住宅ローンを滞納するとどうなるの?競売回避のための対処方法を解説

毎月やって来る住宅ローンの支払いに頭を抱えている方はいませんか?もし住宅ローンの支払いで「家計が苦しいな…」と感じ始めたら、そのままにしておくのは要注意です。今回は、ローン返済がつらいと感じたときにするべき対策について解説します。

目次
  1. 住宅ローンを滞納するとどうなる?
  2. 住宅ローンの滞納から競売までの流れ
  3. 最悪の事態を回避するためには
  4. 任意売却という選択肢もある!
  5. 売却してもそのまま自宅に住み続けるには?
  6. 「つらい」「ピンチ」と感じたら、即対策することが大切!
記事カテゴリ 売却 ローン
2023.05.11

住宅ローンを滞納するとどうなる?

住宅ローンの返済に頭を抱えている方はいらっしゃいませんか?理想的な返済比率(年収に占める住宅ローンの年間返済額)は、一般的に20~25%以内とされています。しかし、実際にはそれ以上の負担となっている方は多くいます。もし住宅ローンの支払いで「家計が苦しいな…」と感じたら、早めに対処する必要があります。

電卓と家の模型と通帳

住宅ローンの返済中に病気や失業、離婚など予期せぬことが起こるケースがあります。現時点では何とか返済ができていても、状況が変わると支払いが困難になるかもしれません。最悪の場合には、自宅が競売となって強制的に売却されてしまう恐れもあり、さらに自己破産を選択せざるを得ないこともあるのです。

こうした事態を防ぐには、返済が苦しい場合はまずは家計を見直すことが大切です。それでも厳しい場合は、住宅ローンを借りている金融機関に相談して返済プランの見直しを図るほか、自宅の売却や家族からの援助など自分の状況に合わせた適切な対処が必要です。少しでも不安を感じ始めたら、なるべく早く動き始めましょう。

今回は、住宅ローンを延滞したときに起こることや、返済できないときの対処方法をご紹介します。

住宅ローンの滞納から競売までの流れ

住宅ローンを滞納している人だけでなく、今後滞納してしまう可能性がある人も、滞納が続くとどうなるのかは気になることでしょう。そこで住宅ローンを滞納するとどのようなことになるのか、時系列に沿ってご説明します。

滞納1か月

住宅ローンの返済日に口座から引き落としができなかった場合、金融機関から電話やメールで、別途入金するよう、案内が来ることが一般的です。

1か月程度の滞納であれば、うっかりした残高不足や勤務先、家庭の事情で支払いが遅れることもあるのでそれほど問題はありません。通常は、金融機関の指定日までに滞納分を支払うことを求められます。ただし、厳しい金融機関では、数日の遅れでも遅れた日数分の遅延損害金や延滞利息を請求されることがあるため注意しましょう。

家の積み木

滞納2~3か月

滞納が2か月ほど経過すると、銀行からいわゆる督促状として、毎月の返済額に加え、遅延損害金(滞納に対するペナルティ)が加算された「支払い請求書」が届きます。支払い請求書は、はがきや手紙での文書で届く場合が多く、なかには滞納期間や滞納金額が記されています。また、はがきや文書と併せて電話で督促される場合もあります。

支払いの延滞が起こると、個人の支払い状況を確認できる「信用情報機関」に遅延情報が登録されます。この時点では厳しい督促はありませんが、短い期間の滞納であっても、「個人信用情報機関の滞納情報」として記載される信用情報機関もあります。1か月分の支払いが遅れると信用情報の履歴が残ることがありますが、すぐに返済して正常化していれば、問題はありません。ただし、3か月以上遅れてしまったり、1か月分の滞納であっても何度も繰り返してしまったりすると注意先と見られてしまいます。

なお、ブラックリストと呼ばれるものは実際にはありませんが、個人の信用情報の滞納履歴が繰り返し記載されていると要注意先となり、クレジットカードの審査に落ちてしまう、新たな借り入れができないといった弊害が起こる可能性があります。この状態がいわゆる「ブラックリスト入り」と呼ばれています。

また、住宅ローンだけでなく自動車ローンの返済や、クレジットカード、携帯電話の支払いなどの滞納が頻発していると、そもそも住宅ローンを利用することが難しくなります。

催告書とお金

滞納3~4か月

滞納してから大体3~4か月が経過すると、銀行から「催告書」が届きます。催告書には、「期日までに滞納している住宅ローンの元金、利息、遅延損害金を支払わないと『期限の利益の喪失』となる」、「このままの状況では法的手続きを取る」という内容が書かれるようになり、滞納1~2か月目に届くはがきと比べると厳しい督促となっていきます。なお、早ければ滞納してから2か月程度で届く場合もあります。

期限の利益の喪失とは、住宅ローンでいえば「返済期間内で分割して返済する権利を失う」ことを意味しています。つまり、分割払いによる返済はできなくなり、一括返済することを求められるということです。

滞納5~6か月

滞納してから大体6か月が経過すると、「期限の利益喪失」を告げる通知が届きます。これ以降は、保証契約の有無により保証会社またはローンを借りた金融機関に住宅ローンの残額を一括で返済しなければなりません。なお、早ければ滞納してから4か月程度で通知が届く場合もあります。

滞納6~7か月

期限の利益を喪失したのち、さらに時間が経過すると、保証会社を利用していた場合は、住宅ローンの保証会社から「代位弁済通知」が届きます。これは、保証会社が債務者に代わって住宅ローンの残額を銀行に支払ったという知らせです。これにより、債権者(返済相手)が銀行から保証会社に変わります。そのため、銀行に代わって引き続き保証会社から返済の請求が来ることになります。なお、保証会社を利用していない場合は、ローンを借りた金融機関から一括返済の請求がなされます。

この後、ローンを借りた金融機関や保証会社へ住宅ローンの残額や遅延損害金などが一括返済されない場合は、不動産が差し押さえられ、競売の手続きへと進みます。

滞納8~9か月

保証会社に対して支払いができず、滞納が8~9か月となると、ローンを借りた金融機関や保証会社は裁判所へ「競売の申し立て」を行います。この申し立てが裁判所に認められると、対象の不動産が差し押さえられます。不動産を差し押さえられてもすぐに退去させられるわけではありませんが、差し押さえられた不動産の売却は自由にはできず、債権者によって制限されます。

家の積み木と滞納

滞納9~10か月

競売の申し立てから、数週間で競売開始が決定されると、債務者に「競売開始決定通知」が届きます。これにより裁判所が競売手続きを開始したことが知らされます。競売開始決定通知は、競売が開始となる日時を知らせる通知であり、競売を拒否することはできません。

競売開始決定通知が届いた後、裁判所より「現況調査通知」が届きます。 これは、対象物件の競売基準価格を査定するため、裁判所の執行官が訪問するという内容とその日時などが記された通知書となります。「現況調査」とは、裁判所の執行官と不動産鑑定士による物件の調査で、執行官が記載した物件の権利関係や占有情報の現況調査書をもとにその物件の入札可能価格を決定することができます。

現況調査が終わると「入札期間の通知」がされ、約1週間~1か月ほどで競売物件は一般公開されます。その後は、入札期間の通知書に記載された期間に沿って入札が開始されます。裁判所からの許可が降りた買主(落札者)は裁判所へ代金を納付し、裁判所が売主から買主への競売物件の所有権移転と、抵当権抹消の登記手続きを行ったら競売が終了です。

このように、滞納が長期化し競売が確定すると、所有者の意思に関係なく物件は売却されてしまいます。少しでも所有者の希望に近い不動産売却を行うためにも、競売になる事態をできる限り回避することが大切です。

最悪の事態を回避するためには

住宅ローンの支払いが厳しいと感じたら、最悪の事態を回避するために早めの対策を取ることが大切です。まずは身近なところから始めることが先決ですが、状況が悪くなってしまっても諦めずに対策するようにしましょう。以下では最悪の事態を避けるための対処法を解説します。

鑑定士と家の模型

家計を見直す

まずは家計を見直すことが第一です。保険料や通信費などの支払いのなかに、不要な支払いや必要以上に高い支払いとなっているものがあるかもしれません。契約しているプランの見直しや一部解約も検討してみましょう。ほかにも娯楽費や交際費など見直せるものは全て見直し、支出を抑えることで、家計の負担が思ったより軽くなることもあります。

金融機関に相談する

家計を見直しても支払いが厳しいようなら、住宅ローンを借りている金融機関に相談しましょう。「支払いが難しいなんて相談してもよいのかな?」と思う人もいるかもしれませんが、早めに相談をすることが得策です。いち早く相談することで、金融機関から返済計画の見直しの提案を受けやすくなります。

また、過去の金利の高い時代に借りた住宅ローンの場合は、これまで滞納がなく、きちんと返済していることが条件ですが、金融機関が金利の交渉に応じてくれるケースもあります。

返済計画の見直しの内容は金融機関によりますが、一時的な元金返済の猶予や返済期間の変更などを提案してくれる可能性があります。ここで大切なのは、返済の滞納が発生する前に金融機関に相談することです。一度滞納すると金融機関からの信用が落ちてしまいますが、滞納前なら金融機関も返済計画の見直しを提案しやすくなります。

返済計画の見直しをすると最終的な返済額が増えるといった注意点もありますが、差し押さえや競売など最悪の事態を回避するという点では、十分に検討する価値はあるでしょう。

住宅ローンの借り換えをする

住宅ローンの返済が少しつらいと思っていても、まだ比較的余裕のあるうちなら、現在よりも金利の低い住宅ローンへの借り換えも支払いを軽くする手段のひとつです。

住宅ローンの借り換えとは、現在借りている金融機関にはローンを一括返済し、別の金融機関から新たに条件のよい住宅ローンを借りて、ローンを入れ替えることをいいます。今借りている住宅ローンよりも金利が低いものに借り換える場合は、今の残高と同額を借り換えたとしても金利が低くなる分、毎月の返済額を抑えることができます。

ただし、借り換えの際も融資手数料や、新たな抵当権設定登記費用、印紙税などの諸費用がかかるほか、今借りている住宅ローンを完済するのでその抵当権抹消費用もかかります。このような諸費用をかけて借り換えをするメリットがあるか、慎重に検討しましょう。

なお、住宅ローンの支払いが厳しい理由が転職や失職、療養などによる収入減の場合は、借り換えは非常に厳しくなります。借り換えを検討する場合は、収入が変わらないうちに行うのが得策です。

家の置物と電卓

支払いが滞る前に売却する

住宅ローンの返済が滞納する前、少なくとも滞納額が大きくなる前に家を売却することも検討しましょう。ただし、売却する場合、手持ち資金や売却した資金で住宅ローンを完済できるかどうかがポイントになります。そのためには、売却前に不動産会社に物件の査定をしてもらうことが大切です。

もし手持ち資金がないうえに、家を売却しても住宅ローンを完済できず残債があるオーバーローンの状態になりそうな場合は、やはり金融機関との相談が必要になります。

また、上記のように通常の売却を検討してみたものの、売却資金での完済が難しい場合は、任意売却という選択肢もあります。次は、任意売却についてご紹介します。

任意売却という選択肢もある!

本来、売却してもローンの支払いが残っている状態では抵当権の抹消を金融機関が認めないため、物件を売却することはできません。しかし、任意売却であれば、売却後に住宅ローンが残ってしまう不動産でも金融機関の了承を得ることで売却することが可能になります。

家と任意売却の積み木と電卓

任意売却は、強制的に売却となる競売に比べて市場価格に近い金額で売れる可能性が高くなります。また、通常の不動産売却と同じように不動産会社が仲介して売却活動を行うことができるため、金額以外にも引渡しの日程といった債務者の希望をある程度反映した条件で売却できます。

ただし、競売の開札日前日までに売却資金で残債を支払うところまで終える必要があります。たとえ任意売却の途中であっても、開札日を迎えると、その時点で任意売却ができなくなるので注意しましょう。

●任意売却に関する記事はこちら
任意売却とは?住宅ローンの支払いが厳しくなったら知っておくべき基礎知識を解説

●任意売却の流れに関する記事はこちら
任意売却物件を売るときの流れとは?売却の手順と注意点を解説

売却してもそのまま自宅に住み続けるには?

住宅ローンの支払いが厳しく、売却せざるを得なくなってしまったものの、住み慣れた家にそのまま住み続けたいと考える方も多いのではないでしょうか?そういった場合には、「リースバック」という仕組みがおすすめです。

リースバックとは、売却先の買主と賃貸借契約を結び、賃貸住宅として毎月の家賃を支払うことで売却した住宅にそのまま住み続ける仕組みです。リースバック事業者が物件を買い取るため、短期間で売却できるうえに、引越しをしなくてよいといったメリットがあります。

一方で、仲介に比べて売却価格が安くなる傾向があるため注意が必要です。また、住んでいた家にそのまま住み続けることができますが、所有権はリースバック事業者に移るため、貸主のルールに従って生活する必要があることを覚えておきましょう。

●リースバックに関する記事はこちら
住まいのリースバックとは?メリットや注意すべきトラブル事例を解説

「つらい」「ピンチ」と感じたら、即対策することが大切!

住宅ローンの滞納が続くと、信用情報への滞納履歴の掲載や最悪競売に至るなど、暮らしにかかわるさまざまなリスクが生じてしまいます。また、任意売却は競売に比べるとメリットはあるものの、望ましい売却ではなく、注意点もあります。

家の模型とお金

今回ご紹介したように、住宅ローンの支払いが厳しいと感じた場合には、まずは家計の見直しから始め、金融機関に住宅ローンの条件を相談するようにしましょう。それでもローンの返済を継続することが難しいようであれば、早めに通常の売却を検討することも必要です。また、住宅ローンの滞納が続いてしまい、通常の売却も難しい状況となったら、任意売却を最終手段として知っておくことで競売という最悪の事態は回避できるかもしれません。

住宅ローンの返済に不安を感じ始めたら、すぐに金融機関に連絡しましょう。早めに相談することで問題が大きくならないうちに対処できる可能性があります。

不動産の売却に関するお悩みや相談があれば、三井のリハウスに気軽に相談してみてはいかがでしょうか?状況に合わせた適切なアドバイスはもちろん、査定や仲介の分からないことなどを丁寧にお伝えします。

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秋津智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。物件の選び方や資金のことなど、不動産に関する多岐のサポートを行なう。