相続の相談は誰にする?必要な準備も含めご紹介!

相続手続きを自分でおこなおうとすると、かなりの労力と時間を使うもの。司法書士、行政書士、税理士、弁護士などに相談したいと考えても、誰に相談すればよいのか、どんな準備が必要か分からない人も多いのではないでしょうか?今回は、相続の相談をする相手や準備についてご紹介します。

目次
  1. 相続の手続きはプロに任せたい…
  2. 誰に相談すればよいの?
  3. 相続の相談をする前にやっておくべきことは?
  4. 相続の相談をする際に用意しておきたい書類は?
  5. 相談前の準備をしっかりして相続手続きをスムーズに進めよう!
記事カテゴリ 相続 シニア
2022.01.27

相続の手続きはプロに任せたい…

親が亡くなった場合、相続の問題が浮上してきます。「相続に関する諸手続きはいったいどうしたらよいのだろう?」「誰がどのくらい資産を引き継ぐのだろう?」「相続税はどのくらいかかるのだろう?」など、相続にはさまざまな疑問が出てくるものですね。

知識がない、時間がないなどの理由から、相続手続きに不安を覚える人もいると思いますが、大変な相続手続きをプロに依頼できることをご存じでしたか?今回は、相続について相談できる相手と、相談するうえでやっておいたほうがよい準備についてご紹介します。

遺産分割協議書を見る税理士の手元

相続に関する専門家は、一般的に「司法書士」「行政書士」「税理士」「弁護士」などが挙げられます。こうした相続の専門家は、初回無料相談をおこなっているところが多くあります。何から手を付ければよいのか分からない人や、自分で全てをやり遂げる自信がない人は、一度相談してみるのが安心です。相続手続きや相続税の節税についてアドバイスがもらえる場合もありますよ。

また、役所の相談窓口でも、委託を受けた税理士や弁護士などの専門家へ相談できる場合があります。公的機関で手軽にその道のプロに相談ができるという安心感がありますね。

では、具体的にどんな専門家にどんな相談をするのがよいでしょうか?それぞれの専門家の特徴を見ていきましょう。

●各専門家の違いについての記事はこちら
遺産相続手続きを具体的に始めたい!誰にどんな手続きをお願いできる?

誰に相談すればよいの?

相続についての相談といっても、手続き、書類作成、税金、親族間でのトラブルなど、さまざまな種類の悩みがありますよね。専門家は、相続に関する全てのことに対応できるという訳ではなく、悩みの内容に応じて相談相手を選ぶ必要があります。ここでは、それぞれの専門家がどういったことに対応できるのかをご紹介します。

司法書士

相続した不動産の名義変更をおこなう際には司法書士に相談しましょう。司法書士は、不動産登記を本人の代わりにおこなったり、裁判所や法務局に提出する書類を作成したりする仕事です。

遺産相続で不動産を取得する場合には、名義変更が必要になります。その際に必要な書類の作成や手続きを司法書士が代行してくれます。ほかにも、遺言書や遺産分割協議書などの書類作成や相続に関する手続き全般をおこなってくれる人もいます。

行政書士

紛争になっていない相続に関する書類作成で困ったときは、行政書士に依頼するとよいでしょう。行政書士は官公署に提出する書類や、法律的な権利義務に関する書類の作成を得意としています。たとえば、自動車の名義変更、遺産相続の際に、相続関係説明図や話し合いが済んだ後の遺産分割協議書などの書類を作成します。

ただし、少しでも相続人の間で紛争がある事案や不動産の名義変更、裁判所に提出する書類作成について行政書士はおこなえないので、依頼する前に注意が必要です。

税理士

税金に関する悩みごとを相談したい場合は、税理士に依頼しましょう。税理士は、企業や個人事業主などの納税者の代わりに会計処理をおこなったり、税に関する相談に応じたりする仕事です。相続した遺産に相続税が掛かった場合や、相続税の申告書が必要になった場合は作成から提出まで一括しておこなってくれます。そのほか節税対策についてアドバイスしてもらえることもあります。

弁護士

相続について交渉をおこなうときや、もめごとやトラブルが発生したときは、弁護士に相談するとよいでしょう。ほかの専門家は交渉の代理人になれません。相続人同士で交渉をしたいときや、主張が分かれ、話し合いでは解決できず調停などによって決着を付けるしかないときは、弁護士のみが正式な代理人となります。

家系図と家の模型

相続手続きを外部に依頼する場合、ほとんど初回に無料相談の機会を設けているケースが多く、漠然とした悩みを抱えている人でも気軽に相談することができます。また先ほどご紹介したように、役所の相談窓口を利用してみるのもよいかもしれません。

専門家に相談する際、事前にできる範囲で情報を集め、整理しておくと話がスムーズに進むといえます。では、実際に手続きをお願いしたいと考えたとき、何を用意して行けばよいのでしょうか?

相続の相談をする前にやっておくべきことは?

相続の専門家は、初回無料相談の際に、時間制限を設けていることが多くあります。そのため、できるだけ情報を集め、整理し、必要な書類をあらかじめ用意してから訪問するとよいでしょう。具体的に情報整理しておくべきことを3つお伝えします。

家族構成をまとめておく

相続人が誰かを明確にするために、家族構成をまとめておきます。全ての相続人を整理して一覧表を作成しておくとよいでしょう。家族構成は、誰がどのくらいの財産を引き継ぐかを決めるための大切な情報です。

被相続人(亡くなった人)の配偶者、子ども、孫、親、兄弟姉妹、その子どもなど、全ての相続人の名前と住所を書き出して、分かりやすくしておくとよいでしょう。被相続人と離婚や死別した前の配偶者がいて、その間に子どもや孫がいるケースもありますので、注意してください。

全ての財産をできるだけ洗い出しておく

遺産分割や相続税の概算を知るためには、被相続人の財産がどのくらいあるかを洗い出しておくことが必要です。財産には、現金、預貯金、土地、建物、株式、有価証券、社債、自動車、ゴルフ会員権、貴金属や絵画などが挙げられます。借金や死亡退職手当も相続の対象ですから忘れずに記載してください。

生命保険は遺産ではありませんが、相続税の対象になりますので、調べておく必要があります。

葬儀の費用は、相続税債務控除の対象になるので、これらの金額も把握しておきましょう。葬儀にかかった全費用の領収書を保管しておくことをおすすめします。

財産の調べ方が分からない場合は、被相続人の預金通帳と郵便物を確認するとよいでしょう。預金通帳を見れば、預金額やお金の流れを確認することができます。また、郵便物を調べれば、財産を管理している金融機関はどこか、借り入れがあるかどうかなどのヒントになります。

最近は、ネット銀行やネット証券など書類がないものもあります。その場合は、こうした金融機関のキャッシュカードやメール、確定申告書などを調べてみるとよいでしょう。そのうえで、分からないことがあればカスタマーセンターに問い合わせましょう。

郵便物として、保険会社の契約内容の確認や株式の配当についての通知が来ていることもあります。また、固定資産税の通知書があれば、不動産の管轄市区町村を把握することができます。その後、金融機関や管轄市区町村に詳しく問い合わせるとよいでしょう。

亡くなるまでの時系列を整理しておく

もし、亡くなった人が生前病気を患っていたり、意思疎通が取れなかったりしていたら、そうなった時期を記録しておくことも必要です。この情報は、生前贈与や遺言能力についての判断材料になります。

家の模型を渡す手

相続の相談をする際に用意しておきたい書類は?

財産の洗い出しが終わったら、必要な書類の準備に取り掛かりましょう。書類がそろっていれば、迅速に相談が進むうえに、早めに相続税を算出するのに役立ちます。

注意する点は、全ての資産に関する資料を漏れなく提出することです。大きな資産が抜け落ちていた場合、相続税額が大幅に変わってきます。相続税額を正しく算出するために、全資産に関する書類を事前にそろえておく必要があります。

相談の際にそろえておくとよい書類と書類の入手先は、以下の通りです。

必要書類入手先備考
故人の戸籍謄本と住民票の除票市区町村の窓口死亡の記載がある戸籍謄本は本籍地の役所に請求また、除票は死亡時の住所地の役所に請求
預金通帳の残高証明書銀行被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本、また申請する本人が相続人であることが分かる戸籍謄本・実印・印鑑証明書が必要
株式・投資信託の有価証券証券会社・信託銀行被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と除票の写し、また申請する本人が相続人であることが分かる戸籍謄本が必要
固定資産評価額が分かる証明/建物の課税証明書市役所・区役所被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と除票の写し、また申請する本人が相続人であることが分かる戸籍謄本が必要
固定資産評価額が分かる証明書/土地の登記簿謄本法務局公図・測量図も合わせて用意すること
不動産は一般公開されているため、身分証明書・印鑑は不要
生命保険証・損害保険証保険会社受取人が誰かを調べておくとよい
借入金の残高証明書金融機関被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と除票の写し、また申請する本人が相続人であることが分かる戸籍謄本が必要
葬儀費用葬儀関係者領収書が必要
年金手帳市区町村役場・年金事務所被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と除票など
遺言書自宅等、法務局、公証役場自筆証書遺言は家庭裁判所で検認手続きが必要。封印されている場合は決して開封しないこと
公証役場や法務局に遺言が保管されている場合があるので、事前に確認しておくこと(全国どこの公証役場、法務局でも可能。被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本と除票の写し、また申請する本人が相続人であることが分かる戸籍謄本が必要)

なお、被相続人に上記以外の資産がある場合は、さらに用意する書類が多くなります。被相続人のケースによって必要書類は異なりますから、専門家に事前に尋ねておくとよいでしょう。

また、相続の手続きをおこなうため、上記の書類を集める際、相続する人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などが必要になります。入手先によって提出書類が違うため、事前に問い合わせることをおすすめします。

相談前の準備をしっかりして相続手続きをスムーズに進めよう!

相続の手続きは専門知識がないと時間がかかってしまうかもしれません。誰が財産を引き継ぐのか、また財産の分与額はどのくらいか、さらに相続税についても専門知識がないと難しいものです。自分だけで手続きを進めることに不安がある場合は、専門知識を豊富に持ったプロに相談するのがよいでしょう。

無料で相談する際は、この記事で紹介した書類を準備しておけばスムーズに話ができます。全てがそろわなくても相談はできますので、安心してくださいね。

また、一度相談したら、その人に手続きを依頼しなければならないということはありません。見積もりが事前に提示されるので、他社と比較しながら検討することもできます。複数名の専門家に相談して、信頼できる人を探してみるのもよいでしょう。

相続税の申告手続きには期限が定められています。専門家に相談して、負担を軽減しながら、正確でスムーズな手続きをおこないましょう。

伊藤諭

弁護士法人ASK市役所通り法律事務所代表。弁護士。
地元に根ざした幅広い業務を行い、企業法務や交通事故、相続などを注力分野としている。
多数の講演実績のほか、ネットニュースの監修やメディア出演も行う。
https://www.s-dori-law.com/