マンションを賃貸に出すメリットとは?注意点や手順、かかる費用を解説

住まなくなった分譲マンションは、売却するだけでなく「貸す」という選択肢もあります。今回は、分譲マンションを貸す際にどんなメリット、注意点があるのか、実際に貸し出す手順やかかる費用をご紹介します。

目次
  1. 分譲マンションを「貸す」という選択
  2. マンションを賃貸に出すメリット
  3. マンションを賃貸に出す際の注意点
  4. マンションを賃貸に出す手順
  5. 分譲マンションを賃貸に出す際の費用と税金
  6. ポイントを押さえて賃貸を成功させよう!
記事カテゴリ 賃貸 費用 マンション
2022.09.08

分譲マンションを「貸す」という選択

マンションを所有している人のなかで、遠方への転勤や親との同居など何らかの理由で住んでいたマンションに住めなくなって、マンションをどうしたらよいか迷っている人、いらっしゃるのではないでしょうか?マンションを空ける予定になったときに、まず「売却」を検討される人がいると思いますが、そのほかに「貸す」という選択肢もあります。

マンションを貸し出して、入居者がきちんと家賃を払ってくれれば、通常の収入とは別に働かなくとも収入が得られる「不労所得」を得ることが可能です。

ただし、賃貸に関する知識のないまま分譲マンションを賃貸に出すと、失敗するリスクが高くなります。そこで今回は、使用していないマンションの利用方法について検討している人に向けて、マンションを賃貸に出すメリットや注意点と併せて、賃貸に出す方法、手順などについて解説していきます。

広いリビング

マンションを賃貸に出すメリット

分譲マンションを所有していると、管理費や修繕費、固定資産税などのコストが発生しますが、賃貸に出すことで、入居者からの家賃収入が見込めて、かかるコストの負担を減らすことができます。ほかにも賃貸に出すことで得られるメリットはいくつかあります。具体的に見ていきましょう。

家賃収入が入る

マンションを賃貸に出すことで得られる最大のメリットともいえる点は、家賃収入が得られることです。たとえば、マンションを売却した場合は、売却によってまとまったお金が入ってはきますが、収入として得られるのは一度きりです。マンションを賃貸に出せば、物件自体を手放すことなく継続的に家賃収入という不労所得を得ることができます。これは、入居者がいる限りずっと続きます。

「家賃収入は魅力的だけど、マンションを賃貸に出すと管理が大変そう…」と考える人もいるでしょう。しかし、賃貸管理会社に委託すれば、賃貸管理に手間をかけることなく家賃収入を得ることができます。

また分譲マンションは、通常の賃貸用のマンションと比較すると設備のグレードが高い傾向にあるため、高額で貸し出せる可能性があります。というのは、分譲マンションは簡素な賃貸用マンションに比べて、長く暮らすことを前提としているため、設備が充実している傾向にあるからです。さらに、分譲マンションは、設備だけでなく、広さや防音性、断熱性にも優れているので、賃貸用のマンションより家賃相場が高くなる傾向にあります。

虫眼鏡とビルの模型

経費として計上できる

賃貸に出すことで、経費として計上できるものがあります。たとえば、部屋のクリーニングや、リフォームが必要になる場合にかかる修繕費です。ただし、修繕費には、いくつかの判断基準があります。主な判断基準は、以下の通りです。

・1つの修理にかかる費用が20万円未満であること
・おおむね3年以内に終了する修理や改良であること

修繕費に加えて、以下の支出も経費として計上することができます。

・固定資産税
・都市計画税
・ローンの利息
・管理手数料
・入居者の募集にかかった費用
・火災保険料
・地震保険料

経費として計上できない支出を計上してしまうとトラブルになってしまうので、何が支出として計上できるのかをしっかりと把握しておくことが重要です。

資産を残せる

マンションは売却すれば資産を手放すことになりますが、賃貸に出せば、自分の資産を保持することができます。賃貸に出すことで、家賃収入により収益を生み出しながら、マイホームとしての価値を維持できます。そのため、一度賃貸として貸し出した後にまとまった資金が必要になった場合は、売却をするということもできるでしょう。

また、将来的にその家が住居として必要になったとしても、資産として残っていれば、そのマンションに戻ることができます。加えて、住まいは、使わないと傷みが早くなるため、誰かに住んでもらうことにより、資産価値を維持してもらえるといったこともメリットといえるでしょう。

マンションを賃貸に出す際の注意点

ここまでマンションを賃貸に出す際のメリットをご紹介してきましたが、マンションを賃貸に出す場合は、注意しなければならない点もあります。具体的に見ていきましょう。

空室のリスクがある

マンションを賃貸に出しても、入居者がいない場合は空室になってしまいます。立地や築年数によっては、入居者が現れない可能性もあります。そうなった場合、空室になるため、当然、家賃収入を得ることができません。結果として、家賃収入がない状態でランニングコストを支払い続けることになるので、赤字になるリスクがあります。マンションを賃貸に出すメリットとして、家賃収入が得られることをここまででお伝えしましたが、それは家賃を滞りなく支払ってくれる入居者がいることが大前提という点には留意が必要といえるでしょう。

住宅ローンの状況確認が必要になる

住宅ローンが残っている状態で、賃貸に出すことは原則としてできません。その理由は、住宅ローンを組む際に、金融機関と締結した契約書に記載されている資金の使い道に反するためです。

ただし、やむを得ない理由があると金融機関に認められ、合意が得られた場合に限り、貸し出せるといったケースもあります。金融機関にやむを得ない理由として認められない場合は、住宅ローンから「不動産投資ローン」への借り換えを行うといった方法もあります。不動産投資ローンとは、不動産投資をして収益を得ることを目的としたローンです。

住宅ローン控除が適用されない

マイホームの取得やリフォームをする際に、所得税の控除が受けられる住宅ローン控除は、居住用を目的とした物件が対象のため、マンションを賃貸に出す場合は、住宅ローン控除の対象外となります。そのため、住宅ローン控除を受けている場合には注意が必要です。

固定資産税の支払いが必要になる

マンションを売却しない限り、賃貸に出しても自分の所有資産になるため、固定資産税は支払い続ける必要があります。固定資産税に加えて、都市計画税を支払う必要があるエリアでは、賃貸に出した後も所有者である貸主が続けて都市計画税も支払い続けなければなりません。

考える夫婦

修繕の費用がかかる

部屋の設備に不具合がある場合は、借主の過失でできたもの以外は、基本的に貸主が費用負担をして修繕します。大きな修繕費が発生するタイミングとして、入居者が入れ替わるタイミングが挙げられるでしょう。新しい入居者に替わる際には、ハウスクリーニングや設備が故障していれば修理や交換が必要です。マンションを賃貸に出す場合は、修繕費用がかかることも考慮しなければなりません。

管理会社への委託費がかかる

管理会社へ賃貸管理業務を委託する場合、入居者がいる場合は委託費用が毎月発生します。なお、自分で管理を行う場合は、委託費用は発生しませんが、ほかに仕事をしていたり、遠方に住んでいたりすると難しいでしょう。

借主を見つけるために仲介会社を利用した場合は、仲介手数料の支払いも必要です。委託費用と仲介手数料については、後ほど詳しくご説明します。

途中で賃貸借契約を解除できない

一度、マンションを貸し出し、賃貸借契約を結んでいる場合は、貸主の都合で解除することが難しくなります。賃貸借契約には、「普通賃貸借契約」と「定期賃貸借契約」の2種類があり、一般的には普通賃貸借契約を締結します。

普通賃貸借契約とは、賃貸の際に一般的に用いられる契約形態で、多くの場合、2年に1回の更新をする契約です。借主に退去してもらうには、正当な事由であることに加え、通常は6か月前までに借主に退去願いの通知をし、立ち退き料を支払う必要があります。貸主側からの更新拒絶は基本的には困難ということです。

そのため、将来的にマンションに再び住むことを検討している場合は、それを考慮したうえで、マンションを賃貸に出す必要があるといえるでしょう。

一方の、定期賃貸借契約は、貸主が決めた契約期間満了時に、確実に賃貸借契約を終了できるため貸主に有利な契約です。そのため、将来的にマンションに戻ってくる予定がある場合は、定期賃貸借契約のほうが有効といえるでしょう。賃貸契約については、この後、詳しくご紹介します。

マンションを賃貸に出す手順

ここまでは、マンションを賃貸に出すメリットと注意点についてご紹介してきました。では、実際にマンションを貸し出す場合には、どういった流れになるのでしょうか?ここからは、マンションを貸し出す際の流れについて見ていきましょう。

[ 1 ] 仲介会社を探す

マンションを賃貸に出す際に、仲介を業者に依頼をする場合は、仲介会社を探すところから始めましょう。自分で入居者を探す場合は、仲介会社への依頼は必要ありませんが、契約時には専門的な知識が必要になるため、入居者を募集する際は、仲介会社に依頼するほうがスムーズでかつ確実に進められるといえます。

[ 2 ] 賃貸契約方法を選択する

賃貸契約方法には、「普通賃貸借契約」「定期賃貸借契約」「サブリース」の3つの方法があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。

普通賃貸借契約
普通賃貸借契約とは、先にお伝えした通り一般的に用いられる、2年に1度の更新を行う契約形態です。普通賃貸借契約を交わすと、借主が更新を希望している場合、正当な事由および立ち退き料の支払いがない限り貸主の都合により契約を解除することはできません。

定期賃貸借契約
契約期間満了時に「確実に賃貸借契約が終了する」という前提で貸し出すことができるのが、定期賃貸借契約です。期間が満了すると一旦契約が終了するため、一定の期間のみの貸し出しを希望し、かつその後、自分たちで住むことを予定している場合、定期賃貸借契約が向いているといえます。しかし、借主にとっては、更新できないといった不安材料のある契約のため、借主を見つけにくいといった点には、注意が必要といえるでしょう。

サブリース
サブリースは、不動産会社を通して借主へ又貸しする方法です。不動産会社へ管理費、維持費として10%~20%程度の手数料が発生しますが、管理や維持を不動産会社へ任せられる点はメリットといえるでしょう。

●サブリースに関する記事はこちら
サブリースとは?毎月固定の賃料が支払われる賃貸の経営方法を解説

[ 3 ] 仲介会社と契約する

仲介を依頼する不動産会社が決まれば、不動産会社と契約を結びます。契約には、「媒介契約」「代理契約」の2種類があります。それぞれを見ていきましょう。

媒介契約
媒介契約の場合、貸主が入居者を選ぶことができます。信頼できる人であると自分で判断してから、入居者を決めたい人は、媒介契約が向いているといえるでしょう。

代理契約
代理契約は、媒介契約と違って入居者の選定を不動産会社に任せる形態です。遠方に住んでいる、あるいは全て不動産会社に任せたいという人は、代理契約がよいでしょう。

ビルの模型と硬貨と紙幣

[ 4 ] 入居者を募集する

不動産会社と契約を交わしたら、いよいよ入居者の募集を始めるために、入居条件や賃料の設定を行います。賃料の設定は、希望者が現れるかどうかを決める重要な要素となります。そのため、周辺物件の賃料を調べたり、不動産会社にアドバイスをもらったりするなどして、より妥当性の高い賃料を決めるようにしましょう。

[ 5 ] 賃貸借契約書を締結する

入居希望者が現れたら内覧を行い、部屋の設備や契約条件に納得してもらえば、賃貸契約の成立となります。内覧に貸主は立ち合いを行わず、不動産会社の担当者に鍵を貸し出して行うのが一般的です。入居の申し込み後、入居審査を経て、いよいよ賃貸借契約の締結となります。

分譲マンションを賃貸に出す際の費用と税金

マンションを貸し出す際に把握しておきたい要素として手順のほかにも、費用や税金について気になる人もいるのではないでしょうか?ここではどういった費用や税金が必要になるのかそれぞれを見ていきましょう。

かかる費用

かかる費用としては、以下のような費用が挙げられます。

リフォームや設備交換費
部屋や設備が老朽化している場合は、メンテナンスや交換、場合によってはリフォームを行う必要があるでしょう。内覧の際に、部屋や設備が整っているほうが、入居希望者も部屋に対してよい印象を持ってくれる可能性が高まります。ドアの開閉がしにくかったり、水回りがかなり劣化していたりする場合はリフォームを検討してみてもよいかもしれません。
ただし、リフォームをする場合、事前にリフォームの必要があるかどうかを不動産会社の担当者に相談することをおすすめします。

仲介手数料
入居者を不動産会社に探してもらう場合は、仲介手数料が必要になります。仲介手数料とは、入居者が決まった場合に、不動産会社へ支払う成果報酬のことです。仲介手数料には、上限があり、以下のように計算することができます。

家賃の1か月分+消費税

なお、基本的には借主が家賃の1か月分を払うことが多く見られます。

管理委託料
不動産会社に、賃貸管理を委託した場合は初期費用や毎月の管理委託費用の支払いが必要になります。一般的な管理委託料は、家賃の5%前後とされています。管理委託料は、家賃収入がない場合には発生しません。なお、経費として計上する際には、確定申告が必要です。

クリーニング代
マンションを貸し出す前には部屋のクリーニングが必要です。壁紙の傷みが激しかったり、劣化が著しかったりする場合は、リフォームを検討してみましょう。マンションを貸し出す前には、できる限りきれいな状態にしておきたいものです。

支払う税金

マンションを貸し出す場合は、所得税と住民税の2種類を支払う必要があり、どちらも賃貸経営で得た利益、つまり不動産所得に対して課される税金です。所得税とは、個人の所得に対して課税されるもので、一方の、住民税とは、行政サービスのために課される地方税の一種です。どちらも、確定申告をして納税をします。

なお、マンションを保有している限り、固定資産税や都市計画税を支払う必要がありますが、賃貸に出す場合は、ここまででもお伝えした通り、経費として計上することが可能です。

若い夫婦

ポイントを押さえて賃貸を成功させよう!

今回は、賃貸に出すメリットや注意点を手順などと併せて紹介してきました。一時的な転勤で、マンションを空ける場合は、賃貸に出すことを検討してみましょう。賃貸に出すことで、家賃収入を得られたり、資産を残せたりといったメリットを得ることができます。

しかし、マンションを賃貸に出す場合は、いくつかの重要なポイントを押さえることが必要です。その1つとして、適切な家賃設定があります。家賃は高いほうが収入も高くはなりますが、高過ぎて入居者が決まらなければ意味はありません。そのため、周辺物件の条件や家賃を参考にしながら、自分のマンションの築年数、階数、設備などを含めて、マンションはどれくらいまでの賃料なら設定できそうか検討することも重要といえるでしょう。

また、賃貸に出したいマンションに対する需要を見極めることも大切です。単身者向けであれば、部屋の広さよりも交通の便利さが好まれますし、ファミリー向けであれば、ある程度の広さと周辺の治安のよさが重視されるでしょう。そのため、自分のマンションはどういった層に需要があるのかを把握する必要があります。

加えてマンションを持て余してしまう場合の解決策として、売却という選択肢もあります。自分のマンションが賃貸と売却のどちらに向いているのか、自分で判断できない場合は、親身になって話を聞いてくれる不動産会社に一度相談してみましょう!

●マンションの売却相談はこちら
不動産売却・査定

●マンションの貸出相談はこちら
部屋を貸す・賃貸経営

不動産鑑定士 竹内英二

株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/