学生時代、電車で大学へ通学するとき大変だったのが車内の混み具合。よほどのことがない限り、席に座ることができませんでした。運良く座れても、ついウトウトして乗り過ごしたり。最寄りが終点駅だったら乗り過ごしなんてないのにな、なんて考えたことがあります。

実際、始発・終点駅で暮らしてみたらどうなんだろう? 今回は、名古屋市営地下鉄の始発・終点駅がある高幡の街を歩いてみました。

【高畑駅の基本情報】

駅名:名古屋市営地下鉄東山線「高畑」駅
ランドマーク:中川区役所、荒子観音寺

■電車移動にストレスなし!

名古屋市中川区にある高畑駅は、市内で最も利用者の多い地下鉄東山線の始発・終点駅。乗車時は必ず座れるうえ、ラッシュ時には約2分間隔で電車が折り返し運転をします。名古屋駅までは12分、繁華街の栄までは17分。両駅ともに乗り換えなしです。終電は名古屋駅からの便が00:07と非常に遅いのも便利。

構内は南北に長く、ATMや駅ナカのコンビニも設置されており何かと重宝します。

地上へはエレベーターでも出られ、大きな交差点の四角に出入口が設けられています。バスターミナルはなく、歩道沿いにタクシーやバスの停留所が並びます。

駅から徒歩10分圏内にあおなみ線(名古屋臨海高速鉄道)の荒子駅JR関西本線の八田駅近鉄名古屋線の近鉄八田駅があり、地下鉄以外の路線を使いたい人にもこの辺りは便利な立地。あおなみ線は名古屋駅までたったの6分で到着するため、急ぎの人は高畑駅ではなく荒子駅まで行くことも多いとか。

電車が充実している高畑の街ですが、終点駅なので駅から離れた暮らしには車が欠かせません。自転車利用者も多く、大通り沿いは駐輪場がずらり。

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■ 若さと歴史が交わる穏やかな街並み

駅周りは平坦な地形で不動産屋が密集し、住宅は比較的新しいマンションが多め。道ですれ違う人は若い方が多い印象です。

地下鉄の出入口付近はコンビニや銀行、学習塾が複数並びます。5番出入口には複合アミューズメント施設「中川コロナワールド」行きの無料送迎バスが発着していたり、高畑駅のある中川区は「名古屋港水族館」「レゴランド・ジャパン」などのある港区と近かったりと、遊び場へアクセスしやすいのも魅力的。ここではお出かけの選択肢がたくさんありそう。

駅の東側へ2分ほど歩けば「中川区役所」「中川保健センター」、消防署、郵便局など区内の行政・公共施設の集積地。区役所の前には「中川区休日急病診療所 西部平日夜間急病センター」があり、向かいの通りにはクラシカルな外装の「名古屋西病院」が。

入院施設も備わった比較的大きな病院です。

近くには日用品も売る「スギ薬局 高畑店」やカウンセリング処方をする「漢方の草貫堂薬局」があり、暮らしの医療面は安心できそう。

また、面白いことにここ一帯は「洋菓子フィレンツェ 高畑店」を筆頭に、チョコレート専門店「チョコレートカフェ クオレ」ジェラート専門店「ジェラテリア・ピノキオ」、グルテンフリーにこだわる「やさしいスイーツカフェ コルポ」など洋菓子系の店が集結しています。

▲カンパーニュミニ(220円)

美味しそうな看板に惹かれ、ベーカリー「ヴィンチ・パンドーロ」へ。この日は毎週火曜日のイベントデーで、店内はフランスの田舎パン・カンパーニュづくしでした。

コッペパンサンドも取り扱っているそうですが、この日はすでに売り切れ。どうやらかなり人気のパン屋さんみたい。

店が集まるこの通りはオシャレで若々しい雰囲気。散歩がてらにお気に入りスイーツやパンの開拓が日課になりそうです。

その反対側には荒子駅と隣接した「ザ・ビッグエクスプレス荒子店」。食品が安く手に入ります。店舗前のロータリーには織田信長に仕えた加賀藩主・前田利家の石像が。実は中川区、前田利家の生誕地なんだそう。まちなかには歴史散策ルートもあるんです。

スーパーを過ぎると「中川文化小劇場」が併設した「中川図書館」。図書館は2階建てで自習席も備わっています。

周辺はのどかな住宅街。街路樹や住民の家庭菜園場など緑が多く、なかでも一際目を奪われるのが「荒子公園」です。

生茂る樹木の中に野球場や遊具があり、人々の憩いの場となっています。園内には約300本以上の梅が育つ「荒子梅苑」があり、3月の梅まつりには見事な花が咲き誇るのだとか。

公園の隣には前田利家が再建し、徳川家康が名古屋城築城の際に各鬼門の鎮護として定めた“尾張四観音”のひとつ「荒子観音寺」があります。お祭りや除夜の鐘付き、初詣のスポットです。毎月第1日曜日にはマルシェもやっているそう。

付近で見つけた創業90年の老舗和菓子屋「御菓子司 もち観」。地元の方が何人も出入りされており、私も気になって入店。

名物の草餅(143円)、そして上用饅頭(154円)を荒子公園で日向ぼっこしながらパクリ。高畑駅の東側は公園や寺を中心に緑に恵まれ、ゆとりのある時間が流れていました。

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■チェーン店から個人店までごはん処が充実

この街は終電が遅いからか、夜遅くまで営業している店が複数あります。近年は「cafe 3tempo」のようにインスタで話題のオシャレなカフェや洋食店もオープンし、街の飲食店の雰囲気が新しくなりつつあるようです。

そんな中で昔から根強い人気を誇るのがラーメン屋。中川区はラーメン激戦区ともいわれています。

長く地元の人に愛されているのが、1987年創業の中華レストラン「ラーメンかいすい 本店」。家族連れやグループ客が多く訪れます。

ランチは「茶房那古屋(さぼうなごや)」へ。

駅から徒歩1分の場所にあるセルフサービスの喫茶店。

入店したらまずカウンターで注文・会計を済ませます。「2枚パンサンド ドリンク付き(690円)」を頼んだら、受け取り時に「ゆっくりしていってね」とお店の人から声をかけられ、心が温かくなりました。

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■大通りからそれると静かな住宅街

駅西側は家電量販店「エディオン高畑店」やレンタル店「ゲオ名古屋高畑店」「カラオケまねきねこ 名古屋中川店」など様々な店が並んでいます。暮らしに必要な店は大抵揃っている感じ。

そんな大通りを縦断するのが「荒子川」です。

川沿いの道は静かで、気持ちよさそうに犬の散歩やランニングをする人をよく見かけます。

しばらく進むと「高畑公園」。遊具と野球場があり、この日は少年野球チームが練習中。

公園の先には衣料品店や100円均一ショップ、フードコートが入った地域密着型のスーパーマーケット「フィール アイアイプラザ」がありました。

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■「近所の子どもが大人になっても来てくれるのが嬉しいですね」

最後に、この街で暮らす人へインタビュー。高畑駅から南へ徒歩15分の場所で、20年以上和菓子屋「舞雀(まいすずめ)」を営む大塚裕二(おおつか ゆうじ)さんです。
(以下インタビュー。「 」内は大塚さんのコメントです)

▲右手の生花に見えるのは大塚さん作の工芸菓子!

▲インスタグラマーに取り上げられ話題になったことも

——街のくらしはどうですか?
「生活に必要な店は揃っており、外食したいときは食べ物屋さんがいっぱいあるので不便を感じたことはないですね」

▲季節や行事の和菓子にこだわる。キャッシュレス決済対応済み

——街の印象はどうですか?
「昨今、若い方が増えている気がします。引っ越してくる方には“土地に馴染めるか”という不安があると思うのですけど、この街の人たちは他所から来た人を快く受け入れるおおらかさがあり、ご近所付き合いが盛んです。仕事をリタイヤされた方が街の見守りを積極的に行われていたりと人情味がある良い地域子育てにも向いていると思いますよ」

▲ものづくりマイスターの資格を持ち、近隣の小学校などでワークショップも行う

——お仕事で心がけていることは?
「聞かれたことにはすべて答えられる知識を備え、どんなお客さまも気持ちよく笑顔で帰ってもらえるよう、 “心の接客” を意識しています。100%やるのは難しいことですが、できる限りのことを日々丁寧に行っています」

▲皮と餡にこだわり、餡子が苦手な人も食べられる雀もなか

■マイペースで暮らせるのどかな都会

大通り沿いに様々な店があり、一本道を入ればのどかな雰囲気が漂う高畑のまち。始発・終点駅の便利さと飲食店や遊び場など選択肢の豊富さが魅力でストレスのない生活が送れそう。住民の人柄も穏やかで、初めて都会に引越すことで不安という方も、間違いなく馴染みやすい場所だと感じました。

オギノシエ

愛知県在住。SIPPO-HAPPO株式会社所属デザイナー。副業で執筆とイラストレーター、漫画制作をやっています。趣味は街歩き。