東京屈指の名物商店街から小道に入ると連なる無数の店、店、店。

今日も“そこ”では多くの人が杯を重ね、ときに不毛な会話を交わしながら、有意義な時間を過ごしています。サブカルのサンクチュアリではショーウィンドウにかぶりつきながらお目当のグッズを物色する人がいる。かと思えば、遠方からはるばるラーメンの有名店を尋ねに来る人も。

そんな幾多もの文化が交差し、人を呼ぶ街、中野。

アニメのメッカ・ラーメンの発信拠点・居酒屋激戦区……この街が抱える代名詞を一つひとつ味わうべく、中野の街へと繰り出してみました。

そこにはどのような暮らしがあるのでしょうかーー。

中野の基本情報

駅名:JR中央線・JR総武線・東京メトロ東西線「中野」
ランドマーク:中野サンプラザ

新宿の隣駅、中野。バスを活用すればさらに快適

中央線快速・新宿駅の隣に位置するJR中野駅。JR中央・総武線だけでなく東京メトロ東西線が通る中野駅は、大手町や日本橋などオフィス街への移動も乗り換えいらず。さらに、駅前にはバスターミナルがあり、中野駅発の京王バスと関東バスは練馬や渋谷、吉祥寺方面への移動に便利です。

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北口から中野通りを歩くと、アイドルライブの聖地としても呼び声高い「中野サンプラザホール」が見えてきます。この街のシンボルマークとして親しまれた中野サンプラザホールは、2022年をめどに閉館し、2025年には約1万人が収容できる大規模なイベントホールとして姿を変えるのだそう。

中野駅南口のバスターミナルを超えると、アパレルショップやカフェ・スーパーなどのテナントが入ったマルイ中野店が。駅からは南北に商店街が延びており、街を活気づかせています。

暮らしに根付いた名店が立ち並ぶ、中野サンモール商店街

中野のメインストリートと言えば、北口を降りて目の前に広がる「中野サンモール商店街」。平日の日中も人通りが途絶えないアーケードの中は、約110もの多種多様な店が軒を連ねています。

商店街を入ってすぐ右手に見えるのが「健康食卓 わしや」。店頭では赤飯やおこわが売られ、店内では佃煮や揚げ物を始めとした種類豊富なお惣菜が並びます。夕飯のおかずにもう一品足したいときなどに重宝しそう。

商店街中間に位置するパン屋「ボンジュール・ボン」は、土日になると店内が混雑するほどの人気店。愛嬌のある手書きの立て看板には、「パン・オブ・ザ・イヤー」で金賞に輝いたメープルメロンと、「カレーパングランプリ」で金賞を獲得したカレーパンが描かれていました。

商店街の表通りを右に入った小道には、「中華そば青葉 中野本店」が店を構えます。言わずもがなの名店・青葉の中華そばの特徴は、コクと深みが共存する和風だしのスープ。カウンターには男性客だけでなく、一人で来店した女性客もちらほら。

圧倒的な情報量を誇る中野ブロードウェイ

約230メートル続く商店街のアーケードを抜けると、「中野ブロードウェイ」の赤いゲートが視界に飛び込みます。地上10階建の「中野ブロードウェイ」は、地下1階から4階が副業施設となっており、建設当初から営まれる地域密着型の店舗から、マニアが集う専門店までがひしめくように連なっています。

2階から4階の全てのフロアに、「コスプレ館」「カード館」「アニメ館」などジャンル分けされた店舗が展開される「まんだらけ」。2階の「まんだらけ本店」には、数多くの少年少女漫画が取り揃えられていました。

こちらは幾多にも連なる鳥居が目印の4階「まんだらけ 変や」。店内には懐かしいアニメのフィギュアがズラリ。中には、プレミアがつき何十万円にも及ぶ高額な品物も。

中野ブロードウェイの店舗にはマニアを夢中にさせるアイテムだけではなく、馴染みのあるキャラクター商品も多いため、アニメや漫画に精通していない人でも存分に楽しめそうです。

駅前の賑やかな音が止むエアポケット

ここは北口から約5分ほどに歩いたところにある「中野セントラルパーク」。敷地内の「中野四季の森公園」は、賑やかな駅前とは打って変わって、閑静な空気に満たされていました。

遊具は設置されていないものの、1万5千平方メートルあるひらけた公園は自由に子どもたちが走り回れる芝生が広がります。公園の真ん中では、まだおぼつかない足取りで駆けていく子どもと、それを見守るお母さんの姿が見られました。

「中野セントラルパーク」は、公園をL字に囲むようにしてレストランやカフェが営業しています。並びには朝の7時からオープンしているカフェもあり、テラスで公園を眺めながら悠々自適にモーニングを楽しむのもよさそう。

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シックに呑みたい夜は南口「RENGA GATE」へ

南口から徒歩約1分の「RENGA GATE」は、雑多な横丁が多く点在する中野で異質な存在を放つ通り。上空には星を思わせる繊細なイルミネーションが灯り、ロマンティックなムードが漂います。

落ち着いたモダンな店が並ぶ「RENGA GATE」で、アンティークな風合い感じる外観が目に留まり、「Boqueria(ボケリア)」を訪ねてみることに。メニューには、スペインやメキシコ料理が充実しています。

この日のテーブルの主役は、蟹やエビ・オマール海老が大胆に乗った「渡り蟹のパエージャ」(2,480円(税別))。濃厚な海の幸の出汁が染み込んだパエリアは絶品。気の利いたアルコールメニューも多く、さらっと呑みたいときにもおすすめです。

中野の魅力を知り尽くす街の先輩に会いに行った

「365日中360日は呑んでる」と語るのは、中野に住居を構える、とある広告代理店社長の高山洋平さん。そんな高山さんが「365日中340日はここに来ている」という「バカフェ」を尋ねました。

(※以下、「」内は高山さんのセリフです)

――中野はどんな人と出会える街ですか?
「中野はミュージシャンや映画監督・漫画家とかカルチャー界隈の人がよく暮らしてる街。もちろんそれ以外の公務員の人なんかも住んでるけど、ものすごく音楽や映画に詳しかったりするから話が合うんだよ。呑み屋で隣り合わせた人に教えてもらうことも多いね」

――中野という“街”に、いろいろな文化が根づいている印象がありますね
「そう。中野には5つの勢力がある。ひとつはラーメン屋で、有名店の本店もある。他は呑み屋にブロードウェイ周辺に集うオタク、それからクリエイター。あとはスケーターだね。実は中野ってストリート文化が昔からあって、スケーターがたくさんいるんだよ。有名な『fatbros(ファットブロス)』っていうボードショップもあるしね」

――高山さんから見た中野の魅力を教えてください。
「中野はとにかく寛容。うちは小学生の子どもがいるんだけど、父親である自分が派手な格好で学校行事に参加しても、みんな驚きもせず普通に受け入れてくれる。きっと地域柄アッパーな人もたくさんいるし、個性的な人を受け入れる風土ができ上がっているんだろうね

排他的ではなく、実は愛想がある街

地元の人たちだけでなく、わざわざ遠くから足を運ばせる吸引力のある街・中野。

一見するとディープで排他的かと思いきや、よその土地から来た人も受け入れてくれる開かれた雰囲気を感じることができました。一朝一夕では築き上げることができない中野のカルチャーに、ぜひ浸かりに、そして心地よい暮らしを体感しに来てみてください。

いちじく舞(いちじく まい)

フリーライター・編集者。音楽の専門学校を卒業後、地下アイドル→銀座ホステス→広告モデル→OLという散らかった経歴を経て、ライターとして独立。ものづくりが好き。
Twitter:https://twitter.com/ichijiku_mai (@ichijiku_mai)