介護老人福祉施設とは?特徴・入居条件・費用について解説

介護老人施設とは、自宅での生活が困難で、常に介護を必要とする高齢者向けの施設です。施設形態の種類や入居条件、軽減措置など、介護老人福祉施設について詳しくご紹介します。

目次
  1. 介護老人福祉施設とは?
  2. 介護老人福祉施設の特徴
  3. 介護老人福祉施設の入居条件
  4. 介護老人福祉施設の入居費用
  5. 介護老人福祉施設のメリットと注意点
  6. さまざまな選択肢から最適な老後の住まいを見つけよう!
2022.09.12

介護老人福祉施設とは?

シニア世代やその家族のなかには、将来、自分や家族が介護を受けるときのことを考え、どういった施設に入居するのがよいのか疑問や不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?介護付きの施設といっても、介護老人福祉施設や介護付有料老人ホームなどさまざまな種類があって、どこをどのように比較したらよいのか自分で判断できない場合もあるかもしれませんね。

そこで、今回は介護付きの施設のなかでも公的機関が運営する「介護老人福祉施設」にスポットを当て、その特徴やサービス内容、入居条件、費用などを詳しくご紹介します。

介護老人福祉施設とは、常に介護を必要としていて、かつ自宅での生活が困難な高齢者に対し、生活全般の介護を提供する施設です。一般的には、「特別養護老人ホーム」、略して「特養」と呼ばれています。介護老人福祉施設のなかには、利用者ができるだけ自立した日常生活を送ることができるよう、定員を29名以下に設定した「地域密着型介護老人福祉施設」もあります。

介護老人福祉施設のサービス内容は、入浴や排せつ、食事の介助をはじめ、健康管理や機能訓練、療養上の世話といったものが挙げられます。基本的には、終身にわたり介護を受けることができる施設です。ほかの介護施設と比較して低料金で手厚いサービスを受けられるとあって人気が高い傾向にあるため、地域によっては入居まで数年待たなければならないケースもあります。

シニア女性と介護スタッフ

介護老人福祉施設の特徴

介護老人福祉施設は、どういった特徴があるのでしょうか?ここからは、介護老人福祉施設の特徴を4つの視点から見ていきましょう。

運営団体

運営を行っているのは地方公共団体や社会福祉事業を行うことを目的とした社会福祉法人で、厚生労働省の許可を得て指定された公的な団体です。介護老人福祉施設は、厚生労働省により基本方針や設備基準、人員の配置などの細かな基準が設けられています。

施設形態

介護老人福祉施設では、設置しなければならない設備が法律で定められています。たとえば、浴室は介護を必要とする人が入浴するのに適したものでなくてはならなかったり、トイレには緊急の際にスタッフを呼び出せる設備の設置が必要であったりします。このほかにも、医務室や廊下、階段に対しても基準が設けられています。

また、居室の広さにも定義があり、1人当たりの床面積が10.65㎡(約5.8畳)以上と法律で定められています。居室タイプには、「多床室」「従来型個室」「ユニット型個室」「ユニット型準個室」の4種類があります。

多床室
多床室とは、1つの部屋を2人から4人で利用する相部屋のことをいいます。隣の居室とカーテンやパーテーションなどでの簡易的なもので仕切りを行うため、プライバシーが確保しにくいという特徴があります。

従来型個室
従来型個室は、各居室が完全な個室になっているため、プライバシーの確保ができます。

ユニット型個室
入居者のうち10人程度ずつ「ユニット」を作り、そのユニット1つに対してリビングや食堂などの共用スペースと居室が配置されるタイプを「ユニット型」といいます。ユニット型は、入居者一人ひとりの個性や生活リズムを尊重した造りになっており、なじみの人間関係を築くためにユニットごとの職員が配置されます。

ユニット型のなかでも居室が個室になっているものを「ユニット型個室」といいます。ユニット型個室では、集団ケアよりも個別性が重視されるため、プライベートな空間もあり、自宅のような安心感がほしいという人には、向いているでしょう。

ユニット型準個室
ユニット型のなかでも、完全な個室ではなく、天井との隙間がある固定壁で仕切られているタイプを「ユニット型準個室」といいます。多床室に比べると周りを気にせず、自分の時間が過ごせるでしょう。

微笑むシニア女性

スタッフの配置基準

介護老人福祉施設の職員の配置は法律で定められており、具体的な人数は以下の通りです。

職種人員基準
医師入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
看護師または介護職員入居者3人に対して1人以上
栄養士1人以上
機能訓練指導員1人以上
介護支援専門員1人以上(入居者100人当たり)

看護師の具体的な人数は入居者の数により以下のように定められています。

入居者の人数看護師の人数
30人以下常勤換算で1人以上
31~50人2人以上
51~130人3人以上
131人以上4人以上

受けられるサービス内容

介護老人福祉施設で受けられるサービスは、生活に直接かかわる部分から、入居者の家族に対するものまで多岐にわたります。詳しく見ていきましょう。

栄養管理が行き届いた食事
栄養士が考えた献立をもとに栄養バランスのよい食事やおやつが提供され、入居者の健康状態に合わせて食事の形状にも配慮がなされます。ものを噛んだり飲み込んだりする機能が低下している場合は、食材をミキサーにかけて食べやすくしたり、細かく刻んでペースト状にしたりと臨機応変な対応も行います。

感染症や食中毒の予防にも努めています。高齢の人は、若い人に比べると免疫力が低下しているため、食中毒が原因で危険な状態に陥る可能性があります。そのため、介護老人福祉施設では、徹底した食中毒予防がなされているのです。

入浴・着替え・排せつの介護
入居者は最低でも週2回入浴することができます。リフトを使用して行う「中間浴」や、ストレッチャーやチェアーを使用して行う「機械浴」など歩行が難しい人や寝たきりの人の入浴も可能です。

レクリエーションを行うシニアとスタッフ

医師や看護師による健康管理
日々の体調管理やバイタルのチェック、医師による診察など定期的な健康管理を行います。緊急の際も夜間に看護師がいない場合は、すぐに連絡が取れるように「オンコール体制」を敷いている施設もあります。オンコール体制とは、入居者に急変が起きた場合でも職場に駆けつけられるように、看護師を待機させておくことを指します。

また、口腔衛生管理にも抜かりがありません。入居者により食事や会話を楽しんでもらうために歯科医師や歯科衛生士による定期的な口腔ケアを行う施設が増えています。

レクリエーション、機能訓練
介護老人福祉施設では、レクリエーションや機能訓練を受けることができます。施設によっては、お花見や夏祭りなど季節にちなんだイベントや、公園や美術館などへの外出を行うケースもあります。

家族の相談
入居者だけでなく、入居者の家族の相談にも対応しています。介護老人福祉施設では、施設生活における家族からの要望や苦情などの相談も受け付けているため、家族も安心して任せることができるでしょう。

個室にある車いす

介護老人福祉施設の入居条件

ここまで介護老人福祉施設の概要につい見てきましたが、入居するにはどのような条件が必要なのでしょうか?ここからは、入居に必要な条件についてご紹介します。

要介護3以上・65歳以上

条件の1つとして、要介護3以上の認定を受けていて、65歳以上である必要があります。どちらか一方しか満たしていない場合は、入居することができません。また、24時間体制で手厚い医療ケアが必要な人の場合は、入居できない場合があります。介護老人福祉施設では、医師や看護師が常駐しているとは限らないため、常に医療ケアが必要となる人への対応は難しいといえるでしょう。

●介護認定に関する記事はこちら
要介護認定の基礎知識!要支援・要介護の違いと申請方法の解説

なお、40歳から64歳でがんや関節リウマチなどの16の特定疾患を持つ要介護3以上の人も入居の対象となります。

また、要介護1~2で特例要件を満たす人も対象となる場合があります。特例要件の具体的な内容は以下の通りです。

・認知症や知的、精神障害などが原因で生活に支障をきたす症状がある人
・家庭の事情(単身世帯や家族の支援が期待できない場合)で満足な介護が受けられない人
・家庭での深刻な虐待が疑われるため、心身の安全や安心の確保ができない人

緊急性の高い人を優先

条件を満たしていて申し込みをしたとしても、すぐには入居できない場合もあります。基本的に介護老人福祉施設への入居は、申し込み順ではなく、緊急性の高い人を優先して入居させていくからです。そのため、場合によって年単位で待機するケースもあります。施設への入居を急ぐ場合は、事前に待機人数の確認をしましょう。待機人数を確認するには、自治体のホームページで調べるか、直接施設に電話やメールで問い合わせる方法があります。

ミニチュアのシニア

介護老人福祉施設の入居費用

ここまで介護老人福祉施設の概要についてご紹介してきました。実際に入居するとなると、気になるのが費用ですよね。ここからは、介護老人福祉施設へ入居する場合に必要になる費用をそれぞれ詳しくご紹介します。

費用は、入居者本人とその配偶者、子ども(扶養義務を負っている人)の合計所得によって負担限度額が決定されます。月額費用としては次のような項目が含まれます。

・施設介護サービス費
・介護サービス加算
・住居費
・食費
・日常生活費

それぞれの費用は、何のために使う費用なのかを詳しく見ていきましょう。

施設介護サービス費

施設介護サービス費は、介護を受けるための費用を指します。施設介護サービス費は、要介護度や介護保険の自己負担額の割合(1割~3割)によって異なり、要介護度が上がるにつれて高額になります。また、利用する居室のタイプによっても金額は変動します。

介護サービス加算

介護サービス加算とは、看護師を多く配置したり、看取りの体制を整えたりするなど、施設が基準より手厚いサービスを提供している場合に加算される費用です。

居住費

居住費は、室料と水道光熱費にあたる費用です。居室タイプや所得・資産により、金額が異なります。ベッドやタンスのような身の回り品を保管できる設備が義務付けられているため、入居者は身の回り品があればすぐに入所することができます。

電卓と杖とミニチュアの車いす

食費

食費は、食材料費と調理費を合わせたものです。おやつ代も食費に含まれています。1日単位での請求のため、たとえば、外泊のため夕食をとらなかった場合でも、払い戻しはありません。しかし、外泊や入院などで全く食事をしていない日は請求されません。

日常生活費

日常生活費は施設によって設定されます。レクリエーションの際に発生する参加費や日用品代、理髪などの費用です。なお、おむつ代や尿取りパットなどにかかる費用や、クリーニングの必要のない私物の洗濯にかかる費用は施設側の負担となります。

介護老人福祉施設の月々の費用の目安(住民税課税世帯の場合)

月々の費用は、利用する部屋のタイプによって異なります。ここからは、部屋タイプごとに具体的な費用をご紹介します。ここでは、後ほど記載する軽減制度を利用しない場合の金額を計算し、金額の低いものからご紹介します。

多床室

要介護度居住費食費介護保険1割負担合計
要介護12万5,650円4万3,350円1万7,190円8万6,190円
要介護21万9,230円8万8,230円
要介護32万1,360円9万360円
要介護42万3,400円9万2,400円
要介護52万5,410円9万4,410円

従来型個室

要介護度居住費食費介護保険1割負担合計
要介護13万5,130円4万3,350円1万7,190円9万5,670円
要介護21万9,230円9万7,710円
要介護32万1,360円9万9,840円
要介護42万3,400円10万1,880円
要介護52万5,410円10万3,890円

ユニット型準個室

要介護度居住費食費介護保険1割負担合計
要介護14万9,200円4万3,350円1万9,560円11万2,110円
要介護22万1,600円11万4,150円
要介護32万3,790円11万6,340円
要介護42万5,860円11万8,410円
要介護52万7,870円12万420円

ユニット型個室

要介護度居住費食費介護保険1割負担合計
要介護16万180円4万3,350円1万9,560円12万3,090円
要介護22万1,600円12万5,130円
要介護32万3,790円12万5,730円
要介護42万5,860円12万7,320円
要介護52万7,870円13万1,400円

シニア女性を見て微笑むスタッフ

費用負担の軽減制度

低所得の人に対して、介護老人福祉施設の食費と居住費の一部を助成してくれる特定入所者介護サービス費制度があります。この制度を利用するためには「介護保険負担限度額認定」を受ける必要があり、認定には所得や預貯金などの要件があります。具体的な内容は、以下の通りです。

所得・預貯金の要件
[ 1 ] 本人及びその配偶者が住民税非課税であること
[ 2 ] 本人と住民票上、同一世帯である方が住民税非課税であること
[ 3 ] 本人および配偶者の預貯金等の合計額が、基準額以下であること

同居していても世帯を分けており、本人を含む世帯が住民税非課税の場合は該当します。預貯金の対象とされるものには、預貯金(普通・定期預金)や有価証券、金、銀などの貴金属があり、住宅ローンや借金がある場合は、預貯金から差し引かれます。

また、負担限度額認定を受ける場合、本人の収入や預貯金額によって第1段階~第4段階に分けられます。第1段階が最も負担が軽く、段階が上がるごとに負担が増えていきます。第4段階は対象外(非該当)となり、助成を受けることはできません。具体的な要件は以下の通りです。

段階対象条件預貯金等資産要件居住費食費
第1段階・世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金受給者
・生活保護の受給者
単身1,000万円以下
夫婦2,000万円以下
・多床室0円
・従来型個室9,600円
・ユニット型準個室14,700円
・ユニット型個室24,600
9,000円
第2段階世帯全員が住民税非課税かつ公的年金収入額と合計所得年金額が80万円以下の人単身650万円以下
夫婦1,650万円以下
・多床室11,100円
・従来型個室12,600円
・ユニット型準個室14,700円
・ユニット型個室24,600円
11,700円
第3-1段階世帯全体が住民税非課税かつ公的年金収入額と合計所得年金額が80万円超120万円以下の人単身550万円以下
夫婦1,550円万円以下
・多床室11,100円
・従来型個室24,600円
・ユニット型準個室39,300円
・ユニット型個室39,300円
19,500円
第3-2段階世帯全体が住民税非課税かつ公的年金収入額と合計所得年金額が120万円超単身500万円以下
夫婦1,500円万円以下
・多床室11,100円
・従来型個室24,600円
・ユニット型準個室39,300円
・ユニット型個室39,300円
40,800円
第4段階
(非該当)
住民税課税世帯など1~3段階以外の人

老人ホームの個室

介護老人福祉施設のメリットと注意点

ここまでは介護老人福祉施設の特徴を見てきました。ここからは、介護老人福祉施設のメリットと注意点をご紹介していきます。

メリット

介護老人福祉施設には、いくつかメリットがあります。それぞれのメリットを見ていきましょう。

費用が安い
介護老人福祉施設の最大のメリットとしては、入居一時金がなく、月々の支払いも15万円程度であるため、ほかの民間の施設に比べると費用が安価ということが挙げられます。また、先ほどご紹介したように所得に応じた費用の助成制度もあるので、費用を抑えたい人にはおすすめといえるでしょう。

24時間介護が受けられる
介護老人福祉施設は、介護の度合いが高い人のための介護施設です。また、介護スタッフが24時間常駐しているため、必要なときに適切な介護を受けることができます。

看取りの介護を受けられる
介護老人福祉施設では、原則として終身にわたり介護を受けることができます。そのため、長期入居を希望する人には、向いているといえるでしょう。

倒産のリスクが少ない
公的な施設のため、民間の施設に比べると倒産のリスクが低いといえます。具体的な理由としては、介護老人福祉施設は、開設する際に収支の厳しい審査があったり、税制面での優遇が受けられたりすることが挙げられるでしょう。

注意点

介護老人福祉施設には、注意点がいくつかあります。それぞれを見ていきましょう。

入居待ちが長い
介護老人福祉施設の場合、入居できるまでに時間がかかるということがいえます。入居は申し込み順ではなく、優先度で決まるため、場合によっては入居までに数年かかるケースもあります。

医療体制に限界がある
もう1つの注意点として、介護老人福祉施設は24時間の看護師配置が義務付けられていないため、施設によっては、夜間のたん吸引や、胃ろうなど医療依存度の高い人は受け入れができない可能性もあります。医療ケアが必要な場合は、看護師が24時間常駐しているなど医療対応ができる介護施設を選択しましょう。

シニア女性に寄り添う介護スタッフ

さまざまな選択肢から最適な老後の住まいを見つけよう!

今回は介護老人福祉施設についてご紹介してきました。介護老人福祉施設は民間の介護施設と比較すると安価で手厚い介護を受けることができます。しかし、入居条件が要介護3以上と厳しいことに加え、人気も高い傾向にあります。そのため、入居までに数年かかってしまう可能性があるということは前述の通りです。入居を希望する場合は、複数の施設に申し込みを行い、待機中の一時的な利用として、民間の施設も検討してみましょう。

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