学区とは?特徴、メリット、注意点を学校選択制度と比較して解説

子どもが通う学校は、一般的に学区ごとに決まります。学区とは、住んでいる場所によって通う公立学校を自動的に振り分けられる仕組みのことです。ただし、「学校選択制度」を利用したり、私立の学校を選ぶことによって学区外の学校に通うことも可能です。

目次
  1. 学区とは?
  2. 学区の特徴、メリットと注意点
  3. 学区に関係なく学校を選ぶことは可能?
  4. 途中で学区の変更は可能?
  5. 学校選びのポイントとは?
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2022.05.10

学区とは?

小中学校の子どもを持つ親御さんで、引越しや住み替えを予定している人は「新居に移ったら、どこの学校に通わせたらよいのだろう?」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか?

そもそも学区とは、住んでいる地域によって自動的にどこの公立の学校に通うのか決まる仕組みです。学区以外にも、通学区域や校区と呼ぶ場合もあり、主に公立の小中学校で適用されていますが、地域によっては、高等学校でも適用している場合もあります。

基本的に学区の区切りは、自宅から徒歩で通え、交通の危険が少ない範囲に設定されるものです。なかには、学区内の人口の増加や減少によって人口が偏らないように配慮されるケースもあります。

学区に対して、公立でも学区をまたいで学校を選択できる制度を「学校選択制」といいます。学校選択制には、自治体内の学校であればどこでも選択できる「自由選択制」や、隣接する学区であれば選択できる「隣接区域選択制」などがあります。

今回は、子どもを持つ引越しを検討中の人に向けて、学区の特徴やメリット、学校選択制などについて解説します。

手をつないで走る小学生

学区の特徴、メリットと注意点

学区の仕組みにはどのようなメリットや注意点があるのかご紹介します。

特徴

学区は先述の通り、子どもが入学する小中学校を、各市区町村の教育委員会によって指定される制度です。自分の家庭の学区は、入学前年度の秋から冬にかけて市区町村から自宅に送られてくる「入学通知書」で確認することができます。入学通知書には、指定された学校が記載されています。入学通知書のほかに、各自治体のウェブサイトや広報資料などでも、どこの学校に指定されているかを事前に確認することができますよ。

学区は、徒歩で通えるように交通面での危険が少ない範囲で区切られていたり、人口の増減によって1つの学校に生徒が集中しないように配慮されていたりするケースもあります。学区内に大型マンションが設営されて学区内の人口が増加した場合は、学校を増改築、多目的教室を教室として使用するなどの対応をすることもあります。

メリット

学区のメリットは、あらかじめ通う学校が決められているため、保護者が学校選びを迷わずに済むという点があります。

また、住んでいる地域の学校に通学することで、通学時やイベントを通して地域のコミュニティとかかわる機会が増えることもメリットといえるでしょう。たとえば、交差点での交通指導やボランティア、地域住民の学校行事への参加などによって、日頃から子どもと地域住民との交流の場が設けられていることで、子どもを見守る目が増え、防犯にもつながるといえます。

加えて、学区内の学校に通うことで家が近い友達ができるので、気軽に地域の行事やお祭りに参加できるようになり、近所に顔見知りが増えて横のつながりができることもメリットになりますよ。

注意点

学区内の学校に通う注意点としては、通う学校を自由に選ぶことができないので、指定された学校と教育方針や雰囲気が合わなくても通わなければならないということが挙げられます。

また、たとえ家に近い学校があっても、学区外と判定されると通うことができないという点にも注意しましょう。土地の形状や交通事情によって安全に通学できないと判断された、学区を分ける際に世帯数の偏りが出たなどの理由から、必ずしも家から一番近い学校が指定されるわけではありません。

話し合いをする小学生

学区に関係なく学校を選ぶことは可能?

学区で通学する学校が決められていても、指定されている学校に通いたくない、もしくは通わせたくないという人もいるでしょう。そんな場合、学区に関係なく学校を選ぶことはできるのでしょうか?結論からいえば、可能です。ここでは、学区に関係なく学校を選ぶ方法と、それぞれのメリットや注意点についてご紹介します。

学校選択制を選ぶ

公立の小中高等学校でも、希望の学校を選択できる「学校選択制」を利用すれば、学区外の学校へ通うことは可能です。学校選択制は、学区外の就学先を希望する保護者の意見を各市区町村が聴取し、通学する学校を決定するものです。注意しなければならない点として、学校選択制を導入している地域とそうでない地域があることが挙げられます。

また学校選択制には、いくつかパターンがあり、各自治体によって仕組みは異なるため、学区外の就学先を検討する場合は、一度、各自治体に問い合わせてみましょう。

文部科学省は、以下のような種類の学校選択制を挙げています。

選択制度概要
自由選択制自治体内の学校であればどこでも選択可能
ブロック選択制各市区町村をブロックごとに分けてそのブロック内であれば選択可能
隣接区域選択制隣接する区域内であれば希望する学校を選択可能
特認校制特定の学校について、通学区域に関係なく、当該市町村内のどこからでも選択可能
特定地域選択制従来の通学区域は残したまま、特定の地域に住む人に対して学校選択を認める

メリット
ここからは学校選択制のメリットをご紹介します。

●学校に対する選択肢がある
学校選択制を選ぶメリットとしては、希望する学校が選べるという点があります。学区制で決められた公立の学校では、子どもの教育環境があらかじめ決められていますが、学校選択制なら、子どもに合った教育環境や納得のできる教育方針を検討しながら学校を決めることができます。

●経済的な負担が少ない
学校選択制では公立の学校を選ぶことになるため、次にご紹介する私立の学校を選ぶという方法と比べると、高額な学費がかからないということがいえます。家庭の経済的負担は、比較的軽いといえるでしょう。
加えて、小中学校の場合は私立のように受験がないため、受験の準備をする必要もありません。

注意点
一方、学校選択制の注意点は、学区外の学校を選択したことで、通学距離が伸び、徒歩での通学が難しくなる可能性があることです。通学距離が伸びれば、通学時間が長くなり、家の近くの学校に通う場合と比べると帰宅する時間が遅くなることもあるでしょう。

また、学区外の学校に通学すると、地域とのかかわりが薄くなり、子どもたちを見守る地域の目に期待が持てなくなるかもしれません。そのため、安全な登下校に関して不安が残ることもあるでしょう。

なお、学校選択制では、人気の高い学校に子どもの希望が集中した場合、抽選によって入学が決まるケースもあります。抽選から漏れてしまうと、希望の学校に通えず、兄弟姉妹で別々の学校になってしまうこともあるでしょう。通学先の学校側の人員が、少人数の場合は、運営に支障が生じる恐れもあるため、注意が必要です。

パソコン学習をする小学生

私立の学校を選ぶ

私立学校は基本的に学区の制限がないため、好きな学校を選ぶことができます。そのうえ、公立学校にはないメリットや注意点がいくつかあるため、それらをしっかり押さえたうえで検討しましょう。

メリット
ここからは私立学校のメリットをご紹介します。

●学校ごとの明確な方針に基づいた教育
私立学校は、個性を重視していたり、グローバル教育を重視していたりと学校によってさまざまな特徴が見られます。加えて、私立学校の特徴として、各学校で独自の教育方針によって生徒が選抜されるため、似た家庭や似た個性を持った子どもたちが集まる傾向があります。

たとえば、国際的な人間育成を目指す学校では、英語の授業を小学校1年生から導入していたり、国際交流の機会が設けられていたりと、その学校の方針に合わせたカリキュラムで学習することができます。

加えて、私立の学校では、公立学校とは異なり、基本的に教師の異動が少ないという点があります。そのため、同じ先生に継続的に指導や対応をしてもらえます。

●受験の競争に巻き込まれずにすむ
私立学校は公立学校に比べて、中高一貫校や中高大一貫校のような、一貫教育を行っている学校が多い傾向にあります。これらの学校は、外部進学をしない限り受験がないため、卒業までの時間にゆとりができ、部活動や留学など自分の好きなことに取り組める時間が長くなります。

●公立学校よりも環境が整っている
公立学校に比べて、設備や環境に対する予算のある私立は、教育環境が充実しています。たとえば、冷暖房やパソコンなども最新のものが設備されていることが挙げられます。

また、最近は学童保育を設置する私立の学校が増えています。共働き家庭を受け入れている私立学校は、学童保育やアフタースクールなどの仕組みを導入している場合もあります。なかには、宿題のフォローだけでなく、スポーツやそろばんなどの習い事ができるカリキュラムを整えている学校もあります。

注意点
私立学校の注意点としては、自宅から離れている場合、通学時間が長くなるという点があります。そのため、移動時間を上手く活用しながら学生生活を送る必要があるでしょう。

また、公立の学校に比べて学費がかかることが挙げられます。受験料や入学金に加えて、毎年必要となる授業料や施設費などを考えると経済的な負担は大きいといえるでしょう。

加えて、私立学校の場合、公立の学校に比べて、地域とのつながりが薄くなるという点もあります。家から離れた学校に通うことで、地域住民に顔を覚えてもらう機会が少なくなります。

机とランドセルの模型

途中で学区の変更は可能?

就学中でも学校を変更することは可能です。ここでは、変更できる場合はどういったケースかご紹介していきます。

なお、学区の変更を検討する際は、各自治体に相談するようにしましょう。自治体によって、学区変更を認められる場合と認められない場合があるので注意が必要です。

在学中に引越した場合

転居に伴って学区が変わった場合は、転居先の学区へ変更することができます。申請手続きは、引越し先の各自治体に事前に問い合わせをして、必要な書類をそろえておきましょう。

共働きの場合

保護者が共働きで、学区によって指定された学校に学童保育がない場合、学区外の学童保育を実施する学校への変更できる場合があります。また、学区外の親戚に子どもを委託している場合や、勤務先が学区外にある場合も変更が認められる可能性があります。

学区外に兄弟姉妹が通学している場合

兄弟や姉妹が学区外の学校に通学している場合、兄弟姉妹と同じ学校に変更することが認められることもあります。

そのほかの理由

ほかにも以下のような理由で学区の変更が認められる場合があります。

・事情により現在の居住地に住民登録ができない場合、実際に居住している学区の学校に通学する
・支援学級のある学校へ転学する
・心身に著しい疾患がある
・転居によって学区は変わったが、性格や精神の状態から転校が難しいと判断された場合など

自治体にもよりますが、学区を変更する際は、申請書のほか、学区変更を希望する理由を示した証明書が必要になります。

学区を変更する際は、教育方針や地域コミュニティとのかかわり、卒業後の学区のことを踏まえて慎重に判断することをおすすめします。

廊下に並ぶ中学生

学校選びのポイントとは?

ここまで学区制や学校選択制などについてご紹介してきましたが、それぞれにメリットや注意点があり、一概にどちらがよいとはいい切れません。それぞれの家庭の教育方針や子どもの希望に基づいてよりマッチした選択をするとよいでしょう。

また中学校の場合は、小学校の同級生たちが進学する中学校に行きたいという子どもが多い傾向にあります。逆に、進学率の高い学校に進みたいという希望を持つ子どもがいるかもしれませんね。いずれにせよ、子どもの意見を尊重しつつ、よりよい進路へ導いてあげましょう。

学校選択制や私立の学校へ通う場合は、選んだ学校によって特色や方針が異なってきます。そのため、各学校が何に力を入れているのか特長をしっかりと調べ、子どもの特性と照らし合わせて考えることで、納得できる学校選びとなるでしょう。

引越しや家の購入を考える際は、学区の範囲や学校選択制の有無も調べておくことをおすすめします。子どもの性格や希望に合った学校を、選びましょう!

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河野真希

家事アドバイザー、一人暮らしアドバイザー、料理家。インテリアコーディネーター、食生活アドバイザーなどの資格を持つ。
延べ500人以上へのアンケート調査や取材から、分析・研究を行い、部屋探し、引越、防犯、家事、ライフスタイルなどの情報に通じる。
https://www.kawano-maki.net/