【北山】モダンな街並みと自然が共存。心豊かに暮らし続けられる街。
目次
京都は北山――
「そこには日傘を差したマダムたち・外車の数々があり、一般人が足を踏み入れられない雰囲気が流れている」
私が『高級住宅街』と呼ばれる北山に対して抱いていた印象です。
しかしそんな北山、実は近年『住みたい街』としてその名をぐんぐん轟かせているのだとか。
「セレブの街だろう」と思い調べてみると、『自然がたくさんあること』『パン屋激戦区』などの暮らしの魅力がたくさん溢れ出てきました。しかも、私が5年前に偶然訪れて以来、再訪したいと思っていた『とある場所』があるではないですか。
「一言で『高級住宅街』と括るにはあまりにもったいのない、北山の新しい魅力を知ろう・伝えよう」
そう心に思いながら、五月晴れの下、電車で京都に向かいました。
【北山の基本情報】
駅名:京都市営地下鉄烏丸線北山駅
ランドマーク:京都植物園・陶板絵画の庭
■『町家』じゃない、『ハイセンスでモダン』な街並み。毎日訪ねたくなるパン屋さんも
関西人に知られた『モダンでおしゃれな街・北山』
新幹線の発着駅・京都駅からスッと伸びる『京都市営地下鉄・烏丸線』。
その電車に揺られること約15分、今回ご紹介する街・北山駅が現れます。
そんな北山駅の地下鉄の階段を上がるとまず出迎えてくれるのが、陽当たりの良い・広い道路です。
東西に伸びるこの道の名称は、『北山通』。
広い道路ですが交通量は多くなく、不思議と静かで上品。
道脇の整備された歩道からは、『安全』という言葉を感じます。
さらに並んだ街路樹のおかげで、あちこちに木陰が。
取材日はかなり気温が高く、汗が噴き出しそうだったのですが、木陰の下で涼やかな風に癒されました。
京都は『歴史を感じる町家』の印象が強いエリアですが、北山はそれらとは違う『モダン』な景色が広がる、少し特殊なエリアです。ブティックや雑貨屋・アトリエ・有名ケーキ店などが軒を連ねるおしゃれな街だと、関西人の間では広く知られています。
北山は、知る人ぞ知る『おいしいパン屋さん激戦区』
また、北山はパン屋さんの激戦区としても有名です。
『進々堂 北山店』・『ブリアン 北山本店』などなど、全国的にも有名なパン屋さんが軒を連ねているエリアなのです。北山に住めば、『名店の中からお気に入りを見つける』なんて贅沢もできるのかも。
取材時も北山通を一本中に入り散策していると、「トコハベーカリー」という可愛らしいパン屋さんに出会いました。
ショーケースに並ぶ焼きたてのパンたちはみんな艶やかで、具がぎゅっと詰まっておいしそうで、どれにしようか迷ってしまいます。
私が滞在した間にも、ご近所の方が次々と買いに来られていました。こんなに可愛くておいしそうなパン屋さんが近くにあったらきっと通ってしまうし、朝の食卓の時間が豊かになりそう。
クリニックが多い街? 駅周辺にはスーパーもドラッグストアも
北山を歩き始めて感じたのが、北山通沿いにはクリニックが多くあるということ。
近くに耳鼻科や歯科などがあると、住むうえで安心だし、とても便利。
さらに、学習塾もいくつか見かけました。
なお、駅周辺にはスーパーやドラッグストアもあるので、日用品の買い物に困ることはありません。
また隣駅の北大路駅には、衣料品から本・電化製品まで揃う「北大路ビブレ」も。ここでまとめてお買い物をすることもできます。
京都中心部の烏丸にも約10分で行けて、さらにバス停も多く点在するので、立地の観点からも、周辺施設の観点からも、北山は『暮らしやすい街』だと言えそうです。
ちなみに、北山周辺には大学や高校もあるため、平日の夕方以降は学生が行き交う街に様変わりするとのこと。
■北山は自然と暮らす場所? 『賀茂川』『京都府立植物園』で感じる四季
そんな北山通を西へ歩くと見えてくるのが、賀茂川です。
北山に流れるは、『鴨川』ではなく『賀茂川』
京都のシンボル「かもがわ」には、実は「鴨川」と「賀茂川」という2つの表記があります。
「かもがわ」は、出町柳駅付近にある賀茂大橋で2本の川が1本に合流する川なのですが、その合流点より上流を「賀茂川」、下流を「鴨川」と呼ぶことが多いのだそう。
このロジックからいくと、出町柳より上流(北)に位置する北山に流れているのは「賀茂川」となります。
賀茂川に到着すると、時間はちょうどお昼頃。
ベンチに座り、賀茂川の穏やかな流れを見つめながら観察していると
・ランニングやウォーキングをする方々
・子どもを自転車に乗せて走り抜けるお母さんたち
など、近所の方々の生活の一部になっている川だということが見えてきました。
私はここで、先ほどの「トコハベーカリー」で買ったオリーブのフォカッチャをいただきました。
賀茂川を眺めながら優しい心でご飯を食べられるのも、北山に住む喜びかもしれません。
『京都府立植物園』で、京都の四季を感じる贅沢を
賀茂川以外にも、北山には自然豊かなスポットがあります。
中でも外せないのが、北山駅の西側に広がる『京都府立植物園』です。
入り口は複数あり、後にご紹介する『陶板名画の庭』の隣(北山門)からも入園できます。
そんな京都府立植物園には、約1万2000種もの植物が植えられています。
約24ヘクタール・甲子園球場6個分もの広大な敷地は、憩いの場としても人気。
取材で訪ねたのは平日の午後でしたが、
・遠足にやって来た子どもたち
・ピクニック気分でくつろぐ親子
・珍しい花を見つけては楽しそうに語り合うおばあちゃんグループ
・ベンチで読書をする方
など、たくさんの方々が自然の中で各々の時間を満喫していました。
取材時(2019年5月)は色鮮やかなバラの風景が広がっていましたが、春は桜・秋は紅葉のライトアップイベントもあるそう。
「植物園が近くにあれば、四季を満喫できて良いなぁ」
そう、羨ましく思いました。
■心を磨く――安藤忠雄氏設計・世界初の『絵画庭園』へ
私が北山で訪問したかった場所――それは北山駅の出口を出てすぐにある『京都府立陶板名画の庭』。
実は5年前、上賀茂神社へ行った帰りに偶然辿り着いたことがあり、その美しさがずっと印象に残っていたのです。
陶板名画の庭は、名画を陶板(陶器の板)に転写して展示した、世界初の絵画庭園です。有名建築家・安藤忠雄氏の設計のもと、息を呑むほど美しい陶板画が8点展示されています。
展示されているのはモネの「睡蓮」やレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」など。
美術に詳しくない方も聞いたことがあるような、有名な絵画たちばかり。
中でも圧巻なのが、一番大きなサイズで配置されているミケランジェロの「最後の審判」です(上記写真)。
庭園絵画は地上1階・地下2階建てなので
①まずは地上1階から見下ろして
②次に地下2階でベンチに座って見上げて
と、さまざまな角度から鑑賞することをおすすめします。
受付で対応してくださった職員さん曰く、「撮影をされる際は絵画のみでなく、建築全体とともに写真を撮るのがおすすめですよ」とのこと。
安藤忠雄氏らしい、打ちっぱなしのコンクリート建築が入り組む空間。
その中でも一番美術が映える位置に、陶板が現れます。
建物内の壁には滝のような水が流れ落ちています。
ゴーッという豪快な水の音・美しい絵画・コンクリートの建築――
非日常の空間に身を置くだけえ、疲れたいつもの心が磨かれていくかのような感覚を覚えます。
なお、入園料は100円ととてもお手頃。
北山に住んでいたら、仕事に行き詰まったときや癒されたいときに足しげく通ってしまいそう。
また、親類や友人が遠方から遊びに来てくれたときに、「いいスポットがあるんだよ」と案内するのにもいいかもしれません。
■「落ち着いて暮らしたい方におすすめ。『自然がビル開発でなくなる』なんてこともない街」
北山には、地域の人々が集うカフェもあります。
例えば北山駅から10分ほど南下したところにあるカフェ「SAKURA CAFE」は、近隣の方がランチやお茶に来るだけでなく、スペース貸しも行っており、地域のピアノ教室の発表会やママ友のクリスマス会などにも利用されています。
そんな「SAKURA CAFE」のオーナー・吉田裕子さんに、北山のことを聞いてみました。
(以下、インタビュー。「」内は吉田さん)
――北山はどのような街ですか?
「イメージされている通り、高級住宅街なので静かで落ち着いています。うちのお店を利用してくれるお客様もマナーの良い方が多いです。高級食材を扱うスーパー、百貨店に卸しているお魚屋さんや八百屋さんもある一方で、普段使いしやすいお値段のスーパーもあるので、買い物の選択肢は広いです。また500メートル圏内くらいで生活必需品は揃うので、わざわざ京都駅や四条の方に出なくても、北山だけで生活が完結します。」
――お店を開店されてからこれまでの8年間で北山の街は変化しましたか?
「正直、変化はあまりないです。いくつかテナントが変わったお店はありますが、『自然が開発されてマンションやビルに変わる』なんてことはなく、暮らしやすい空気が変わらず流れています。」
――北山周辺で、吉田さんのおすすめスポットがあれば教えてください。
「2つの散歩コースが気に入っています。1つは、パワースポットとしても知られる『下鴨神社』。ここから南下して下鴨神社をぐるりと周り、賀茂川沿いを北上しながら帰ってくるコースです。もう1つは、北山駅の北東にある『宝ケ池公園』を歩くコース。どちらも往復1時間ほどで、自然豊かな道を散歩できます。また、近くにコンサートホールがあるので、ときどき音楽鑑賞に行けるところも気に入っています。」
――北山に住むのに向いているのは、どんな人だと思いますか?
「便利さを第一に求めていなくて、自然の中でのんびり暮らしたいという方ですかね。繁華街のような賑やかさはないけれど、日常の買い物には困らない。人通りもそれほど多くないので道も混んでないし、ゆったりと余暇を過ごせるスポットもあります。繁華街や商店街、百貨店は近くになくてもいいから落ち着いた場所で暮らしたいという方には、とても合う街だと思います。」
■特別なことをしなくても、日常を幸せに過ごせる街『北山』
実際に北山を歩いてみて、想像していた『いかにもマダム』のような方や外車は見かけなかった。
その代わりではないけど
お昼どきに洋食屋さんやおそば屋さんへ仲良く入っていく老夫婦
広い植物園をめいっぱい走り回って楽しむ子ども
その様子を見守るお母さん
北山通に面したパン屋さんで家族の分と思われるパンを買って家路に向かう方
などに出会った。
喧噪とは無縁、穏やかな時間が流れる。
「特別なことがなくたって、日常の中に幸せがある」
その生活の豊かさ知っている人にぴったりの街、それが北山なのかもしれない。
倉本祐美加
IT企業でインサイドセールスを行う傍らブログ記事や事例の執筆を行い、2016年11月ライターとして独立。大学時代は100人以上の友人のインタビュー記事を制作。現在は、企業様の導入事例・オウンドメディア等に掲載する記事をメインに取材・執筆している。
Twitter:https://twitter.com/aoitorisorae/ (@aoitorisorae)
ブログ:http://mott-izm.hatenablog.com/