意点

住まいを空家として残す場合、管理費や固定資産税など維持費がかかることを覚えておきましょう。住まいは、人が住まなくなると途端に荒れるものです。住まいのあちこちが老朽化したり、害虫が出たりすることもありますよ。

また、人が出入りしないと、犯罪に利用されやすくなります。近年では、放置された空家への対策として、「特定空家」に認定されると、行政から勧告や命令を受けます。

行政からの勧告や命令に従わない場合は、最大50万円以下の罰金が科せられたり、固定資産税の税制優遇の適用外となり、税額が6倍程度に上がることがあるので注意が必要です。

また、相続の際、不動産は分配しづらいうえに、空家は資産価値が減り、ときにマイナスの資産となってしまうこともありますので、相続の際に揉めないよう準備をすることが必要です。

草に埋もれた家

住みかえを考えるなら、今の住まいの対処法も検討しよう!

住みかえる際に、今の住まいをどのように対処するかについてお伝えしました。あらかじめ住まいをどうするか決めておくと、引っ越しや荷物の移動などの費用、住まいの維持管理費などの出費を減らすことにつながりますよ。

売却せず、賃貸物件や空家として住まいを残すのであれば、管理が必要です。「住まいを売りたくはないけれど、一人で管理するのは大変」と思うのであれば、賃貸の場合は不動産会社へ相談すること、空家の場合はその管理を行う専門業者を利用することも考えてみてくださいね。

今の住まいをどうするのか?方向性を決めるには、自分たちばかりではなく、相続人となる子世代を含めて早めに話し合っておくことが大切です。

親世代と子世代とで、今後どうしたいのか、あらかじめ互いの意思疎通を図っておくことで、子世代に余計な負担をかけずに済むでしょう。

一家団欒

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。