「板橋区の田園調布」。そう呼ばれている街をご存知でしょうか?

その街は、板橋区の南部ほぼ中央に位置する「ときわ台」。
長く東京で暮らす私にとって、板橋は親しみやすい庶民的なイメージがある街。高級住宅街である田園調布とはなかなか結びつかず、正直頭にハテナマークが浮かんでしまいました。

「ときわ台」とはどのような街なのか、暮らしの魅力を探るために、街を散策してみました。

【ときわ台の基本情報】

駅名:東武東上線「ときわ台」
ランドマーク:ときわ台駅舎

池袋を拠点に都心へ約30分で到着。

ときわ台駅には東武東上線が走り、池袋駅まで乗り換えせずに約11分で到着。池袋で乗り換えれば、新宿・渋谷・東京など都心にもおよそ30分でアクセスできます。

改札を出ると最初に目に入るのが、青い三角屋根と大谷石の壁が特徴のレトロな駅舎。2018年にリニューアルされたこの駅舎は、1935年の開業当時の姿が再現されています。駅舎を眺めていると、まるで昭和にタイムスリップしたような気分に。

ときわ台は、駅の北口と南口で全く異なる表情を見せる街。
まずは、住宅街が広がる北口から散策してみます。ちなみに北口の住宅街は、ときわ台が「板橋区の田園調布」と呼ばれるきっかけになった場所。

暮らしに便利がコンパクトにまとまる「北口」

北口を出て最初に見えてくるのが、ロータリーと美しい花壇に彩られた噴水広場。おしゃれな時計台も置かれ、ほのかに西洋の雰囲気が感じられます。

▲駅前ロータリーから乗車できる国際興業バス

ロータリーのバス乗り場からは、東京北部・埼玉南部を運行する国際興業バスが発車。王子駅や赤羽駅方面への移動にも活用できそうです。

また、周辺には、スーパーの「オオゼキ」があります。北口から徒歩2分ほどのところにあるので、仕事帰りのお買い物に重宝しそう。
その他、北口周辺には飲食店・クリニックなどがチラホラ。暮らしに便利な要素がコンパクトにまとまっているという印象を受けました。

住宅街に広がる癒やしのグリーンスポット

駅前を通り過ぎ住宅地に足を踏み入れると、あたりは閑静な雰囲気で包まれます。
住宅街に立ち並ぶのは、西洋屋根の一軒家や歴史を感じる日本家屋などの高級住宅の数々。住宅街の周りには、街路樹が植えられたプロムナードが続きます。
なるほど、田園調布に例えられるのも納得です。

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住宅街を少し奥に進むと、緑に囲まれた「常盤台公園」にたどり着きました。公園内は大きな木々が立ち並び、心地よい日陰をつくってくれています。

園内の広場には、キリンと車のかわいいスプリング遊具やブランコが。たくさんの子どもたちが遊具で無邪気に遊んでおり、なんとも和やかな空気に包まれています。

公園の隣には「板橋区立中央図書館」があります。子どもと訪れるのも良いですし、「プラリと図書館で本を借り、園内で読書」など、一人の時間を楽しむのも良さそうです。

「ちょっと贅沢したい」そんな思いを叶える北口のお店

ときわ台駅の北口には、地元の人々が通う人気のパティスリーがあります。
「‎Patisserie LA NOBOUTIQUE(パティスリー・ラ・ノブティック)」は、30年以上お菓子づくりに携わってきたパティシエ、日髙宣博さんが2010年にオープンしたお店。

店内には、季節感と素材にこだわったケーキや焼き菓子が並んでいます。
地元のお客さんが多く、子どもの誕生日にデコレーションケーキを買いにきたお母さんや、贈り物用の焼き菓子を選ぶご婦人の姿が見られました。

このお店で一番人気のケーキは「ヴィエノワ」 (500円・税別)。ヘーゼルナッツのスポンジとくるみのリキュールで味付けしたクリームの層に、チョコレートソースで周りをコーティングした日髙さんオリジナルの逸品。

また、お店から徒歩1分のところには、パティスリー・ラ・ノブティックの系列店が。
こちらは、フレンチが手軽に楽しめる「Bistro LA NOBOUTIQUE β(ビストロ・ラ・ノブティック・ビー)」。パティスリーと同じく、ビストロも地域の方々に愛されている名店。

「ちょっと贅沢したい」そんな気持ちにぴたっとハマる、シックなお店があるのもときわ台の魅力のひとつです。

ノスタルジーを感じる商店街が彩る「南口エリア」

北口を後にして、次は南口に向かってみることに。
駅の南側に向かう踏切を越えると、街の雰囲気がガラリと変わりました。南口には、小さな商店がひしめく古き良き街並みが広がります。

南口のメイン通りは、川越街道まで続く「常盤台銀座商店街」。100円ショップの「ダイソー」が併設されたスーパー「よしや」の他、ドラッグストアなどさまざまなお店が並び、日々のお買い物に便利。この商店街は、ときわ台に暮らす方々の生活を支える大切なスポットです。

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また、親しみやすい個人店に出会えるのも魅力的。

商店街の一角にお店を構えるベーカリー「Bon Neije(ボンネージュ)」は、シンプルな食パンやどこか懐かしい惣菜パンが並ぶ地域の人気店です。
その他、八百屋さん・魚屋さん・電気屋さんなど、地元で長く続く個人店の姿もチラホラ。昔ながらのお店がしっかり根付いており、温かい雰囲気が印象的な商店街でした。

いい意味で流行に敏感でない街。マイペースが生む安心感

昭和の面影を残す南口周辺。そんなこの地域のシンボルが「天祖神社」。
古くからこの地にある天祖神社は、一説によると室町時代に建立されたそう。そんな歴史ある神社に生まれ、現在は名誉宮司を務める小林保男さんに、この街の魅力を尋ねてみました。

(※以下、「」内は小林さんのセリフです)

――小林さんは、どのくらい前からこの街に住んでいらっしゃるのでしょうか?
「私は天祖神社の長男として生まれたので、戦時中の疎開を除けば、生まれて80年ずっとときわ台に住んでいます。神社の宮司をしながら、45年間板橋区の教育委員会で板橋の文化を研究していました」

――ときわ台はどんな街なのでしょうか?
「街を歩いてみるとすぐ気付かれると思いますが、ときわ台は駅の北口と南口で全く雰囲気が変わります。南口は古くからの商店を中心とした商業地ですが、北口は東武東上線が通ってから高級住宅地として発展を遂げてきました。実はときわ台の北口は、東京帝国大学(現・東京大学工学部)の小宮賢一さんという方が描いた『理想の街』を実現させた姿なんです。駅前の大きなロータリーやループ状に伸びるプロムナード、袋小路のクルドサック(※)などは、この街でしか見られない景観だと思います」

※クルドサック
フランス語で袋小路の意味。住宅地における袋小路状の道路形式

――昔と今、ときわ台はどのように変化していますか?
「『一戸建ての家が少し減った』など、街の変化はありますが、このあたりに古くから伝わる伝統文化はしっかり受け継がれていると思います。例えばこの神社では、今でも地元の子どもたちに150年近く前から伝わる祭囃子を教えています。また、この場所から新しい文化も生まれています。例えば、近隣に住む人々の『街を盛り上げたい』という声をきっかけに生まれた、『ときわ台つ・つ・つGARDEN』というワークショップイベント。7年前ほど前から神社のスペースを提供して開催しています。若い学生さんや家族づれの方々も多く足を運んでくれて、毎年大盛況です」

――最後に、ときわ台の魅力を教えてください。
「いい意味で流行に敏感でない街だから、無理に流行りについていかなくても気にならない。だから安心して住める街だと思いますね。あと日用品の価格や部屋の家賃なども含めて、非常に物価が安いっていうのも魅力です。少し前に『シン・ゴジラ』って映画で、ゴジラに東京の街が襲われたとき、新宿あたりまではやって来るんだけど、なぜか板橋には来ない(笑)。周りが騒いでいてもマイペースというか、なんだかこの街を象徴しているようなシーンだなって思いましたね」

2つの顔を見せてくれる不思議な魅力を秘めた街

高級住宅が立ち並ぶ閑静な北口の住宅街は、まるで海外を訪れたような雰囲気。上品でありながら、気取りすぎないのどかな空気を感じられます。

一方で、南口の商店街には地元民が通う商店が息づき、その中心には時代の変化と共にこの街の暮らしを見守る神社がありました。

ときわ台は2つの顔を見せてくれる不思議な魅力を秘めた街。東武東上線沿いや板橋区への引っ越しを考えている方は、歴史と文化が根付き、緑豊かなこの街に、一度訪れてみてはいかがでしょうか?

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秋山ももこ

編集プロダクションに勤務したのち、フリーの編集・ライターとして独立。夢は世界中を旅しながら取材すること。読書とカメラが趣味で、餃子とビールと下町が好き。
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