渋谷や下北沢など、東京ではさまざまな駅で再開発が進んでいます。
そんな再開発によって大きく変化した街のひとつが、東京の西部、多摩地域の調布。

再開発は利便性が向上する反面、「古き良きお店や風情が失われてしまう」といったデメリットをはらむもの。調布は、再開発によってどのような街に変化したのでしょうか。また、暮らしやすさはどう向上したのでしょうか。

今回は、街の変化や暮らしやすさを調査するために、再開発後の調布を訪れました。

【調布の基本情報】

駅名:京王線「調布」駅
ランドマーク:深大寺

新宿までたったの2駅。抜群の交通アクセス

調布市は、多摩地域の東部に位置する人口約23万人の街。三鷹市や府中市、神奈川県の川崎市などと隣接しています。

主要駅である調布駅には、京王線が発着し、特急に乗れば新宿駅まで2駅、所要時間たったの15分でアクセス可能です。また、停車駅のひとつである明大前駅で乗り換えれば、渋谷駅にも約15分で到着します。

▲調布駅、駅前の景観

さらに、京王線は都営新宿線との直通運転を行っており、市ヶ谷駅や神保町駅といった東京方面の駅にもダイレクトにアクセス可能。都心から20km以上離れた場所でありながら、主要ビジネスエリアとの往来が快適なロケーションです。

また、調布駅は北口・南口それぞれからバスが発着しており、三鷹や吉祥寺といった中央線沿線に行くのも簡単。調布と三鷹・吉祥寺の中間地点に住めば、駅からは少し離れるものの、京王線と中央線という人気の2路線を利用できます。

さらに、調布市はマイカー利用者にも便利な街。駅から5分程の距離に中央自動車道・調布ICがあるため、遠方へのおでかけの際に重宝します。

再開発により激変した″映画の街″

筆者が最後に調布を訪れたのは、10年近く前のこと。
久しぶりに訪れてみると駅前にそのときの面影はなく、「降りる駅を間違えたか……?」と本気で戸惑ってしまいました。

というのも、調布駅はもともと地上にあった駅を2012年に地下化。地上駅の跡地は「調布駅前広場」と名付けられ、フリーマーケットなどが開催されるイベントエリアへと変わりました。

▲調布駅前広場。駅が地下化したことで、市内18箇所の踏切が姿を消し、市内南北の渋滞が大きく緩和されたそう

2017年9月には駅直結の商業施設「トリエ京王調布」がオープン。「トリエ京王調布」は、A・B・C館に分かれており、A館には「生鮮食品売り場・アパレルショップ・レストランフロア」が、B館には1Fから4Fまで大手家電量販店の「ビックカメラ」が入っています。

▲ビックカメラ
▲トリエ京王調布にはオシャレなカフェも入っている

そしてC館には、11スクリーン・総座席数2100席を誇る巨大な映画館が。
調布市は、″石原軍団″で知られる「石原プロ」の本社をはじめ、「日活調布撮影所」や「角川大映スタジオ」など、映画・映像関連企業が集まる″映画の街″。かつては″東洋のハリウッド″と呼ばれていたこともありました。
2011年の「パルコ調布キネマ」閉館以来、調布には長らく映画館がなかったため、巨大映画館のオープンは地元民から大歓迎されたといいます。

▲「トリエ京王調布」C館の映画館
▲映画館がある建物の脇は住民の憩いの場に

買い物から娯楽まですべてが揃うトリエ京王調布のほか、駅周辺にはファッションビル「調布パルコ」や、24時間営業の「SEIYU」など、商業施設が豊富。この街に住んで買い物に不便することはないでしょう。

また、駅の南側は「行政区域」になっています。「調布市役所」をはじめ、「調布市 中央図書館」や「調布市グリーンホール」など、主要な公共施設が集結しており、引っ越しの手続きなどで便利に利用できます。また、オフィスビルが集結しているのもポイント。
北口・南口をあわせた調布駅前には、「買い物・娯楽・行政手続・ビジネス」など、暮らしに必要なあらゆる要素が集まっています。

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▲調布市グリーンホール

調布の象徴。暮らしに溶け込む「ゲゲゲの鬼太郎」

調布駅の北口から数分の場所にある「天神通り商店街」。
「天神通り商店街」は、買い物やグルメが楽しめる調布のメインストリートで、昼夜を問わず多くの人が行き交います。

▲天神通り商店街

そんなこの商店街の特徴は「ゲゲゲの鬼太郎」。
調布は、ゲゲゲの鬼太郎の作者である故・水木しげる先生が住んでいた街として有名で「日本のアニメの聖地88」にも選ばれています。

「天神通り商店街」には、さまざまな場所にキャラクターが置かれており、買い物やグルメを楽しみながらゲゲゲの鬼太郎の世界観を楽しめます。

▲鬼太郎のモニュメント

アニメの聖地として有名な調布は、程よい遊び心を持った街。
日常のちょっとした買い物でも、より楽しく過ごすことができます。

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「ゆったりとした雰囲気が好き」。もともとの良さに″利便性″が加わった調布

ゲゲゲの鬼太郎のほか、調布の特徴として有名なのが「蕎麦」。
調布は深大寺周辺を中心に美しい水が流れる地域でもあり、蕎麦の名店がたくさんあります。
中でも、調布駅の近くでお店を営む「出雲そば やくも」は、島根県の名物「割子蕎麦」を食べられる東京でも珍しいお店。

長年この街で暮らす「出雲そば やくも」の店主「羽富さん」に、調布の魅力についてお話をお聞きしました。(※以下、「」内は羽富さんのセリフ)

▲羽富さん

――羽富さんはなぜ割子蕎麦のお店を出そうと思ったのですか?
「もともと和食の料理人でしたが、知り合いの蕎麦職人から蕎麦の魅力を教えてもらい、『自分の店を持つなら蕎麦屋をやりたい』と思うようになりました。同時にそのとき、子どもの頃によく家族で食べに行った割子蕎麦の美味しさを思い出したんです。」

――では、なぜ調布に店を出そうと思ったのでしょうか?
「京王線沿線の中でも特に西エリアのゆったりとした雰囲気が前から好きで、住まいもずっとこの辺です。店を出そうと考えたときも、京王線沿線で、なおかつ急行が止まる駅で探した結果、調布にたどり着きました。」

▲店の人気メニューは三色割子そば(1,140円)。わさび茎やとろろ、おろしなめこなど、11種類のトッピングから3種類を選んで味の違いを楽しめる

――お客さんはどんな人が多いですか?
「平日の昼間は周辺の企業で働くビジネスマンが多いですね。あと、映画の撮影所があるので、映画関係者の方もよく来てくださいます。再開発が進んでからは家族連れがとても増えましたね。」

――再開発で街が大きく変わったと思うのですが、調布の方々はどのような部分に喜んでいますか?
「映画館ができたことは調布に住む人にとって大きな喜びだったと思います。それから、開発によって線路が地下化する以前は、開かずの踏切に足止めされて、店の仕込みに間に合わないこともありました。今ではそれも解消されて北口と南口が繋がり、以前よりもさらに住みやすくなりましたね。」

調布随一のパワースポット「深大寺」

羽富さんのお話を聞いたあと、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」のロケ地として有名になった「深大寺」を目指すことに。

▲武蔵境通りを歩いて北へ。歩道も広々としていて散歩も快適

深大寺を目指して北側にしばらく歩いていくと、緑豊かな「野川」が見えてきました。
川沿いの緑道には犬の散歩をする人や、ランニングをする人がちらほら。深々と生い茂る緑もさることながら、穏やかなせせらぎに癒されます。

野川を越えてさらに北に進むと、周辺の雰囲気はまるで別荘地のよう。
豊かな緑と小高い丘に、素敵な一軒家が並んでいます。静かでゆったりとした時間が流れており、この街の環境の良さが伝わってきます。

景色を楽しみながらさらに歩を進めると、目的地の「深大寺」に到着。
門前からすでに、落ち着いた和の雰囲気が感じられます。

▲深大寺門前の通り
▲深大寺門。荘厳な雰囲気

「深大寺」は、「満功上人(まんくうしょうにん)」という奈良時代のお坊さんが、733年(天平5年)に開山したお寺。厄除け・縁結びのお寺として有名で、1年を通じて多くの参拝者が訪れます。

お寺周辺は、20軒以上の蕎麦屋が軒を連ねる″そば処″。スタンダードなざるそば・かけそばに加え、「そばまんじゅう」といったオリジナルメニューを出す店もありました。家族でもお一人でも、グルメを楽しむのにもってこいのスポットです。

また、深大寺には、鬼太郎の世界観を楽しめる「鬼太郎茶屋」が。ここでは、「ゲゲゲラテ」や「ぬり壁のみそおでん」といったオリジナル妖怪メニューが楽しめます。ほかにはない独特の世界観が特徴で、アニメファンや鬼太郎ファンでなくても十分に楽しめるでしょう。

▲鬼太郎茶屋

そのほか、深大寺周辺には4,500種類以上もの植物を観察できる「神代植物園」や、源泉かけ流しの天然日帰り温泉、「湯守の里」といったスパ施設もあります。

お寺だけを巡るのもよし、サクッとお蕎麦を楽しむのもよし、植物園と温泉でゆったり過ごすのもよし。
調布暮らしに彩りを与えてくれるのが、このエリアの特徴です。

再活溌で輝きを増す街、調布

再開発により変わった街――
利便性が高まり喜ぶ人もいれば、「大好きだったあの店がなくなってしまった」と悲しむ人もいます。

しかし、「不便(踏切による渋滞)を取り除き、伝統(映画など)を取り戻した」調布の再開発は、この街で暮らす「すべての人」を笑顔にするもの。1日街を散策し暮らす人に話を聞きながら、そんなことを感じることができました。

今も昔も全く変わらない、古の歴史を感じさせる深大寺エリアがあるのも魅力的。
再開発で輝きを増す調布の暮らしは、あらゆる人を満足させるはずです。

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下條信吾

長野県安曇野出身、東京在住のフリーライター・カメラマン。レゲエベーシストとしてKaRaLi、Tropicos、The Kingstompersなどで活躍中。
趣味は地図なしの東京街歩き。
八王子から立川まで2時間半、下北沢から仙川まで4時間、お台場から笹塚まで6時間かかりました。
Instagram:https://www.instagram.com/bassieshimo/