リロケーションとは?転勤や長期不在で家の処分に悩んだら検討しよう

「リロケーション」とは、転勤や海外赴任などで長期不在中の自宅を賃貸住宅として貸し出すことをいいます。メリットや注意点、リロケーションを利用する流れをご紹介します。

目次
  1. リロケーションは、空き家の活用法
  2. リロケーションのメリット
  3. リロケーションの注意点
  4. リロケーションの流れ
  5. リロケーション会社を選ぶポイント
  6. 転勤や移転が決まったら早めに相談を
記事カテゴリ 賃貸
2021.06.24

リロケーションは、空き家の活用法

貸家の立て札

「リロケーション」とは、転勤や海外赴任などで長期不在中の自宅を賃貸住宅として貸し出すことをいいます。留守宅を貸し出すのはオーナーが不在の間のみという点が普通の賃貸との違いです。

以前の借地借家法では、一度賃貸すると契約期限が来ても正当な理由なしに貸主から契約更新を断ることはできませんでした。そのため「退去してもらえなかったら困る」という貸主の不安があり、リロケーションはあまり普及してきませんでした。

しかし、借地借家法の改正によって「定期借家権」が導入され、定期借家期間が満了すれば賃貸契約を終了することができるようになりました。この定期借家権の導入後は、リロケーション物件が増えてきています。

「長期にわたって家を空ける予定があるが、家を手放したくない」「遠方の実家を相続したが、自分や家族が当面住む予定はない」といった事情がある人に、リロケーションはおすすめです。入居者募集や物件管理なども、リロケーション専門会社や不動産会社へ依頼すれば、賃貸期限のある定期借家を条件として、希望する期間だけ賃貸として貸し出すことができます。

リロケーションが気になってきた人は、メリットや注意点、リロケーションを利用する流れをご紹介します。

リロケーションのメリット

空き家を手放したくない、また、空き家となる間だけ有効活用したいという人におすすめしたいリロケーションには、主に次の3つのメリットがあります。

安定した家賃収入が得られる

リロケーションを利用すると、毎月決まった家賃収入が得られます。家に住んでいなくとも、不動産を所有している限りは固定資産税や住宅ローンなどの支払いは続きますから、不在となる間、賃貸住宅として活用すれば、家賃収入を維持費や住宅ローンの支払いに充てることができますね。

防犯・防災になる

不在中の自宅に誰かが住んでいれば、防犯効果が期待できます。留守宅のままだと犯罪者の拠点や不審者の侵入といった犯罪へ巻き込まれるリスク、また、留守宅への放火のような災害リスクが高まりますが、人が居住していれば、こうしたリスクを抑えることができるでしょう。

家が傷むのを防げる

家は人が住むことによって、老朽化やダメージを抑えられます。たとえば、次のような効果があります。

・窓やドアの開け閉めによって、湿気が溜まりにくくなり、カビの発生を防げる
・給排水設備を利用することによって、排水管の劣化、害虫の侵入などを防げる
・掃除が行われることによって、室内が清潔に保たれ、建物が長持ちする

ただし、家をきれいに維持してもらえるかどうかは、入居者によるところもあります。賃貸住宅として貸し出すときには、入居中に注意してもらいたいことを可能な範囲で契約内容に盛り込み、きちんと確認してもらうようにしましょう。

掃除機をかける女性

リロケーションの注意点

リロケーションには上記のようなメリットがある一方、次のような注意点もあります。

住宅ローンが残っている場合には金融機関の承諾が必要

住宅ローンの返済がある場合は、リロケーション前にローンを借りている金融機関から賃貸住宅として貸し出すことの許可をもらう必要があります。本来住宅ローンは、自分と家族が住むための住宅の購入資金として借りているため、賃貸住宅として他人に貸す場合には住宅ローンを借りている金融機関の許可、承諾が必要です。

通常の賃貸より賃料が安くなる

リロケーションの場合、特に「定期借家(契約)」で貸し出すときは、賃料は通常の賃貸の相場より安くなりやすい傾向があります。

その理由は、定期借家契約では、一般的な賃貸借契約(定期借家契約に対して普通借家契約といいます)と違って、入居者にとっては借りられる期間が限られているので、それだけ需要も限定的になってしまうからです。そのため、通常の家賃相場より1〜2割程度安く設定した家賃で、入居者を募集するケースもあります。

ただし、リロケーションの場合でも、定期借家の契約期間を長期に設定できるなら、通常の家賃相場とほぼ同じ家賃で募集しているケースもあります。ほかにも、駅から近い、人気エリアにあるなどよい条件を備えた物件である場合も、一般的な賃貸住宅の相場に近い家賃での募集ができますよ。

確定申告が必要になる

リロケーションによって、不動産を貸すことで得た家賃収入が年間20万円を超えた場合は、不動産所得として確定申告を行う必要があります。

不動産から得られる所得(収入)が発生した場合、不動産所得として確定申告が必要になります。確定申告を行わないと、追徴課税として本来納めるべき税額よりも高い税金を徴収される場合があるので注意が必要です。

また、不動産を貸したことで得た収入から、不動産の管理費や修繕費などの必要経費を引いた結果、赤字になる場合は、確定申告をすることで給与所得から赤字分を差し引いて損益通算することもできます。損益通算することで、税金の還付が受けられるので、忘れずに申告するようにしてくださいね。

固定資産税や都市計画税の支払いは続く

リロケーションによって賃貸として住宅を活用するしないにかかわらず、住まい(不動産)を所有している限り固定資産税の支払いは続きます。また、自治体が定めた「都市計画区域」内に不動産がある場合は、都市計画税の支払いも必要です。

売却しない場合、このような税金の支出があることを忘れないようにしましょう。

賃貸契約の継続・終了は契約期間満了の6か月前までに判断する

定期借家契約では、契約を終了する場合には期間満了の6か月前までに書面で通知しなければなりません。もし、契約満了の6か月前を過ぎて終了の通知をした場合には、通知したときから6か月後が期間の満了期日となります。

また、そのまま賃貸借契約を延長する場合は、契約更新ではなく、新たに再度契約を結ぶ必要があります。

従って、リロケーションによる貸借が定期借家契約による場合は、契約期間満了の6か月前に継続か、終了かの通知が出せるよう事前に判断する必要があります。

確定申告書

リロケーションの流れ

リロケーションしようと決めたら、余裕を持って正しい段取りを踏んでいくことが成功のカギになります。リロケーションの流れを、4つのステップに分けて見ていきましょう。

無人のリビング

[ 1 ] リロケーション会社を選ぶ

まず、リロケーションを委託する会社を選びます。リロケーションは、一般的な不動産会社でも可能ですが、専門会社のほか、リロケーションを得意とする不動産会社もあります。

会社選びのポイントは、次項で詳しく説明しています。

[ 2 ] 住宅を賃貸できる状態に整える

リロケーション会社が決まったら、リロケーション会社からアドバイスをもらい、住宅を貸し出すための準備をします。たとえば、マンションなら室内のクリーニングやリフォームを行いましょう。一戸建てなら、庭や外壁なども借り手が見つかるようにある程度手入れが必要になります。ダメージが目立つ部分がある場合は、補修することによって、賃貸に出せる状態に整えます。

[ 3 ] 入居者の募集・審査を行う

準備が整ったら、いよいよ入居者の募集です。賃貸募集の広告宣伝、内覧の対応、所定の入居審査といった業務は、すべてリロケーション会社が行ってくれます。ただし、最終的な入居の判断は貸主が判断します。

自分の所有する大切な資産を貸し出すことになるので、家賃や入居条件は前もってきちんとリロケーション会社と相談し、最終的な判断は自分であるという自覚を持つようにしましょう。

[ 4 ] 入居者と契約を締結する

入居者が決まったら、貸主と借主で賃貸借契約を結びます。このとき、リロケーションを委託した会社と所有者との契約内容によって、貸主が異なってきます。

所有者とリロケーションを委託する会社との契約方式には、不動産の所有者がそのまま貸主となり、リロケーションを委託された会社は管理会社となる「管理委託契約」、リロケーションを委託された会社が所有者の代理人として貸主となる「貸主代理契約」、所有者からリロケーション会社や不動産会社などが建物を借り上げ(マスターリース契約)、借り上げた会社が貸主となり、借主と契約する「サブリース契約」の3種類があります。

オーナーが賃貸する住宅から遠方にいる場合、急なトラブルに対応しにくいため、リロケーションでよく利用されるのは、貸主代理契約やサブリース契約となります。

なお、リロケーションを行う会社が借り上げる形式となる「サブリース」方式では、入居者が入居していないときでも賃料を借り上げた会社が支払うため、不動産の所有者は入居者の有無にかかわらず家賃が入ってくるというメリットがあります。ただし、安定して家賃が入ってくる代わりに、借り上げ契約(マスターリース契約)の家賃は相場家賃よりも10%~30%ほど低い家賃設定となります。

リロケーションによって入居者が入り、家賃が発生すると、所有者が指定した口座に委託手数料を差し引いた家賃が振り込まれます。また、賃貸中に設備の故障や不具合があったときは、その箇所によってオーナーが修理費を負担しなければならない場合もあります。そうした修理や費用が発生する場合は、リロケーション会社からの連絡内容を確認し、対応を相談しましょう。

リロケーション会社を選ぶポイント

リロケーションを成功させるためには、段取りのほかに会社選びも重要です。リロケーションを依頼する会社選びの際にチェックしたい、5つのポイントをご紹介します。

アパートの外観

管理戸数が多い

管理戸数が多いリロケーションを扱っている会社は、それだけ実績を積んでいる会社といえます。物件に合った家賃や条件設定の相談ができ、万が一のトラブルへの対応を適切にしてくれるほか、初めてのリロケーションに関する不安や疑問にも明瞭に答えてくれるでしょう。

希望の条件に柔軟に対応してくれる

自分が賃貸として貸したい期間のほか、リロケーションのための契約を柔軟に選べるかどうかも大切なポイントです。前述した契約の種類について、どういった契約が可能なのか事前にしっかり確認して、依頼するようにしましょう。

確定申告に必要な対応をしてくれる

確定申告は、自分で行うか、税理士や会計士に依頼することになりますが、そのために必要な家賃収入や管理費などが分かる書類は委託した管理会社から発行してもらいます。

従って、リロケーションを委託した会社が、年間の収支報告書を発行していれば申告が楽になり、さらに納税代行までしてくれるなど、確定申告に関してよりよいサービスを備えているかどうかもチェックしておきましょう。

リロケーションによって発生する不動産所得は、確定申告をする必要があるため、こうしたサービスの有無で申告の手間が大きく変わります。

物件のあるエリアの入居者募集に強い

物件のある地域の賃貸募集に強いリロケーション会社なら、入居者がスムーズに決まりやすくなります。不動産賃貸のポータルサイトや自社ホームページへの掲出、チラシの配布など、どのような広告宣伝を行っているのかを確認してみましょう。

従業員のための社宅や寮を求める法人と提携しているリロケーション会社なら、社員に社宅として物件の斡旋ができるので、身元の保証された入居者が早く決まりやすいというメリットがありますよ。

担当者が信頼できる

親身に対応してくれる担当者であれば、初めてのリロケーションも安心です。こちらの質問に対して分かりやすく明瞭に答えてくれる、相談や不安を丁寧に聞いてくれるかどうかを参考にするとよいでしょう。

転勤や移転が決まったら早めに相談を

リロケーションは、購入したマイホームや引き継いだ大切な実家などを、手放さずに有効活用できる手段です。ただし、立地や賃貸の条件によっては、入居者が見つかるまでには時間がかかる場合もあります。リロケーションに興味がある人は、長期不在となる予定が決まった時点で早めに相談しに行くとよいでしょう。その際、自宅と条件の似た物件は「どのくらいの家賃で、入居までの期間はどのくらいか」を確認しておくと、リロケーションを計画的に進めやすくなりますよ。

家の中に立つスーツを着た女性

秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。