【青葉台】COLUMN 「寺家ふるさと村」で見つける、食とアートと田園風景

目次
  1. 奇跡的に残った都会の中の田園風景
  2. 流れる時間、流されない時間を大切にしたアート空間
  3. 「田園都市線に住む人は感度が高いと思う」
記事カテゴリ 神奈川 首都圏
2019.06.07

東急田園都市線青葉台駅近隣に残った、昭和中期を思わせるのどかな田園風景。アーティストやものづくりの担い手を引きつけるこのエリアに、カフェを併設したギャラリーがあります。青葉台の人と風土が育んだ、地元密着型のアートシーンをご紹介します。


東急田園都市線の青葉台は、急行で渋谷まで約25分というアクセスの良さに加え、7棟からなる商業施設「青葉台東急スクエア」が駅を取り囲むように建っていて、買い物にも便利な街です。洒落たショップやカフェも多く、たまプラーザや二子玉川ほどの派手さはないものの、駅周辺には洗練された雰囲気が漂っています。

とはいっても決して気取った街というわけではありません。駅から南北に延びる商店街には、個人商店や安売りスーパーが軒を連ねており、ちびっ子が遊べる遊具を備えた公園もあります。ひとことでいうなら、都会すぎず田舎すぎず、ちょうど良いバランスがとれているところが、この街の魅力といっていいでしょう。

奇跡的に残った都会の中の田園風景

青葉台には自慢できるものが、もうひとつあります。それは自然の豊かさ。じつは、青葉台の住宅街を抜けた先には、まるで昭和中期の田舎町にタイムスリップしたかのような懐かしい農村風景が広がっているのです。駅前から路線バスで10分ほどの場所にある「寺家ふるさと村」(青葉区寺家町)がそれ。見渡す限りの田園風景のなかに里山、谷戸、農業用ため池、水車小屋などが点在する景色を初めて見た人は、「ここはホントに横浜市内?」と目を疑うはず。

寺家町が開発されずに昔のままの姿を留めているのには理由があります。ここは緑地保全と農業による地域活性化を目的とした横浜市の“ふるさと村事業”の第一号に1987年に指定されたエリア。地主さんの協力のもと、農地の住宅地への転用が規制されたことで、貴重な自然景観が守られることになったようです。

その後2000年代に入ると、のどかな環境に魅力を感じたアーティストや工芸家たちが工房やアトリエを構えるようになり、現在は絵画・陶芸・彫刻・版画・ガラスなどの工房が15軒近く点在する、ものづくりの村ともなっています。

流れる時間、流されない時間を大切にしたアート空間

「寺家スタジオ」のすぐ近くには、インテリアの中に作家の作品を取り入れることをコンセプトとした別館、「ジケハウス」も。

寺家エリアにはカフェやレストランも点在していますが、なかでも寺家の魅力の発信拠点ともなっているのが、カフェを併設したギャラリー「寺家スタジオ」。企画運営を担当している坂上浩美さんが、寺家ふるさと村にギャラリーをオープンしたきっかけを教えてくれました。

「寺家ふるさと村には農業を生業とする方が多く住んでいます。農家さんはみな、日が昇ると夫婦揃って畑に出かけ、日が暮れると家に戻り、薪でお風呂を沸かして8時ごろには床に就くような生活を送っています。そんな営みを間近にして、『ここには都心とは別の時間が流れている』と感じたんです」

そうした中で、世の中に流されず自分の時間軸でものづくりを行なっている人の作品を紹介したいと考えるようになり、“流れる時間、流されない時間を大切に”というコンセプトの展示を行うようになったと言います。

確かに、寺家の田園風景の中に身をおくと、時間がゆっくり流れていくように感じます。同時に五感がどんどん研ぎ澄まされていくような不思議な感覚を覚えます。

「自然の中で見るアートは格別なんですよ。自然が、日常から非日常の空間へと私たちをいざなう“エントランス”の役目を果たしてくれていると感じています。自然の中を歩きながら、野鳥のさえずりを聞き、道端に咲く花を愛でているうちに、おのずと五感が研ぎ澄まされていく。そうしてアートに触れると、普段とは違った視点で作品を楽しめるようになるんです」

五感で寺家の自然やアートを楽しんでもらいたいという坂上さんの思いは、カフェの料理にも表れていて、ランチにはスタッフたちが近くの畑で育てた無農薬野菜をできるだけ使うようにしているそうです。旬の野菜たっぷりのランチを、自然を眺めながらいただいていると、まるでどこか遠くに旅したかのような気分になってきます。

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「田園都市線に住む人は感度が高いと思う」

取材時は、墨一色で具象・抽象作品を描く林青那さんの企画展が開催されていた。

センスのいい展示と美味しいランチが口コミで評判となり、「寺家スタジオ」はいつも多くの人たちで賑わっているようですが、これには田園都市線沿線というロケーションも関係していると、坂上さんは言います。

「青葉台を含め、田園都市線沿線に住んでいる人たちは、文化意識や芸術に対する感度がすごく高いんです。ライフスタイルにもこだわりをもっていて、暮らしの中にアートを取り入れようという気持ちも強い。そういう人たちが応援してくれるからこそ、不便な立地にありながらも、ここはギャラリーとして成立できているんですよ」

最後に坂上さんにお気に入りの場所を尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。

「春だったら、むじな池の近くの田んぼの一角にあるショウブの群生地がおすすめです。弁天様が祀られた居谷戸池のあたりも深山幽谷の雰囲気があって素敵ですね。それから、これはあまり教えたくないのですが、じつは寺家にはホタルも自生しているんです。ホタル観賞に訪れる際は、自然保護のためマイカーではなく公共交通機関の利用をお願いします!」

住まいを選ぶ際には、どうしても通勤や買い物の利便性にばかり注目しがちですが、近隣に心が癒やされる場所があるかどうかも重要です。そうした住みやすさ、暮らしやすさを感じる青葉台。「うちの近くにはホタルが住んでいるから、見においでよ」――都心から30分以内の場所で、そんな自慢話ができる街にはそうそう出合えないはずです。

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■施設データ
寺家スタジオ
所在地:神奈川県横浜市青葉区寺家町435-1(別館ジケハウスは寺家町404)
アクセス:青葉台駅北口より寺家町循環バスで約10分の寺家町下車、徒歩約3分
または鴨志田団地行きバスで約10分の終点下車、徒歩約15分
問合せ:045-350-3804
営業時間:ギャラリー11時〜18時、カフェ[ランチ]11時〜14時、[カフェ]14時〜17時30分(LO)
休業日:火曜日

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