滋賀県大津市の南部に位置する、琵琶湖に面した街「膳所」。「ぜぜ」という地名が読めた人は関西在住の人かもしれません。

かつて城下町だった街には今でも旧武家屋敷跡が残り、街のあちこちに当時の面影を残す細い路地があります。駅の南側、山手は古い建物も多く残る閑静な住宅地。反対に、駅から北の湖岸沿いには新しい高層マンションが数多く建設されています。

駅から湖岸沿いに続く「ときめき坂」は、昭和後期~平成初期には市内随一の繁華街として“滋賀の竹下通り”と言われるほど栄えていたとか。かつてほどの賑わいはないものの、今も暮らしやすい街であることに変わりはありません。

私自身、膳所には取材で訪れたことが何度もあります。

自然あふれる琵琶湖がすぐ近くにあり、穏やかな街なのだろうなという印象でしたが、今回の街歩きでさらに心惹かれる人やお店にいくつも出会うことができました。

【膳所の基本情報】

駅名:JR東海道本線「膳所」駅、京阪石山坂本線「京阪膳所」駅
ランドマーク:琵琶湖、大津湖岸なぎさ公園

■朝夕はとっても賑やか。京都や大阪への通勤や遊びにも便利な立地

膳所は、JR東海道本線、京阪石山坂本本線の2つの路線が使える便利な立地です。「JR膳所駅」は大津市のメインステーションである大津駅のひとつ隣の駅。

普通列車のみの停車ですが、京都駅まで約11分、少し先の大阪駅まで快速・新快速に乗り換えて約50分。県内でも乗降客数の多い草津駅にも約12分で到着し、通勤や通学にもとても便利な立地にあります。

「京阪膳所駅」はJR線のすぐ隣に。駅の近辺には県立高校や滋賀短大などの教育機関が複数あるため、朝夕の駅前はとても賑やかです。

駅前にバスロータリーはありませんが、駅から少し歩いた先に「近江鉄道・湖国バス」が運行しています。大津駅や石山駅、市民病院や県庁などへ向かう際に利用すると便利です。

また、名神高速道路や新名神高速道路が近く、車で大阪まで約1時間、名古屋まで約1時間30分で移動できます。

■駅周辺には個人経営のお店が並び、湖岸沿いには大型商業施設が

膳所駅の駅前は細い道が多く、個人経営の商店や飲食店が軒を連ねています。

駅の南側、国道一号線周辺にはスーパー「生活協同組合コープしがコープぜぜ店」やドラッグストア「ドラッグユタカ 大津市民病院前店」などがあり、毎日の買い物に便利です。

駅の北側、湖岸沿いに向かう駅前通りには「フレスコ・プチ 膳所駅前店」などの小規模スーパーのほか、滋賀銀行や郵便局・各科クリニック・薬局・教育施設など普段の生活に欠かせない施設が集まっています。

駅から徒歩18分ほど、湖岸沿いには複合商業施設「Oh!Me 大津テラス」があります。8階まである施設内にはスーパー「フレンドマート大津テラス店」のほか書店・家電量販店・100円均一ショップ、さらに映画館「ユナイテッド・シネマ大津」が入っています。週末のお出かけにもよさそうです。

ほかにも、「イオンタウン アヤハプラザ」にはスーパー「マックスバリュ膳所店」や人気チェーンのレストランも数多く入っています。

いずれも駅から徒歩で行ける場所にありますが、大型駐車場もあるので車があるとより便利かもしれません。

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■ほっとひと息つけるお店、湖岸沿いの公園でのんびり散歩も

駅から琵琶湖岸沿いに行けば、大型チェーン店も数多くありますが、駅前通りやちょっと裏道へ行けば、ほっこりと心温まる飲食店やレストランがあちこちに。焼きたてパンを買って、水辺の公園を散策しながらブランチを楽しむのもいいですね。

駅から「ときめき坂」を下り、小学校の裏手へ進むと見えてくるのが「よりみちぱん」
夫婦で営む、小ぶりながらもほっこりとする店内には種類豊富なパンが並んでいます。

菓子パンや総菜パンなど、見た目も可愛いパンは見ているだけでお腹が空いてきます。
この日選んだのは、1番人気の「メロンぱん(151円)」。ざくざくのクッキー生地は食感も軽く、琵琶湖の湖岸沿いを散歩しながらペロッと完食してしまいました。

地元の方からのオススメを聞きランチに訪れたのは、「ときめき坂」から少し外れたところにある居酒屋「花ちょうちん」。夜は新鮮なお魚が楽しめる居酒屋ですが、ランチには数量限定の海鮮丼のほか、お肉をたっぷり使ったランチなどが楽しめると評判です。

今回チョイスしたメニューは数量限定の「海鮮丼定食(880円)」。鮮度抜群のお刺身がたっぷり入って、このお値段。地元の人が強く推薦していたのも頷けます! もちろん、お味は大満足でした。

のんびりと散歩に向かったのは「大津湖岸なぎさ公園」。駅から少し離れますが、湖畔に約4.8kmにわたる細長い公園は散歩やジョギングにもぴったり。春には湖岸に花が咲き乱れ、夏に開催される「びわ湖大花火大会」では絶好のビュースポットとしても人気を集めています。

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■昔ながらの銭湯に新しい風が。癒やしの空間が交流の場に

昔から銭湯といえば、地元の人たちの交流の場として愛されてきました。昨今は継承者不足で廃業する銭湯もあるなか、駅前の商店街から少し離れた場所にある「都湯」は若い世代が先代からバトンを引き継ぎ、新しいスタイルの銭湯として再オープン。
銭湯継業の専門集団「ゆとなみ社」のひとり、番台の原俊樹(はら としき)さんは大阪&異業種出身ながら、膳所に移り住んで今の仕事に。銭湯の魅力、膳所の街の魅力について伺いました。

(以下インタビュー。「」内は原さんのコメント)

——「都湯」は一度休業した銭湯を先代から経営を引き継いで再オープンした、珍しいスタイルの銭湯ですよね。
「銭湯がなくなるのが寂しいというより、その文化を守りたくて。昔から銭湯は家族経営が主体で、今の時代にはうまく合っていなかったんですよね。銭湯文化は素晴らしいものなので、継承がうまくいかずに潰れていくのはもったいなくて」

——番台の原さんは地元出身ではないんですよね。
「膳所とは何の関係もない、ただの大阪人でした。今は膳所に住んでいますが、膳所ってすごく良いところ。最高ですよ。JR東海道本線でも、こんなに琵琶湖に近い街ってない。僕は街の黄金期、パルコや西武百貨店があって、『ときめき坂』がものすごい人で賑わっていた時代を知らないんです。街は寂しくなったといわれるけれど、僕にとっては街も人も温かく感じるんですよ。行政や警察、公務員の方もみんな親切で優しい。大阪ってどうしても人が多いから、素気ないところがあるのですが、膳所の人はしっかりと目を見て、ゆっくりと話をしてくれる。そこに衝撃を受けましたね」

——今も昔ながらの、地元の人たちが多く通われる銭湯なんですか?
「いや、ここは全く違いますね。20~40代、僕と同世代前後の人たちが常連さんとして店を支えてくれています。SNSやYoutubeで情報発信していることもあって、『都湯』には県全体からお客さんが来てくれています。比叡山坂本から毎日来る人もいるし、栗東方面からも来られます。イベントを開催しているときには、大阪や京都から来られる方も珍しくないですよ」

——これからの街に期待することはありますか?
「豊かさのある暮らしができる街になればいいですね。『都湯』が街のハブ(中心)になれたらいいなと思います。銭湯に行かない人でも、店の前を通る人であればお風呂屋さんとして、その存在を知ってもらえる。街の人に認知してもらえる存在になりたいですね」

■無理強いをしない、心になじむ街

古い街並みを残しつつ、湖岸沿いには生活に便利な大きな商業施設やチェーン店もある。少し歩けば、自然にあふれた琵琶湖の景色を楽しめる。それでいて、交通の便もいい。コンパクトな街なのに痒い所に手が届く。わがままな心にフィットする街、そんな印象を持ちました。
そして、昔ながらの銭湯がスタイルを変え、新たな街の顔になりつつある。膳所の街が少しずつ素敵な変化を起こしているようです。

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黒田奈保子(くろだなほこ)

大阪府在住。出版社での情報誌や音楽誌の編集を経て、フリーの編集・ライターに。音楽やグルメ、旅行など幅広いジャンルを取材、執筆、撮影。活動範囲は日本全国、海外とどこまでも。