免許更新のときに行くところ――
これが私のこの街に対するイメージでした。

東京都内に住んでいる方なら、免許の試験や更新で「府中自動車教習所」に訪れたことがあるのではないでしょうか。ただ「自動車教習所以外の印象は?」と聞かれると、私のようになかなかイメージできない方も多いはず。

この街にはどのような魅力があるのでしょうか。
府中の魅力を探るために、市内をじっくりと散策してきました。

【府中の基本情報】

駅名:京王線「府中」
ランドマーク:大國魂神社

■約26万人が暮らす多摩地域最大の街、府中

府中市は、東京都多摩地域にある土地面積約29k㎡、人口約26万人の街です。
市のキャッチフレーズは、“ほっとするね、緑の府中”。
多摩川をはじめとする一級河川や自然公園、雑木林など、自然豊かな景観が広がります。

そんな街の玄関口として多くの人が利用しているのが府中駅。
京王線の特急や準特急が止まるので、新宿から1本でアクセスでき、所要時間は特急で約19分、準特急でも約22分。「仕事は都心部だけど、住まいはもう少し環境の良いところに住みたい」という方にうってつけの立地です。

そんな府中駅の特徴はその外観。”都会的で現代的なミュージアムをイメージさせる駅”として、「関東の駅百選」に選出されています。また、府中駅周辺は「環境美化推進地区」に指定されたエリア。環境整備にも力を入れており、心地よい自然が保たれています。

改札を出て1階にあるのが、こちらのバスロータリー。
このバスロータリーには、1乗車100円(未就学児無料)で利用できる「ちゅうバス」が発着しています。府中駅を起点に5路線7ルートが運行しており、府中市内のさまざまな場所にアクセス可能。地域の人に欠かせない交通手段として親しまれています。

バスロータリーを通り過ぎ駅周辺を歩いてみると、複合施設やビル、マンションが目に入ります。近年の再開発事業にともない、南口を中心に今も発展中。

また、駅周辺には「府中自動車教習所」のほか、公共サービスや公共施設が充実しており、単身者からファミリーまで暮らしやすい環境が整っています。

■豊富な商業施設と府中の象徴「ケヤキ並木」

府中駅周辺には「伊勢丹」「ル・シーニュ」「くるるグランタワー 府中ラアヴェビュー(以下くるる)」「フォーリス」といった大型の商業施設が揃っています。日常生活における買い物は、これらのスポットでカバーできるでしょう。

また、「くるる」には映画館「TOHOシネマズ府中」があるほか、西口から徒歩1分の場所には「縄文の湯」という天然温泉も。買い物だけでなく、家族や友達との娯楽スポットも充実しています。

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そして、駅周辺のシンボルとなっているのが、馬場大門にある500mのケヤキ並木。ケヤキ並木としては国内で唯一天然記念物に指定されています。いまでも江戸初期の老樹が残されており、かえでなども含めて計200本の木が植えられています。

▲ケヤキ並木を作るのに関わったとされる源義家の像

ケヤキ並木では、休日を中心にさまざまなイベントが開催されます。音楽フェスも盛んで、今年も「けやき音楽祭JAZZ in FUCHU」などのイベントが開催予定。木漏れ日の中でジャズの生演奏を楽しめます。

■1900年もの歴史を誇るパワースポット「大國魂神社」

けやき並木を南に進むと、交差点の先にさらに深い緑が見えてきました。ここは、「大國塊大神(おおくにたまのおおかみ)」を祀る大國魂神社です。

大國塊大神は、人々に衣食住を教えたり、まじないや医術を広めたといわれる神。現在は、縁結びや厄除けのパワースポットとして、多くの人々が通う観光名所になっています。

また、毎年5月3日から6日にかけて催される「くらやみ祭」も有名。この祭では、府中囃子の競演や競馬式(こまくらべ)、山車・神輿巡行など、府中ならではの伝統芸能が楽しめます。

このほか金比羅神社や称名寺、善明寺など、市内にはいくつもの仏閣・寺院が点在。府中は、自然が豊かなだけでなく歴史情緒に溢れる街でもあります。

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▲善明寺

■お祭り好きが多い?蔵カフェの店主に聞いた、府中の魅力

散策の途中で見つけた、風格の漂う建物。

ここは、古い蔵の一部を利用した「蔵カフェ」。
1860年から続く老舗の酒屋「酒座 中久本店」の蔵を改装して作られており、なんとも重厚な雰囲気が漂っています。

外観だけでなく、内観も趣たっぷり。
ジャズのBGMが流れる店内で、店主の石塚栄子さんに少しお話を伺いました。

(※以下、「」内は石塚さんのセリフ)

――石塚さんはどのようなきっかけでこのお店をはじめたのですか?
「以前、この場所は『中久本店 喫茶室』という名前で別のオーナーがカフェを経営していて、私はそのときからスタッフとして店を手伝っていました。そのオーナーが引退することになったとき、この素敵な場所で店を続けたいと思い、店名を『蔵カフェ』に変えて2017年からお店を引き継ぎました」

――今は府中にお住まいですか?
「はい。府中に住んでもう20年近く経ちます。娘が3人いますが、全員お嫁に行って、今は夫と2人で暮らしています」

――この街のどんなところが好きですか?
「この蔵も古い建物ですが、ほかにも店の目の前にある府中高札場など、昔の建造物がたくさん残っていて風情があります。府中市民にとって、特に大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)の存在は大きいですね。深い歴史があるこの土地は、常に神様から守られているという安心感があります」

▲府中高札場。高礼場とは、幕府が政策や禁止令などを書いて掲示していた施設のこと。府中には、かつてのこの地域が武蔵国(東京・埼玉・神奈川などの地域を含んだエリア)と呼ばれていた頃に国府(今でいう県庁・都庁)があり、この場所に高礼場が置かれていた
▲毎日焼き上げる自慢の自家製チーズケーキ(400円)と、蔵元の酒粕を使ったオリジナルドリンク、酒粕ラテ(600円)

――府中に住んでいる人のイメージというと、どんなことが浮かびますか?
「府中はお祭り好きな人が多い気がします。『くらやみ祭』や『けやき音楽祭JAZZ in FUCHU』など、年間を通してさまざまなイベントがあるので、住んでいて飽きないですね」

――ありがとうございました。最後に、石塚さんの府中のオススメスポットを教えてもらえますか?
「府中駅からは少し離れますが、『大東京綜合卸売センター』はかなりおもしろいですよ!いろいろなものが売っていて、私は店で使うストローやコップなどをたまに購入しに行きます。一般の人も入れる市場なので、ぜひ行ってみてください」

■博物館にビール工場。府中市内を散策

蔵カフェの店主、石塚さんの話を聞き、府中随一の市場である「大東京綜合卸売センター」を目指すことに。
石塚さんに教わった通り、下河原緑道をひたすら南へ歩きます。

下河原緑道をしばらく歩いていると、道の脇に色とりどりの草花が。徐々に畑も増えてきて、道の先には小高い山が見え始めます。再開発が進む駅前とは異なり、自然溢れる多摩地域ならではの光景です。

しばらく進むと、「府中市郷土の森博物館」に到着しました。
この博物館は博物館本館のほか、プラネタリウム・復元建築物を兼ね備えた複合施設。

施設の名称から、地方によくある「郷土資料館」のようなものを連想しましたが、楽しみながら街の歴史や文化、風土に触れられる子どもに人気のスポットのよう。私が立ち寄った日は、平日にも関わらず親子連れや幼稚園児で賑わっていました。さらに奥に進むと、ミニチュアの信号機や横断歩道が置かれた少し不思議な光景が。

ここは、遊具で遊びながら交通知識を学べる「交通遊園」。1周100円で楽しめるゴーカートをはじめ、親子で乗れるペダルカーなども用意されていて、家族連れに人気のスポットなのだそう。

また、周辺にはサントリーの「天然水のビール工場 東京・武蔵野ブルワリー」があります。事前予約が必要になるものの、ビールの仕込み工程や貯酒工程の見学が可能。できたての「ザ・プレミアム・モルツ」を試飲できるのは、ビール好きにはたまりません。

■食のプロや地元の人が集まる。大東京綜合卸売センター

いろいろと寄り道しながら、ようやく「大東京綜合卸売センター」に到着。
巨大な駐車場や、雑然とした雰囲気……本当に一般の人が入っていいのかと、一瞬ためらってしまいますが、もちろん問題ありません。

中に入ると、広々とした場内に真っ直ぐ続く通りが5本。
両サイドにはお店が連なり、所狭しと商品が溢れかえっています。

お鍋ひとつ取ってもこの通り。さまざまな大きさのものがズラリと並びます。
この市場は、1966年に開場した多摩地域最大級の卸売市場。通称“府中市場”として、古くから”食のプロ”に親しまれてきた場所です。生鮮食品から日用雑貨まで、約70もの専門店が軒を連ねています。

▲途中で立ち寄った「のんしゃらん食堂」の「特製スパイシーチキンカレー」。

生鮮食品や日用雑貨なら「あらゆるものが置かれている」といっても過言ではないラインナップ。
また、敷地内には有名な飲食店も。

買い物だけでなく、ランチも楽しめるのが「大東京綜合卸売センター」の魅力。
市場までの道中には、「府中市郷土の森博物館」や「天然水のビール工場 東京・武蔵野ブルワリー」があるので、休日は周辺エリアだけでじっくりと楽しむことができそうです。

■あらゆるスポットに宿る「府中」にしかない魅力

ケヤキ並木をはじめとした力強い自然――
蔵カフェや大國魂神社から感じる重厚な歴史――
博物館や市場などの魅力的なスポット――

歴史・自然・博物館・市場など、それぞれに他の街にはない独特な個性があるのが府中の特徴。
散策を終えた頃には、すっかりとこの街の個性に魅了されている自分がいました。

「免許更新のときに行くところ」には、暮らしを充実させるたくさんの魅力があります。
京王線沿いでの新生活を検討している方は、一度府中に訪れてみてはいかがでしょうか?
半日もすれば、この街の個性やおもしろさにすっかり魅了されているはずです。

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下條信吾

長野県安曇野出身、東京在住のフリーライター・カメラマン。レゲエベーシストとしてKaRaLi、Tropicos、The Kingstompersなどで活躍中。
趣味は地図なしの東京街歩き。
八王子から立川まで2時間半、下北沢から仙川まで4時間、お台場から笹塚まで6時間かかりました。
Instagram:https://www.instagram.com/bassieshimo/