
【代々木上原】渋谷区のオアシス。高級住宅街で育まれている「洗練されたミックスカルチャー」の魅力
目次
ライターとして、日頃から色々な場所に取材に行っている私。数年前、京王線の笹塚駅で一件取材を終えた後、次の現場である渋谷駅まで歩いてみることにしました。
たっぷり時間があったので得意の“地図なし散歩”を決行。勘を頼りに渋谷を目指していくと、その途中でとあるエリアに迷い込みました。
大豪邸がいくつもあり、アップダウンの激しい地形に、お城のような謎の建物…… 後に、そこが「代々木上原」という駅の周辺であることを知ったのです。
今回はそんな代々木上原を改めて歩いてきました。
【代々木上原の基本情報】
駅名:小田急 小田原線 代々木上原
乗換えできる路線:東京メトロ 千代田線
ランドマーク:東京ジャーミイ
■新宿駅・渋谷駅に簡単アクセス!東京を存分に楽しめる欲張りな街
代々木上原駅があるのは渋谷区の西部。駅には小田急小田原線と東京メトロ千代田線の2線が乗り入れていて、新宿までは小田急線で約6分、渋谷までは東京メトロで約11分と、アクセスがとても便利です。また、千代田線の始発駅なので座りやすく、通勤はとてもラクラク。

実は私の知り合いのデザイナーが代々木上原に住んでいるのですが、彼女は「青山の事務所まで毎日自転車で通っている」と話していました。そう、自転車さえあれば、東は代々木公園、西は下北沢と、東京の人気スポットを欲張りに楽しめる場所なのです。

駅の周りには商店街がいくつかあり、「丸正」や「マルエツ」といったスーパーもあるので日常生活に必要な買い物は困りません。また、駅ビル「アコルデ代々木上原」にもバラエティ豊かな店舗が揃っています。



■著名人や政治家も居住。都内有数の高級住宅地は昔牧場だった?
この街は、その昔「代々木村」に属していました。なかでも高台になっている場所は「上の原」と呼ばれ、かつては草原や牧場が広がっていたのだそう。


草原はやがて明治期に「大山園」という和風庭園になり、その後、紀州徳川家の徳川頼倫が土地を所有してからは「徳川山」と呼ばれるようになります。そして、昭和初期には「徳川山分譲地」として分譲され、東京都内でも有数の高級住宅街へと姿を変えていきました。
庭園があった名残なのか、住宅街でありながら緑が多いのも代々木上原の特徴。整然とした街並みと自然が調和しています。



■異文化の雰囲気、そびえ立つ東京最古のモスク「東京ジャーミイ」
代々木上原を象徴するランドマークといえば、東京最古のモスク「東京ジャーミイ」です。小田急線や千代田線からもよく見えるので、「あの建物一体なんだろう」と気になっている人も少なくないでしょう。

オスマン様式のモスクで、2階にはドーム状の大きな礼拝堂があります。最大2000人を収容できる礼拝堂は”東アジアで最も美しいモスク”と称されるほどの美しさ。

また、代々木上原にはベトナム大使館やコートジボワール大使館もあり、街を歩いていると外国の人もちらほら。高級住宅地の洗練された街並みに異国のムードがミックスされ、独特の雰囲気を醸し出しています。
■センスの良い隠れ家的なお店が多数
代々木上原には飲食店やアパレルのセレクトショップ、美容室、ネイルサロンなど、魅力溢れるハイセンスなお店が点在しています。





■「カルチャーが成長している」代々木上原の魅力
駅から井の頭通りを渡ったところに、とある一軒のお店があります。夜でも店先にはたくさんのグリーンが置かれ、夜間も営業しているお花屋さんかと思いきや、看板には料理のメニューが……。
こちらは「終日one(シュウジツワン)」というクラフトビールや自然派ワインを提供するビアバー。店内は「終日喫茶」というカフェ、「終日フラワー」という花屋が入っていて、一風変わったコンセプトが話題を呼んでいます。

今回はこの店の店長として日々店のカウンターに立ち、この街を見つめる吉川直宏さんにお話をうかがいました。
(※以下、「」内は吉川さんのセリフです)

――変わったコンセプトのお店ですが、なぜ代々木上原で出店しようと思ったのでしょうか?
「うちのオーナーがお店を出すなら絶対に代々木上原と決めていたみたいです。花もビールもコーヒーも全部オーナーが好きなもの。フードメニューも魯肉飯があったりかすうどんがあったり、ジャンルも多種多様ですけど(笑)『この街ならそういうのも受け入れてもらえる』と思ったみたいですね」

――お客さんはどんな方が多いですか?
「アクセスが良いからでしょうか、ちょっと離れたところから足を運んでくださるお客様もいます。夜遅めの時間だと、やはり近所に住む方が多いですね。モデルさんとか、業界の方もフラッといらっしゃいます。あとは外国人の方も多いです」
――代々木上原の魅力はなんだと思いますか?
「高級住宅街なので、渋谷から近いのに治安が良いところだと思います。それから、昔からある隠れ家的な名店もありながらも、ここ数年で駅ビルが新しくなったりした影響で、うちのような新しいお店も多いというのも魅力でしょう。僕の中で、この街はまだ“未完成”というイメージです。今まさにカルチャーが作られている気がするので、例えば新しく何かを始めようと考えているような人は街と一緒に成長していけるかもしれませんね」
■高級住宅街の中で生まれる新たな文化
私がこの街に初めて迷い込んでしまった時、心の中でこうつぶやきました。
「とんでもない高級住宅街……自分のような人間が立ち入る場所ではない」。
しかし、今回改めて代々木上原を歩いて商店街を歩き、「終日one」でかすうどんをすすったら、そこで暮らす人たちの生活感を感じることができ、印象はガラッと変わりました。
歴史ある高級住宅地としての品の良さをベースに、異国の雰囲気や、感度の高い新しい感性が混じり合う代々木上原では、今まさに「洗練されたミックスカルチャー」が育まれているのかもしれません。


下條 信吾
長野県安曇野出身、東京在住のフリーライター・カメラマン。レゲエベーシストとしてKaRaLi、Tropicos、The Kingstompersなどで活躍中。
趣味は地図なしの東京街歩き。
八王子から立川まで2時間半、下北沢から仙川まで4時間、お台場から笹塚まで6時間かかりました。
Instagram: https://www.instagram.com/bassieshimo/?hl=ja