高齢者住宅とは?種類と特徴をご紹介

高齢者の住まい選びは、安全で快適な生活を送るうえで重要です。健康状態や自身が望む生活形態の観点から、高齢者向けの住宅にはどのような選択肢があるのか、受けられるサービスや費用の違いについて、詳しく解説します。

目次
  1. 高齢者住宅とは?
  2. 元気な高齢者向けの住まい
  3. 介護が必要な高齢者向けの住まい
  4. 今の自宅に住み続けたい場合は?
  5. 早めに考える・相談することが大切
2021.09.15

高齢者住宅とは?

高齢の1人暮らしや高齢夫婦といった、高齢者のみで生活を送っていくうえでは、「家事や買い物の負担が大きい」「1人暮らしで夜間に具合が悪くなったときが心配」など、不安を感じる人も多いのではないでしょうか?そのような不安を解消し、高齢者が安心して暮らせるように配慮された住まいのことを、総称して「高齢者住宅」といいます。

高齢者住宅と呼ばれる住まいのなかには、多くの種類が存在し、提供しているサービス内容や費用などが異なります。また、高齢者の受け入れ条件についても、それぞれ異なる基準が設けられています。下表は、高齢者住宅が受け入れ条件としている、高齢者の心身の健康状態や要介護度を示したものです。

○:「入居(利用)可能」
△:「入居可能だが必要な支援・介護を受けられない」または「入居できないことがある」
×:「入居不可」

老後を快適に、かつ安心して過ごすためには、自分の希望と健康状態に合った住まいを探し選ぶことが大切です。そこで今回は、高齢者の住まいを「元気な高齢者向け」「介護が必要な高齢者向け」の2種類に分けて紹介していきます。

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悩み事があるシニアの女性

元気な高齢者向けの住まい

現時点では介護を必要としていない、元気な高齢者を対象とした住まいには「シニア向け分譲マンション」「〈一般型〉サービス付き高齢者向け住宅」「シニア向け賃貸住宅」「有料老人ホーム」「〈一般型〉ケアハウス」の5つが挙げられます。

5つのうちどれが自分に合っているのかを選ぶ際には、「自分はどのような暮らし方がしたいのか」というライフスタイルを基準にしながら、入居費用や月額費用の比較のもと、検討を進めてみましょう。元気な高齢者に向いている5つの高齢者住宅にかかる費用は、以下の表のようになります。

施設の種類入居費用の目安月額費用の目安
シニア向け分譲マンション1,000万円~1億円以上10~30万円
〈一般型〉
サービス付き高齢者向け住宅
数万円~数百万円
※家賃の2か月分程度の敷金が必要となることが多い
5~40万円
シニア向け賃貸住宅
(ケア付き高齢者住宅)
20万円~150万円
※家賃の2か月分程度の敷金が必要となることが多い
10~50万円
〈自立型〉
有料老人ホーム
(健康型・住宅型・介護付)
0円~数億円15~30万円
〈一般型〉ケアハウス0円~1,000万円7万円~20万円程度

表に挙げた5種類の高齢者住宅の、それぞれの定義やサービス内容の違いについて、掘り下げて見ていきましょう。

シニア向け分譲マンション

シニア向け分譲マンションとは、生活をサポートするサービスが受けられる分譲マンションを指します。また建物も生活上支障となるような段差がなく、手すりが付いているなど、バリアフリーに配慮しています。

シニア向け分譲マンションでは、食事の提供や家事代行サービスを受けられるほか、図書館や美容室、フィットネスジムなど、暮らしを豊かにする施設が充実した物件が多く存在します。

これまでのライフスタイルを大きく変えることなく、自由な暮らしをしたい人にはおすすめの住まいです。また、分譲マンションなので、購入後は自分の資産となります。

注意点は、高齢者に配慮した設備やサービスが付いている分、一般のマンションより高額となる傾向が高いことです。また、介護度が高くなり、常時の介護や医療ケアが必要になった場合は、そのようなサービス提供を受けられる施設へ住みかえる必要が出てくるかもしれません。

シニアの男女と介護士

〈一般型〉サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー化された建物で、安否確認・生活相談サービスを受けられる賃貸住宅です。個室の広さや廊下の幅などは認定基準が設けられているため、高齢者が暮らしやすい空間となっています。安心できるサービスを受けつつ、自宅と同じ感覚で暮らしたいという人にはおすすめの住まいです。

サ高住には、「一般型」と「介護型」の2種類があります。このうち、一般型のサ高住は、介護サービスが付いていないものが多く、元気な高齢者が自分のペースで生活するのに向いた住宅です。一方、介護型は要支援・要介護の認定を受けた人が入居する高齢者住宅です。介護型のサ高住については、後ほど詳しく解説します。

サービス付き高齢者向け住宅の入居時に支払う敷金は、家賃の2~3か月分程度が相場です。入居一時金が数千万円に及ぶ場合がある有料老人ホームに比べると、初期費用が抑えられるメリットもあります。

一方、一般的な賃貸住宅より家賃が高い傾向にある点には注意が必要です。また、シニア向け分譲マンションと同様、常時の介護や医療ケアは提供していないため、介護度が上がった場合は、外部事業者と別途契約を結んだり、別の施設への住みかえを検討したりすることが求められます。

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シニア向け賃貸住宅(ケア付き高齢者住宅)

シニア向け賃貸住宅は、建物がバリアフリー化されている賃貸住宅です。サービス付き高齢者向け住宅に似ていますが、建物の規定やサービス提供の義務はないため、高齢者の住まいにどの程度適した環境かは、各事業者により異なります。

生活や介護に関するサービスは付いていない場合が多いので、サービスが必要な場合は、運営会社が用意しているサービスを追加料金を支払って利用するか、自分で外部の事業者と契約することが求められます。

通常の賃貸物件に近い暮らしが送れるため、ストレスが少ないうえ、持ち家と違って維持管理のコストや手間がかからない傾向にあることがメリットです。しかし、事業者によって設備やサービス内容が大きく異なること、介護度が上がった場合は住みかえの必要性が出てくることが注意点として挙げられます。

介護士の男女

〈自立型〉有料老人ホーム(健康型・住宅型・介護付)

有料老人ホームとは、入居する高齢者に対して「入浴・排せつ・食事の介護」、「洗濯や掃除などの家事」、「健康管理」、「食事の提供」などのサービスのうちいずれか1つ以上を提供する施設のことです。主に民間事業者が運営しており、対象者は運営事業者により異なります。

なかでも〈自立型〉有料老人ホームは、自立した高齢者を対象にした有料老人ホームで、多彩なアクティビティやフィットネスジム、プールなどの共有部が充実しているところが多いのが特徴です。

また、有料老人ホームは「健康型」「住宅型」「介護付」の3つの種類に分けられており、大きな違いとして、介護が必要になった場合の対応が以下のように決められています。

・健康型:介護サービスの提供はなく、退去しなければならない
・住宅型:外部の介護サービス事業者と契約する、または住みかえる
・介護付:ホーム内に常駐する介護スタッフから介護サービスが提供される、または介護居室へ住みかえる

運営事業者によって介護が必要になったときの対応、提供サービスや設備、費用や入居条件が異なるため、立地も含めて自分に合った施設を選ぶことが大切です。

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〈一般型〉ケアハウス

ケアハウスは、1人での暮らしに不安を抱える60歳以上の高齢者が入居できる公的施設です。軽費老人ホームの1種であり、食事の提供や、生活支援サービス(掃除・洗濯など)、緊急時の対応といったサービスを、民営の施設に比べて低価格で提供してくれます。

また、ケアハウスはさらに「<一般型>ケアハウス」「<介護型>ケアハウス」の2種類に分けられます。このうち、一般型ケアハウスには介護サービスが常設されておらず、介護を受けるには外部事業者と別途契約を結ぶ必要があります。

そのため、一般型のケアハウスは、介護を必要としない元気な高齢者、もしくは介護度の低い高齢者が安心した暮らしを送るための施設といえます。入居者の身体状態が悪化し、要介護3以上になると、介護型ケアハウスや、そのほかの介護サービス付きの高齢者住宅への転居が必要になることもある点に注意しましょう。介護型ケアハウスについては、後ほど詳しく解説します。

介護が必要な高齢者向けの住まい

介護が必要な高齢者を対象とした住まいとしては、「〈介護型〉サービス付き高齢者向け住宅」「〈介護型〉有料老人ホーム(住宅型・介護付)」「介護老人保健施設」「介護医療院」「特別養護老人ホーム」「グループホーム」「〈介護型〉ケアハウス」の7つが挙げられます。それぞれの入居費用と月額費用の相場は、以下の通りです。

施設の種類入居費用の目安月額費用の目安
〈介護型〉
サービス付き高齢者向け住宅
数万円~数百万円
(数千万円も一部存在)
15万円~40万円
〈介護型〉有料老人ホーム
(住宅型・介護付)
0円~数億円15万円~30万円
介護老人保健施設0円6万円~17万円
介護医療院0円6万円~17万円
特別養護老人ホーム0円5万円~15万円
グループホーム0円~数百万円15万円~20万円
〈介護型〉ケアハウス0円~数百万円7~20万円

7つのなかから自分に合う住まいを選ぶ際には、上記の費用の相場を参考にしながら、これから説明する介護度やサポート体制を基準に比較してみましょう。

車椅子のシニア女性と寄り添う介護士

〈介護型〉サービス付き高齢者向け住宅

サ高住のなかには、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた〈介護型〉もあります。〈介護型〉サ高住では、24時間常駐の介護スタッフから介護サービスが受けられるほか、日中には看護師のケアも受けられます。

介護が必要になっても、家で暮らすように生活したい人にとっては、必要なサービスを受けながら安心して暮らせる住まいといえるでしょう。

注意点としては、〈介護型〉サ高住に入居している限り、サ高住で用意されている以外の外部の介護サービスを受けられないことが挙げられます。

〈介護型〉有料老人ホーム(住宅型・介護付)

〈介護型〉有料老人ホームは要支援・要介護認定を受けていて、介護が必要な高齢者を対象にした有料老人ホームです。「食事サービス」「生活支援サービス」「介護サービス」を受けながら暮らすことができます。

介護サービスの受け方は「住宅型」「介護付」によって以下のように異なります。

・住宅型:外部の介護サービス事業者と契約する
・介護付:ホーム内に常駐する介護スタッフから介護サービスが提供される

介護付有料老人ホームは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているため、ホーム内に常駐する介護スタッフや看護師から介護を受けられ、多くが看取りまで対応しています。住宅型有料老人ホームでも、ホーム内に介護事業所を併設したり、看護師が常駐しているところもあります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設とは、在宅復帰を目的として心身のリハビリを行う施設です。「入院の必要はなくなったものの、病院を出てすぐ家に戻るのはまだ不安」という状態の人が、医師や看護師のケア、専門家のリハビリを受けながら過ごすことができます。

在宅復帰を目標としているため、入居可能な期間は3〜6か月程度と短く指定されている点に注意が必要です。また、浴室やトイレなどの設備は基本的に全て共用となっており、居室も2〜4人で利用する多床室がほとんどであるため、十分なプライバシーを確保するのは難しいことも考えられます。

シニア向けの作業療法士

介護医療院

点滴やたん吸引などの医療ケアを必要とする人のための生活施設です。介護医療院では、日常生活上のサポートや介護サービスが受けられるほか、ターミナルケア(終末期医療)や看取りにも対応しています。

医療ケアが必要で自宅での生活に不安があり、最期まで安心して暮らせる住まいを求めている人に適した施設といえるでしょう。

介護医療院に入居する前に注意しておきたいのは、居住空間が完全な個室ではなく、パーティションや家具などで仕切られた多床室の場合もあるという点です。プライバシーをしっかり確保したい人は、部屋がどのようになっているか事前に確認しておきましょう。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームとは、介護が常に必要な人を対象とした公営施設です。24時間常駐の介護スタッフから介護サービス・生活支援サービスを受けられ、看取りまで対応してもらえます。公営施設なので費用が比較的安価であるうえ、倒産により移転が必要となるようなリスクがほとんどないため、終身利用できる住まいを求めている人には特におすすめできる施設です。

ただし、原則要介護3以上など入居要件が定められており、満室の施設も多いため入居に時間がかかることもあります。

グループホーム

グループホームとは、認知症の人が少人数で共同生活を営む施設です。できる範囲で互いに家事の分担や助け合いを行うことで、認知症の進行を遅らせる狙いがあります。グループホームには認知症ケアの専門スタッフが常駐しており、日常生活のサポートを受けられます。

また、グループホームは地域密着型のサービスとして位置付けられており、地域住民との交流を盛んに行う施設が多く存在します。そのため、他人との強いつながりのもと、住み慣れた地域で暮らし続けたいという人にはおすすめの施設です。

ただし、その地域に住民票がないと入居できないことや、看護師の常駐は義務付けられておらず、常時の介護や医療ケアが必要になるなど身体状況に変化があった場合には住みかえの検討が必要となることもあるため、注意が必要です。

〈介護型〉ケアハウス

先ほど説明した通り、ケアハウスは、1人での暮らしに不安を抱える高齢者が生活を送るための施設であり、一般型と介護型の2種類が存在します。「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護型のケアハウスでは、食事や掃除・洗濯といった生活支援サービスだけでなく、介護サービスやリハビリのサービスも受けられます。

また、介護型のケアハウスは、一般型よりも入居条件が厳しめに設定されています。一般型は「1人での生活に不安がある60歳以上の高齢者」が対象となりますが、介護型の入居対象者は、原則要介護1以上の認定を受けた65歳以上の高齢者に限られます。

ケアハウスで団らんするシニアと介護士

今の自宅に住み続けたい場合は?

ここまで、元気な高齢者・介護が必要な高齢者向けの住まいをそれぞれご紹介してきましたが、「住み慣れた自分の家で最期を迎えたい」と考えている人もいるでしょう。その場合は、自分の今の状態に合わせて、家を安全で住みやすい環境に整える工夫が必要になります。

自宅の環境を整えるためにできることとしては、たとえば、家の劣化具合を専門家に診断してもらい、耐震・バリアフリーなどのリフォームを行うことが挙げられます。この際、寝室や水回りといった、使用時に体勢の変化を伴うことが多い部屋については、特にバリアフリーに配慮し、介護しやすい間取りと仕様になるように心掛けましょう。

このほかにも、「見守りサービス」を利用するのもおすすめです。見守りサービスには、専任スタッフが訪問してくれるタイプ、離れた家族がセンサーで安否確認できるタイプなど、さまざまな種類があります。リフォームと見守りサービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

●老後のリフォームと見守りサービスに関する記事はこちら
老後も住み慣れた自宅に安心して住み続けるために!リフォームと見守りサービスをチェック

また、介護が必要な状態になったときは、介護保険サービスや自治体のサポートの利用も検討しましょう。地域包括支援センターや自治体の相談窓口、担当のケアマネジャーなどに相談すると、適切なサービスとその利用方法についてアドバイスしてもらえます。

●在宅介護に関する記事はこちら
在宅介護を始めたい!準備を整えてストレスの少ない介護を

●福祉用具に関する記事はこちら
在宅介護の必需品!そろえておきたい福祉用具

相談するシニアの女性と介護士

早めに考える・相談することが大切

老後の住まい方を考えたり決めたりすることには、体力も精神力も必要です。安心してシニアライフを過ごすためには、高齢者住宅に入居するにしても、自宅に住み続けるにしても、なるべく元気なうちから行動を起こすようにしましょう。

また、高齢者住宅に入居し、介護サービスを受ける場合、月額費用を軽減できる制度がいくつか存在します。高齢者住宅にかかる費用や、費用の負担を軽減する制度については、別の記事で詳しく解説しています。

●高齢者住宅にかかる費用と軽減措置に関する記事はこちら
老人ホームにかかる費用を解説

高齢者住宅に入居する際は、資金計画や保証人について事前によく考え、家族とも話し合っておくことが大切です。「必要資金を用意するのが難しい」「保証人がいない」といった問題に直面した場合は、高齢者向けの住宅ローンや身元保証サービスの活用を検討してみましょう。老後の住みかえに役立つサービスについては、別の記事で解説しています。

●老後の住みかえに役立つサービスに関する記事はこちら
資金調達、身元保証…老後の住みかえを助けてくれるサービスを知ろう

また、年月の経過に伴い、身体状態が悪化し、支援や介護が必要となったり、介護度が上がったりする可能性についても考慮しておきましょう。高齢者住宅を選ぶ際は、介護サービスを提供しているのか、入居を続けながら外部事業者の介護サービスを利用できるのかについて、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。住みかえは経済的にも心身にも負担が大きいため、何度も行わずに済むよう、慎重に検討することが大切です。

高齢者住宅は種類が多く、それぞれの特徴の違いが分かりにくいと感じる人もいるでしょう。その場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、老人ホーム紹介センターに相談してみるのがおすすめです。

また、「高齢者住宅についてまずは話を聞きたい」「住みかえの相談がしたい」という場合には、三井のリハウスシニアデザイングループに気軽にご連絡ください。家族とも話し合って、老後の生活の不安を少しずつ解消していきましょう。

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ケアマネジャーはどう選ぶ?業務内容から付き合い方のポイントまで解説!

●地域包括支援センターに関する記事はこちら
地域包括支援センターは何をしてくれる?高齢者や家族のための役割と利用方法をご紹介!

三井不動産株式会社 ケアデザイン室

三井不動産グループが培ってきた住まいと不動産に関する総合力・専門性を生かし、豊かな老後を過ごすためのお手伝いをするとともに、福祉の専門職が豊富な経験に基づいたコンサルティングを通して高齢期のさまざまなお悩みにお応えしています。