Column / 2019 05,31

【板橋】街全体が“憩い”の場。優しい伝統が紡ぐ「安心」の街

児島宏明

ライター・編集者に憧れ、広告代理店に入社。SEOライターを経験した後、オウンドメディア担当に。
Webメディアに掲載する記事の企画・取材・編集・撮影を担当。飲食店などの個人事業主から会社経営者まで、さまざまな方にインタビューをして記事執筆を行う。
Instagram:https://www.instagram.com/iroakikojima/

「あれ、意外と静かでなんだか安心する」

これは板橋――新宿駅から約9分の土地に足を踏み入れたときに最初に抱いた印象だ。

東京の中心から10分以内という立地柄、駅前はビルや人でゴミゴミしているだろうと予想していた。
しかし、意外なほど落ち着きのある雰囲気に、私の予想がすぐに覆されたことを知る。

人の濁流に飲み込まれる「新宿・渋谷・品川……」
オシャレで高級な雰囲気に萎縮する「代官山・青山・銀座……」

普段大阪の田舎街に住んでいる私は、東京の街を訪れるたびに大都会の洗礼を受けてきた。
しかし、今回取材に訪れた「板橋」からはそれを感じない。

この街の安心感の正体は何だろう?
その理由を探るために、街の中へと入っていった。

【板橋の基本情報】

駅名:JR板橋駅
ランドマーク:縁むすび通り(板橋駅前本通り商店街)

利便性と暮らしの絶妙なバランスを保つ「板橋」

板橋は新宿から約9分、池袋から約3分の位置にある街。
渋谷にも約15分で行くことができ、都心へのアクセスは上々。

乗換できる路線はないものの、周辺には都営三田線・東武東上線の2路線があり、大手町などの東京駅方面や埼玉方面へのアクセスにも便利だ。

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駅前に大きな商業施設はないが、西口を出てすぐに買い物や娯楽に便利な2つの通り「グリーンロード」「縁むすび通り(板橋駅前本通り商店街)」がある。

▲駅前から板橋の奥へと続く「グリーンロード」
▲縁むすび通り(板橋駅前本通り商店街)。江戸の日本橋と京都の三条大橋を結んだ、江戸時代五街道のひとつ旧中山道の一部で、かつて「平尾宿」という宿場が置かれた。

「グリーンロード」は、居酒屋やバーなどの飲み屋が豊富で、板橋の歓楽街といった印象。
チェーン展開の居酒屋などはなく、雰囲気の良い個人経営のお店が集っている。

▲グリーンロードのバー。一人でも気兼ねなく入れそうな雰囲気で、仕事帰りの一杯に最適

「縁むすび通り(板橋駅前本通り商店街)」には、飲食店のほか、ドラッグストア・スーパー・病院など、日常の買い物に便利なお店が揃っている。取材当日は雨だったこともあり、街全体の人通りは少なかったものの、この通りは買い物客で賑わっていた。

▲イオングループのスーパー「まいばすけっと板橋駅南店」と縁むすび通りの町並み

また縁むすび通りは、旧街道の宿場町「平尾宿」があった場所。
どこか、当時の面影を感じさせる雰囲気がある。
この街の独特の落ち着きには、「宿場町」という歴史的な背景が関係しているのかもしれない。

▲縁むすび通りに面した病院。駅から徒歩10分圏内に、婦人科・産科の病院がある

「縁むすび通り」を駅前から5分ほど歩き、左に曲がると「板橋駅前公園」がある。
買い物帰りや飲み帰りにほっと一息つける、「憩いの場」が駅チカにあるのも嬉しいポイントだ。

▲板橋駅前公園とその片隅に佇む板橋豊川稲荷

駅周辺を歩いていて、高層ビルやマンションなど、規模の大きな建物が少ないことに気づいた。
そのため、閉塞感や圧迫感がなく、都会特有の息苦しさを感じない。

規模の大きな建物がない分、派手さや豪華さはないが、買い物・娯楽に便利なスポットは十分。
板橋に着いて30分も経っていなかったが、すでに「ここに住めば、便利かつ居心地の良い暮らしが実現できるのではないでは?」と感じていた。

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▲板橋駅の東口。こちらにもチェーン展開する飲食店のほか、スーパー・ドラッグストアなど「暮らしに便利」な施設が揃う

癒しのサードプレイスが日常のすぐそばに

「グリーンロード・縁むすび通り」周辺の魅力はほかにもある。
それは、住宅街に溶け込むように点在するオシャレなお店の数々。

▲板橋駅前公園の後ろの位置にあるお店。ヨーロッパのような外壁と緑の看板が印象的

「グリーンロード」「縁むすび通り」の周辺にある住宅街に、ひっそりと佇む雰囲気の良いお店達……
例えば、喫茶「kiki:器々」は、そんなこの界隈を象徴するような存在だ。

白で統一された外観に、軒先に置かれたロッキングチェアが目印。
アンティークでファンシーな雰囲気に惹かれ、少しお邪魔してみることに。

白を基調に木のぬくもりとアンティークの趣を感じる内観。
家具・照明・雑貨のひとつひとつが可愛らしく、店主のこだわりが伝わってくる。
大人数でというよりは、一人の時間をゆっくりと味わうのにおすすめ。

▲一人席に置かれた小窓。近隣の方に気づかれずにゆったりとした時間を過ごしてもらうため、あえて小さい窓にしているとのこと
▲古風なるスコンとブレンドコーヒー

注文した「古風なるスコン」は、伝統的なレシピを使ったお店の人気メニュー。
クロテッドクリーム※と自家製のジャムをたっぷりとつけて口に入れると、香ばしい風味と自家製ジャムの優しい甘みが口いっぱいに広がる。

一人暮らしの女性やママさんはもちろん、スイーツ好きの男性にもぜひおすすめしたいお店だ。

※クロテッドクリーム
イギリスの南西部、デヴォン州で2000年前から作られているという伝統的な乳製品。

▲自家製のジャムも店内で購入可能

喫茶「kiki:器々」を後にして、もう少しこの周辺を散策してみることに。
駅とは反対方向に歩いていくと、住宅の数が少しずつ増えていく。

「さすがにこの辺りにはお店はないか」と考えていると、住宅街の先にオシャレなテラス席とCRAFT BEERと書かれたのぼりが見えてきた。

こちらのお店は、クラフトビールとアメリカンテイストのフードが味わえる「TOKYO ALEWORKS (東京エールワークス)」。

店内は「ブルワリー(醸造所)」と「タップルーム(店舗)」に分かれており、飲食はタップルームで楽しめる。中に入ってみると、広々とした店内にカウンター・テーブル・ソファー席があり、インテリアにはアメリカンなピンボール台も。

▲TOKYO ALEWORKS (東京エールワークス)タップルームの内観
▲入り口にあるガラス張りの冷蔵庫には、「TOKYO ALEWORKS」のオリジナルビールのほか、国内・海外のブルワリーの銘柄が。もちろん購入可能。

ランチタイムはお昼限定のハンバーガーを楽しめる。
後少しで、「ビールを……」と言いかけるものの、我慢してハンバーガーのみを注文した。
選んだのは、メニューの中でも一番インパクトのある「ザ マッシュルーム イベリコ モッツァレラバーガー」。

▲バンズは、ビール醸造の過程で発生する、「麦芽粕(モルトカス)」を使ったオリジナルビアプレッツェルを利用

輪切りのオレンジ・ジャンボマッシュルーム・ビーフパティが重なるボリューミーな一品。
ハンバーガー用の紙で包み、ギュッと押しつぶしてからかぶりつくと「キノコ・牛・イベリコ豚・モッツァレラ・ビーフ」の旨味が口の中で絡み合う。

「これをビールで流し込めたらどれだけ最高だろう……」と妄想しながら、バクバクと一気に食べ切ってしまった。

味も抜群、ボリューム満点。
ビール好きの男性には特におすすめ。

休日の夫婦のデートに――
ファミリーでのランチに――
仕事終わりの一杯に――
板橋に住んだら、一人でも家族でも、ぜひ利用してみてほしいお店だ。

▲22種類のクラフトビールが楽しめる。

贅沢な時間を満喫できる喫茶店――
ビールとフードを堪能できるレストラン――

住宅街に溶け込むように「良質なお店」が点在する板橋。
休日も仕事帰りも、この街に住めばお店めぐりが楽しくなるのは間違いない。

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「みんなが会釈しあえる関係の街」へ

「TOKYO ALEWORKS」を後にして、今度は縁むすび通り(板橋駅前本通り商店街)を奥へ奥へと進んでいく。すると今度は「板橋宿(板橋宿不動通り商店街)」が見えてきた。

「板橋宿」は、縁むすび通りと同じ旧街道(旧中山道)で、宿場町として栄えた地域。
風格を感じる個人商店が並んでおり、「レトロな商店街」という言葉がぴったり。
そんな「板橋宿」を散策していると、雰囲気に溶け込むようなオシャレなお店が。

こちらの「おとなりstand&works」は、元牛乳屋さんをリノベーションしたカフェ兼コワーキングスペース。
2019年の3月にオープンしたお店で「昔からこの場所に住む人と新しく住む人をつなげる」という想いのもと作られたそう。
カフェ兼コワーキングスペースの営業のほか、地域の人と人をつなげるさまざまなイベントも企画しているとのこと。

▲木材を基調にしたぬくもりを感じる店内。かつての牛乳屋さんの冷蔵庫を活かしたという扉が印象的。

板橋とはどのような街なのだろうか?
この町で生まれ、この町で育ち、この町で働く店主の永瀬さんに、板橋について聞いてみた。

▲「おとなりstand&works」店主、永瀬賢三さん

(以下、インタビュー。「」内は永瀬さん)

――板橋でこのお店をオープンしようと思ったきっかけは何ですか?
「『この街が好きな人をもっと増やしたい』と考えたのがきっかけです。人と人がつながる場がなければ、街の文化とか魅力は衰退していくと思っています。長くこの街に住んでいる人と新しくこの街に住む人、その両者が緩やかに自然につながる場所を作ろうと思って、このお店をはじめました。」

――新しく住む人に伝えたい板橋の文化って、例えばどんなものでしょうか?
「例えば、毎月第三日曜日にやっている『朝市と餅つき(餅つきは夏場はお休み)』。都内を見渡しても、毎月のように餅つきをやっている地域は少ないですし、新しくこの街に住む人に伝えたいこの街の大切な文化です。餅つきは、年々人手が減ってきていて、それを知った方がお手伝いに来るのですが、今では商店街の皆さんの中にすっかり溶け込んでいます。そんな誰でも参加できる雰囲気があるのも、この街の魅力のひとつです。お店でも朝市と餅つきの日は6時から開店し、持込自由などのイベントをやったりしています。朝早いのですが、子供を連れて参加される方も多いですね。」

――誰でも参加できるっていうのがおもしろいですね。それは町の人柄というか気質みたいなものなのでしょうか?
「板橋はもともと宿場町で、多くの人がやってくる地域でした。それが理由かはわかりませんが、なんでも受け入れる気質があって、人情味のある方が多いんです。餅つきなどに参加して地域の方と接してもらって、そんな板橋の『人の優しさ』を知ってほしいという想いもありますね。そうすれば暮らしが楽しくなるし、もっと住みやすくなると思うので。」

――板橋区は子育ての制度が充実している区として有名です。行政からも優しさを感じる地域ですね。
「『赤ちゃんの駅※』など、そのほかにもさまざまな制度がありますね。赤ちゃんの駅の看板が生活導線上にあるだけで、利用の有無に関わらず『受け入れてくれる雰囲気」』があり安心感があります。そんな経験から店舗にもベビーベッドを作りました。現在休園中ですが、区が運営するこども動物園なども東板橋公園にありますし、少し離れますが夏には大きな花火大会もあります。区全体として見ても、子育て世代にとって住みやすい街だと思います。」

※赤ちゃんの駅
区内に173カ所あるおむつ替えや授乳のときに利用できる施設。子ども連れでも、安心してお出掛けができる。

▲子ども動物園のヤギ
▲荒川河川敷で開催される「いたばし花火大会」

――ありがとうございます。最後に今後板橋をどんな街にしていきたいか教えてください。
「みんなが挨拶したり、会釈しあえる距離感。そんな関係が多く眺められる街です(笑)この界隈は昔も今もそういう街なんですよ。特に昔は、みんながゆるくつながっていて、子どもが一人で出て行っても、お父さんもお母さんも『多分○○さんのお店で遊んでいるな』ってそこまで心配しなかった。今でもそういう関係は残っているので、そういう安心感のある人と人のつながりとか、この街に昔からある良い伝統・文化・風土を子どもの世代にもつなげていきたいですね。」

優しい伝統が紡ぐ「安心」の街

結局、一日板橋を歩き回って、街に着いたときの「安心感」が失われることは一度もなかった。
知れば知るほど安心感が強くなっていき、取材を終えるころには、すっかりこの街のことが好きになっている自分に気づいた。

街を包む安心感の正体。
言わずもがなだが、それは宿場町という歴史が紡いできた「優しく人情味にあふれた人」によって作られたものだ。永瀬さんのような方がいる限り、この街の良さが失われることはないだろう。

「板橋の人って外ではあんまり言わないけど、本当にこの街が好きなんですよね。みんなで話すと『あれもいいよね、これもいいよね』って話がどんどん膨らむんです。」

取材の最後に楽しそうにそう語った永瀬さん。
「まだまだ街の話を聞いていたい……」
そんな、後ろ髪を引かれるような気持ちを抱きながら、板橋を後にした。