遺産相続手続きは何から始める?手続き全体の流れを詳しく解説!

遺産相続手続きは状況により煩雑な場合がありますが、どんなタイミングで、どの専門家を頼って手続きを進めるのがよいのでしょうか?今回は、相続時の手続きの流れや、どのような専門家に何を依頼したらよいのかについて解説します。

目次
  1. 遺産相続手続きはどんな流れで行う?
  2. なるべく早く行う遺産相続手続き
  3. 7~14日以内に行う遺産相続手続き
  4. 3~4か月以内に行う遺産相続手続き
  5. 10か月以内に行う遺産相続手続き
  6. 期限は設けられていないが早めに行っておきたい遺産相続手続き
  7. 遺産相続手続きは自分でもできる?
  8. 遺産相続手続きを一括で代行してくれる業者もある!
記事カテゴリ 相続 シニア
2023.08.03

遺産相続手続きはどんな流れで行う?

親族が亡くなられた際には、遺産相続の手続きが必要です。しかし、手続きといっても、何をどうすればよいか分からない方も多いのではないでしょうか?遺産相続手続きでは書類を入手したり、記入して提出したりと、多くの手順を踏むため手間と時間がかかります。この記事では、相続時の手続きの流れや期限、どのような専門家に何を依頼したらよいのかについてご紹介します。

相続方法を検討する夫婦

まずは、亡くなってから遺産相続が完了するまでの流れを表でご紹介します。ただし、ケースによって手続きが異なる場合もあるため一例として参考にしてくださいね。手続きの期限を過ぎると、相続税を多く徴収されることがあるので注意が必要です。

期限手続き手続きを行える人(委託可能先)
なるべく早く公共料金等の支払い手続き親族
なるべく早く遺言書があるか否かの確認親族
7~14日以内死亡届・火葬許可証提出葬儀会社
10~14日以内厚生年金(10日以内)・国民年金(14日以内)の受給停止親族
14日以内国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き親族
14日以内世帯主変更届の提出親族
3か月以内相続放棄・限定承認・単純承認の申述弁護士・司法書士
4か月以内準確定申告税理士
10か月以内相続税の申告税理士
2023年現在、期限は設けられていないが早めが好ましい不動産名義変更弁護士・司法書士
2023年現在、期限は設けられていないが早めが好ましい各種財産の名義変更親族、もしくは弁護士・司法書士・行政書士
2023年現在、期限は設けられていないが早めが好ましい遺産分割協議書の作成弁護士・司法書士・行政書士

なるべく早く行う遺産相続手続き

親族が亡くなったと知ってすぐに行わなければならないことがいくつかあります。1つずつ見ていきましょう。

公共料金等の支払い手続き

まずは、水道代や電気代、ガスの使用料などの公共料金の支払い状況について確認し、今後使用しないのであれば解約の手続きを行いましょう。ほかの親族が継続して使用する場合は、名義人を変更する必要があります。

遺言書があるか否かの確認

相続手続きをする際は、できるだけ速やかに遺言書の有無を確認しておくとよいでしょう。というのも、遺言書があった場合にはいくつかのメリットがあるからです。遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、遺言書が残されていた場合には以下のようなメリットがあります。

まず、相続手続きの際に用意しなければならない書類が少なくて済むことがメリットとして挙げられます。たとえば、遺言書がない場合は出生から死亡までの連続した戸籍が必要ですが、遺言書がある場合は死亡の記載がある除籍謄本さえあればよいため、出生時までさかのぼる必要がありません。

また自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認が必要ですが、 公正証書遺言だった場合は、必要ありません。加えて遺言があることで相続をめぐった争いが起こりにくいというメリットもあります。

なお、封印のある自筆証書遺言がある場合、検認を経ずに遺言の内容を開封したり、執行したりしたときは過料を科せられます。また、公正証書遺言の有無が判明しないときは公証役場の遺言検索システムで調べてもらい、請求することができますので遺言書の確認の際に検討してみるのもよいでしょう。

7~14日以内に行う遺産相続手続き

次に、7〜14日以内に行う手続きについて見ていきましょう。

死亡届・火葬許可証提出

人が亡くなったとき、一番初めに行うのが死亡届と火葬許可書の提出です。死亡届は、死亡を知った日から7日以内に提出しなければなりません。死亡届は病院か、市区町村役場で入手できます。死亡届と火葬許可書の提出は、葬儀会社が行ってくれるケースが多いため、葬儀を依頼する際に確認するのがおすすめです。

厚生年金・国民年金の受給停止

厚生年金は亡くなった日から10日以内、国民年金は亡くなった日から14日以内に、年金事務所で年金受給停止の手続きを行わなければなりません。生前に、故人が受給していた場合は、余分に受け取らないようにしましょう。もし過剰に受け取った場合は返金しなければならないので注意が必要です。

死亡届と封筒

国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き

国民健康保険と介護保険は亡くなった日から14日以内に資格喪失手続きと保険証の返却を行わなければなりません。国民健康保険の資格喪失手続きに必要な書類の提出先は故人が住んでいた市区町村の国民健康保険窓口です。

故人が65歳以上、もしくは40~64歳で要介護認定を受けていた場合は市区町村役場の窓口で介護保険被保険者証の返却と、介護保険資格喪失届を提出しなければなりません。こちらの書類の提出が完了すると、未納分の請求や支払い超過分の返金がされる場合があります。また、そのほかの健康保険の場合、勤務先や健康保険組合、協会けんぽに保険証を返却します。加入している保険によって手続きや必要書類が異なるため、注意が必要です。

窓口で対応する女性

世帯主変更届の提出

世帯主が亡くなり、世帯員が2人以上残されている場合は、世帯主の変更手続きや住民票の変更が必要です。こちらは亡くなってから14日以内に、市区町村役場へ「世帯主変更届」を提出することが求められます。

3~4か月以内に行う遺産相続手続き

ここまで期限が短く優先度の高い手続きをご紹介してきました。以下では3~4か月以内を目途に行う必要がある手続きをご紹介していきます。

相続放棄・限定承認・単純承認の申述

相続の手続きにはまず、相続財産の確認と調査が必要です。相続財産には、不動産や預貯金などのプラスの財産と、ローンや借金などのマイナスの財産があり、相続財産の内容や金額が分かったら、財産を相続するか放棄するかを3か月以内に決める必要があります。相続や放棄には、以下3つの方法があります。

・相続放棄:全ての財産の相続を放棄する
・限定承認:プラスの範囲内でマイナスの財産を相続する
・単純承認:全ての財産を相続する

相続放棄と限定承認にする場合は、家庭裁判所で手続きを行う必要があり、なかでも限定承認は相続人全員の合意と手続きも必要となりますので注意しましょう。

遺言書と財産目録

準確定申告

故人の確定申告が必要だった場合、相続の開始があったことを知ってから4か月以内に故人に代わって確定申告を行わなければなりません。これを準確定申告といいます。確定申告の対象者は以下のケースに当てはまる方ですので、故人が当てはまるかどうか確認してみてくださいね。

・個人事業主の方
・不動産賃貸を行っていた方
・2か所以上の会社から給与を受け取っていた方
・給与の所得が2,000万円を超えていた方
・退職金や給与のほかにも所得があった方
・医療費に多額な支払いがあった方

10か月以内に行う遺産相続手続き

相続税がかかる場合、10か月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。相続財産をどのように分割するかが決まったら、相続財産の評価額を算出し、相続税がかかるのかの計算をしましょう。また相続税の納税は、期限までに現金で一括納付するのが原則です。

遺産総額が基礎控除額を超えていたり、配偶者控除や特例制度を利用したりする場合には、必ず相続税の申告を行う必要があります。控除制度の条件を満たして相続税が発生しない場合でも、申告しなければ優遇措置は適用されないので注意しましょう。

期限は設けられていないが早めに行っておきたい遺産相続手続き

続いて、2023年現在、期限は設けられていないものの早めに対応するのが望ましい手続きについてご紹介します。

不動産名義変更

故人が不動産(土地・建物)を所持していた場合、不動産の名義変更手続きを行う必要があります。これは相続登記と呼び、法務局に必要書類と登記申請書を提出することで行えます。相続登記には3つのケースがあり、それぞれ必要書類が異なりますが、主な必要書類は以下の通りです。

・故人の出生から死亡までの戸籍謄本
・故人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人の住民票
・固定資産評価証明書

なお、2024年4月1日から不動産を相続する際は登記が義務化されます。また、それ以前に相続された不動産も、相続登記がされていないものは義務化の対象となるため注意が必要です。

相続税の申告書

遺産分割協議書の作成

遺言書が存在しなかった場合や、分割方法が決まらない相続財産がある場合には、相続人全員で遺産分割の方法を話し合い、遺産分割協議書を作成する必要があります。相続人全員がそろわない状態で協議をすると、その遺産分割協議は無効となりますので注意しましょう。また協議がまとまらない場合や、連絡が取れない相続人がいて遺産分割協議が難しい場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行うという方法があります。それでも解決しない場合は、遺産分割審判に進みましょう。

遺産相続手続きは自分でもできる?

相続手続きは自分でも行うことは可能です。しかし、用意する書類が多く、煩雑になるため専門家に依頼するのが一般的です。知識がなくて不安、自分で手続きを進める時間がない、などと感じる場合は、その道のプロに任せたほうが安心して行えます。ただし、専門家に依頼する場合は費用もかかります。どんな手続きをどの専門家に依頼したらよいのかは以下の通りです。

不動産の名義変更は司法書士

司法書士には不動産や法律にかかわる書類の作成、手続きの代行などを依頼できます。不動産の相続が発生する場合は、相続する不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する必要がありますので、司法書士に相談するとよいでしょう。

公的機関への書類作成は行政書士

行政書士には権利や事実証明に関する書類、行政・市区町村役場・金融機関に提出する書類の収集・作成・提出を依頼することができます。ただし、司法書士のように不動産登記や裁判所で行う手続きの書面作成代理といった業務には対応していませんのでご注意ください。

不動産登記

相続税が発生する場合は税理士

税理士には申告をはじめとした税金にかかわる業務を依頼できます。自力で相続税を申告して、申告に不備があると税務調査を受ける可能性が高くなります。税理士を通していない申告の場合、税務署から、申告が誤っているのではないかと疑われやすいためです。そのため相続税の申告の際は、税理士に相談するのがおすすめです。

トラブル解消や代理人としての交渉は弁護士

弁護士は、トラブルが起きた場合や、起きそうなときに依頼することで、代理人として交渉してくれます。遺産相続では、相続人同士のもめ事が起こってしまうケースが多々あります。そのような場合は、迷わず弁護士への依頼を検討しましょう。

遺産相続手続きを一括で代行してくれる業者もある!

これまで、遺産を相続する手続きの専門家をご紹介してきました。それぞれの状況に応じてさまざまな専門家に相談することに対して煩わしさを感じる方もいらっしゃるでしょう。前述の通り、不動産に関することなら司法書士、行政へ提出する書類の作成は行政書士、税金にかかわることは税理士、トラブルの解消は弁護士に頼るとよいのですが、遺産の相続手続きで戸惑ったら、相続に伴う事務手続きをまとめて相談できる、相続代行業者に依頼するという方法もあります。

木の人形と鍵

相続代行業者は、前述の士業者と連携しながら、死亡後の事務手続きから、相続した不動産にかかる電気や水道などの公共料金の停止、遺産分割協議、相続税納付手続きなどまでをワンストップで行ってくれますよ。

なお、不動産を相続した場合は、不動産売却と併せてトータルでサポートしてくれる三井のリハウスシニアデザインの「相続おまかせ売却パック」がおすすめです。相続おまかせ売却パックとは相続手続きと不動産売却のトータルサポートサービスで、不動産売却、死後事務手続き、公共料金支払い手続き、相続税申告サポート、遺産分割協議書作成、家財整理など、サポート内容は多岐にわたります。相続の手続きの方法が分からない方、多忙で手続きが滞っている方など、お困りの方はお電話またはWEBよりお気軽にお問い合わせください。

相続は、家族が亡くなった時点から始まります。故人が残した財産を正当に受け継ぐために、状況に適した専門家を選んで、相談してみてはいかがでしょうか?

柴田剛

弁護士法人ASK川崎所属。弁護士。
交通事故、相続、債務整理などのいわゆるマチ弁業務のほか、スポーツ法務にも注力している。
https://www.s-dori-law.com/