元町・中華街。

日本とは思えないような華やかな街並みを眺めると、海外で見知らぬ地を歩くときに覚えるような興奮が呼び起されます。

日本が開国した当時、横浜には外国居留地が築かれ、アメリカ進駐軍の拠点が置かれました。そうして徐々に街に美しい外国の文化が浸透していったそう。そんな背景が、この街に異国情緒が息づく理由となっています。

中華街で賑わいを見せるアジアの熱気、元町から香るヨーロッパの趣。

元町・中華街を歩きながら、長い歴史を経て何層にも折り重なる歴史を体感してきました。

元町・中華街の基本情報

駅名:みなとみらい線「元町・中華街」
ランドマーク:横浜マリンタワー
映画や漫画に登場するスポット:あぶない刑事

東急東横線に通じる「みなとみらい線」

みなとみらい線の各駅停車で、横浜駅から5駅のところにある元町・中華街駅。横浜駅を通るみなとみらい線は東急東横線が直通運行しているので、渋谷方面への移動もストレスがかかりません。

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3番出口を降り、横断歩道を渡ると目の前にあるのは絢爛たる佇まいの善隣(ぜんりん)門。中華街の正門とも言える存在です。極彩色の看板が立ち並ぶ通りでは、目当ての中華料理屋を訪ねたり、食べ歩きを楽しんだりと、人々が思い思いに過ごしていました。

横浜の街を見守るようにそびえるのは、横浜開港100周年の記念事業として建設された「横浜マリンタワー」。地上94mの展望フロアから見晴らせる景観は圧巻です。

東京湾と横浜湾から潮の香りが届く「山下公園」

駅から約10分歩いたところにあるのは、1930年に開園した「山下公園」。横浜湾・東京湾が一望でき、「未来のバラ園」が設けられていることでも有名です。春から秋にかけて約190種、2650株のバラが咲き誇ります。

街の沿岸部分を横断するようにつくられた「山下公園」は、広さ約7万4000平方メートル。整備された芝生に挟まれた遊歩道は、横浜マリンタワーから横浜赤レンガ倉庫方面へと真っ直ぐに続いていきます。颯爽とランニングする人や、ゆったりと犬の散歩をする近隣の住人も見かけられます。

バルコニーの白い柵に手を付き海に近付くと、風に乗って潮の香りが届けられました。たゆたう海面を滑るように船が行き交い、向こう岸には雲で白く霞んだベイブリッジが望めます。

港には、かつての豪華客船「日本郵船氷川丸(にほんゆうせんひかわまる)」が停泊していました。海に浮かぶその姿からは静かな迫力が感じられます。月に数回、船内を見学するツアーも設けられているのだそう。

元町商店街は、クラシカルだけどトレンディ

元町・中華街駅の5番出口から徒歩約5分の場所にあるのは、優美な空気が流れる「元町商店街ショッピングストリート」。元町に住む、感度の高い人々から熱い支持を獲得する店が集結します。

この「元町商店街ショッピングストリート」には、長きに渡る伝統を引き継ぐ名店が多く営まれています。レンガ敷きの歩道を囲むように並ぶのは、ハイカラな外観の路面店たち。

「喜久家」は1942年からヨーロッパのレシピを取り入れてきた格式高い洋菓子店。居留地の名残のあった時代からその看板を守り続けてきました。

元町で愛され続けている「ウチキパン」は、約130年の歴史を誇る老舗パン屋さん。夕方にもなると、ほとんどの品が売り切れてしまいます。素朴な見た目のパンは、どこか懐かしく心が和むものばかり。

「いもあんぱん」(170円(税別))は、柔らかいパン生地に芋の甘みが感じられる餡がたっぷりと包まれていました。ここに足繁く通える元町の住人が羨ましくなる味わいです。

レンガ敷きの道に続く、街をアップデートさせる店

「元町商店街ショッピングストリート」から広がる横道にも、個性が光る店が並びます。

ここは、2010年にオープンした「Bluff Bakery(ブラフベーカリー)」。青く縁取られたガラス張りの窓から、スタイリッシュな店内が覗きます。

店内には、目を楽しませるボリューミーなパンが並んでいました。女性の握り拳2つ分ほどある「ハーシーズクロワッサン」(320円(税別))は、バターが香ばしいサクサクのパイ生地に、ほんのり苦味のあるチョコレートが入った食べ応えある一品。

外の文化を受け入れ慈しんだ寛容な土地

さまざまな文化を世に産み、普及させてしてきた横浜には「◯◯発祥の地」がたくさんあります。

元町・中華街の駅から日本大通りの方へ約10分ほど歩いたところにある「横浜かをり 山下町本店」もそのひとつ。横浜港を開港した直後にヨコハマ・ホテルを開業し、「ホテル発祥の地」として知られています。

現在は洋菓子店、ティーラウンジとして営業している「横浜かをり 山下町本店」。ノスタルジーを感じさせる店構えが特徴的です。

隣接する同店の洋菓子店では、レーズンサンドや桜ゼリーといった名作菓子が販売されています。厚みのあるクッキー生地に挟まれたレーズンサンド(140円(税別))はミルキーで上品な甘さの生クリームに、しっとりとしたレーズンの食感が楽しい味わい。

メインストリートの外れにも歴史とこだわりが宿る

「洋食」と「バー」の発祥の地でもある横浜。商店街のメインストリートから少し外れた通りに店を構える「JHCafe(ジェイエイチカフェ)」に訪ねてみました。

階段を降りてドアを開けた先に広がるのは、ウエスタンスタイルのインテリアで揃えられた店内。店で催されたイベントにはハリウッドスターが出演したこともあるんだとか。壁にはオーナーと世界的な俳優との2ショット写真が何枚も飾られています。

この日、オーダーしたのはランチタイムは行列ができるほど人気の「オムライス」(1,000円(税別))。とろふわに仕上がった卵と真っ赤なケチャップライスを、コクのあるデミグラスソースにからめて食べると絶品です。

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「ずっと住んでも飽きない街」元町・中華街

横浜で生まれ、この街と共に育ってきたIT企業で働く上野耕太郎さん。元町・中華街をよく知る上野さんに、この街の魅力について語ってもらいました。
(※以下、「」内は上野さんのセリフです)

――住んでいる方は、どのくらいの世代の方が多いですか?

「歩いていると30代から50代くらいのご夫婦が多い印象はありますね。おじいちゃんおばあちゃんも多いです。あとは、犬を散歩している人が多いかも」

――上野さんのような20代はいかがでしょう?

「僕ら世代は、都内で働いている人が多いです。元町・中華街駅からだと、渋谷や中目黒、新宿三丁目まで一本なので、通勤がしやすい土地でもありますね。電車が始発なので必ず座れます。乗り込む時点で満員電車ということはないので、それも暮らしていて居心地のいい点のひとつです」

――暮らしてみてわかる、この街の魅力とは?

「異国の風情が感じられるのはひとつの魅力だと思います。アメリカのテイストを取り入れたお店が多くて、それが日常に溶け込んでるのが好きですね。外から入ってきた新しい文化をすんなり受け入れられる風土があるように感じます」

――昔と今を比べて何か街の変化はありますか?

「昔から続いているお店もあれば、おしゃれな古着屋さんやパンケーキ屋さんなど、常に新しいお店もオープンしています。横浜の一番の魅力って、みなとみらいのようなお出かけ向きの最先端なスポットもあれば、カオスでディープな飲み屋街もあるところだと思うんです。元町も、アメリカ文化や中華街・昔ながらの日本文化が混ざり合ってそれぞれがゆるやかに新陳代謝しています。ずっと住んでいても、飽きない街ですね」

温故知新の心が街の端々に根ざされている

1番出口は海風そよ吹く山下公園が近く、3番出口を出ると活気溢れる中華街が視界に飛び込み、5番出口は元町商店街が目と鼻の先にある。元町・中華街は、駅から外に抜ける出口によって、表情を変える街でもありました。

どこを切り取ってもフォトジェニックで、満たされていて、豊か。探訪するだけで長年蓄積された文化を肌で感じることができます。でも、もっと贅沢なのは、自らの生活をこの街の歴史として刻むことなのかもしれません。

いちじく舞(いちじく まい)

フリーライター・編集者。音楽の専門学校を卒業後、地下アイドル→銀座ホステス→広告モデル→OLという散らかった経歴を経て、ライターとして独立。ものづくりが好き。
https://twitter.com/ichijiku_mai (@ichijiku_mai)