私が現在住んでいるところは、埼玉と東京の境目にある“ギリギリ埼玉”という立地です。なぜ埼玉にしたかというと、単純に都内より家賃が安いから。

けれど、地方出身の身としてはやっぱり「東京都在住」というブランドへの憧れを、完全に捨て切れたわけではありません。「住みたいけれど、家賃が高い」そんなモヤモヤした気持ちを抱いている方は、きっと私だけじゃないはず。

それならば、 “ギリギリ東京” はどうだろう。家探しのとき、そんな選択肢が自然と見えてきます。

今回訪ねた「成増」は、まさにそんな立地にある街。私と同じく目をつけている人が多いためか、最近は新築の大型マンションが増えているのだとか。そんなじわじわと人気が出始めている、この街の魅力を探ってみることにしました。

【成増の基本情報】

駅名:東武東上線「成増」、東京メトロ有楽町線・東京メトロ副都心線「地下鉄成増」
ランドマーク:なりますスキップ村

■24時間営業のスーパーが住人の生活を助ける駅周辺

東京と埼玉西部の境目にある板橋区「成増」。東部東上線と東京メトロ有楽町線・副都心線の3線が通っており、池袋や新宿、渋谷などの主要都市に30分以内でアクセスできます。

駅に降り立つと、24時間営業の「西友成増店」や23時まで営業の「マルエツ 成増南口店」、「成城石井 エキア成増店」など、複数のスーパーがあり、大体の食料品や日用品は駅周辺で購入できそうです。

また、駅から徒歩2分ほどの場所にある「アリエスビル」には、図書館・保育園・郵便局・ドラッグストア・飲食店などが集結しており、バラバラな用事もいっぺんに済ませられます。

生活に役立つ施設が多いのはもちろん、飲み屋などもちらほら見かける駅周辺。
治安が気になるところですが、駅の目の前には交番があるので、生活するうえでの安心感は保てそうですね。

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■思わず“スキップ”したくなる?暮らしになじむ商店街や飲食店

成増駅の周辺には、南口側に4つ、北口側に1つと、全部で5つの商店街があります。
その中で今回歩いてみたのは「なりますスキップ村」というユニークな名前の商店街。シンボルキャラクターの癒やし顔のウサギが印象的です。

この商店街にはみんな大好きモスバーガーの1号店があり、そのほかにもガストや日高屋、リンガーハットなど、お財布に優しいチェーン店が幅広くそろっています。

商店街を歩いていると、「肉の鈴木屋」という看板を発見。ここは、生肉はもちろんコロッケなどのお惣菜が充実している地元のお肉屋さんです。

「ちょっと夕飯のおかずを買い足そうかな」というときにも、肉屋ならではの美味しいお惣菜が食卓を潤してくれますね。
特にとんかつ、唐揚げは絶品なんだそう。閉店前の割引タイムも狙い目です。

そして商店街から少しだけ離れ、「せっかくなら成増グルメを楽しみたい」と思い、「中華めん処 道頓堀」へ行ってみることに。
ここは、昭和59年から30年以上も地元で愛されている中華そば屋さん。開店時間の少し前にも関わらず、すでにぽつぽつと列ができ始めていました。

昔ながらの食券を渡して、待つこと数分。出てきたのが、名物の「中華そば」(750円)です。“何度でも食べたくなる飽きのこない味”を求め続けているという「中華めん処 道頓堀」
出汁の香りがふわりと広がり、どこか懐かしくほっとする味は、まさにその信念を体現していました。店員さんの、優しい笑顔も忘れられません。

お店を出たあとは、駅から10分ほど歩いた白子川沿いにある「富士食品」へ向かいました。ここは、なんと工場直売の激安パン屋さんです。

お店に入ると、70円、80円と、100円以下の激安パンが勢ぞろい。
「朝食はパン派」なんて人は大喜びですね。しかも祝日以外、お昼から夜まで営業しているのも魅力的。こんなお店が近くにあったら毎日通ってしまいそうです。

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■スポーツや野鳥観察が楽しめる「光が丘公園」

次は、さらに足を伸ばして緑を求めに行きました。目指すのは、駅から歩いて15分ほどの場所にある「光が丘公園」

園内には、“豊かな自然とスポーツの公園”をテーマに、スポーツ施設のほか、子ども用の遊具がある広場や、樹齢100年を超す40本のいちょう並木などがあります。災害時には広域避難所としての役割も果たしているそうです。

この日は平日だったため閉まっていたものの、土日祝日には、野鳥をはじめ様々な生き物が観察できる「光が丘公園バードサンクチュアリ」があり、休日に親子で出かけるのにも最適なスポットです。入園無料なのも嬉しいですね。

■古くからの“仲間”と手を取り合って伝統を守り続ける

新しいお店がたくさんあって便利な成増。その一方で、街には歴史がしっかりと残っています。東京メトロ成増駅から歩いてすぐ、川越街道沿いにたたずむのは、江戸時代の安政3年から続く「御菓子司 田中屋本店」。160年以上も成増と共に歩んできた老舗の、7代目となる和菓子職人・田中宏信さんにお話を伺いました。

(以下インタビュー。「 」内は田中さん)

――ご自身が生まれ育った成増は、田中さんにとってどんな街ですか?
「地方にも住んだ経験から思うことは、成増に住んでいると、『ここは東京のはしっこだけど、やっぱり東京なんだ』というプライドのようなものが芽生えてきますね(笑)。副都心線ができてからは、渋谷や新宿、横浜まで行きやすくなったので、交通の面でも便利に感じています」

▲田中さんが見せてくれた、昭和時代の成増駅の写真

――今と昔、街の様子は変わりましたか?
「昔と比べると、やはり昔ながらの個人商店が少なくなっている印象です。その分、残っている人たちが手を取り合って、伝統を受け継ぎながら盛り上げようと努力しています。うちのように古くから続く個人商店は、ライバルというよりも、“仲間”という感覚なんです。私は商店街の理事を務めているのですが、街を盛り上げる多くの催しを企画しています。例えば5月に商店街のお誕生日イベント、1月はお正月、7月の終わりには子ども向けの夜店大会、8月は阿波おどり、年末には歳末の福引など。特に阿波おどりは30年以上も続く恒例行事なので、賑わっていますね」

――お店に来られるお客さんは、どのような方が多いですか?
「お客さまは40~60代の方が大半で、たまに学生さんがひとりでいらっしゃることもあります。うちの和菓子は1個からでも買えるので、日ごろのおやつを買うために近所の方がいらっしゃるみたいですね。お客さまには、季節感のあるものだったり、個店同士で協力して開発したお菓子だったりと、個人商店だからこそできる商品を提供しています」

――いち住人としては成増にどんな印象を持っていますか?
「今までは高齢の方が多かった印象ですが、最近は大きなマンションが増えてきて、小学生くらいのお子さんがいるファミリー層が増えたような気がします。子育てといえば、私も子どもが小さなときには『光が丘公園』に連れて行って遊んでいましたね。夏には、高い建物からなら板橋の花火大会も綺麗に見られるのでオススメですよ」

■古いもの、新しいものが一緒に生きていく街

埼玉に住んでから、たびたび訪れていた成増。それでも、「駅前が充実していて便利な街だなぁ」といったことしか感じていませんでした。しかし改めて街をじっくり散策してわかったのは、しっかりと伝統も息づいているということ。

路地を歩いていると、近所の人同士が玄関先で立ち話をしている姿がちらほら。そんな風景を眺めながら「東京の下町っぽさが出ているなあ」とひとり温かい気分になりました。

住人に高齢の方が多いのも、この街を気に入って長く住んでいるということの裏付けなのかも。都心にアクセスしやすくて、駅前が便利で、人情と伝統がある。これだけで、この街をもっと深く知ってみる価値があるのではないでしょうか?

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稲垣恵美(いながき えみ)

北海道で出版社に勤務したあと上京。まずは錦糸町というなかなかディープな街に住み、現在は埼玉県に居住。好きな街は、下町の人情があるところと、憩いの場所があるところ。素敵な街をみなさんに共有したいお散歩ライター。
Twitter:https://twitter.com/emily83601992